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民主的な手続きを排除した、民主党の大統領候補レース。

< 「トランプvs.ハリス」の行方  先週末から始まったパリ夏季オリンピックが、連日盛り上がりを見せている。  だがその間にも、アメリカでは激しい大統領選のデッドヒートが続いている。しかも、このところの動きがめまぐるしい。簡単に整理すると、以下の通りだ(いずれもアメリカ東部時間)。 6月27日: ジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領によるTV討論会で、バイデン大統領の「老化」が顕著になる 7月11日: バイデン大統領がNATO(北大西洋条約機構)首脳会議の関連で、ウクライナのウォイロディミル・ゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と紹介。続く会見では、カマラ・ハリス副大統領を「トランプ副大統領」と発言 13日: トランプ前大統領が撃たれる 15日~18日: 共和党大会開催 15日: 共和党がJ・D・バンス氏を副大統領候補に選出。同氏が受諾演説 18日: 共和党がトランプ氏を正式に選出。同氏が受諾演説 21日: バイデン大統領が選挙戦からの撤退を発表、ハリス副大統領を指名 22日: ハリス副大統領が民主党の大統領候補にほぼ内定 8月1日頃: 民主党がハリス氏を正式に大統領候補に決定 7日頃: ハリス氏が副大統領候補を指名 19日~22日: 民主党大会 9月10日: 2回目のテレビ討論会(トランプ氏vs.ハリス氏) 11月5日: 大統領選挙、連邦議会選挙  この中で、私は二つの大きなポイントがあると見る。一つは、来月の上旬に、ハリス氏が誰を副大統領候補に選ぶかだ。  これについて、ワシントンのある専門家に聞くと、こう明言した。 「ハリス副大統領は、ペンシルヴェニア州知事のジョシュ・シャピロ氏を、副大統領候補に指名するだろう。51歳の敬虔(けいけん)なユダヤ人だ。  民主・共和の激戦州の出身であること、これまでの選挙戦で圧倒的な強さを見せていること、行政官としての実務能力の高さが折り紙付きなこと、そして何より、ハリス副大統領が深い信頼を寄せている政治家だからだ。ハリス副大統領とウマが合う政治家は、民主党内で意外に少ない。  もしもシャピロ知事が副大統領に指名され、民主党が大統領選に勝利したら、ハリス政権というよりも、大統領と副大統領が一体となって国政を進める『ハリス&シャビロ政権』となるだろう。それどころか、事実上のシャピロ政権となるかもしれない。つまり、ハ

阿部詩選手の嘆きを無駄にしてはならない。

<詩は勝っていた? パリ五輪の柔道女子52キロ級(28日、シャン・ド・マルス・アリーナ)の2回戦で、連覇を狙った阿部詩(24=パーク24)が世界ランキング1位のディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)に一本負け。金メダル大本命の敗戦は、日本中に衝撃を与えた。   技ありと指導2つを奪って圧勝ムードが漂う中、相手の捨て身技で畳に叩きつけられた。多くの柔道関係者が「絶対に勝つ」としていた女子のエースはなぜ敗れたのか。バルセロナ五輪95キロ超級銀メダルの〝元暴走王〟小川直也氏(56)は「詩選手はかわいそうのひと言。これも審判の問題になるけど、指導2をもらっていた時に、相手に偽装の技があって、技がすっぽ抜けた場面があったでしょ。本来ならあそこで、相手の反則負けだった。今のルールなら、あれは明らかな反則。審判がおかしいという意味では、あそこの判定は問題」と指摘する。   確かに指導2つをもらっていた相手の背負い投げは中途半端な形で「偽装攻撃」、いわゆる「かけ逃げ」ととられてもおかしくなかった。これで指導をとられれば、相手は3つ目の反則で試合は詩の勝ちで終わっていたのだ。小川氏は「あれは誰が見ても、10人が10人見ても反則」と言い切る。   前日の男子60キロ級では永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)が絞め技で一本負けした際に、主審が「待て」をかけたにもかかわらず、相手のガリゴス(スペイン)が絞め技を続けて永山を失神させた。これが「大誤審」と波紋を呼んだが、詩の試合でも〝誤審〟があったという。   では、なぜ審判団は偽装攻撃を見逃したのか。小川氏は「(審判に)詩選手への期待感があったのでは。詩選手は強すぎるということで、きれいに技で投げて決めてほしかったのかもしれない。不運に不運が積み重なって、大きな悲劇が生まれたと思うね」と推察する。  決して力負けではないだけに悔しさは募る。詩は今後について「落ち着いてから考えたい」と語るにとどめたが、元暴走王は「ビッグカムバックを望みたい。彼女は泣き崩れたけど、4年後に取り返すチャンスをもらったと思ってもう一度チャレンジしてほしい」とエールを送っていた>(以上「東スポ」より引用) 「 阿部詩は勝っていた? 一本負けの2回戦…審判が見逃した〝反則〟を小川直也氏が指摘 」との見出しを見て腑に落ちた。素人目に見ても阿部詩選手は勝っていたと思っ

