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皇室に関する事項を国連女性差別撤廃委員会が議論すべき範疇か?

<女性差別撤廃条約の実施状況を審査する国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は29日、日本政府に対する勧告を含む「最終見解」を公表した。選択的夫婦別姓の導入や、個人通報制度を定めた選択議定書の批准を求めたほか、「男系男子」が皇位を継承することを定める皇室典範の改正を勧告した。  スイス・ジュネーブの国連欧州本部で今月17日、8年ぶりの日本政府の対面審査が行われた。NGOからの情報提供も踏まえ、委員会が最終見解をまとめた。  最終見解では前回2016年の勧告以降の、結婚年齢の格差解消や、女性の再婚禁止期間廃止を実現する法改正などを評価する一方、幅広い分野で改善を勧告した。  委員会は2003年、09年、16年と過去3度、「夫婦同姓」を定める民法改正の必要性を指摘している。17日の審査で委員が「女性のほとんどが夫の姓を名乗っており、アイデンティティーや雇用に悪影響を及ぼしている」と指摘。政府側は「国民の間で意見が分かれている」などとして選択的夫婦別姓の推進方針を明示しなかった。  委員会は最終見解で民法改正を求め、前回16年に続いて、最も重要な「フォローアップ項目」に指定した。  勧告では人権侵害された個人が国内で救済されない場合に国際機関に訴えられる個人通報制度を定める「選択議定書」の批准も求めた。条約の実効性を高める狙いがあり、条約の締約国189カ国のうち115カ国が批准している。  また、中絶に配偶者の同意が必要だとしている母体保護法の要件削除を求めた。審査で委員は「日本が近代国家、経済大国であることを考えると驚くべきことだ」と述べていた。  「男系男子」が皇位を継承することを定める皇室典範についても、最終見解は「委員会の権限の範囲外であるとする締約国の立場に留意する」としつつ、「男系の男子のみの皇位継承を認めることは、条約の目的や趣旨に反すると考える」と指摘。「皇位継承における男女平等を保障するため」、他国の事例を参照しながら改正するよう勧告した。政府側は17日の審査で、「皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項であり、女性差別撤廃条約に照らし、取り上げることは適当でない」と反論していた。  このほか、最終見解は性的少数者の人権をめぐり、同性婚を認めること、昨秋の最高裁判決で違憲・無効となった性同一性障害特例法の生殖不能要件のもと不妊手術を受けた人への賠償を要請...

第三次世界大戦は独裁者たちの「集団自決」の場にすべきだ。

<北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は28日、ロシアに派兵された北朝鮮軍部隊がロシア・クルスク地域に配備されたことを確認したと明らかにした。米国防総省は、北朝鮮が戦闘に加わった場合、米国はウクライナによる米兵器の使用に新たな制限を課さないと発表した。  ルッテ氏は北朝鮮のロシア派兵に関し韓国政府の代表団から説明を受けた後、「ロシアと北朝鮮の軍事協力の深化は、インド太平洋および欧州大西洋地域の安全保障の両方にとり脅威」と述べた。  バイデン米大統領は、ウクライナの戦闘での北朝鮮軍部隊によるロシア支援は「非常に危険だ」と述べた。  米国防総省は北朝鮮軍兵士1万人が訓練のためロシア東部に派遣されていると推定。先週に発表した3000人から推定値を引き上げた。  同省のシン報道官は「兵士の一部は既にウクライナ近くにおり、ロシアがこれらの兵士を戦闘に投入したり、ウクライナ国境に近いロシアのクルスク州で戦闘作戦を支援したりする意図があるのではないかとの懸念が高まっている」と述べた。  ウクライナ軍情報局は先週、ロシアで訓練を受けた北朝鮮部隊の一部がクルスク州に既に配備されたとの見方を示した。  だが、シン報道官は「(北朝鮮部隊は)クルスク方面に進んでいる可能性が高い。しかし、今のところ詳細は分からない」と述べるにとどめ、確認を控えた。  ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮の派兵はロシアによる緊張激化だと非難した。  ウクライナのシビハ外相は、同国政府がここ数週間、北朝鮮の派兵を巡り警告していたものの、同盟国から強い反応はなかったと批判。Xへの投稿で「NATO事務総長はようやく確認した。ウクライナの声に耳を傾けることが肝心だ。ウクライナによる対ロシア長距離攻撃に対する制限を今すぐ解除することが解決策だ」と述べた。  ロシアのプーチン大統領は24日、北朝鮮がロシアに部隊を派遣していることを否定せず、北朝鮮とのパートナーシップ条約をどう運用するかはロシア次第だと述べた。  北朝鮮外務省関係者は、ロシアへの派兵に関する報道を確認しなかったが、そうした事実があるとすれば、国際的な規範に沿った行動だとの考えを示した。  ルッテ氏は北朝鮮の派兵について、ロシアのプーチン大統領の「絶望が高まっている」兆候だとも指摘し、「プーチンの戦争でロシア軍兵士60万人超が死傷しており、外国の...

ポスト「トランプ」はトゥルーシー・ギャハード氏だ。

<(CNN) 米大統領選は11月5日の投開票まで残り1週間となった。民主党候補のカマラ・ハリス副大統領と共和党候補のドナルド・トランプ前大統領による争いは近年で最も接戦の大統領選の一つとなっている。今週、両候補をはじめ、それぞれの副大統領候補や有力な支援者は大統領選の行方を決定づける激戦州へ赴き支持を訴える。  ハリス氏と副大統領候補のティム・ウォルズ氏は今週、七つ全ての激戦州を回る予定。ハリス氏は28日、ミシガン州で最も注目を集めているサギノー郡とマコーム郡で選挙戦を行い、米国の製造業を活性化する計画に注力したイベントを開催する。  ハリス氏は29日夜に首都ワシントンで大規模なイベントを計画している。場所はエリプス広場で、そこでは2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件が起きる前、トランプ氏の支持者らによる集会が開かれていた。ハリス氏は同地で、トランプ氏が国を率いる指導者としてふさわしくないと主張する見込み。ハリス氏を支援するスーパーPAC(政治活動委員会)の幹部からは、ハリス陣営のメッセージはトランプ氏に対する攻撃に集中しすぎているとの声も出ている。 トランプ氏は27日に開かれたニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでの集会の後、28日にはジョージア州を訪問する。トランプ氏は数日内にペンシルベニア州とウィスコンシン州でも選挙活動を行う予定。トランプ氏の副大統領候補J・D・バンス氏は「ブルーウォール(青い壁)」と呼ばれる民主党の伝統的な票田を構成するウィスコンシン州とミシガン州を訪問する。  トランプ氏の地元であるニューヨークで開催された27日の集会では、トランプ陣営が掲げる対決的なメッセージが改めて打ち出された。トランプ氏やその支持者が現状への不満や差別的な発言を繰り返す一方、陣営はトランプ氏の経済上の実績を宣伝し、それをバイデン・ハリス政権のインフレや移民問題への対処と比較する広告を流した>(以上「CNN」より引用)  今年8月26日トランプ氏の大統領選ラリー会場に一人の女性が登壇した。名をトゥルーシー・ギャハードといい、かつて民主党の下院議員だった。或いは2020年の大統領予備選で若干35歳で挑戦し、予備選レースから降りた後はバイデン氏を応援した。  トゥルーシーギャバードが民主党を離党した時の談話がある。 「民主党は今では、臆病な"ウォーク...

