そして歴史は繰り返される。
<「バブル崩壊間近」と言われる今の中国経済
私は1988年生まれの35歳です。生まれた直後に、日本経済のバブルが弾けました。奇しくも、そのときの父と同じ年齢になり、「バブル崩壊間近」と言われる中国に、今まさに私はいます。
日本で物心がついたときから経済不況とともに私は生きてきたわけですが、これからの中国は、それと同様の道を辿ってしまうのでしょうか。もしくは、それとは別の新しい道があるのでしょうか。
果たして、これから「中国経済」はどうなってしまうのでしょうか。「中国のエリート達」は何を考えどう動いているのでしょうか。
そして、われわれ「日本企業」は、これからどう対応していくべきなのでしょうか。
そんな思いを胸に、私は今年9月から北京大学MBAの門を叩きました。
北京大学は、清華大学と並ぶ中国最難関大学です。北京大学には光華管理学院という名前のビジネススクールがあり、私はそのMBAの中国語クラスに入学しました。
北京大学MBAの合格倍率は約20倍、中国全土からエリートが集結していると言ってもいいでしょう。教授陣は100名以上在籍しており、スタンフォード大学やMITなど、欧米の有名大学で博士号を取得している教授も少なくありません。
コースは「フルタイムコース」「パートタイムコース」の2種類があり、フルタイムコースは平日に毎日授業があるコースで、パートタイムコースは週末と平日夜に通います。
私の同級生は約450人で、全体の9割ほどはパートタイムコースを選んでおり、働きながら通う人がほとんどで、私もそのひとりです。
また、フルタイムコースはすべて英語での授業ですが、パートタイムコースはすべて中国語です。
「中国全土のエリート」が北京大学MBAに集結
公開されているデータを見ると、中国語コースの同級生の半分近くが、国が重点大学として指定している難関大学の出身であり、大手企業で管理職や会社経営者として働いている方が多く、全体の40%弱が年収2000万円以上というエリート人材で構成されています。
そのなかには「高考」と呼ばれる厳しい大学受験を経て、最高難度の北京大学に合格し4年制の学部を卒業し、社会人を経由したうえで、MBAを取得するために再び北京大学に出戻りしている学生が何人もいます。
他にも、わざわざ毎週、上海や杭州から飛行機に乗って授業に参加している学生もいます。それほどまでに「価値がある」と捉え、入学してきているようです。
ちなみに、私はこの中国語コースの約400人の中で、唯一の日本人です。厳密には国籍が日本の華僑の方もいますが、中国語がネイティブではない純日本人でいうと私だけです。
そもそも、完全中国語での授業ですので、中国で働いている中国人の方向けに構成されたカリキュラムになっているのだと思います。
そのためなのか、留学ビザはフルタイムコースでは出るのですが、中国語クラスのパートタイムコースでは発行されません。
つまり、外国人は中国で働いていない限り、この中国語コースには入学ができないのです。それゆえに、外国人は日本人も含めて、留学ビザがもらえて英語の授業であるフルタイムコースを選ぶのが一般的のようです。
幸いにも私は、北京で会社を経営しているので就労ビザがあり、多少中国語もできるため、入学の申請ができました。
実際のところ、外国人向けの入学審査は中国人向けよりは緩いらしいです。
しかしながら、もちろん書類選考や面接はすべて中国語でしたし「HSK」という中国語の試験では高い点数を求められ、英語でのGMAT試験などもあり、私としては決して楽ではありませんでした。多くの人の支えもあり、運良く合格することができました。
私は中国関連の仕事を始めてからすでに10年を超え、北京の広告会社の経営を始めて今年で4年目です。
激動の中国経済。
私は1988年生まれの35歳です。生まれた直後に、日本経済のバブルが弾けました。奇しくも、そのときの父と同じ年齢になり、「バブル崩壊間近」と言われる中国に、今まさに私はいます。