検察の「自白誘導」の長期未決拘留と、それを許す裁判所の「人権意識」の欠落。

<凄い裁判が始まろうとしている。KADOKAWA前会長が人質司法で精神的肉体的苦痛を受けたとして、国相手に2億2000万円の損害賠償を求めた裁判だ。五輪汚職で逮捕・起訴され、今は保釈中の身。この裁判は自身の刑事裁判とは別の提訴だが、どこが凄いのか。人権派のオールスター弁護士をズラリと揃え、司法の場でまさしく、司法の不正を問う訴訟である点だ。勝てば、人質司法は変わる。少なくとも世論は喚起される。権力と闘う言論人・出版人としての、思いのたけを聞いた。  ──国を訴えた記者会見(6月27日)、大仕掛けに驚きました。弁護団長の村山浩昭さんは袴田事件で再審を決めた裁判官で、人権派法曹人の大御所です。その他の弁護士も無罪請負人の弘中惇一郎さん、これまた人権派弁護士の論客、海渡雄一さん、喜田村洋一さん、護憲で政権とも闘った伊藤真さん。これだけのメンバーをそろえ、国内だけでなく、国際世論に訴えるために日本外国特派員協会でも会見し、英訳の本まで用意された。  その辺がわかっていただけるとうれしいです。  ──会見の手ごたえはどうですか?  弁護士の方は「よかった」と言ってくださっていますが、この裁判は大変です。訴えている相手が司法なのですから。日本では捜査当局が裁判所に逮捕状を請求する。勾留か保釈かを決めるのも裁判所です。私は226日間も勾留されて、その間、3度倒れて、2度入院した。このままでは死ぬと思ったが、拘置所の医師からは「生きている間はここから出られませんよ。死なないと出られないんです」と言い放たれた。私が闘うのは、こうした人権を無視した人質司法の違憲性で、まさしく、ヒューマニズムをおろそかにする裁判所の人権の扱いをただすために裁判所で争うのです。前例がなく、長期の闘いになると覚悟しています。  ──人質司法違憲訴訟という公共訴訟だけでなく、人質司法禁止法など、二の矢三の矢を準備され、複合的な闘いを視野に入れている。80歳の角川さんが長い闘いを覚悟した理由は何ですか?  もちろん、検察に対する怒りもありますが、これからの人生、私に何ができるだろうと考えた。私たちは自分たちが生きる社会をどのようにしたいのか。この問いかけに真剣に答えなければいけないと思ったのです。  ──それは出版社を背負ってきた「言論人」としての宿命ですか?いつの時代もそういう闘いがあった。  宿命って言葉で

「確トラ」を論じる評論家を評価する。

< バイデン大統領の「惨めな退場劇」  ジョー・バイデン大統領が米大統領選から撤退し、代わりにカマラ・ハリス副大統領を推薦した。米民主党の「統治能力のなさ」を象徴するような事態である。バイデン政権に付き従っていた岸田文雄政権にとっても、大きな誤算だ。日本は大丈夫か。  バイデン氏の認知能力の衰えは、何年も前から指摘されていた。言葉の言い間違いは数知れず、最近は、よく知っているはずの人に会っても、思い出せないケースもあったという。側近たちは当然、分かっていたはずだ。  撤退論は早くから出ていた。たとえば、昨年9月12日付のワシントン・ポストは「バイデン氏は2024年に立候補すべきではない」という著名コラムニスト、デイビッド・イグネイシャス氏の記事を掲載した。同氏は大統領の友人であり、そのコラムは「大統領が必ず目を通す」と言われている。  にもかかわらず、大統領選が3カ月後に迫ったいまになって、撤退せざるをえなくなったのは、本人もさることながら、大統領を説得しきれなかった民主党の責任が大きい。しかも、対抗馬のドナルド・トランプ前大統領が狙撃された直後という最悪のタイミングだった。  結果として、トランプ陣営に「これ以上はないエール」を送ったうえで、最後はコロナにも罹患し、支持者から見放された形で退場せざるをえなくなった。まさに「惨めな退場劇」である。いったい、どうしてこんな形になってしまったのか。  米ペンシルバニア大学ウォートン・スクールの組織心理学者、アダム・グラント氏は7月14日付のニューヨーク・タイムズに「恐怖心と無駄な試みと分かっていること。それが集団思考を引き起こして、側近たちの口を閉ざしてしまった」と分析している。  撤退論を述べたところで、どうせ大統領は耳を貸さない。かつ、そんなことを口にすれば、自分の忠誠心を疑われる。そんな無駄なことをするより、みんなと調子を合わせて黙っていたほうがいい。側近たちには、そんな思惑が蔓延していたのである。 自分の利益を優先した民主党議員たち  同氏によれば、これまで「集団思考(groupthink)」という現象は、自分の正直さよりも、組織としての調和を優先するほど人々が一致団結しているときに生じる、と考えられていた。ところが、今回はまったく違った。団結心の強さではなく、恐怖心と自己保身が党内を支配していた、という。  そ

泉下のクーベルタン男爵はバリ五輪の現実に、いかなる感慨を持つだろうか。

<セレブも多数参加して開会式を盛り上げた。クライマックスの聖火点火で、エッフェル塔下のステージに現れたのはカナダの女性歌手セリーヌ・ディオン。愛の讃歌を歌い上げた。  開会式のアトラクションは盛りだくさんで、まず選手の水上パレードがスタートすると、川岸ではディオールのドレスを身につけた米歌手レディー・ガガがダンサーを従えて踊りを披露。  フランスで活躍しているメゾソプラノ歌手マリーナ・ヴィオッティとメタルバンド「ゴジラ」がコラボし、人気歌手アヤ・ナカムラもヒット曲「ジャジャ」で盛り上げた。  ダンスフロアでは、ユーロビートにLGBTのアイコン、DJバーバラ・ブッチも登場。ジョン・レノンの名曲「イマジン」の演奏では、水上でピアノが激しく燃え上がる演出で観客を仰天させた。  21年東京五輪で13分の大演説をして「長すぎる」と批判を浴びたのがIOCのトーマス・バッハ会長。注目のあいさつは、今回は7分45秒程度。ネット上では「これでも最近では最短だ」と微妙な評価を受けた。  聖火ランナーでは、フランス元サッカー代表のジネディーヌ・ジダン氏、テニス全仏オープン14勝のラファエル・ナダル、米女子テニスのセリーナ・ウィリアムスや米陸上のカール・ルイス氏らが参加した>(以上「夕刊フジ」より引用) 「 豪華セレブがパリ五輪開会式に華 セリーヌ・ディオン、レディー・ガガら圧巻パフォーマンス 「長すぎ」批判のバッハ会長は〝控えめ〟挨拶 」だったようだ。他ならぬバリ五輪の開会式のことだ。  昔の軽口に「挨拶(演説)と女性のスカートは短いほど良い」というのがあった。今そんな軽口を叩こうものなら飛んでもない批判の集中砲火を浴びるだろう。しかし開会式も「ほどほど」が良いと思う。意味もなくミュージシャンが登場して歌声をサービスするのも空調の効いた屋内で楽しむのなら何の文句もないだろう。しかし真夏のパリの屋外で長々と鑑賞するものではない。  いや、そもそもオリンピックを四年ごとに開催する意味があるのか、という疑問すら覚える。各競技には各競技ごとに国際大会があって、オリンピック相当の世界レベルのパフォーマンスを人々は毎年のように観ている。そうした各種競技の総合版がオリンピックに成り下がっているが、元々のオリンピック精神はそんなものではなかったはずだ。  現在もウクライナとガザ地区では戦火が止まない。む

