なぜ中国の青年は祖国を捨てて日本を目指すのか。
<日本の大学に留学する中国人が増えている。その理由について「奨学金目当て」「留学生向けの試験が簡単すぎるから」など、批判的な言説がメディアやSNSでは目立つ。 こうした現状について、当の中国人留学生はどう感じているのか。また日本人の大学生や、学校関係者はどんな思いを持っているのか。中国の地方と都市の格差、過酷な受験競争、そして自由への憧れ。当事者たちの本音とは――。 ◇都市と農村の不平等が、海外留学を加速させる 40万8069人。日本で学ぶ外国人留学生の総数だ。国籍別に見ると中国人が圧倒的な1位で13万1097人。このうち大学院、学部などの高等教育機関に留学している外国人は26万7895人で、中国人は9万8733人と36.9%を占める(2025年5月1日時点。日本学生支援機構による)。 この数字は年々、上昇しているわけだが、なぜ日本を目指す中国の若者が増えているのだろう。その背景としてよく「中国の受験戦争、就職戦争の激しさ」が挙げられる。「人口が多いので大学や大学院の数に比べて受験者数が非常に多く、国内での進学が難しい」「いい企業に就職するためには海外のいい大学に留学した実績が必要」といった論調だ。しかし、四川省出身で日本の有名私立大学で学んだAさんは「競争が激しいというより、不平等なんです」と言う。 「高考(ガオカオ)という中国の大学入学共通テストがありますが、地域によって各大学に入れる人数の枠が決まっています。合格の基準も違う。北京や上海のような大都市の人は有利なんですが、四川省は難易度が高くて、いい大学に入るのが難しいんです」 これは中国独自の戸籍制度による弊害だ。中国では毛沢東時代にできた農村戸籍と都市戸籍の区分が今も部分的に残っており、出身地によって受けられる公共サービスに大きな違いがある。不動産の購入や公務員などへの就職、保険制度など、さまざまな面で都市戸籍のほうが有利だといわれるが、教育についても同様なのだという。そして戸籍地の変更(とくに大都市への転入)はきわめて難しい。 だから優秀な学生であっても、地方出身の場合は国内のいい大学に進学することが難しい。 ◇そこで海外への留学を目指す。 留学できるほどの資金力がない家庭は、高考をクリアすることが目標になる。中国の地方の進学校出身で、日本の有名私大を卒業し、いまは日本の企業で働くBさんは言う...