日本で物心がついたときから経済不況とともに私は生きてきたわけですが、これからの中国は、それと同様の道を辿ってしまうのでしょうか。もしくは、それとは別の新しい道があるのでしょうか。
果たして、これから「中国経済」はどうなってしまうのでしょうか。「中国のエリート達」は何を考えどう動いているのでしょうか。
そして、われわれ「日本企業」は、これからどう対応していくべきなのでしょうか。
そんな思いを胸に、私は今年9月から北京大学MBAの門を叩きました。
北京大学は、清華大学と並ぶ中国最難関大学です。北京大学には光華管理学院という名前のビジネススクールがあり、私はそのMBAの中国語クラスに入学しました。
北京大学MBAの合格倍率は約20倍、中国全土からエリートが集結していると言ってもいいでしょう。教授陣は100名以上在籍しており、スタンフォード大学やMITなど、欧米の有名大学で博士号を取得している教授も少なくありません。
コースは「フルタイムコース」「パートタイムコース」の2種類があり、フルタイムコースは平日に毎日授業があるコースで、パートタイムコースは週末と平日夜に通います。
私の同級生は約450人で、全体の9割ほどはパートタイムコースを選んでおり、働きながら通う人がほとんどで、私もそのひとりです。
また、フルタイムコースはすべて英語での授業ですが、パートタイムコースはすべて中国語です。
「中国全土のエリート」が北京大学MBAに集結
公開されているデータを見ると、中国語コースの同級生の半分近くが、国が重点大学として指定している難関大学の出身であり、大手企業で管理職や会社経営者として働いている方が多く、全体の40%弱が年収2000万円以上というエリート人材で構成されています。
そのなかには「高考」と呼ばれる厳しい大学受験を経て、最高難度の北京大学に合格し4年制の学部を卒業し、社会人を経由したうえで、MBAを取得するために再び北京大学に出戻りしている学生が何人もいます。
他にも、わざわざ毎週、上海や杭州から飛行機に乗って授業に参加している学生もいます。それほどまでに「価値がある」と捉え、入学してきているようです。
ちなみに、私はこの中国語コースの約400人の中で、唯一の日本人です。厳密には国籍が日本の華僑の方もいますが、中国語がネイティブではない純日本人でいうと私だけです。
そもそも、完全中国語での授業ですので、中国で働いている中国人の方向けに構成されたカリキュラムになっているのだと思います。
そのためなのか、留学ビザはフルタイムコースでは出るのですが、中国語クラスのパートタイムコースでは発行されません。
つまり、外国人は中国で働いていない限り、この中国語コースには入学ができないのです。それゆえに、外国人は日本人も含めて、留学ビザがもらえて英語の授業であるフルタイムコースを選ぶのが一般的のようです。
幸いにも私は、北京で会社を経営しているので就労ビザがあり、多少中国語もできるため、入学の申請ができました。
実際のところ、外国人向けの入学審査は中国人向けよりは緩いらしいです。
しかしながら、もちろん書類選考や面接はすべて中国語でしたし「HSK」という中国語の試験では高い点数を求められ、英語でのGMAT試験などもあり、私としては決して楽ではありませんでした。多くの人の支えもあり、運良く合格することができました。
私は中国関連の仕事を始めてからすでに10年を超え、北京の広告会社の経営を始めて今年で4年目です。
激動の中国経済。
一方、それでもますます世界で存在感を増す中国企業。今の中国がどうなのか、これからの中国はどうなっていくのか。私自身がそれを強く知りたがっています。
この中国トップレベルの教育環境のなかで学んだことや、今までの仕事の現場で感じてきたことを合わせ、日本企業の経営者やビジネスマンの方々の役に立てるようなことをお話ししたいと思います。
中国経済には、まだ「発展余地」が大いにある
入学してすぐにMBA学院長である刘俏(リュウチャオ)教授の講演がありました。刘俏教授は中国の金融分野での権威としても知られています。