危険極まりない原発の廃炉を一日も早く決定せよ。

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<日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県敦賀市)を巡り、原子力規制委員会の審査チームは26日の会合で、原子炉建屋直下に活断層が通る可能性があるとして、原発の新規制基準に適合しないと判断した。規制委が今後、正式に不適合と決定する見通しで、再稼働は認められない。不適合となれば国内の原発で初となる。日本の規制で商用炉が再稼働できなければ史上初のケースで廃炉の可能性も出てきた。(渡辺聖子、山下葉月)  敦賀原発 福井県敦賀市に立地。2号機(出力116万キロワット)は1987年に運転を開始し、東日本大震災後の2011年5月から停止。1号機(35万7000キロワット)は1970年の運転開始日に開幕した大阪万博に送電し「原子の灯」と宣伝した。現在は廃炉作業中。3、4号機増設計画があり、敷地が造成されている。 ◆原電側は追加調査を要望したが…  会合で、原電側は「追加調査して申請内容を補正したい」などと抵抗したが、審査チームの結論は変わらなかった。規制委は31日に開かれる定例会合でチームの結論を議論し、村松衛社長から追加調査の説明を求めるかどうかを決める。ただ、チームは「同じ地点を調べても結論は変わらない」との認識を示し、再稼働は困難だ。  福井県内の会合に出席していた村松社長は報道陣に、廃炉について「考えていない」とした上で「資料が不十分、不正確なところがあるとの指摘の中で、追加調査をお願いした」と説明した。 ◆「K断層、原子炉建屋直下まで延びている可能性あり」  新基準では、原子炉などの重要施設を活断層の上に設置することを認めていない。審査チームは、2号機から北約300メートルで見つかった「K断層」について、 (1)将来動く活動性があるかどうか (2)建屋直下まで延びる連続性があるかどうか を議論した。原電は地層の年代や性状などの調査結果を根拠にして、(1)(2)とも否定した。  これに対し、審査チームは5月の会合で活動性について原電の主張を退け、「活動性を否定することは困難」との結論を出していた。この日の会合は連続性を議論し、審査チームは「原電の評価の信頼性は乏しく、連続する可能性は否定できない」と指摘した。その上で新基準に適合しないと結論付けた。  敦賀原発を巡っては、規制委の別の専門家チームが2013年に2号機直下を走る断層を活断層とする報告書をまと

自民党は女性の国会議員を一割から三割を目指すというが、

<《冗談にも程がある》--。岩手の政界関係者からはこんな声が漏れているという。自民党岩手県連(藤原崇会長)が女性議員を増やすために立ち上げた「女性議員の育成、登用に向けた基本計画実現検討会議」に対してだ。  自民党本部は党所属国会議員のうち、女性の割合を現状の約1割から3割に引き上げる目標を設定しているが、同県で自民党籍を持つ議員182人中、党員の女性議員は16人で1割にも満たない。「女性活躍」を掲げる党の方針などから女性議員を懸命に増やそうというわけで、10日ほど前に初会合が開かれたのだが、ハードルが高い理由としてささやかれているのが、今も問題視されている県選出の国会議員のスキャンダルだ。  県連会長の藤原氏(衆院岩手3区)といえば昨年11月、党青年局近畿ブロック会議後に開かれた和歌山県連主催の会合に「党青年局長」の肩書きで出席。会合には露出の多い衣装を着た女性ダンサー数人が招かれており、ダンサーに口移しでチップを渡す参加者もいるなど「ハレンチ懇親会」だったことが報じられ、藤原氏は青年局長の辞任を余儀なくされた。  このため、県民からは「ハレンチ会合を止めなかった人がいる組織に入りたいと思う女性なんているのか?」「まずは自分が辞職してけじめをつけるの先ではないか」といった声が出ているという。 ■広瀬めぐみ参院議員にはサックス奏者との不倫報道  そして、「こういう女性議員がいるから、なり手がいなくなる」と指摘されているのが、今年2月、週刊新潮などにサックス奏者との不倫疑惑を報じられた広瀬めぐみ参院議員(58=岩手県選挙区)の存在だ。  記事によると、広瀬氏は昨年10月の臨時国会開会中、議員会館から赤いベンツを自ら運転して東京・青山に向かい、サックス奏者を載せた後、都内ホテルへ。翌日開かれた参院予算委員会に出席したものの、何度もあくびをして終始眠たい様子だったという。  広瀬氏は記事の事実関係を認めて謝罪する展開となったわけだが、県民らは「不倫疑惑の女性議員が仕切る組織に喜んで入る女性がいるわけがない」とカンカンのようだ。SNS上でもこんな投稿がある。 《ハレンチ懇親会に不倫疑惑。グダグダの組織を立て直すことが先でしょ。新しい女性が来たらどうなるのか》 《露出ダンサーをニタニタ眺める議員、不倫して国会でウトウトする議員。そんな緩んだ組織で議員になろうと思う女性がいるわ