選挙結果を直視せよ。

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< 極めて弱い政権基盤での経済財政運営  総選挙は、自民党は単独過半数割れ、公明党を加えた連立与党も過半数割れ、という結果になった。今後の政権の形がどうなるのか、自公連立か、あるいは別の形になるか、現時点では分からない。以下では、自民党を中心とする連立政権が登場するとの前提の下で、政権に対しての要望を書くこととしたい。どのような形の政権になるとしても、政策運営が極めて難しくなることは避けられない。  基盤が弱い政権は、大きな改革に手をつけることが難しい。とりわけ、負担の増加を伴うような政策はそうだ。そうでなくとも、政権は国民負担の増加を伴う施策を後回しにする傾向がある。この傾向は、今後の政権においては、顕著なものになるだろう。そして、本来必要とされる政策が手をつけられずに放置される事態が頻発するだろう。  こうした状況のもとでは、「負担問題から逃げるな」と叫ぶだけでは、事態は改善しない。現実の制約下でいかに問題を極小化できるかを考えていかなければならない。  以下では経済財政政策について、政権に注文をつけることとしたい。 質賃金引き上げの具体的プランを示せ  石破政権が続くか新政権となるか、いずれにしても第一に行うべきは、自民党が総選挙で公約した「実質賃金引き上げ」を実現することだ。  国民は、日々の生活条件がこれ以上悪化しないこと、できれば将来にむかって向上していくかどうかによって、政権を採点する。その指標となるのが、実質賃金の動向だ。  実質賃金は、今年の5月まで26ヶ月連続でマイナスの上昇率だった。6、7月にプラスになったが、8月には再びマイナスになった。  この状態は、決して放置できるものではない。問題はこれを改善するために、いかなる方策をどのようなスケジュールで行うかである。  自民党は、そのための手段として、最低賃金の引き上げや、財政支出などを掲げている。しかし、最低賃金の引き上げは、経済全体の実質賃金の引き上げには直接寄与しないだろう。また財政支出で賃金を上げることもできない。  企業が賃上げを転嫁できるようにしても、だめだ。転嫁された賃金上昇は物価を引き上げるので、実質賃金を上げることにはならないからである。  実質賃金の低下傾向は、最近のことではなく、90年代の中頃から継続している問題である。この傾向を逆転させるためには、生産性の引き上げが不可欠だ...

日本政界は不安定化するが、所詮は永田町の「コップの中の嵐」に過ぎない。

<27日の衆院選で連立与党を構成する自民、公明両党が過半数割れの敗北を喫したことは、唯一の同盟国である米国で不安をもって受け止められている。米政府はかつてのように首相が頻繁に交代する「回転ドア」の再来は望んでおらず、今後の政局を注視している。  「日本が政治の大変動に直面している」。米ブルームバーグ通信は自公政権の敗北をそう報じた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本の有権者が、米国の同盟国の指導者を懲らしめた」と報道。米紙ニューヨーク・タイムズも政権の枠組みの行方が不透明になっていることを伝えた。   バイデン政権は同盟国との関係強化を図る上で「制度化」をキーワードにしてきた。日本も例外ではなく、日米双方で政権が移ろっても関係の基盤が崩れないようにする思惑があった。そのため、仮に連立政権の枠組みが変化しても、日米関係にすぐに悪影響が出るとは想定されていない。   ただ、国内の権力基盤が安定しなければ、外交に力を割きにくくなる。中国の台湾やフィリピンへの威圧、北朝鮮とロシアの関係緊密化など東アジアの情勢が緊迫する中、日米同盟の抑止力向上のためにも米側は日本の政権の安定を望んでいる。   一方、日米同盟の今後にとっては、11月5日の米大統領選も大きな岐路になる。民主党候補のハリス副大統領は現行路線を踏襲する構えだ。しかし、共和党候補のトランプ前大統領が返り咲いた場合、日本に対しても関税引き上げや駐留米軍経費の負担増を求める可能性があり、バイデン政権が築いてきた「基盤」も安泰とは言えない>(以上「毎日新聞」より引用) 「「日本が政治の大変動に直面」 米国、自公過半数割れで不安感」 との見出しが躍っている。不安感というなら、11/5米国大統領選でハリスかトランプかで日本政界も不安感を抱いているのではないか。  しかし、そうしたことは表に出さないというのが礼儀だ。民主主義国家が民主的な選挙で政権が交代するのは極めて普通のことだ。今回の選挙結果により、直ちに政権交替には繋がらないが、石破政権の基盤が揺らぐのは間違いない。ただ、それが日本にとって悪いことでないことだけは確かだ。  日本は短期的な政権交替はあったが、概ねこれまで自公政権が続いてきた。その間、一貫して親米政策を維持し強化し、米国の先兵として中ロ北に矛先を向けてきた。そう...

BRICs会議に現れた習近平氏の落日。

< ■ 停滞気味の中国外交   何だかこのところ、中国外交がパッとしない。もしかしたら、中国経済の失速とともに、習近平政権の看板外交政策である「一帯一路」(中国とヨーロッパを陸路と海路で結ぶワンベルト・ワンロード)に翳(かげ)りが出ているからかもしれない。それとも、他に理由があるのか?    今週10月22日から24日まで、習近平主席が、ロシア中部の都市カザンを訪れた。16回目のBRICS(新興国グループ)首脳会議に出席するためだ。   BRICSはもともと、2008年にG20(主要国・地域)が始まったことを受けて、先進国グループのG7(主要先進国)に対抗するため、翌2009年にロシアが音頭を取って始めた組織だ。BRICSという言葉は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(南アは2010年より参加)の頭文字である。英語でレンガを表す「BRICK」に近いことから、そう呼ばれるようになった。   だがほどなく、ロシアから中国に主導権が移った。中国の経済規模は、他の4カ国の合計よりもはるかに大きいため、必然とも言えた。習近平主席は、2013年3月に国家主席に就任すると、同月に早速、南アフリカBRICS首脳会議に初見参。いとも易々と主導権を取ってしまった。その自信をもとに、同年秋、「一帯一路」を提唱したのだ。   最近のBRICSの傾向は、そうした中国の主導権によって、参加国を拡大していることだ。いわゆる「大金磚」(ダージンジュアン=Big BRICS)である。今年1月に、イラン、エジプト、UAE(アラブ首長国連邦)、エチオピアが正式に加わり、9カ国体制となった。   さらに、以下の13カ国が、パートナー国候補に挙がっていると報じられた。キューバ、ボリビア、インドネシア、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、タイ、ベトナム、ナイジェリア、ウガンダ、トルコ、ベラルーシ、ベネズエラ。   中国は、西側諸国が「小圏子」(シアオチュアンズ=ミニグループ)をこしらえていると非難するが、中国が主導権を取る形で、「全球南方」(チュエンチウナンファン=グローバルサウス)をまとめようとしているのである。それはもちろん、アメリカおよびG7への対抗強化だ。   だが、そんな「壮大な野心」を抱いているにしては、...

