ニューヨーク地裁が下したトランプ氏とその息子たちに対する狂気じみた「魔女狩り判決」は米国の司法史上に汚辱の判例として永く記されるだろう。
<被害者がいない詐欺罪
トランプ・オーガニゼーションが不当な利益を得ていたとされる民事訴訟で、米ニューヨーク地裁は、トランプ前大統領が「事業記録と資産評価を偽造して、保険詐欺を犯す陰謀を支援・助長し、不当に良好な財務状況にあるかのように見せかけた報告書を保険会社に提出した」と認定した。
事情がわからない人からすれば、トランプはよほど悪いことをやったのだろうと考えるだろうが、はっきり言って、これは完全な「魔女狩り裁判」である。
まず、何と言っても量刑が異常に重い。
トランプは3億5500万ドル(530億円)の罰金を支払うよう命じられただけでなく、自身の会社であるトランプオーガニゼーションを含め、ニューヨーク州内のあらゆる法人の責任ある役職に就くことを3年間禁じられた。さらにニューヨーク州金融サービス局に登録されている金融機関に融資を申し込むこともできなくなった。
そして、ドナルド・トランプ・ジュニアとエリック・トランプの2人の息子たちも州内の法人の責任ある役職に就くことを2年間禁じられ、それぞれ400万ドル(6億円)の罰金の支払いを命じられた。
また、トランプ・オーガニゼーションの財務責任者であったアレン・ワイセルバーグも、州内の法人の責任ある役職に就くことを3年間禁じられ、100万ドル(1億5000万円)の罰金を支払うよう命じられた。
さらにトランプ・オーガニゼーションは今後3年間に渡って、独立した社外取締役と監査人の設置と裁判所への報告を命じられた。
そもそも通常の詐欺罪の裁判は、詐欺を受けた被害者から「詐欺にあった」と訴えられてはじめて開始されるものだ。日本人であれば、詐欺罪とはそういうものだと当然思うはずだ。ところがこの裁判では、詐欺にあったと訴える被害者がいないという、実に摩訶不思議なことが起こっている。
被害者がいないにもかかわらず、民主党員であるレティティア・ジェームズ・ニューヨーク州司法長官が「トランプ・オーガニゼーションは詐欺行為を働いた」と決めつけてニューヨーク地裁に提訴したことで、この裁判は始まったのである。
銀行にとっては超優良顧客だった
では、資産の水増しによって、銀行側を欺いたとされている行為は、実際に起こっていることなのだろうか。
この裁判にトランプ側の弁護で出廷したドイツ銀行マネージング・ディレクターのデービッド・ウィリアムズ氏は、顧客側が提出する純資産評価のレポートには、顧客側の主観が入り込むことがありうると見ているとし、こうした財務諸表については、顧客側から提出されたものをベースにしながらも、銀行側で調整を行っていると証言した。
その一例として、2019年にトランプ側が提出した財務報告書には、純資産が58億ドルと記載されていたが、ドイツ銀行はこれを25億ドルに下方修正したことを証言した。
こうした例を出すと、「ほら、トランプはやっぱり過大申告していたんだ」と早合点する人もいるだろう。だが、ウィリアムズ氏は「こうした調整を行うのは保守的な措置だ」と述べている。最悪の事態が発生すれば、資産価格が暴落することだって考えられるわけで、そうした時でも貸し付けた資金が回収できるように、銀行側はむしろ資産評価を「保守的」に見積もっていると言っているのだ。
ウィリアムズ氏は「顧客側と銀行側の評価の違いは、珍しいことではないし、驚くようなことでもない」と語っている。
そもそもトランプ側が銀行に提出した財務諸表には、責任排除の文言が記載されている。トランプ側が認識している資産状況は、人によっては違う判断になることもあるだろうから、銀行側は独自にその評価をやっても構わない、頭から信じるようなことはしなくてよいと、明記しているのである。
またウィリアムズ氏は、トランプ・オーガニゼーションへの融資に関して、トランプ個人がその保証人を務めており、財務上の懸念を銀行側が提起した際には、トランプは迅速にその手当を行ってきたとも証言している。