米国民は極左で無能なハリス氏を選ぶのか、それともタフネゴシエーターのトランプ氏を選ぶのか。

< 米民主党がバイデンにバイバイ、大統領選から撤退決定  米国東部時間の7月21日、バイデン大統領は11月の大統領選から撤退することを表明しました。  まず、撤退と任期満了までは現職を継続するという書簡が発表され、続いてハリス副大統領への後継指名を推薦するとの意思が流れる、という順番でした。  タイミングとしては、6月27日のTV討論で体調不良が顕在化した後、頑張って単独会見をやったわけですが、状況は改善しませんでした。そんな中で、トランプ暗殺未遂があり、共和党大会がありという流れを「やり過ごす」ことになったのでした。  結果的には、この週末に「民主党大会での指名手続きの詳細」を決める事務方の会議がセットされており、それが延期になったという辺りで「タイムオーバー」になったと考えられます。  公表された内容としては、バイデンは孤独な決断をしたということになっていますが、これを額面通り受け取ることはできません。側近や家族が必死になって説得する中で、時間を要したというのが恐らく真相だと思います。  そうだとしても、このタイミングというのは十分に想定内でした。世界に数多くある「決められない中で時間が浪費」という決定のパターンと比較すると、まだましという格好です。 後継候補はカマラ・ハリス(現副大統領)で一本化。ただしオバマは…?  問題はハリスへの後継指名ですが、バイデンが明確に推薦を出したこと、それが批判されていないというのは、まあ想定内です。ですが、ハリスと同じカリフォルニアのリベラル人脈に連なる同州のニューサム知事がいち早くハリス支持を打ち出すなど、意外と党内の動きは「ハリス一本化」へ向けて動き出したようです。こちらは想定よりスムーズに動いています。  クリントン夫妻も即座に支持を表明していますが、彼らは直前まで「バイデン陣営への献金を」と言っていたので、一見すると掌返しという感じを受けます。ですが、バイデン陣営とハリス陣営は選挙資金という面では一体なので、全くそこに矛盾はないのです。  また、彼らが強く支持することによって、大口献金者のマネーが、この24時間に一気にハリスに流れ込むように誘導した、そんな見方もできます。  ちなみに、バラク・オバマはバイデンの撤退は歓迎したものの、ハリス支持は打ち出していません。この件ですが、かなり昔の話になりますが、ハリスがまだ上院

女性の経営者は犯罪を犯さない、という男性差別。

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< 組織では「単一的な正しさ」によって間違いが起きてしまう 「正しさ」を追求することによって組織的雪崩が引き起こされる現象について考えたとき、共通するのは、「正しさ」が単一的=固定的なものとして考えられ、それによってその「正しさ」を疑うことができない状況です。組織において「正しさ」が絶対的なものであるほど、なかなか疑うことができないものです。  疑うことができないとは言い過ぎかもしれません。しかし、自動車メーカーやビッグモーターなど、数々の企業不正の実例のように、こうした「正しさ」はある種絶対的なものとして考えられることも多く、そうした「正しさ」が組織的雪崩を引き起こす原因につながりかねないのです。  本来、どのような「正しさ」であっても、時代や場所が変わることによって変化していくはずです。あるいは、組織における「正しさ」であれば、自分たちの組織であれば疑われることがないにしても、他の組織であれば疑われたり、批判されたりすることもしばしばあるかと思います。ですから、こうした「正しさ」とは決して絶対的なものではなく、むしろ相対的なものなのです。 複数の人による「流動的な正しさ」にシフトチェンジすべき  企業倫理規範なども、組織において役員や社員がどう行動すべきかの見本を示すという意味で「正しさ」の象徴と言えるかと思います。しかし、時代や場所が変わっているにもかかわらず、この「正しさ」が変わらないものであれば、役員や社員は間違った行動を取ってしまうに違いありません。それは個人の行動が悪いのではなく、「正しさ」自体が時代や場所に照らして「危うさ」を抱えてしまっているからです。  優れた企業であれば、企業倫理規範も毎年見直して、どこを変えれば時代や場所に合った行動を役員や社員が取ることができるかをつねに考えていると思います。企業倫理規範だから「変わらないもの」なのではなく、つねに「変わるもの」であると意識しなければならないと言えます。  このような「正しさ」が単一的=固定的なものであったために生じたのが、ビッグモー夕ー社の不正請求事件です。この不正請求事件では、ビッグモーターの各工場において顧客から修理依頼があった車に対して、工場の従業員らが故意に自動車を傷つけることによって保険金を水増し請求していたことが問題となっていました。 ビッグモーターの保険金水増し請求には経営陣の

ハリス氏を持ち上げる日米主要マスメディアの怪。

< 政治家は権力をめざして闘う。そのために、「寝る」ことも厭わない。おそらくカマラ・ハリスはそうした権力欲にまみれた政治家らしい政治家と言えるのかもしれない。しかし、それが意味しているのは節操のない、自分の利益を最優先に考える最低の人物ということではないか。まるでドナルド・トランプ並みの強欲なのである。 ロイター通信が伝えるカマラ・ハリスの実像  2020年10月14日付のロイター電は「ファクトチェック」として、若かりしハリスがどのように政治的にのし上がったかについて書いている。 フェイスブックで共有された投稿において、当時、民主党副大統領候補だったハリスが、ウィリー・ブラウン元サンフランシスコ市長と写っており、「既婚の60歳(中略)ウィリー・ブラウン」と「29歳の愛人カマラ」と表現されていたことについて、ファクトチェックをしたのだ。  同じ写真が「ワシントン・エグザミナー」紙の2019年の記事に掲載された。同紙が出典、日付、場所を明らかにしていないオリジナルの写真には、フレームの左側に他の2人が写っているという。いずれにしても、ハリスは、後にサンフランシスコ市長を務めるウィリー・ブラウンと1994年から1995年にかけて交際していた。  1990年代半ばにハリスと交際していた当時、ブラウンは妻と10年以上別居していた。1995年に終わった2人の関係は秘密ではなかったが、「不倫」していたことは間違いない。当時、カリフォルニア州議会議長だったブラウンに取り入れば、「出世」という権力への階段が約束されていたようなものだった。 互いに利用し合う政治家たち  問題は、この不倫を足掛かりにして、政治的権力を得ることにハリスが成功したことだろう。「ワシントン・エグザミナー」によれば、二人は1994年春から交際をはじめ、ブラウンの豪華なパーティーやセレブリティ・ガラなど、数々の有名な催しに腕を組んで現れた。ブラウンは1980年代から妻とは別居中だが離婚はしておらず、長年にわたってガールフレンドをつくってきたのだという。  1994年6月、ハリスはロースクール卒業後4年間勤務したアラメダ郡の地方検事局副検事の職を休職した。ブラウンはハリスをカリフォルニア州失業保険控訴委員会に任命した。この職は年俸9万7000ドル(2019年には16万7000ドルになる)だった。5ヵ月後、ハリスは保