刘俏教授は中国人民大学で経済学と数学の学士号を取得した後、中国人民銀行大学院で国際金融の修士号を取得し、その後、UCLAで経済学の博士号を取得しています。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのアジア太平洋企業金融および戦略実践部門での経験を持ち、その後、香港大学の経済・金融学部で教鞭をとり、今は香港大学の終身教授でもあります。
刘俏教授の講義は合計約3時間あり、そのうち1時間ほどは中国経済に関しての内容で、「中国経済にはまだ発展の余地が大いにある」というお話でした。
その内容を簡単に説明すると、「TFP(全要素生産性)を維持、もしくは成長させることで、中国経済にはまだまだ大きな成長発展の余地があり、中国にはそれを実現させる可能性が十分にある」というものでした。
中国経済の発展の鍵は「TFP」
TFP(全要素生産性)とは「Total Factor Productivity」の略称であり、資本や労働を超えた経済の生産効率や技術進歩を示す指標です。
ひと言で言うと、「技術や効率の向上による生産性」です。GDPの成長に寄与するのは「資本力」「労働力」「TFP」の3つの要素です。
国の成長度合いによって、この3つの要素の重要度が異なります。
国が発展途上の段階においては「資本の投下量増加」が経済成長を促進し、人口が増加していく段階では、教育やトレーニングによる「労働力の増加」が経済成長を促進し、経済が成熟し資本と労働の寄与が限界に達してくると、「TFP」が成長のドライバーとなります。
世界のどの先進国も、「工業化」が完了すると経済が成熟してくるわけですが、その中で2.5%前後のTFP年平均成長率を維持できている国はまだありません。
TFPが2%以下に減少すると、経済が縮小傾向になっていきます。中国は、今まで4%前後という高いTFPによって高成長を維持してきましたが、近年は先進国同様に鈍化局面に直面しています。
刘俏教授は「デジタル技術の活用」と「インフラ投資」で再工業化を進め、製造業を強化し、「政府+市場」型経済を強みとして、さらなる開放政策と改革で資源の効率的な配分を図り、カーボンニュートラル目標達成に向けて巨額の投資を行うことで、経済を革新し、生産性を向上させることができると述べています。
ここからは私の考えも展開させてください。刘俏教授と重なる考えも少なくないですが、私の経験や感覚も加えて論を展開させていただきます。
私が中国と初めて関わりを持ったのは、大学の交換留学のために天津に訪れた14年前です。そして、中国関連の仕事を始めたのが約12年前です。その当時から今に至るまで、識者の方々による「中国経済崩壊論」は何度も何度もメディアで謳われてきました。
昨今の中国の不動産バブルの終焉や国内経済の不況を見ると、まさに日本の30年前の姿とそっくりであり、いよいよ「中国経済崩壊論」の現実化が近いようにも思えてきます。
しかし一方、この10年の間、なぜ識者による中国経済崩壊論は当たらなかったのでしょうか。
それはズバリ、誰も中国経済を飛躍させることになった「Xファクター」を予測できなかったからです。そして、これからの中国経済の発展の鍵になるのもその「Xファクター」だと私は考えます。
その「Xファクター」とは「インターネット」です。
実は10年以上前から可能性を予言していた
インターネットはアメリカと中国の2強時代です。「中国を知らずに世界のネットを語るべからず」です。もはや目を向けるべき対象は、アメリカ西海岸ではないのかもしれません。
(中略)言語的な障壁なのか、気持ちの上での障壁なのか、いずれにせよ中国に対する認識を改めずに、今起きている大きな「パラダイムシフト」を見間違うことは、大きな損失になってしまうのではないでしょうか。
これは、私が10年以上前に書いた内容です。
中国のインターネットサービスの大きな可能性を予言しました。今でこそ理解していただけるかと思いますが、当時、この考察を主張する人はまだ少なく、このような意見は少し奇異な目で見られました。