例えば、ワシントンのホテルのキャッシュフローが融資に定められた要件を下回った時、トランプは860万ドル(13億円)の資金移動を直ちに行い、銀行側の不安を即座に解消したという。
ウィリアムズ氏は、トランプ側で支払いが滞ったことはなく、ローンの債務不履行も確認されなかったとも証言した。つまりトランプは、詐欺を働くどころか、銀行にとって超優良顧客だったのだ。
7億3900万ドルの評価額はかなり控えめ
さて、過大な資産評価が行われていたかどうかについて、フロリダにあるトランプの大邸宅「マー・ア・ラゴ」のことを、取り上げてみよう。
まずは裁判所の言い分から見ていこう。
フロリダの地方政府は、2011年から2021年の間、その不動産価値を1800万ドル~2700万ドルと評価していた。金額に幅があるのは、年によって評価額が違うせいなのだろう。
これに対してトランプ側は2011年段階で7億3900万ドルの価値があると評価していた。2011年段階での地方政府の評価額がいくらなのかはよくわからないが、仮に評価額が最も低い1800万ドルだとすると、トランプはフロリダ地方政府の40倍の評価額を付けていたことになる。これを「悪質な水増しだ」と、ニューヨーク地裁は判断した。
問題は、こうした土地の担保価値としての評価は、地方政府が固定資産税などの評価のために判定した評価額によるべきか、それとも不動産取引の実勢価格に合わせるべきか、ということになる。
銀行側からすれば、融資が焦げ付いた時に、担保として押さえている物件がいくらで売却できるかがビジネス上のポイントになるはずだ。ここから考えれば、当然、不動産取引の実勢価格の方が適しているということになるだろう。
裁判が開始された昨年(2023年)、マー・ア・ラゴからちょうど5分の距離にある2エーカー(約8100平米)の林となっている区画が1億5000万ドルで売りに出されていることをニューヨーク・ポスト紙が報じた。
マー・ア・ラゴはこの林の10倍の面積があるので、土地だけの評価でも15億ドル程度の価値を持っていてもいいことになる。トランプ側の評価額7億3900万ドルというのは、この15億ドル分の価値に比べると、かなり低いといえる。
もっとも2023年と融資の評価が行われた2011年では12年の違いがあるから、その間に不動産価格が大幅に上昇しているということも考えられる。しかしながら、それを考慮に入れても、2011年当時の7億3900万ドルという評価は、決して過大だとはいえないだろう。
昨年3月に取引が成立した近隣の売買事例でも、 敷地面積2.7エーカーの豪邸の価格は1億5500万ドルであった。これに基づいてマー・ア・ラゴの資産価値を単純計算すれば、11億5000万ドル程度ということになる。これが2011年当時においても7億3900万ドルの資産価値があったと言われても、違和感はないのではないか。
また、マー・ア・ラゴは単なるトランプ氏の別邸であるだけでなく、会員制のクラブとしても使用されており、トランプが大統領になる前の2015年段階でも、年間2970万ドルの収益を生んでいた。
年間3000万ドル程度の収益を生む物件の不動産価値を、7億3900万ドルで評価すると、年間で4%の利回りとして計算できることになる。この利回りでの資産評価が40倍程度に水増しされた過大なものだということになるのだろうか。
1800万ドルから2700万ドルで評価すべきだということになれば、年利100%を超えるような評価こそが適正だという、実におかしなことにならざるをえない。
マー・ア・ラゴは、国定歴史建造物に指定されている由緒正しい建物だ。この建物はゼネラルフーズの敏腕女性経営者だったマージョリー・メリウェザー・ポスト氏が、米大統領や政府高官らが冬の間に使える別荘として利用されるようにしたいとの思いを持って建設した施設だった。それが最終的にトランプの手に渡ったのだ。