選手は処分したが、管理監督責任のある人の処分はどうなったのか。そして体協幹部たちの責任は。

<パリ五輪開幕がもうすぐそこだというのに「日本代表選手を辞退する」という事件が起きた。  体操女子のエース宮田笙子選手(19)の五輪参加辞退である。喫煙と飲酒の発覚がその理由とあって、「厳しすぎる」「仕方がない」と巷の議論は宮田選手の行動規範抵触と五輪辞退の比重に終始している。しかし、この一報を聞いた時、私には今回の問題の本質は別のところにある気がした。代表選手団派遣業務に長く携わった肌感覚がそう思わせた。  それは、去る7月19日に日本体操協会が開いた緊急記者会見の録画を見て確信となった。  冒頭、協会幹部は揃って深々と頭を下げ世間に謝罪した。そして、同会長は話し合いの結果、宮田選手が辞退を申し出る結果になったとし、「この案件は本人だけの責任ではなく、協会全体の責任、宮田さんへ寄り添っていく」と語ったのである。選手を思う懐の深いリーダーの言葉に聞こえるが、体操協会としてどのように責任を取るのかについての言及は一切なかった。そもそも選手を思う協会ならば、モナコ合宿中の宮田選手を日本に呼び戻す前に自らが現地に飛ぶだろう。  そこには、何年経っても変わらないスポーツ界の悪しき構造が透けて見える。世間を騒がせる問題が起きた時に、まず考えるのが現体制維持である。誰も責任を取らず、しかし、巷間「仕方ない」と思える空気を醸成する。選手に厳しい裁きを下した悪代官になりたくないが、自らを裁くことも回避したい。結果、最も立場の弱い者に事実上の責任を取らせることになる。そして、選手が辞退したのだから「仕方がない」とし、協会は選手に寄り添っていくと善人を演ずる。事情説明に臨んだ協会専務理事は「話し合い」の中身を一切語らなかった。しかし、メディアもそれ以上非情になれず、説明責任を追及することもなかった。  これが、日本スポーツ界のパワハラや体罰を生み出す土壌でもある。果たして競技団体にとって重要なのは選手なのか役員なのか? 国際オリンピック委員会(IOC)が「アスリートファースト」を叫ぶのは、「選手第一主義」を貫けば、スポーツ界の体質を劇的に改善できるからだ。日本スポーツ界の体育会気質をただす特効薬だ。 ■事なかれ主義  今回の一件、選手第一主義であればどうなるか? 協会が決めた「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に喫煙、飲酒を禁止」という行動規範に抵触

対中デカップリングは世界の安全保障だ。

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<中国共産党が5年に1度、経済の基本路線を決める第20期党中央委員会全体会議(3中全会)が先週、北京で開かれ、習近平党総書記(国家主席)は国有企業を軸にサプライチェーン(供給網)強化を打ち出した。漠然とした方針のように見えるが、実はそうではない。西側が強く反発する電気自動車(EV)や車載用のリチウムイオン電池の過剰生産を推し進め、サプライチェーンの要になる原材料の供給力を武器にする恐るべき宣言である。  トヨタ自動車など日本の自動車業界は今、戦々恐々だ。習政権が2023年12月1日から黒鉛(グラファイト)の輸出を許可制にしたことがきっかけだ。黒鉛は車載リチウムイオン電池で最重量の電極材料で、中国はその生産で世界の8割近くのシェアを持つ。日本の自動車業界はほぼ全面的に中国産に頼っており、輸出不許可になると、ハイブリッド車の生産中止に追い込まれる恐れがある。  経団連は今年1月、200人を超える訪中団を派遣したが、主たる目的は中国の李強首相に会って黒鉛供給で善処を陳情することだったが、事態は少しも改善していない。習政権は日本側の狼狽(ろうばい)をみて、ますます図に乗ってくるに違いない。黒鉛がほしければ、新技術を出せ、米国の対中ハイテク輸出規制に同調するな、というふうに、無言の圧力をかけてくるだろう。  ここでうろたえて、下手に習政権の言いなりになってはならない。  いったん譲ってしまうと、次から次へとさらなる難題をつきつけられ、虎の子の技術を奪われるのがおちである。実際に、これまでの「日中友好」の歴史はこのプロセスであり、日本の高い技術や製造ノウハウが対中流出する繰り返しだった。結果が、中国による自動車産業などのサプライチェーン支配である。  習政権側に弱点はある。他ならぬ、習政権の需要無視、生産偏重主義が招いた過剰生産である。黒鉛の場合、中国の輸出価格は暴落状態である。  中国税関総署のデータから黒鉛輸出単価を算出してみると、今年5月の単価は2022年3月の半値にまで下がっている。輸出規制は下落を止める手段なのだ。  本欄では中国製EVブームはバブルだとすでに論じたが、黒鉛を使うリチウムイオン電池自体、生産バブルと言っていいだろう。中国勢に加え、韓国勢、さらに日本のパナソニックが激しく競合している。  グラフは中国のEV車載用リチウムイオン電池の輸出量と1基当たりの単

「ハリス氏、支持率でトランプ氏を2%ポイントリード 米大統領選」は本当か?