野党はその日暮らしの野党であり続けるのか。

 < 第50回衆院選(衆院定数465=小選挙区289、比例代表176)は27日、投開票された。連立与党を構成する自民、公明両党は、公示前の計288議席から大きく減らし、過半数(233議席)を割り込んだ。自公の過半数割れは旧民主党政権が誕生した2009年以来、15年ぶり。公示前に256議席あった自民は大物政治家らの落選が相次ぎ、191議席だった。  自民派閥の政治資金パーティー裏金事件をはじめとした「政治とカネ」を巡る問題が大きく響いたとみられる。公明も大阪の小選挙区で全敗するなど苦戦し公示前の32議席から24議席にとどまった>(以上「毎日新聞」より引用)  昨日実施された総選挙は「 自民は191議席、65議席減らす大敗 公明も8減 15年ぶり過半数割れ 」という結果になった。自民党の余りもの腐敗ぶりに国民の怒りが鉄槌を下したという事なのだろう。  しかし野党は総裁選から解散まで短期間だったため、野党間調整が殆ど出来なかったことから乱立によりむざむざと自民党候補を勝利させた選挙区が散見された。だから自民党の退潮は議席数以上に酷いものだったと思う。  石破氏は開票速報で自公政権が過半数割れになることが確定した後の記者会見で「引き続き政権を維持していく」と明言した。少数与党の政権になることが確実なため、政権運営はかなりの困難と譲歩を伴うものになるだろう。  ただ国民が望む景気・経済対策に関しては自民党も立憲党も「緊縮、増税」路線のため、「失われた30年」から決別することは出来ない。野党が変わらなければ日本政治が二大政党時代を迎えることは出来ないが、そんな簡単なことすら野党政治家諸氏は分からないのだろうか。何のために野党を結成し、野党から立候補しているのか。政治家個々人の政治理念を疑わざるを得ない。  そしてマスメディアも二大政党制を目指す世論作りを一向にしないのも摩訶不思議だ。それとも各種野党が林立する方が自民党に有利だから、野党の林立を囃し立てているのかも知れない。  誤解を恐れず敢えて言えば、「政治改革」も「旧統一教会」も「ジェンダー」も「夫婦別姓」も総選挙の争点になるような問題ではない。本来なら野党連合が消費税廃止によるデフレ経済からの脱却と積極財政による経済成長政策を打ち出し、自民党の「緊縮、増税」政策に対峙して国民の判断を仰ぐ選挙にすべきだった。  それ...

貧困家庭の子供にも「体験学習」の機会を与えよ。

< 低所得者層の小学生の約3人に1人が「1年間体験ゼロ」  2022年12月15日。文部科学省で記者会見を行い、全国初の「体験格差」実態調査の速報値を発表した。「低所得家庭の小学生の約3人に1人が1年間体験ゼロ」という調査結果は、当日中に多くのテレビや新聞などで報道された。  長年にわたり光が当たってこなかった「体験格差」という課題が世の中にどのように受け止められるのか。正直なところ不安な気持ちが大部分を占めていた。だが、報道を見た現役の子育て家庭や元当事者、子ども支援の関係者たちをはじめ、多くの人々がSNS等で「体験格差」の解消を訴えてくれた。思いを同じくする方々の存在に勇気をいただいた。あれから1年以上が経ち、「体験格差」という言葉をメディアで目にする機会が増えたように感じる。小さいながらも社会が一歩前に進んだことを実感している。  しかし、「体験格差」の議論に積極的に参加している人々の多くは、子どもと直接関わる人たちに限られているというのが現状だ。「体験格差」を私たち社会の課題として捉え、解決を目指していくには、より多くの人たちに議論に参加してもらわなくてはならない。本書の執筆を決意したのは、まさにそのためだ。 体験格差の問題解決に必要なこと  一方、「体験格差」に関する認知を広げるだけでは、この問題は解決しない。解決策が提示されないままに、過度に子育て家庭の不安を煽ることになれば、結果として経済的に豊かな家庭はさらに子どもの体験にお金や時間を投じ、格差を広げることにもなりかねない。  だからこそ、「体験格差」という課題を必要以上に大きく見せたり、逆になきものとして扱ったりするのではなく、データや当事者の声から見えてくる課題の実情を捉え、具体的な解決策や今後の論点を提示することで、社会全体で課題解決に向けた議論を深めていくための土台をつくりたい。そんな思いで、本書を書き進めてきた。 「体験格差」解消を目指す理由  なぜ私は「体験格差」の解消に取り組むのか。原点は、学生時代に遡る。  学生時代にボランティア活動をしていたNPO法人ブレーンヒューマニティーの当時の代表の紹介で、とあるキャンプにスタッフとして参加した。そのキャンプは、ある施設で行われ、不登校や引きこもりなどの状態にある青年期の若者が数週間にわたり共同生活をするというものだった。  そこで出会った若者...

国民に厄災をもたらすだけのイスラエルとイランの報復合戦。

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<イスラエルは26日未明、イラン各地の軍事標的に対して空爆を実施した。イスラエルのネタニヤフ首相は3週間前のイランのミサイル攻撃に対する報復を誓っており、それを今回実行する形となった。長年敵対関係にある両国のあからさまな対立に懸念が強まっている。  イスラエル国防軍は「軍事標的に対する精密で的を絞った攻撃を完了した」と発表。ここ1年にイスラエルに対して使用されたミサイルの製造施設や地対空ミサイルを空爆したと説明した。  イランの首都テヘラン各地で多数の爆発が報告されたほか、シーラーズ市でさらに空爆があったとイスラエルのチャンネル12が伝えた。現時点で死傷者の報告はない。  今回選ばれた標的は、ネタニヤフ氏がバイデン米大統領の要請通り、イランの核施設やエネルギーインフラへの攻撃を控えたことを示している。米国は「相応」の対応を考案するためにイスラエルと協力したほか、イランに再び報復しないよう求めたと、米当局者が匿名を条件に記者団に明らかにした。  イスラエル国防軍は今回の空爆中、「何カ月も続いたイラン政府の対イスラエル攻撃」を受けたもので、イスラエルには対応する「権利と義務がある」と主張した。  イランは今月1日、イスラエルに向けて約200発のミサイルを発射。この攻撃についてイランは、イスラエルの軍事・情報収集作戦でレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラのメンバーが殺害されたことへの報復だと主張していた。  報復攻撃の連鎖を受け、イスラエルとイランの直接対立に懸念が強まっている。米国と同盟国は数週間にわたり、イスラエルには自衛の権利があるとの考えを示しながらも、同国が戦争拡大につながる攻撃を仕掛けないよう水面下で動いていた。  イランの国営テレビは、今回のイスラエルによる攻撃はテヘランの軍事施設などを標的としており、「限定的な被害」をもたらしたと、防空当局の声明を引用して伝えた。  防空当局は声明で、今回の攻撃を「挑発行為」と批判し、イランの防衛システムが迎撃に成功したと指摘した。  米国家安全保障会議(NSC)のサベット報道官は、「中東地域の外交を加速させ、緊張を緩和させることがわれわれの目的だ。この戦闘のサイクルがこれ以上エスカレートせずに終結できるよう、イランにイスラエルへの攻撃を停止するよう求める」とコメントした。  バイデン大統領は今回の空爆について説明を受けてお...

