納税の義務はどうなった。「法の下の平等」は死文化したのか。
<自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受け、衆院で28、29の両日にも、政治倫理審査会が開かれる。出席するのは、安倍派(清和政策研究会)の幹部「5人衆」で事務総長経験者の松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、西村康稔前経産相の3人や、同派座長を務めた塩谷立元文科相、二階派(志帥会)の事務総長、武田良太元総務相の計5人だ。 自民党は今月15日、政治資金収支報告書に不記載があった議員ら91人に実施した聞き取り調査報告書を公表したが、「裏金」の具体的な使い道など明らかになっていない部分も多い。5人は自らの口で新事実を述べるべきだ。 特に安倍派幹部の説明責任は重い。同派では、パーティー券の販売ノルマ超過分について、収支報告書に記載せず所属議員にキックバック(還流)する慣例が長く続けられていたからだ。 調査報告書によると、収支報告書への不記載が、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高く、20年以上前から行われていたこともうかがわれる。しかも、安倍晋三元首相が2021年11月に初めて派閥会長となった後、問題に気付いて改善を指示したが、翌年7月に安倍氏が亡くなった後、悪習は再び続けられていた。 調査報告書には、安倍派議員の声として、「安倍氏がやめると言った還付制度を復活させた幹部の責任問題だ」などと幹部への不満が赤裸々に記されていた。今回出席する安倍派「5人衆」の3人は事務総長を務めており、還流がなぜ復活したかを知っているはずだ。誰がいつ、どのような経緯で復活させたのかを明らかにしないといけないだろう。 安倍派幹部が責められる理由は他にもある。国内外に課題が山積するなか、違法行為を復活させたあげく、国会での政策論議が停滞するという事態をつくり出したからだ。 ウクライナ侵攻開始から2年となったロシアでは今月16日、ウラジーミル・プーチン大統領批判を続けてきた活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏が「謎」の死を遂げた。北朝鮮はそのロシアと接近して「核・ミサイル技術の向上」を図るなど、世界は不穏さを増している。ドイツに抜かれて4位に転落した日本の国内総生産(GDP)はインドにも迫られており、経済的にも課題は多い。 激動する世界は、沈滞する日本を待っていてはくれない。日本の安全保障環境をどうすべきか、経済対策をどのように進めるべきかといった政策議論に費やすはずの時