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< イプソスの世論調査から、11月の米大統領選に向けて民主党の大統領候補となる見込みのハリス副大統領の支持率が、共和党の大統領候補に指名されたトランプ前大統領をリードしていることが分かった。  調査は22─23日、登録有権者1018人を含む全米の成人1241人を対象にオンライン上で実施され、ハリス氏への支持は44%、トランプ氏は42%となった。 1─2日の調査では、トランプ氏がハリス氏を1%ポイントリード、15─16日の調査で両氏の支持率は44%で拮抗していた。   バイデン大統領は21日、選挙戦からの撤退を表明し、ハリス副大統領を民主党の大統領選候補として支持すると述べた。一方、トランプ氏は先週の共和党全国大会で、同党の候補指名を正式に受諾した。 調査からは、登録有権者の約56%が、ハリス氏(59)が「精神的に鋭く、困難に対処できる」とし、トランプ氏(78)については49%となった。高齢不安が募っていたバイデン氏(81)はわずか22%だった。 さらに民主党支持者の91%がハリス氏を好意的と見ているほか、4分の3の同党支持者が民主党と有権者はハリス氏を支持すべきと考えていることも分かった。   また、無所属で出馬している弁護士ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を加えた場合の支持率は、ハリス氏がトランプ氏を42%対38%でリードしている>(以上「REUTERS」より引用) オバマ氏がなぜハリス氏を支持表明しないのか、という点に関してニューヨーク・ポストが興味深い記事を掲載した。「バイデン大統領が21日に選挙戦から撤退し、ハリス氏を支持したことを受けて、民主党エリート層のほとんどはすぐにハリス氏を支持するようになったが、オバマ氏は支持を表明していない。  バイデン家の情報筋は「オバマ氏はハリス氏が勝てないと知っているので非常に動揺している。ハリス氏は国境を一度も訪れたことがないのに、不法移民が健康保険に加入すべきだと言ったことがある。彼女は目の前に広がる地雷を回避できないのだ。大統領選に出馬するなら、言っていいことと言ってはいけないことがある」と指摘する。  大統領選中には、トランプ氏とハリス氏のテレビ討論会が行われる。  しかし、情報筋は「彼女には討論ができない。イスラエル、パレスチナ、ウクライナについて失言するだろう。オバマ氏はそうなることを知っていた。今、彼女は本

日本の主要マスメディアがトランプ氏を嫌うのは何故だろうか。

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< 暗殺未遂は選挙の追い風になるか  13日(日本時間14日午前)、米共和党のドナルド・トランプ前大統領が米ペンシルベニア州で開かれていた集会で、演説中に銃撃された。男性1人が死亡し、2人が重傷を負った。 「トランプ氏を撃ったのは、同州に住むトマス・マシュー・クルックス容疑者(20歳)。シークレットサービスによってその場で射殺されました。共和党支持者としての登録もあったため、動機などについて調べが進められています」(在米ジャーナリスト)  奇跡的にかすり傷だけですんだトランプ前大統領。ネット上では『共和党の自作自演』や『2022年7月に暗殺された安倍晋三元首相が声をかけて守ってくれた』などというトンデモない噂も流布された。  間違いないのはこの事件がトランプ前大統領にとって、選挙戦の追い風になることだ。  米大統領選挙は日本にとっても重要な意味合いを持っている。もし、トランプ前大統領が大統領に返り咲けば有事の際、「米軍が守ってくれない」ことも考えられるからだ。 トランプ再選は沖縄の未来を左右する  特に日本最大数の米軍基地と軍人を抱える沖縄県民はこのニュースを複雑な思いで受け止めている。  沖縄県内の米軍基地の5段階ある警戒レベルも下から2番目の「アルファ」をキープしている。  暗殺未遂事件を巡っては基地内を二分するような反応も見られたという。在日米軍事情に詳しいジャーナリストが明かす。 「トランプ氏が撃たれたと聞いたとき、『ヤッター!』と歓喜し、万歳までした熱狂的な民主党支持者の米軍人もいたそうです。一方の共和党支持の軍人はトランプ氏の無事に安堵し、拳を振り上げた瞬間、『これで選挙の結果は確実なものになった』と歓喜したそうです。これはアメリカの大統領選挙の象徴的な反応を示しています」  米軍の総兵力はおよそ143万人。そのうち在日米軍の総数は5万5000人で沖縄には約2万人が駐留している。  そのため、米軍、軍属らによる事件は県外よりも圧倒的に多い。  7月12日には嘉手納基地所属の空軍兵が16歳以下の女性をわいせつ目的で自宅に連れ込み、性的暴行を行った罪に問われている裁判も始まった。  軍人による事件は性的暴行事件に限らない。環境汚染、窃盗、飲酒運転、事故、喧嘩……殺人事件に発展したこともある。基地と密接して暮らす沖縄の人々にとって、トランプ前大統領の再選は今後