投票日に臨む、私の所感。

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 < 27日投開票される衆院選に向け、各党党首は26日、全国各地で「最後の訴え」に臨んだ。立憲民主党の野田佳彦代表の演説の概要は次の通り。 裏金の問題が最大の争点だと確信をした。石破首相ならば、この問題に正面から向き合って改革していくのではないかと、かすかにそういう思いを描いていたが、見事に裏切られた。 (自民党の公認候補と)同じ金額の2千万円が公認されていない人たちにも配られている。これこそ裏公認料だ。 裏金政治を続ける自民党政権を選ぶのか、裏金問題を完全に根絶させる立憲民主党の政権を選ぶのか、政権選択の選挙だ。政権交代は政治改革だけではなく、お金の使い方を変える。困っている人、弱ってる人のために税金の使い方を変える。それを私たちに任せていただきたい>(以上「産経新聞」より引用)  新聞に「 立憲民主党・野田佳彦代表「裏金政治続ける自民政権か、根絶させる立民政権か」  党首最後の訴え 」との見出しが躍っている。いよいよ衆議院選の投開票日を迎えたが、「政治が変わる」との予感が少しもしない。  確かにマスメディア各紙は「自公の過半数割れか」と色めき立っているが、政権がどうなろうと政策に変化がなければ国民にとってどうでも良いだろう。ただ「政治改革」と野党第一党の代表は叫んでいるが、「裏金」政治家がいなくなろうと、国民の生活にどれほど影響があるというのだろうか。  「裏金」批判は永田町の問題だ。政治家が不法行為を働いているのは政治資金規正法がザルだからではない。国税庁が真剣に与党政治家の脱税行為を調査しようとしないからだ。そして不法行為を働いて来た与党政治家諸氏を野放しにしていたのは東京地検の「恣意的な」怠慢だ。ただ、それだけの問題ではないか。  しかし国民の生活にとって政治資金規正法を厳罰化すれば、少しでも良くなるのか。全く関係ないではないか。貧困化している国民にとって、与党政治家が党の公認から外れて比例復活がないのは痛快かもしれないが、ただそれだけのことだ。  国民が政治に求めているのは世論調査でも明らかなように、景気をと物価高対策だ。直近の ANNの世論調査を見るが良い。選挙で「国民が最も重視する政策」は、 ■景気、物価高対策      63% ■年金・社会保障制度     44% ■教育・子育て支援      37% ■外交・安全保障       3...

トランプ氏の再登場に期待する。

<米大統領選が終盤戦に入っている。選挙戦の主要な争点や、民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領の支持率の動向はどうなっているだろうか。  米国では興味深い政治サイトとして「リアル・クリア・ポリティクス」がある。同サイトでは全米各地における各種の世論調査や「賭け市場」のデータを掲載しその平均を出している。  それによれば、10月1日から17日の各種世論調査の平均で、全米における支持率は、ハリス氏が49・4%、トランプ氏が47・8%とハリス氏が1・6ポイントリードしている。  しかし、米大統領選の投票は各州で行われ、勝った候補者がその選挙人数を総取りするので、各州の選挙結果が重要だ。  前述のサイトでは、激戦州といわれるウィスコンシン、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ネバダでも各種世論調査を平均した数字も出している。それによれば、18日現在、いずれの州でもトランプ氏が僅差ながらリードしている。このため、この段階で選挙人獲得数予測は、トランプ氏が312、ハリス氏が226とされ、トランプ氏勝利と予想されている。  同サイトによれば、18日現在、各種賭け市場の平均ではトランプ氏が58・1%、ハリス氏が40・4%で、トランプ氏の当選確率が上昇している。それまではハリス優勢か五分五分という接戦模様だったが、ここ2週間ほどでトランプ氏に勢いが出ている。ハリス氏は突然出馬したことによる〝ご祝儀〟でトランプ氏をリードしてきた面もあるが、最近ではその効果も失われつつあるようだ。  筆者の独断であるが、身銭を切って賭ける「賭け市場」のほうが、調査主体のバイアスが避けられない世論調査や無責任な政治コメンテーターの発言より予測力が高いと思っている。  また、米国では、世論調査でトランプ支持者は意見を言わない、いわゆる「隠れトランプ」が多いので、賭け市場のほうがより実態を表しているといえるのではないか。  なお、賭け市場は米国では合法であるが、日本から米国の賭け市場に賭けるのは、警視庁も警告しているように違法なので、注意してもらいたい。  米大統領選の大きな争点は経済だ。特にインフレと生活費が、有権者の大半にとっての主要な関心事となっている。  ハリス氏は現政権の一員なので、やはり不手際が指摘されている。もともとジョー・バイデン政権で...

検察官は胸のバッジに恥じないか。

<大阪地検のトップである検事正を務めていた弁護士の男が酒に酔った当時の部下の女性に性的暴行を加えたとされる事件で、被害者である現役検事の女性が大阪市内で会見を開き、「被害を受けてから約6年間、本当にずっと苦しんできた。なぜもっと早く罪を認めてくれなかったのか」と涙ながらに語りました。   元大阪地検検事正で弁護士の北川健太郎被告(65)は、検事正在任中だった2018年9月、大阪市内にある官舎で、酒に酔って抵抗が難しい状態だった女性に対し性的暴行を加えたとして、準強制性交等の罪に問われています。 ■北川被告は起訴内容を認め「被害者に深刻な被害を与え、深く反省、謝罪」  25日午後2時すぎから大阪地裁で開かれた初公判で、白いシャツに黒のスーツ姿で法廷に現れた北川被告は、「公訴事実を認め、争うことはしません」と起訴内容を認め、「被害者に深刻な被害を与え、深く反省・謝罪している。所属する組織の人たちに多大なご迷惑をかけ、世間を騒がせたことを申し訳なく思っている」と謝罪しました。   被害に遭った女性は現役の検事で、夫や子供もいましたが、初公判後に大阪市内で弁護士とともに記者会見を開き、当時の生々しい状況や、苦しい胸の内を涙ながらに赤裸々に語りました。 ■女性は「泥酔状態になり記憶が戻ってきたときには、被告が性行為に及んでいた」 北川被告は「これでお前も俺の女だ」と性的暴行続ける  事件当日、女性は北川被告や同僚らとともに参加した懇親会の後、北川被告にタクシーに押し込まれたといいます。当時は飲酒の影響による泥酔状態、記憶が戻ってきたときには、被告が性行為に及んでいたということです。   女性が「帰りたい」と懇願しても、北川被告は「これでお前も俺の女だ」と言って性的暴行を続けたといいます。   女性は泣きながら帰宅したといい、「夫はやさしい人で家のことも家族のことも手伝ってくれて、私が検事として働くことを応援してくれていた。3時間にわたって検察庁のトップにレイプされたなんて言えなかった」と明かしました。 ■北川被告は「表沙汰にすれば死ぬほかない。大阪地検は組織として立ち行かない」  事件後、北川被告から「この被害を表沙汰にすれば死ぬほかないと思っている。組織は批判を受け、大阪地検は組織として立ち行かない。私の命に代えてやめてほしい。ご主人に...

