崩壊する経済に対して、中共政府は処方箋を書けないでいる。

アメリカの凌駕するためのツール「一帯一路」構想
 中国の「一帯一路」構想は、習近平国家主席が2013年に提唱した「巨大経済圏構想」、「経済対外拡張構想」です。もちろん中国が公言することはありませんが、経済権益をベースにした覇権主義的な構想であり、2049年までにアメリカを凌駕(りょうが)する超大国化を目指す中国の具体的な手段で、経済的権益の拡大と表裏一体でもある軍事的な影響力の拡張をも見据えた構想です。
 北京から欧州までを結ぶ地上の「シルクロード経済ベルト(一帯)」と、上海からインド洋を通って欧州に至る「21世紀海上シルクロード(一路)」という帯状の経済圏を想定し、ガスや石油のパイプライン、鉄道、道路、経済回廊、港湾、発電所、電力網などのインフラ建設を融合させた概念です。
 沿線上にある、実に65カ国がこの「一帯一路」構想に参画し、中国はこの地域のインフラに影響力を持つことで、産業・経済面の存在感を増そうというのはもちろん、軍事安全保障上も、あるいは外交目的でもこのフレームをうまく使っていこうという思惑があります。

地理的概念を大幅に拡張させる中国
 そもそも「シルクロード」とは、紀元前から15世紀まであったとされるユーラシア大陸の交易路であり、それにちなんで名付けられたものが中国の「(現代版)シルクロード」です。しかし2024年現在、その名称は何だったのかと疑問をもちたくなるほどに、中国は太平洋を超えて中南米諸国と一帯一路への参画協定・覚書を交わすなど、地理的概念が大幅に拡張してきています。
 近年、北極海ルートも中国の対露バーゲニングパワー増大で抑えられるようになってきましたし、中南米という「(もはやシルクロードという地理概念を超越した)飛び地」でも20カ国以上が支持・参画の表明をしています。
 これを受けて、日本が中核的に関与するCPTPPや、米国が主導するブルー・ドット・ネットワーク、IPEF、先日のインドが提唱したIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)等々のフレームは、一帯一路のカウンターとして登場してきた側面もあります。
つまり、「一帯一路」構想そのものが、北京中央にとっての重層的な覇権影響力拡大の手段であり、軍事経済の統合拡張的発想になっているわけです。
 そうした巨大な仕掛けの「一帯一路」が、一次元下のレベルの概念である経済安全保障を内包するのは自然であって、「一帯一路」の拡張はエコノミック・ステイトクラフト発動のための源泉資本になりうる可能性がある、ということになります。
 すでに2017年の時点で、スリランカは中国にインフラ整備名目の多額の投資を受けたものの、返済不能に陥ってしまい、その代わりにハンバントタ港の99年という長期リースを飲まされる、という事例がありました。借りているのは中国企業ですが、ここを中国海軍の拠点とするのではという指摘もあります。
 また、インフラなど目に見えるものだけではなく、一帯一路を「デジタル人民元」実装ゾーン(つまり、中央銀行発行デジタル通貨の地域標準化)とする構想や、一帯一路地域を行き来する大量の物流データを経済や安全保障に生かすのではないかとも見られています。

「デジタルシルクロード構想」
 すでに中国は一帯一路に関連し「デジタルシルクロード構想」も提唱しており、この地域での中国のデジタル製品・サービスの輸出を促進し、同時に5Gをはじめとする次世代デジタル技術における国際標準化の主導権を確保することを目指しています。
 ただし一部ではすでに当初の戦略的プロジェクトが中止となった箇所もあり、また融資の規模が当初に比べて縮小するなど、すべてが中国の思うようにうまく進んでいるわけではありません。
 また、2022年2月末から始まったロシアによるウクライナ侵攻が、この一帯一路構想に及ぼす影響にも目を向ける必要があるでしょう。ロシア・ウクライナともにこの一帯一路構想の沿線国となり、両国とも中国と東欧・欧州を結ぶライン上に鉄道や道路などのポイントを持っていました。
 また構想にはポーランドをはじめとする中東欧の国々も入っていましたが、ロシアがウクライナ侵攻に及び、中国が「中立からロシア寄り」のポジションを取ると、ウクライナはもちろん、中東欧諸国の対中姿勢も見直すように変わらざるを得なくなります。
 とは言え、宇露戦争の前からすでに中国が2020年に「内循環を主流にした双循環」宣言を出してから、外向き投資が軒並み低減していて、中東欧諸国が期待していたよりもはるかに投資が少なく、気持ちが中国からすっかり離れていたというリアルな背景は理解しておく必要があるでしょう。

「どうせ中国は失敗するだろう」では足元を掬われる
 このように、参加国が多いこと、カバーしている面積が大きいことから変数も増えてしまうのが巨大構想の難しさなのですが、実際のところ、一帯一路構想の「現状」はどのようなものなのでしょうか。
 2023年には「一帯一路」サミットが開催されましたが、日本国内のメディアでは、「反中論」を繰り返しがちな論客系の人ではなく、対中スタンスがニュートラルなコメンテーターと呼ばれる方々でさえ、「G7唯一の参画国であるイタリアでさえ抜けることが既定路線になっている一帯一路は、すでに失敗した外交フレームである」と解説していました。
 しかしこうした見方は、「どうせ中国は失敗するだろう」という思い込みに基づくもので、正しい対中認識とは言えません。もちろん、「一帯一路は終わった外交フレームではない」という指摘は、直ちに「一帯一路は成功する」という主張と一致するものではありません。万事うまくいくとも言えないが、オワコンでもないのです。
本書p164より