しかし、その後「テンセント」や「アリババ」の時価総額は世界でTOP10入りしたこともありました。「TikTok」を運営する「バイトダンス」は世界最大のユニコーン企業になりました。
米ブルームバーグの報道によると、中国のTechファッション企業の「SHEIN」の時価総額は、「H&M」と「ZARA」の時価総額合計約820億ドル(約12兆2900億円)を超える約1000億ドル(約14兆9900億円)と言われています。
今では、10年前の私の考察はおおむね正しかったように思います>(以上「東洋経済」より引用)
引用した論評は2023/11/06に登用経済誌に掲載された岡俊輔 ( 中国在住経営者 北京大学MBA23期生)氏の手によるものだ。題して「中国経済、崩壊する?北京大MBA生の考察【前編】中国にも「失われた30年」が訪れてしまうのか」とあるが、「前篇」と銘打っているように「後編」もある。引用した論評があなたの琴線に触れたなら登用経済誌のバックナンバーを探して、読んで頂きたい。
この中国トップレベルの教育環境のなかで学んだことや、今までの仕事の現場で感じてきたことを合わせ、日本企業の経営者やビジネスマンの方々の役に立てるようなことをお話ししたいと思います。
中国経済には、まだ「発展余地」が大いにある
入学してすぐにMBA学院長である刘俏(リュウチャオ)教授の講演がありました。刘俏教授は中国の金融分野での権威としても知られています。
刘俏教授は中国人民大学で経済学と数学の学士号を取得した後、中国人民銀行大学院で国際金融の修士号を取得し、その後、UCLAで経済学の博士号を取得しています。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのアジア太平洋企業金融および戦略実践部門での経験を持ち、その後、香港大学の経済・金融学部で教鞭をとり、今は香港大学の終身教授でもあります。
刘俏教授の講義は合計約3時間あり、そのうち1時間ほどは中国経済に関しての内容で、「中国経済にはまだ発展の余地が大いにある」というお話でした。
その内容を簡単に説明すると、「TFP(全要素生産性)を維持、もしくは成長させることで、中国経済にはまだまだ大きな成長発展の余地があり、中国にはそれを実現させる可能性が十分にある」というものでした。
中国経済の発展の鍵は「TFP」
TFP(全要素生産性)とは「Total Factor Productivity」の略称であり、資本や労働を超えた経済の生産効率や技術進歩を示す指標です。
ひと言で言うと、「技術や効率の向上による生産性」です。GDPの成長に寄与するのは「資本力」「労働力」「TFP」の3つの要素です。
国の成長度合いによって、この3つの要素の重要度が異なります。
国が発展途上の段階においては「資本の投下量増加」が経済成長を促進し、人口が増加していく段階では、教育やトレーニングによる「労働力の増加」が経済成長を促進し、経済が成熟し資本と労働の寄与が限界に達してくると、「TFP」が成長のドライバーとなります。
世界のどの先進国も、「工業化」が完了すると経済が成熟してくるわけですが、その中で2.5%前後のTFP年平均成長率を維持できている国はまだありません。
TFPが2%以下に減少すると、経済が縮小傾向になっていきます。中国は、今まで4%前後という高いTFPによって高成長を維持してきましたが、近年は先進国同様に鈍化局面に直面しています。
刘俏教授は「デジタル技術の活用」と「インフラ投資」で再工業化を進め、製造業を強化し、「政府+市場」型経済を強みとして、さらなる開放政策と改革で資源の効率的な配分を図り、カーボンニュートラル目標達成に向けて巨額の投資を行うことで、経済を革新し、生産性を向上させることができると述べています。
ここからは私の考えも展開させてください。刘俏教授と重なる考えも少なくないですが、私の経験や感覚も加えて論を展開させていただきます。