台湾有事は存在するのか、そして日本有事も存在するのか。

<今年6月末から8月初めにかけての1カ月余りの間、ハワイ一帯で行われた2024年環太平洋合同演習(RIMPAC)には、特異なプログラムが含まれていました。米空軍のステルス戦略爆撃機B2が「クイックシンク(QUICKSINK)」という新型爆弾を投下して排水量3万9000トン級の大型揚陸艦を撃沈する訓練でした。  米海軍が主導する多国籍合同演習RIMPACにB2が参加するというのは、なかなか前例がありません。22年にテストされたクイックシンクをB2に搭載して投下したのも初めてだといいます。   米軍は、実射撃訓練用の標的艦として退役した揚陸艦2隻を用いましたが、その排水量やサイズは、台湾海峡侵攻時に中国海軍が用いるであろう揚陸艦とよく似たものでした。中国軍に「台湾侵攻を夢見てはならない」という強力なメッセージを投げかけた、と言えます。  ■GPS誘導のGBU31JDAMを使用   今年のRIMPACには韓国からも駆逐艦「栗谷李珥」など4隻の艦艇が参加しました。敵艦艇(に見立てた標的艦)を実弾で攻撃し、撃沈する「シンクエックス(SINKEX)」訓練は7月11日と19日の2度にわたって行われました。7月11日には退役した米海軍の揚陸艦「ダビューク」(排水量1万7000トン、LPD-8)、19日には3万9000トン級の強襲揚陸艦「タラワ」(LHA-1)が標的になりました。   米海軍の空母から発進したFA18Fスーパーホーネット戦闘機は、米国の新型長距離対艦巡航ミサイル(LRASM)を発射したといいます。射程が370キロのこのミサイルは、レーダー網を避けて巡航し、目標を精密攻撃できるステルスミサイルです。   B2ステルス戦略爆撃機は7月19日、2度目の訓練に参加し、クイックシンクで「タラワ」を撃沈したそうです。「タラワ」は全長250メートル、幅32メートル、排水量3万9000トンに達する強襲揚陸艦です。7万-8万トン級の空母の半分近くにもなる大型艦でした。  ■075型揚陸艦など中国の大型艦を意識   中国海軍が有事の際、台湾侵攻に動員するであろう強襲揚陸艦は、075型と071型です。21年に就役した075型は満載排水量が3万6000トンで、現在3隻が実戦配備されています。800人の海兵隊員と60台の水陸両...

健康寿命を延ばすには正確な知識こそ必要だ。

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< 減塩生活で低ナトリウム血症に  ある70代の男性が、「何か深刻な病気ではないか」と、クリニックを受診しました。近ごろ、疲れがとれない、吐き気がする、食欲がわかないといった症状を感じるようになったというのです。  その男性は、両親が高血圧で脳卒中になったため、自分はなりたくないと減塩を心がけ、血圧を上げないようにしてきました。刺身につけるしょう油はほんのちょっとだけ、野菜サラダもレモンを絞るだけでドレッシングはなし。食品を買うときには必ず表示を見て塩分量をチェックしてきたと言います。  しかし、この徹底した減塩が今回の不調の原因となった可能性があります。体に必要な塩分が不足すると、「低ナトリウム血症」を起こしやすいのです。低ナトリウム血症は、だるさ、嘔吐、食欲不振のほか、重症になると筋肉のけいれんや意識障害を起こし、早急な対応が必要になり、決してあなどることはできません。 血圧にとって塩分はワルモノ  多くの医者が「塩分を控えましょう」と言うのは、血圧を上げないためです。私たちの体には、血液中の塩分濃度を一定に保つ働きがあるので、塩辛いものを食べるとのどが渇き、水分をとって、血液中の塩分濃度を薄めようとします。その結果、水によって増えた血液を押し出すために血圧が上がる。というわけで、塩分は血圧を上げるワルモノにされてしまっているのです。  厚労省は、塩分の一日当たりの目標量を、成人男性の場合7.5g未満、成人女性6.5g未満と設定しています(「日本人の食事摂取基準2020年版」)。しかも、高血圧の人や慢性腎臓病の人は、重症化を防ぐために、男女ともに一日当たりの目標量6.0g未満とするべきとしています。  しかし、塩分というのは体にとって不可欠なもの。体液と電解質のバランスを調節し、血圧を健康な状態に保ち、筋肉や神経細胞の信号を伝達するなど非常に重要な働きをしています。私たちは塩分がないと生きていけません。そのため、腎臓には尿中のナトリウムをもう一度体内に戻し、ナトリウムを排泄しないようにするしくみがあります。これをナトリウム貯留能と言います。 なぜ60歳をすぎたら減塩NGなのか  若い人の腎臓は、ナトリウム貯留能がうまく働いているので、ナトリウム濃度は一定に保たれています。一方、高齢者の腎臓は加齢とともに働きが衰えてくるので、ナトリウム貯留能が低下し、尿から必要な...