一帯一路は終わっていないと言えるワケ
 なぜ「一帯一路は終わっていない」のか。その理由の第一は、実際に一帯一路を支持する国家が少なくない(多い)ことです。確かにイタリアは離脱を表明しましたが、それに続いて次から次へと「抜ける」状況には至っていません。むしろ中南米など新しく参画した国もあります。
 もちろん、一帯一路に関する「一度結んだ協定・覚書を単に破棄していない・実際的な投資は未実施である」ということと「積極的に一帯一路に参画していたりプロジェクトを履行中」というスタンスには大きな隔たりがありますが、支持・参画国数からいえば、一帯一路は失敗している、とは言えない数になっており、2023年のフォーラムにも世界各地130カ国以上の参加が公式に発表されています。
 つまり、一帯一路は、コンテンツとしての力は弱まっているかもしれないけれども、構造体(ストラクチャー)としては維持されている、ということです>(以上「現代ビジネス」より引用)




中国の「一帯一路」構想はもはやオワコンか…その「驚きの実態」が見えてきた」と題し、副題に「「デジタルシルクロード構想」も提唱」とある。中川 コージ(管理学博士(経営学博士)・インド政府立IIMインド管理大学ラクナウノイダ公共政策センターフェロー)氏が発表した論評だ。
 いまさら中国の政策に関して言及する必要はないだろう。なぜなら中国経済は私たちがマスメディアで知っている以上に酷いからだ。早晩中国経済はは崩壊するし、中共政府は数々の経済政策を発表しているが、それらは負債総額1京3千憶円とも云われる規模に対して「焼け石の水」だ。場当たり的な経済政策を展開しているが、すべては徒労に終わるだろう。

 経済は自由市場経済であろうと社会主義経済であろうと、経済は同じ経済原理の範疇の中にある。つまり不良債権・不良債務の両建てで水膨れした国家B/Sを適正化しない限り、経済の崩壊は止まらない。
 崩壊するとどうなるのか。その例は世界中にある。近くは2001年に国家破産したアルゼンチンを見れば良い。ただアルゼンチンの場合は「経常収支の赤字拡大」と「経常収支赤字を大きく上回る資金流入」をきっかけに、対外バランスの不均衡拡大に対する投資家の不安が生まれ、投機売りや資本流出、金融・経済の混乱を引き起こしたのが国家破産に至った経緯だ。

 中国の場合は「経常収支の赤字拡大」と「経常収支赤字を大きく上回る資金流入」までは同じだが、中国はアルゼンチンと異なり統制経済だから投資家による投機売りが金融破綻をもたらすことはない。現に株式市場が暴落すれば強権を発動して株式取引を停止してしまう。しかしそうした市場原理の破壊は外国投資家の中共政府に対する信認を喪失させた。
 市場原理の凍結により株式大暴落は防げても、経済に対する信認が喪失すれば、市中の貨幣流通量が著しく低下し、国民は極端な貧困により暮らしが成り立たなくなる。社会主義国なら、本来は中共政府が国民に食料配給するのが社会主義国たる所以だが、中共政府はそうした社会主義国家の国家義務などとうの昔に放棄している。そのくせ国民監視による国民統制と統制経済だけは維持する、という飛んでもない状況だ。

 いかに中共政府当局が嘘の経済統計数字を発表しようと、実際に失業率が50%を超えれば満足に食事が摂れなくなり国民は飢える。一説によると「中国民の11億人は飢えている」という。その一方で中共幹部のある者は100兆円以上も蓄財しているという。習近平氏でも1兆円を超える金融資産を米国やスイスなど外国の金融機関に所有していると云われている。
 中国当局が発表する経済統計に疑義を抱いたシカゴ大学などの研究結果によると、中国のGDPの実態は中国政府当局が発表している約6割程度と推定している。それでも中国のGDPは800兆円ほどある計算になり、世界第二位の経済大国であることに間違いない。しかし、そうすると負債総額1京3千兆円あると云われているが、それはGDPの16倍以上になる。日本のバブル崩壊が約500兆円のGDPに対して負債総額は100兆円に満たなかった。だから金融機関に公的資金注入が出来た。しかし中国のケースは負債が余りに巨額過ぎて「打つ手なし」だ。

 これから中国経済の崩壊が表面化した場合、国際経済への影響はリーマンショック級では済まないと危惧する経済評論家が数多いるが、それほど心配することはない。なぜなら中国「元」はローカルカレンシーで、「元」貨幣が紙屑となったところで溜め込んでいる「元」の価値がゼロになるだけだ。もっとも中国に工場などを移転させている企業は中国の投資や企業資産を諦めなければならないだろう。
 「一帯一路」に同調した世界諸国が巨額借金を抱えているが、一夜にして「元」建て借金は帳消しになる。だが姑息な中共政府は貸し付けは「元」で行い、返済は「米ドル」で行うように契約を締結しているという。しかし中共政府が瓦解したなら、対中借金も帳消しになる公算が大きい。なぜなら国家間の契約を締結した中共政府も崩壊するからだ。

 国民の信頼を喪失した政権が存続することは世界史上前例がない。そもそも貨幣そのものが政権に対する信頼があってこそ成り立つ。つまり信頼の証として政権が発行する貨幣を国民が使用する。経済崩壊により紙屑と化した「元」を中国民は信頼して使うだろうか。
 現在、中共政府は必死で「元」の対米ドル相場を7元台で維持している。しかし、いつまで維持できるだろうか。既に政府の財政破綻を先延ばしするために、50年物の国債発行して50兆円規模の資金を調達しているが、その規模の資金では中央政府や地方政府の公務員給与の遅配を解消するために使われるだけで消える。もはや中共政府は自転車操業どころではない段階に到っている。この後始末を中共政府はどのように付けるつもりか。しかし彼らの手許に明確な処方箋は何もない。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。