国定歴史建造物に指定されている建物が加われば、物件の評価はさらに上がるとみていいだろう。トランプは現在のマー・ア・ラゴの資産評価額は18億ドルあると見ているが、これでも私の目からは相当に控えめな評価ではないかと感じられる。
ニューヨーク州の司法はどうかしている
O・J・シンプソンやジュリアン・アサンジの弁護を担当したことでも知られる、アメリカにおいては非常に著名な法学者に、ハーバード大学ロースクールのアラン・ダーショウィッツ教授がいる。
ダーショウィッツ教授はこの裁判のおかしさを指摘したうえで、ニューヨーク州弁護士会は、この裁判を提起したニューヨーク州司法長官のレティティア・ジェームズを調査すべきだと語っている。
アメリカでは州の司法長官も選挙で選ばれるのだが、この選挙の際に、レティティア・ジェームズ司法長官はトランプを起訴することを公約に掲げているからだ。
ニューヨークという、民主党が強く、トランプに対する嫌悪感の強い地盤では、こうしたやり方は人気を集めるのには適しているのだろうが、特定の個人を狙い撃ちにすることを公約にして選挙に打って出るようなことが、果たして許されるのかと、ダーショウィッツ教授は指摘しているのだ。
ちなみにダーショウィッツ教授は民主党支持者で、前回の大統領選挙でもバイデンに投票したことを明らかにしているが、一方でトランプに対する不公正な扱いには大きな問題を感じ、トランプを弁護する活動にも参加している。
トランプを大統領に何としても当選させないことを目的化し、そのためには彼の資金源を絶つべきだし、選挙運動ができないように裁判に莫大な時間を取られるようにすべきだし、多くの裁判に莫大な費用が掛けさせて選挙資金を枯渇させるべきだとする立場には、ダーショウィッツ教授は法学者として許せないものを感じているのだ。
今回の判決を受け、左派の人たちは、「トランプをギャフンといわせてやったぞ、やった!」と喜んでいるのだろうが、政治的立場によってビジネス上迫害されるリスクがあると捉えられるようになると、ニューヨークはビジネスを行う場所として避けた方がよいとする動きが、静かに広がることになりかねない。
どんな考えを持つのも自由だが、職務を遂行する上ではイデオロギーは脇に置いて、法的公正を優先できるようでなければ、問題ではないかと思う。だが、このあたり前のことが今のアメリカではすっかり失われている。
こうした一連の流れが理解できれば、トランプ叩きが激しくなる中で、トランプ支持が高まっていく逆説が、理解できるようになるだろう>(以上「現代ビジネス」より引用)
「トランプ「魔女狩り裁判」で530億円の支払命令の怪…これでまた「トランプ支持」が高まっていく」と朝香豊(経済評論家)氏はニューヨーク州のトランプ氏の裁判を論述しているが、私のような法律家でもない普通の日本人が見ても、ニューヨーク州の裁判所はどうかしてると思わざるを得ない。
トランプ・オーガニゼーションが不当な利益を得ていたとされる民事訴訟で、米ニューヨーク地裁は、トランプ前大統領が「事業記録と資産評価を偽造して、保険詐欺を犯す陰謀を支援・助長し、不当に良好な財務状況にあるかのように見せかけた報告書を保険会社に提出した」と認定した。
事情がわからない人からすれば、トランプはよほど悪いことをやったのだろうと考えるだろうが、はっきり言って、これは完全な「魔女狩り裁判」である。
まず、何と言っても量刑が異常に重い。
トランプは3億5500万ドル(530億円)の罰金を支払うよう命じられただけでなく、自身の会社であるトランプオーガニゼーションを含め、ニューヨーク州内のあらゆる法人の責任ある役職に就くことを3年間禁じられた。さらにニューヨーク州金融サービス局に登録されている金融機関に融資を申し込むこともできなくなった。
そして、ドナルド・トランプ・ジュニアとエリック・トランプの2人の息子たちも州内の法人の責任ある役職に就くことを2年間禁じられ、それぞれ400万ドル(6億円)の罰金の支払いを命じられた。