連鎖倒産の増加は景気後退のシグナルか。

<2024年に入り、近年あまり見られなかった連鎖倒産が増加している。連鎖倒産のリスクが高いのは、どのような業種なのだろうか?人手不足の現在は、人手不足倒産も増えている。建設業と運輸業は手形取引も多く、また人手不足倒産も増えており、連鎖倒産に注意すべき業種と言えるのではないだろうか。みんかぶプレミアム特集「資産防衛白書」第2回ーー。 連鎖倒産の件数が増加中  企業の栄枯盛衰は世の流れと言うべき面があります。ただしコロナ禍の中で、雇用の維持を目的にどんな企業であっても潰さない、との政府の強い意志を背景に、ゼロ・ゼロ融資などを受けて、経営状態が厳しい企業も延命がなされました。しかしコロナ禍が明け、様々な支援制度が終わると、延命企業の破綻が生じています。   また東京商工リサーチによると、2024年に入り連鎖倒産が増加しています。『2024年1~8月の連鎖倒産は、370件に達した。前年同期は288件で、約3割(28.4%増)の増加だ。』と発表されています。  連鎖倒産の増加は、近年あまり見られなかった現象です。連鎖倒産の増加=景気後退のシグナルとも考えられ、コロナ禍明け以後、賃上げも進み回復が続いた日本経済は、回復が一服する可能性が生じています。 連鎖倒産への耐性があるのはこんな業態  コロナ禍の中で、休業と引き換えに外食業界に多額の支援金が投じられました。コロナ禍明け後、外食業界の倒産が続いています。しかし外食業界は個人客相手のB2C事業のため、連鎖倒産の耐性が高い業種です。仕入れ先の倒産があっても、支払先の倒産であるため企業経営へのダメージは限定的です。   直近では洋菓子店や美容院の倒産増加が話題となりましたが、洋菓子店も美容院もB2C事業であり、連鎖倒産の耐性が高い業種となります。   このため、足元で倒産が増えている業種=連鎖倒産の増加が見込まれる業種、という構図には必ずしもならない点は注意が必要です。 連鎖倒産リスク高いのは…ワースト5!  かつて連鎖倒産といえば、手形が落ちない、というのが典型的なパターンでした。既に手形の利用は大幅に減少しているものの、手形を多く利用する業界はその仕組み上、連鎖倒産が発生しやすい状態に変わりはありません。   東京商工リサーチの調べでは2023年時点で手形の利用が多い業界のベスト5は以下と...

習近平氏の周囲に経済テクノクラートはいないのか。

<中国のネット上で最近話題になっているのは、広東省の1500社余りの工場が内陸の四川省に移転させる計画が進行中だ、という噂話だ。もし本当なら、広東省40年以来の大産業移転計画ということになる。  あながち単なる噂と笑い飛ばせないのは、毛沢東時代も、沿海部の国家基幹産業を旧ソ連の核の脅威から守るという名目で強引に雲南など内陸部に移転する三線建設政策をとったことがあり、毛沢東の政策を模倣してきた習近平ならばやりかねない、という見方があるからだ。  9月下旬に人民銀行が発表した大規模金融緩和政策、10月12日に財政部が発表した推計6兆元規模の財政出動、さらに現在パブリックコメントが募集されている民営経済促進法案の立法の動きなど、「経済軽視でこの10年あまり政権を運営してきた習近平らしからぬ」景気浮揚政策パッケージが立て続けに打ち出されており、その結果、外資による中国株ETF乱高下現象が引き起こされている。  この動きから、ひょっとすると改革開放逆走路線をとってきた習近平が温家宝ら長老の叱責を受けて、心を入れ替えて経済政策の軌道を元の改革開放路線に回帰させるつもりではないか、という期待をいう人もいる。だが、もし三線建設のようなことをまたやり始めるのだとしたら、やはり習近平の目標は計画経済時代への回帰ではないだろうか、と人々が疑心暗鬼になったので、この噂は大きく拡散している。  10月15日に、中国のSNS上で、沿海部広東1500企業が内陸の西南地域の四川に移転する、という情報が流れはじめた。アカウントネーム「木心」の投稿によると、「広東省1500社の工場が四川に移転するらしい。この措置は巨大な意思を静かな湖に投げ入れるような激しい波紋をひきおこすだろう」という。  1500社の中には具体的に恵州TCL、聯想、小米、格力電器、長虹電子、海爾、華為といった有名ハイテク企業の名前が挙げられていた。  これが単なる噂と言い切れないのは、9月25日、上海の金融ハイテク関連のネットニュース・財聯社が、「国家は企業を東部から中西部に移転させるよう主導している」と報じていたからだ。「四川省は、党中央が国土空間計画に名を連ねる唯一の戦略的後背地とみなしている」とも。  新京報の10月13日付報道によれば、9月25日に党中央、政府が打ち出したハイクオリティ促進産業政策についての解説の中に、資金...

「世界を見れば「反中」の国はそんなに多くない」とはケタ違いの認識のズレだ。

< 日本が思っているほど「親米」「反中」の国は多くない  アメリカ、中国は「超大国」ですが、日本はあくまでも「大国(地域大国・非超大国)」です。これは卑下しているわけでは全くありません。規模とポジションについての誇りある適正な自己認識です。また、「アメリカと常に足並みをそろえてさえいれば苦労しない」とか「アメリカのやることをスケールダウンして、何分の一、何十分の一レベルで真似をして追従していれば間違うことはない」などと思い込むのも危険です。  たとえば2022年2月末から発生したロシアによるウクライナ侵攻(宇露戦争)においては、欧米が日本に対して「一緒に足並みをそろえてロシアに圧力をかけてくれ、ウクライナを支援してくれ」と要請してきます。これに応えていれば何となく「やっている感」は出ますが、本来、日本がやるべきことはそれに加えて他にもあるはずです。 たとえば中国は、宇露戦争(中国側はウクライナ危機と称しています)の影で、欧露米の全世界的プレゼンス低下を鋭く見極め、中央アジア、南米や中東との結束を強化し、経済協力を表明するなど結びつきを強化していました。  ASEAN諸国のうち重要な国を狙った友好の一手を打ちつつ日米と連携するフィリピンとの対立を深めることでASEAN内の離間工作を進め、冷え切っていた中豪関係も温め直しました。日本も2022年5月に入ってから岸田首相がASEAN3カ国を歴訪するなど「対中牽制」とみられる動きを見せましたが、まだまだ中国の全地球規模での巧みな一手には及ばない範囲にとどまっています。  日本が思っているほどには、世界各国の「親米」「反中」度合いは高くはありません。むしろ「親中」でなくとも「反米」だったり、先に述べたように国連で何らかの採決を取る際には中国と足並みをそろえたりという関係性を、中国はアフリカを中心に構築しつつあります。 自由主義陣営が中国に負ける  2019年10月、人権問題を扱う国連総会第三委員会で欧米が中国によるウイグル人弾圧非難声明を出した際に、賛成したのは23カ国で、アジアでは日本だけが賛成したのが現状です。一方、中国を支持した国はロシアやパキスタンなど54カ国。数だけで言えば、国連での数の戦いで自由主義陣営はすでに中国に負けている状況です。  続く2021年6月の国連人権理事会で発表された新疆、香港、チベットの人権状況...