「お人好し」だけなら、他国に骨の髄までしゃぶられるゾ。

< 日本製鉄は中国宝武鋼鉄集団のグループ企業・宝山鋼鉄との合弁を解消した  日本製鉄は23日、中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄との合弁事業を解消すると発表した。中国の鋼材生産能力を7割削減し、米国やインドに経営資源を集中させる。日鉄は米鉄鋼大手USスチールの買収を進めており、対中強硬姿勢を示すドナルド・トランプ前大統領の返り咲きをにらんで中国と距離を置いたとの見方もある。日本企業の「脱中国」は一段と加速するのか。 山崎豊子さんの小説「大地の子」のモデル  日鉄は1978年の日中平和友好条約締結を受け、経済協力の象徴として中国側に技術提供した。最高指導者だった鄧小平氏は千葉県君津市にある新日本製鉄(現日鉄)の製鉄所を訪れ、「ぜひこれと同じ工場を中国に造ってもらいたい」と要求、85年に稼働した「上海宝山製鉄所」には日鉄の最新鋭の設備や技術が導入された。同製鉄所は山崎豊子さんの小説「大地の子」のモデルにもなった。  その後、宝山鋼鉄は合併を繰り返して巨大化し、グループの中国宝武鋼鉄集団の粗鋼生産は世界首位となった。  日鉄と宝山鋼鉄は2004年、欧州鉄鋼大手のアルセロールと自動車用鋼板を製造販売する合弁会社を設立したが、中国の自動車市場では電気自動車(EV)が台頭。日本の自動車メーカーは販売が苦戦しており、成長が見込めないと判断したことが合弁解消の理由としている。  評論家の宮崎正弘氏は「日鉄内部には自社の先端技術が中国側へ流出したことへの不満が鬱積していた」と話す。 トランプ政権で国務長官を務めたポンペオ氏を起用  日鉄関係者は、合弁解消は「USスチールの買収とは一切関係ない」とする。ただ、トランプ氏は、大統領に返り咲いた場合、買収を「即座に阻止する」と強調している。日鉄はトランプ政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏を助言役に起用するなど「トランプ・シフト」を進めている。  このところ、キリンホールディングスやAGC、パナソニックホールディングス、三菱自動車、ブリヂストン、住友化学などが中国事業からの撤退や縮小を発表している。  経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「米国側には宝武鋼鉄集団との協力関係を続けてきた日鉄を『〝親中企業〟ではないか』と警戒する声もあり、日鉄側は懸念を払拭する必要があったのではないか。中国も国策でEVの国産化を進めるなか、現地へ進出していた日本の自動

反グローバリズムの潮流に沈む国・ドイツ。

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<ドイツが深刻な産業空洞化のリスクに直面している。ドイツといえば2023年、ドル換算した国内総生産(GDP)で日本を上回る第3位に浮上したことが記憶に新しい。  だが、23年の実質GDPは前年を0.2%下回り、主要7カ国(G7)で唯一のマイナス成長に沈んだ。24年も同様に、ドイツ政府の経済諮問委員会は前年比0.2%、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)もゼロ成長で停滞が続くと予測している(いずれも24年5月時点)。  輸出型製造業を牽引役とするドイツ経済が産業空洞化のリスクに直面するのは、東西統一後で2度目である。1度目はドイツが「欧州の病人」と形容された1990年代から2000年代初頭にかけて、グローバル化の加速による競争圧力の増大にさらされた時のことだ。ドイツは、この難局を、社会保障と労働市場の一体改革(ハルツ改革)や政労使が協調し実質賃金を切り下げることにより競争力を回復させて乗り切った。  さらに、市場経済に転じたロシア、中国との結びつきを強め、単一通貨のユーロ導入(1999年)、中東欧などの欧州連合(EU)加盟(2004年5月~)といった、欧州統合の深化と拡大を追い風に変えた。  そのドイツが、再び産業空洞化リスクに直面することになったのは、グローバル化が逆回転し始めたからだ。コロナ禍はグローバルに広がる供給網の脆弱性を浮き彫りにした。加えて、22年に始まったロシアのウクライナ侵攻を機に、西側とロシアの対立は決定的になった。米中の技術覇権争いも先鋭化し、主要国・地域は補助金を活用した産業政策や貿易制限措置を競い合う。こうして一体化が進んだグローバル経済は断片化しつつある。  ドイツの産業にとって、ロシアとの関係悪化、中でもパイプラインを通じた天然ガス供給が停止された影響は大きい。液化天然ガス(LNG)の調達で代替され、価格も22年夏のピークに比べれば大きく低下したが、長期契約によるロシア産ガスに比べて割高だ。化学産業は、自動車や電機、一般機械と並ぶドイツの産業の稼ぎ頭だが、素材としてもエネルギーとしてもロシア産のガスを活用してきたため、とりわけ深刻な打撃を受けることになった。  中国との関係の変化も産業空洞化の圧力となっている。昨年5月の広島サミットでG7は対中国の過度な依存を見直すデリスキング(リスク軽減)で合意した。中国ビジネスへの依存度が高いドイツの自

AI後の世界とは。

< 日本の人口減少が日本のメリットになる日  今、多くの日本人が、人口減少社会を悲観的に捉えている。とりわけ生産年齢人口の減少については、危機感を抱いている人が多いだろう。生産年齢人口とは、15歳から64歳までの、何らかの仕事に従事しうる年齢の人口のことだ。  この年齢層の人口が減ることで、頭数を必要とする仕事が回らなくなるのではないか、個人消費が落ち込んで経済成長が期待できなくなるのではないか、といった点を懸念する声が高まっている。  しかし、これからのAI時代において、人口減少は案外、悪い話ではないかもしれないのだ。  本格的なAI時代を迎えたら、多くの仕事がAIに置き換えられていく。つまり世の中全体で、人間がやらなければならない仕事が減っていく。人によっては、なかなか仕事にありつけないというケースも生じてくるだろう。  仕事がなければ、生活費を稼ぐことができない。それでは、仕事がない人たちは生きていくことができない。  だからこそ、そういう人たちも最低限の生活を送れるようにするため、ひょっとしたら「ベーシック・インカム」のような制度が必要になるかもしれない。  ベーシック・インカムとは、最低限所得保障の一種で、政府が全国民を対象にして、決められた金額を定期的に支給する政策だ。 莫大な人口を抱える中国やインドは窮地に陥る  AIの波は日本だけでなく、世界中に広がっていくことは間違いない。つまり世界中で、人の手でなされる仕事の量が減ってしまう。それが現実になった時、中国やインドのように莫大な人口を抱える国は、逆に不利な状況に追い込まれることが考えられる。  仕事にありつけない人たちが最低限の生活を送れるようにするためにベーシック・インカムを導入すれば、莫大な財政支出が生じる。それだけの財政的な余力がないからAI化を遅らせる、あるいは導入しないという選択を取れば、生産性は大幅に落ち込み、企業収益は上がりにくくなるし、そこで働いている人たちの賃金も低水準のままになってしまう。  そして、ひいてはそれが一国のGDPの低迷にもつながってしまう。 AI時代は「人口の多さ」が仇になる  これまでは中国やインドが、人口大国であることを笠かさに着て、ある種、我が世の春を謳歌してきたが、これから急速に進むAI化の流れの中で、ひょっとしたら人口の多さが仇あだになってしまうかもしれない