また、トランプ・オーガニゼーションの財務責任者であったアレン・ワイセルバーグも、州内の法人の責任ある役職に就くことを3年間禁じられ、100万ドル(1億5000万円)の罰金を支払うよう命じられた。
さらにトランプ・オーガニゼーションは今後3年間に渡って、独立した社外取締役と監査人の設置と裁判所への報告を命じられた。
そもそも通常の詐欺罪の裁判は、詐欺を受けた被害者から「詐欺にあった」と訴えられてはじめて開始されるものだ。日本人であれば、詐欺罪とはそういうものだと当然思うはずだ。ところがこの裁判では、詐欺にあったと訴える被害者がいないという、実に摩訶不思議なことが起こっている。
被害者がいないにもかかわらず、民主党員であるレティティア・ジェームズ・ニューヨーク州司法長官が「トランプ・オーガニゼーションは詐欺行為を働いた」と決めつけてニューヨーク地裁に提訴したことで、この裁判は始まったのである。
銀行にとっては超優良顧客だった
では、資産の水増しによって、銀行側を欺いたとされている行為は、実際に起こっていることなのだろうか。
この裁判にトランプ側の弁護で出廷したドイツ銀行マネージング・ディレクターのデービッド・ウィリアムズ氏は、顧客側が提出する純資産評価のレポートには、顧客側の主観が入り込むことがありうると見ているとし、こうした財務諸表については、顧客側から提出されたものをベースにしながらも、銀行側で調整を行っていると証言した。
その一例として、2019年にトランプ側が提出した財務報告書には、純資産が58億ドルと記載されていたが、ドイツ銀行はこれを25億ドルに下方修正したことを証言した。
こうした例を出すと、「ほら、トランプはやっぱり過大申告していたんだ」と早合点する人もいるだろう。だが、ウィリアムズ氏は「こうした調整を行うのは保守的な措置だ」と述べている。最悪の事態が発生すれば、資産価格が暴落することだって考えられるわけで、そうした時でも貸し付けた資金が回収できるように、銀行側はむしろ資産評価を「保守的」に見積もっていると言っているのだ。
ウィリアムズ氏は「顧客側と銀行側の評価の違いは、珍しいことではないし、驚くようなことでもない」と語っている。
そもそもトランプ側が銀行に提出した財務諸表には、責任排除の文言が記載されている。トランプ側が認識している資産状況は、人によっては違う判断になることもあるだろうから、銀行側は独自にその評価をやっても構わない、頭から信じるようなことはしなくてよいと、明記しているのである。
またウィリアムズ氏は、トランプ・オーガニゼーションへの融資に関して、トランプ個人がその保証人を務めており、財務上の懸念を銀行側が提起した際には、トランプは迅速にその手当を行ってきたとも証言している。
例えば、ワシントンのホテルのキャッシュフローが融資に定められた要件を下回った時、トランプは860万ドル(13億円)の資金移動を直ちに行い、銀行側の不安を即座に解消したという。
ウィリアムズ氏は、トランプ側で支払いが滞ったことはなく、ローンの債務不履行も確認されなかったとも証言した。つまりトランプは、詐欺を働くどころか、銀行にとって超優良顧客だったのだ。
7億3900万ドルの評価額はかなり控えめ
さて、過大な資産評価が行われていたかどうかについて、フロリダにあるトランプの大邸宅「マー・ア・ラゴ」のことを、取り上げてみよう。
まずは裁判所の言い分から見ていこう。
フロリダの地方政府は、2011年から2021年の間、その不動産価値を1800万ドル~2700万ドルと評価していた。金額に幅があるのは、年によって評価額が違うせいなのだろう。
これに対してトランプ側は2011年段階で7億3900万ドルの価値があると評価していた。2011年段階での地方政府の評価額がいくらなのかはよくわからないが、仮に評価額が最も低い1800万ドルだとすると、トランプはフロリダ地方政府の40倍の評価額を付けていたことになる。これを「悪質な水増しだ」と、ニューヨーク地裁は判断した。