日本経済は複雑性を大事にすべきだ、というドイツ人の指摘。

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<私は大学生の頃に日本に興味を持つようになった。その頃は、漢字やお寺、建築物が中心だったが、特に興味を持ったのは漢字で、日本語クラスにも入った。初めて訪日した時のことは今でも忘れることができない。日本経済および経営の研究者として、今でも年に数回訪日するが、そのたびに気になっていることがある。それは、自国への不平不満─「日本はもうだめだ」「日本には希望がない」─を口にする日本の友人や知人が少なくないことだ。 (注:文中「私とは」ウリケ・シェーデ ウリケ・シェーデ(Ulrike Schaede)氏でカリフォルニア大学サンディエゴ校 グローバル政策・戦略大学院 教授。ドイツ出身。9年以上の日本在住経験を持つ。日本の経営、ビジネス、科学技術を社会政策と経営戦略面から研究し、サンディエゴと日本をつなぐ研究所「Japan Forum for Innovation and Technology (JFIT)」のディレクターも務める。一橋大学経済研究所、日本銀行などで研究員・客員教授を歴任。著書に『シン・日本の経営』(日経BP)など。)  メディア報道もこの悲観論に加担してきた。「失われた30年」という言葉はその典型だ。技術の進歩によって外国語が瞬時に翻訳される今日、こうした否定的な論調は瞬く間に世界中を駆け巡っていく。「同じ話」が繰り返されれば、真実でなくとも次第に社会通念として受け入れられてしまう。  日本はさまざまな社会課題を抱え、経済成長率や経済規模で再び「ナンバーワン」になることは困難である。だが、一人の日本研究者として日本の皆さんに伝えたいことは、日本にはまだ希望があり、世界の先駆者として、経済的繁栄に向け、よりバランスのとれた「新たな道」を切り拓いていける可能性を秘めた国であるということだ。  そしてそれは、経済活動、政治的安定、社会的結束と企業の成功とのバランスを図った独自の着地点を探りながら、他国のモデルや制度に惑わされず、着実かつ持続可能な経済成長を追い求める国の姿として、これからの世界の新しいモデルになるかもしれない。  「失われた30年」を経験してもなお、日本は世界4位の経済大国である。その理由は、グローバルな技術リーダーであることに変わりはないからだ。米ハーバード大学のグロースラボが公表しているデータによれば、「経済複雑性ランキング」で日本は過去30年にわ...

山東省の人工島で新石油精製プラントが稼働し始めたが、目的は何だろうか。

<中国の山東省煙台市の人工島に巨大な石油化学コンビナートを建設する「裕龍島プロジェクト」。その第1期工事のプラントが部分的に完成し、9月25日に生産を開始した。  裕龍島プロジェクトは山東省政府の「一号工程」と呼ばれる最重点事業であり、2020年10月に着工した。それから3年を経て、年間生産能力1000万トンの石油精製プラントが今回稼働。第1期の未完成のプラントも、2024年末までに生産準備が整う予定となっている。  プロジェクトは2期に分かれており、第1期では総額1168億元(約2兆3855億円)を投じて年間生産能力2000万トンの石油精製プラント、同300万トンのエチレン・プラント、同300万トンの混合キシレン・プラント、それらの貯蔵・輸送インフラなどを建設する。 小規模製油所の乱立が背景  第2期のプラントも第1期と同規模を計画しており、完成時の石油精製能力は(両期の合計で)年間4000万トンに達する。  山東省政府が裕龍島プロジェクトを計画した背景には、同省が全体としては中国有数の石油精製能力を持ちながら、個々の製油所の規模が小さく、立地も分散しているという長年の問題があった。  小規模の製油所は(原油相場や景気変動に対する)リスク耐性が低いうえ、生産品目に占める(低付加価値の)石油精製品の比率が高く、(高付加価値の)石油化学製品の比率が低い。そのため多くの製油所が綱渡りの経営を迫られており、9月14日には山東省の2つの小規模製油所が裁判所の破産宣告を受けた。  山東省政府は以前から自省の石油化学産業の構造に危機感を持ち、2018年に「上大圧小、減量置換(大規模コンビナートにリソースを集中して小規模製油所を減らし、生産能力の削減と置き換えを進める)」という方針を打ち出して、裕龍島プロジェクトをスタートさせた。  巨大コンビナートの新規稼働は、中国の生産能力過剰に拍車をかける可能性がある。同プロジェクトの建設と同時並行で、山東省内の年間生産能力300万トン未満の小規模製油所は閉鎖・集約が進められた。省政府系のネットメディア「中国山東網」の報道によれば、裕龍島プロジェクトの第1期のプラントが生産を始めても、山東省全体の石油精製能力は年間696万トン減少するという。 中国の石油需要は頭打ち  とはいえ、最近の原油相場や中国の石油需要のトレンドを考慮すると、裕龍島プ...

これが独裁専制主義国家の実態だ。

<ウクライナ文化情報省傘下の戦略コミュニケーション・情報安全保障センターは18日、北朝鮮兵がロシア国内の訓練場で装備品を受け取っているとする動画をSNSで公開した。 ウクライナ政府は、ロシアとの戦線への北朝鮮兵投入に危機感を強めている。  北朝鮮兵が露極東の訓練場で装備品を受け取っているとされる動画は約30秒で、迷彩服姿の兵士とみられる数十人が並んで荷物を受け取る様子を捉えている。朝鮮語を話す音声も聞こえる。同センターは、露極東の訓練場で72時間以内に撮影されたと説明している。  ウクライナ国防省の情報機関「情報総局」のキリロ・ブダノフ局長は17日、約1万1000人の北朝鮮兵が11月1日までに露東部での訓練を完了し、最初に2600人が露西部クルスク州に派遣されるとの見通しを示した。軍事オンラインメディア「ザ・ウォー・ゾーン」のインタビューで明らかにした。ウクライナ軍が8月に越境攻撃を始めたクルスク州では、露軍も反攻を本格化させている。  ウクライナのアンドリー・シビハ外相は18日、X(旧ツイッター)への投稿で、「北朝鮮は兵器と人員でロシアのウクライナ侵略を支援している。雇われ兵ではない正規部隊で、ロシアは捨て駒として使うつもりだ」と指摘した。「ロシアは北朝鮮を戦争の当事者として巻き込むことで、侵略を拡大させている」と非難し、国際社会の対応を求めた。  米国のカート・キャンベル国務副長官は18日、北朝鮮がロシアに協力し、大規模派兵を進めているとされることについて「国際政治の中で不吉な展開だ」と述べ、危機感をあらわにした>(以上「読売新聞」より引用)  読売新聞の見出しには「 ロシアに派遣された「北朝鮮兵」の動画、ウクライナ当局が公開「露は捨て駒として使うつもりだ」 」とあるが、なんのつもりであれ、金正恩氏は国民を一人当たり約400万円でロシアに売り飛ばしている。 「政治とは国家と国民を護るためにある」という近代国家観からすると、金正恩氏は政治家として失格というしかない。国民を飢えさせるだけでなく、死地へと赴かせるとは、金正恩という独裁者に掛ける言葉は何もない。一日も早く金正恩体制が終わることを願うだけだ。  しかし国民をロシアへ売り飛ばしているのは北朝鮮だけではないようだ。未確認情報だが、中共政府は人民解放軍兵士を数万人もロシアへ派兵し、その多くは既に戦死しているとい...