私が中国と初めて関わりを持ったのは、大学の交換留学のために天津に訪れた14年前です。そして、中国関連の仕事を始めたのが約12年前です。その当時から今に至るまで、識者の方々による「中国経済崩壊論」は何度も何度もメディアで謳われてきました。
昨今の中国の不動産バブルの終焉や国内経済の不況を見ると、まさに日本の30年前の姿とそっくりであり、いよいよ「中国経済崩壊論」の現実化が近いようにも思えてきます。
しかし一方、この10年の間、なぜ識者による中国経済崩壊論は当たらなかったのでしょうか。
それはズバリ、誰も中国経済を飛躍させることになった「Xファクター」を予測できなかったからです。そして、これからの中国経済の発展の鍵になるのもその「Xファクター」だと私は考えます。
その「Xファクター」とは「インターネット」です。
実は10年以上前から可能性を予言していた
インターネットはアメリカと中国の2強時代です。「中国を知らずに世界のネットを語るべからず」です。もはや目を向けるべき対象は、アメリカ西海岸ではないのかもしれません。
(中略)言語的な障壁なのか、気持ちの上での障壁なのか、いずれにせよ中国に対する認識を改めずに、今起きている大きな「パラダイムシフト」を見間違うことは、大きな損失になってしまうのではないでしょうか。
これは、私が10年以上前に書いた内容です。
中国のインターネットサービスの大きな可能性を予言しました。今でこそ理解していただけるかと思いますが、当時、この考察を主張する人はまだ少なく、このような意見は少し奇異な目で見られました。
しかし、その後「テンセント」や「アリババ」の時価総額は世界でTOP10入りしたこともありました。「TikTok」を運営する「バイトダンス」は世界最大のユニコーン企業になりました。
米ブルームバーグの報道によると、中国のTechファッション企業の「SHEIN」の時価総額は、「H&M」と「ZARA」の時価総額合計約820億ドル(約12兆2900億円)を超える約1000億ドル(約14兆9900億円)と言われています。
今では、10年前の私の考察はおおむね正しかったように思います>(以上「東洋経済」より引用)
引用した論評は2023/11/06に登用経済誌に掲載された岡俊輔 ( 中国在住経営者 北京大学MBA23期生)氏の手によるものだ。題して「中国経済、崩壊する?北京大MBA生の考察【前編】中国にも「失われた30年」が訪れてしまうのか」とあるが、「前篇」と銘打っているように「後編」もある。引用した論評があなたの琴線に触れたなら登用経済誌のバックナンバーを探して、読んで頂きたい。
昨今、中国経済は崩壊過程にある、という認識が日本の言論界でも一般的になったが、数年も前から「中国経済は崩壊する」とブログに書いてきた私は「今更ながら何を云うか」という気持ちになる。実際は2015年の上海株式大暴落時に中国経済の崩壊は始まっていた。それを中共政府が経済取引規制を強引に行い、株式市場に強権介入して暴落を隠蔽しただけだ。
しかし岡氏は昨年11月段階でも「中国経済は崩壊する?」と疑問符を付け、論評の中ではネットが経済を蓮印する新馬となって崩壊を止める、という極論を述べている。当時ですら、岡氏が経済の牽引馬として期待したネット企業が習近平氏の狙い撃ちにあって、中国IT企業の旗手たるジャック・マー氏ですら東京へ亡命同然に逃げて来ていたではないか。
昨年11月当時は既に中国全土の予備校や学習塾に解散命令が出ていて、巷には塾講師や予備校の先生たち数千万人が失業して溢れていた。同時に、習近平氏は小学校の英語教育を禁じ、北京大学などの入試から英語科目を排除した。そんな国に未来への展望など描けないのは北京大学MBAを取得したほどの学識者たる岡氏なら解ってい当然ではないか。
岡氏は中国経済の発展性をTFP(全要素生産性)で説明する。TFPとは「技術や効率の向上による生産性」であって、GDPの成長に寄与するのは「資本力」「労働力」「TFP」の3つの要素だという。中国には高いTFP(資本や労働を超えた経済の生産効率や技術進歩を示す指標)があって、TFPがドライバーとなって中国経済は崩壊どころかまだまだ成長する余力を有しているという。