問題は、こうした土地の担保価値としての評価は、地方政府が固定資産税などの評価のために判定した評価額によるべきか、それとも不動産取引の実勢価格に合わせるべきか、ということになる。
銀行側からすれば、融資が焦げ付いた時に、担保として押さえている物件がいくらで売却できるかがビジネス上のポイントになるはずだ。ここから考えれば、当然、不動産取引の実勢価格の方が適しているということになるだろう。
裁判が開始された昨年(2023年)、マー・ア・ラゴからちょうど5分の距離にある2エーカー(約8100平米)の林となっている区画が1億5000万ドルで売りに出されていることをニューヨーク・ポスト紙が報じた。
マー・ア・ラゴはこの林の10倍の面積があるので、土地だけの評価でも15億ドル程度の価値を持っていてもいいことになる。トランプ側の評価額7億3900万ドルというのは、この15億ドル分の価値に比べると、かなり低いといえる。
もっとも2023年と融資の評価が行われた2011年では12年の違いがあるから、その間に不動産価格が大幅に上昇しているということも考えられる。しかしながら、それを考慮に入れても、2011年当時の7億3900万ドルという評価は、決して過大だとはいえないだろう。
昨年3月に取引が成立した近隣の売買事例でも、 敷地面積2.7エーカーの豪邸の価格は1億5500万ドルであった。これに基づいてマー・ア・ラゴの資産価値を単純計算すれば、11億5000万ドル程度ということになる。これが2011年当時においても7億3900万ドルの資産価値があったと言われても、違和感はないのではないか。
また、マー・ア・ラゴは単なるトランプ氏の別邸であるだけでなく、会員制のクラブとしても使用されており、トランプが大統領になる前の2015年段階でも、年間2970万ドルの収益を生んでいた。
年間3000万ドル程度の収益を生む物件の不動産価値を、7億3900万ドルで評価すると、年間で4%の利回りとして計算できることになる。この利回りでの資産評価が40倍程度に水増しされた過大なものだということになるのだろうか。
1800万ドルから2700万ドルで評価すべきだということになれば、年利100%を超えるような評価こそが適正だという、実におかしなことにならざるをえない。
マー・ア・ラゴは、国定歴史建造物に指定されている由緒正しい建物だ。この建物はゼネラルフーズの敏腕女性経営者だったマージョリー・メリウェザー・ポスト氏が、米大統領や政府高官らが冬の間に使える別荘として利用されるようにしたいとの思いを持って建設した施設だった。それが最終的にトランプの手に渡ったのだ。
国定歴史建造物に指定されている建物が加われば、物件の評価はさらに上がるとみていいだろう。トランプは現在のマー・ア・ラゴの資産評価額は18億ドルあると見ているが、これでも私の目からは相当に控えめな評価ではないかと感じられる。
ニューヨーク州の司法はどうかしている
O・J・シンプソンやジュリアン・アサンジの弁護を担当したことでも知られる、アメリカにおいては非常に著名な法学者に、ハーバード大学ロースクールのアラン・ダーショウィッツ教授がいる。
ダーショウィッツ教授はこの裁判のおかしさを指摘したうえで、ニューヨーク州弁護士会は、この裁判を提起したニューヨーク州司法長官のレティティア・ジェームズを調査すべきだと語っている。
アメリカでは州の司法長官も選挙で選ばれるのだが、この選挙の際に、レティティア・ジェームズ司法長官はトランプを起訴することを公約に掲げているからだ。
ニューヨークという、民主党が強く、トランプに対する嫌悪感の強い地盤では、こうしたやり方は人気を集めるのには適しているのだろうが、特定の個人を狙い撃ちにすることを公約にして選挙に打って出るようなことが、果たして許されるのかと、ダーショウィッツ教授は指摘しているのだ。