「かく(確)トラ」で決まりだ。

< 「ハリス氏優勢」は本当か?  2024年のアメリカ大統領選挙の投開票日まで残り1ヵ月を切った。4年前と同様に大接戦となっている。   (エマーソンやサスケハナなど)最新の4つの世論調査では、ハリス氏が2~5ポイントリードし優勢だ。「もしハリ」ならばアメリカ史上初の女性大統領の誕生となる。男女平等が叫ばれるアメリカにおいても女性大統領は誕生したことがないから、ハリス大統領の誕生は歴史的な勝利となる。   その一方でトランプ氏の人気は4年前と比べ依然衰えていないとも感じている。特に一部の激戦州ではトランプ氏のリードを示す世論調査もあり、両者はまさに拮抗と言えるだろう。   そんな中、日本の報道の主流となっている「ハリス氏優勢」そしてトランプ氏のマイナス面ばかりがフィーチャーされるニュースには少し違和感を覚える。  一つにはハリス氏自身の掲げる政策が見えづらいというのがある。選挙対策で慌てて国境の視察をしていたが、移民対策を任されていた副大統領時代にできなかった(悪化した)ものを、これから新たな4年で改善しようというのはいくらなんでも無理がある。 民主党寄りの州(ニューヨークやカリフォルニアなど)の若年層を中心にハリス氏が支持されているのは事実だ。  初の女性大統領誕生への期待も高い。これら青い州でこの選挙戦を俯瞰して見ていると、勝利の女神はハリス氏に微笑んでいるかのように感じる。ひとえにテイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュなどZ世代に人気の有名人が次々とハリス支持を表明したことが若い有権者に影響を及ぼしているのもあるだろう。   しかし似たようなことが起こった2016年の大統領選では、多くのセレブ支持を得ていたヒラリー・クリントン氏が敗北した。よってセレブのエンドースメント(支持表明による応援)は選挙戦においてはそれほど大きな効果をもたらすものではないかもしれない。 大統領選直前、米現地の空気感  青い州の都市部ではハリス氏支持が目立つと話したが、そんな青い州でも郊外に行くとトランプ氏支持を唱える有権者が依然多いと感じる。  白人の高齢者が主な層だが、中には若年層や有色人種の人もいる。そんな彼らになぜトランプ氏を支持するのか聞いてみると、国の改革・変革が必要なのだと口をそろえる。  バイデン政権下で深刻化したインフレなど経済問題と移...

崩壊する経済に対して、中共政府は処方箋を書けないでいる。

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< アメリカの凌駕するためのツール「一帯一路」構想  中国の「一帯一路」構想は、習近平国家主席が2013年に提唱した「巨大経済圏構想」、「経済対外拡張構想」です。もちろん中国が公言することはありませんが、経済権益をベースにした覇権主義的な構想であり、2049年までにアメリカを凌駕(りょうが)する超大国化を目指す中国の具体的な手段で、経済的権益の拡大と表裏一体でもある軍事的な影響力の拡張をも見据えた構想です。  北京から欧州までを結ぶ地上の「シルクロード経済ベルト(一帯)」と、上海からインド洋を通って欧州に至る「21世紀海上シルクロード(一路)」という帯状の経済圏を想定し、ガスや石油のパイプライン、鉄道、道路、経済回廊、港湾、発電所、電力網などのインフラ建設を融合させた概念です。  沿線上にある、実に65カ国がこの「一帯一路」構想に参画し、中国はこの地域のインフラに影響力を持つことで、産業・経済面の存在感を増そうというのはもちろん、軍事安全保障上も、あるいは外交目的でもこのフレームをうまく使っていこうという思惑があります。 地理的概念を大幅に拡張させる中国  そもそも「シルクロード」とは、紀元前から15世紀まであったとされるユーラシア大陸の交易路であり、それにちなんで名付けられたものが中国の「(現代版)シルクロード」です。しかし2024年現在、その名称は何だったのかと疑問をもちたくなるほどに、中国は太平洋を超えて中南米諸国と一帯一路への参画協定・覚書を交わすなど、地理的概念が大幅に拡張してきています。  近年、北極海ルートも中国の対露バーゲニングパワー増大で抑えられるようになってきましたし、中南米という「(もはやシルクロードという地理概念を超越した)飛び地」でも20カ国以上が支持・参画の表明をしています。  これを受けて、日本が中核的に関与するCPTPPや、米国が主導するブルー・ドット・ネットワーク、IPEF、先日のインドが提唱したIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)等々のフレームは、一帯一路のカウンターとして登場してきた側面もあります。 つまり、「一帯一路」構想そのものが、北京中央にとっての重層的な覇権影響力拡大の手段であり、軍事経済の統合拡張的発想になっているわけです。  そうした巨大な仕掛けの「一帯一路」が、一次元下のレベルの概念である経済安全保障を内包するの...

希望なき選挙。

<時事通信が17日公表した、石破茂内閣発足後初の支持率が28%と、いきなり「危険水域」に突入したことが、永田町に衝撃を与えている。衆院選(27日投開票)が中盤を迎えるなか、報道各社の情勢調査で、石破首相(総裁)率いる自民党は15年ぶりに単独過半数(233)を割り込む可能性が指摘されている。石破首相の「変節」や「豹変(ひょうへん)」、安倍晋三元首相を「国賊」と罵倒した人物の入閣などが影響しているのか。  「何かの間違いかと思った。発足直後で政権末期レベルのひどさだ」 自民党ベテラン議員は、時事通信の調査結果に驚き、こう語った。 保守系議員は「場当たり的に旧安倍派などを切り捨てた反動だ。閣僚・党役員人事や、派閥裏金事件をめぐる『非公認』『比例重複せず』など、十分な討議や説明を尽くすべきだったのに、不透明なまま決断を下し、党内外に怒りと失望が拡大した」と断じた。   永田町を激震させた時事通信の調査は11~14日、全国の18歳以上の男女2000人に個別面接方式で行ったという。2000年以降、発足直後に28%という支持率は、あの森喜朗内閣(33・3%)を下回って過去最低という。 実は、日経新聞・テレビ東京が今月1、2両日に実施した緊急世論調査でも、内閣支持率は51%と、現行の調査方式を導入した2002年以降、内閣発足時の支持率として最低だった。   石破首相は17日、長野市の街頭演説で、大型の補正予算編成に取り組む意向を示し、「物価上昇に負けない賃金の上昇を必ず実現する。物価高に苦しむ人への給付や新産業に対する支援を行う」と語った。 衆院選は中盤戦に突入したが、挽回できるのか。   ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「石破首相は総裁選で『すぐ解散しますという言い方は、私はしません』と公言しながら、早期の解散総選挙を決断した時点でつまずいた。改革を掲げて、国民世論の高い人気を背景に首相になっただけに、失望の反動も大きい。石破首相の党内基盤は弱く、総裁選で後押しを受けた菅義偉副総裁、岸田文雄前首相、森山裕幹事長などの意向に配慮しつつ難しいかじ取りを強いられる。衆院選の結果次第では、より厳しい局面に直面するだろう」と指摘した>(以上「夕刊フジ」より引用) 「 いきなり危険水域〝28%〟石破内閣支持率 時事通信調査 森喜朗内閣下回る「何かの間違いかと...