だが岡氏は去年の外国投資額が僅か83億ドルにまで縮小していることを御存知ないのだろうか。その規模は改革開放直後の規模に相当し、対前年8割減だ。労働力は確かに豊富だが、その約5割が失業している。そして致命的なのは就業している労働者賃金は給与カットなどでおよそ半減していることだ。
こうした事態に到った主な原因は自由市場を採り入れて発展した「株式市場」や「不動産市場」などに中共政府が直接手を突っ込んだことだ。本来なら政府は自由市場に対しては自由な値動きに対しては直接手を下さず、その代わりに対策を経済政策として実行して、株価や不動産価格の値動きは自由市場に任せるべきだった。
しかし中共政府は大慌てで株式取引を停止し、不動産売却を禁じた。中共政府の中国はすべての土地を国有化しているため、中国で「不動産価格」と称しているのは地上権でしかない。その50年ないし70年の「利用権」を不動産価格と称している。その利用権の中国全土の総額が300兆元(約6,000兆円)に達しているという。それほど膨張しきった資産価格をバブルと称しないで何と表現すれば良いだろうか。
現段階で中国の国家B/Sを作成したなら、資産の部も負債の部も実態と大きくかけ離れた膨らみ切ったものになるだろう。その膨らみ切った部分がバブルの正体であって、それこそが不良資産であり、不良債務ということになる。それらを会計処理しない限り、中国経済がバブルから脱却することは出来ず、その間中国経済はデフレ経済を推移することになる。
岡氏は中国のTFPを高く買っているが、中国にいかなるTFPが存在するというのだろうか。これまで技術進歩したのは外国企業進出による技術移転であって、その多くが中国内で中国人が自ら開発した技術ではない。もちろん生産効率も進出して来た外国企業によってもたらされたモノが大半であって、中国人が自らの製造業を効率化して手に入れたものではない。その証拠に世界中の需要を賄うほど大量の鉄を生産している中国の鉄鋼産業が高生産性を示しているのか、一目瞭然ではないか。
岡氏は中国のTFPを高く買っているが、中国にいかなるTFPが存在するというのだろうか。これまで技術進歩したのは外国企業進出による技術移転であって、その多くが中国内で中国人が自ら開発した技術ではない。もちろん生産効率も進出して来た外国企業によってもたらされたモノが大半であって、中国人が自らの製造業を効率化して手に入れたものではない。その証拠に世界中の需要を賄うほど大量の鉄を生産している中国の鉄鋼産業が高生産性を示しているのか、一目瞭然ではないか。
私は岡氏の予測とは異なり、中国経済は崩壊の坂道を転がり落ちていると分析する。その崩壊のトリガーを引いたのは習近平氏の「改革開放」から「戦狼外交」に舵を切った失政にある。自由市場を廃棄処分し、IT長者を次々と叩き潰し、学問の自由を奪っている習近平氏の大失策以外にいかなる原因があると云うのか。
今後益々中国国営企業は非効率化に陥るだろう。なぜなら少ない仕事を多くの労働者がシェアしなければならなくなるからだ。しかも低品質の製品を輸出するために価格を引き下げなければならず、輸出先からはデフレを輸出するなと関税引き上げを食らうだろう。習近平氏がすべきことは自分への崇拝を高めることではなく、国家B/Sを実体経済にまで引き締めるための不良資産処理を経済テクノクラートに任せることだ。決して国民の預金をゼロにして、金融機関の不良資産処理に充当してはならない。そうすれば信用で成り立っている自国通貨の信任が暴落して、社会秩序が崩壊するからだ。実際にそうした予兆は金価格の高騰と国民が元から金へ資産を移していることから読み取れる。為替相場ではなく、まず国民が元を見限って元の価値を暴落させている。そのことに習近平氏は気付くべきだ。しかし独裁者は常に拍手と称賛を求め、国民から搾取することしか考えない。そして歴史は繰り返される。