ちなみにダーショウィッツ教授は民主党支持者で、前回の大統領選挙でもバイデンに投票したことを明らかにしているが、一方でトランプに対する不公正な扱いには大きな問題を感じ、トランプを弁護する活動にも参加している。
トランプを大統領に何としても当選させないことを目的化し、そのためには彼の資金源を絶つべきだし、選挙運動ができないように裁判に莫大な時間を取られるようにすべきだし、多くの裁判に莫大な費用が掛けさせて選挙資金を枯渇させるべきだとする立場には、ダーショウィッツ教授は法学者として許せないものを感じているのだ。
今回の判決を受け、左派の人たちは、「トランプをギャフンといわせてやったぞ、やった!」と喜んでいるのだろうが、政治的立場によってビジネス上迫害されるリスクがあると捉えられるようになると、ニューヨークはビジネスを行う場所として避けた方がよいとする動きが、静かに広がることになりかねない。
どんな考えを持つのも自由だが、職務を遂行する上ではイデオロギーは脇に置いて、法的公正を優先できるようでなければ、問題ではないかと思う。だが、このあたり前のことが今のアメリカではすっかり失われている。
こうした一連の流れが理解できれば、トランプ叩きが激しくなる中で、トランプ支持が高まっていく逆説が、理解できるようになるだろう>(以上「現代ビジネス」より引用)
「トランプ「魔女狩り裁判」で530億円の支払命令の怪…これでまた「トランプ支持」が高まっていく」と朝香豊(経済評論家)氏はニューヨーク州のトランプ氏の裁判を論述しているが、私のような法律家でもない普通の日本人が見ても、ニューヨーク州の裁判所はどうかしてると思わざるを得ない。
中世の「魔女狩り」にも劣る、と云えば魔女狩り裁判を実行した判事が怒るだろう。彼らは少なくとも敬虔なキリスト教徒で、宗教の教義に基づいて公正な判断を下したと反論するだろう。科学が未発達だった中世において、魔女の存在が広く信じられたとしてもある意味仕方なかったことだろう。
しかし現代は中世とは異なる。人は何らかの思い込みや神の啓示によって裁かれてはならない。法律によって裁かれなく夷はならないし、法律は合理的な「基準」によって適用されるべきだ。
トランプ氏のフロリダにあるトランプの大邸宅「マー・ア・ラゴ」の資産価格が2011年段階で7億3900万ドルとする評価が過大だったとするニューヨーク地裁判事たちはどうかしている。「昨年3月に取引が成立した近隣の売買事例でも、 敷地面積2.7エーカーの豪邸の価格は1億5500万ドルであった。これに基づいてマー・ア・ラゴの資産価値を単純計算すれば、11億5000万ドル程度ということになる」と朝香氏は指摘している。しかも「マー・ア・ラゴは単なるトランプ氏の別邸であるだけでなく、会員制のクラブとしても使用されており、トランプが大統領になる前の2015年段階でも、年間2970万ドルの収益を生んでいた」というから資産価値は更に評価額が上増しされて然るべきだろう。つまり7憶3900万ドルとしたトランプ氏の資産評価額は何ら不当性のあるものではない。
ニューヨーク州の司法長官レティティア・ジェームズ氏はトランプを起訴することを公約に掲げて選挙に当選している。ニューヨークが民主党の岩盤州で、反トランプを掲げて立候補すれば当選しやすいだろうが、司法長官の選挙で特定の者を「起訴する」と公約して立候補するのは尋常ではない。それこそ「魔女狩りをするゾ」と公約した者をニューヨーク州では司法長官に選ぶ州だということになる。ニューヨーク州の有権者は「リンチ」を現代でも行うことを容認する西部劇の時代を生きていることになる。
法の下の公正・公平さこそ司法に携わる者は旨とすべきではないか。ニューヨークでは21世紀になっても「魔女狩り」を平然と行う州だということを天下に知らしめた。ニューヨーク地裁が下したトランプ氏とその息子たちに対する狂気じみた「魔女狩り判決」は米国の司法史上に汚辱の判例として永く記されるだろう。