ハリス氏は米国大統領として政策的にも個人的にも「耐えうる人物」なのか。

< ようやく「猫の首に鈴」  バイデン氏の「認知症」問題は、「TV討論会の『惨劇』」(7月3日公開「バイデン・TV討論会の『惨劇』にア然…!不安を抱えた大統領が『核ミサイルボタン』を持っているという『やばすぎる恐怖』」参照)以前に、2020年大統領選挙戦から関係者には知れ渡っていた。  また、1年半ほど前の2023年1月30日公開「バイデンはお払い箱か? 大統領選挙に向け混迷を深める米国政治」冒頭「バイデンおろしが始まったか?」において、民主党内の「バイデンおろし」の動きに言及した。  実のところ、この時点ですでに民主党内のバイデンおろしの動きはかなり活発化していた。  昨年2月28日公開の「大原浩の逆説チャンネル<第17回>ウクライナ降伏、停戦交渉開始、バイデン大統領2024年の大統領選に不出馬を宣言 特別対談:大原浩×有地浩(その2)」において、私が執行パートナーを務める人間経済科学研究所・代表パートナー有地浩が「バイデン大統領2024年の大統領選に不出馬を宣言」と予想したのも、1年半前にすでに民主党の大勢は「バイデン再選不支持」との国際情報筋からの信頼できる情報を得ていたからである。  それでは、なぜそれから1年半もの間バイデン氏が「民主党最有力大統領候補」の座にあったのか?それは、前記「バイデンはお払い箱か? 大統領選挙に向け混迷を深める米国政治」4ページ目「カマラ・ハリスしかいないのか」という問題に尽きる。 カマラ・ハリスしかいないのか!  もともと、民主党議員も含めた多くの人々は、バイデン氏は2020年大統領選挙において「トランプに勝つためのワンポイント・リリーフ」だと考えていたと思われる。  つまり、2020年大統領選挙にバイデン氏が勝利した後、ハリス氏に禅譲するシナリオだ。  ところが、この思惑は、東京新聞2022年1月21日「逆風に苦しむカマラ・ハリス副大統領 異例の注目も移民問題などで批判強く バイデン政権1年」でも述べられているように、認知症疑惑を抱えている上に同8月31日公開「外交、軍事、内政、何をやっても『まるでダメ夫』なバイデン米大統領」よりもハリス氏の方が「人気が低い」という厳しい現実の前に瓦解した。  前期・東京新聞記事によれば、当時「支持率は平均39%ほどでバイデン氏(41%)より低く不支持率が10ポイント以上も上回っている」という

習近平は不在のままか。

< 中国共産党「三中全会」が閉会 “29年までに改革の任務完成”  中国共産党の重要会議「三中全会」が閉会し、討議の内容を総括したコミュニケで、習近平国家主席が掲げる「中国式現代化」をさらに推進し建国80年となる2029年までに改革の任務を完成させるという新たな目標を打ちだしました。  中国の長期的な経済政策などの方針を決める、共産党の重要会議「三中全会」は18日まで4日間の日程で北京で開かれ、中国の国営メディアは、閉会後、討議の内容を総括したコミュニケを伝えました。  このなかでは、習近平国家主席が掲げる「改革の全面的な深化」と、独自の発展モデルを意味する「中国式現代化」を推進する方針を決定したとしたうえで、党の指導のレベルをさらに引き上げるとしています。  そして今後進める改革として、国有企業とともに民間企業の発展を支援し公正な市場競争を確保することや、「新しい質の生産力」を推進するためのシステムの改善などに力を入れることを挙げたほか、不動産や地方政府の債務問題などのリスクを防ぎ解決するためさまざな措置を講じるなどとしています。  そして「2029年の建国80年までに改革の任務を完成させる」として、今後5年で一連の改革を完了させるという新たな目標を打ちだしたうえで、建国100年となる今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を建設するための強固な基盤を築くとしています。  また、コミュニケでは「国家の安全は中国式現代化の重要な基盤だ」とも指摘し、引き続き、国家の安全を重視する姿勢を強調しています。 前国防相と前外相を処分    一方、会議では、去年、国防相を解任された李尚福氏について、重大な規律違反や法律違反があったとして党籍をはく奪したほか、外相を解任された秦剛氏は辞職の申請を受理し、党の幹部である「中央委員」の解任を決定しました>(以上「NHK」より引用)  三中全会が終わった。しかし習近平氏は不在のままだったようだ。習近平氏の動静が気になったが、最終コミュニケの場に習近平氏の姿はなかった。そして大きな変化として英語、日本語、イタリア語、フランス語、ドイツ語などの各国言語で同時通訳がなされたことだ。こりまで習近平氏は中国語のみで発表し、外国語の同時通訳を廃止していた。  そして特筆すべき変化は「改革」と「開放」を同時に用いたことだ。もちろん「改革開放」は鄧小平氏

彫ったタトゥーは簡単には消えない。

< すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」 <子供がプレゼントされたのは、一定期間が過ぎると「消える」タトゥーの道具。気軽に使ってみた母子だが、大いに焦る結果に>  幼い息子に「一定期間で消える」タトゥーを入れたところ、想像以上になかなか消えずに困ったという経験を、イギリスの母親が実際の動画と一緒にTikTok上で明かして話題になっている。動画は、子供の胸に「半永久タトゥー」を入れる様子から始まり、それが時間が経っても消えずに残っている様子が収められている。  タトゥーを入れることについては好みが分かれるが、かなりの数のアメリカ人がタトゥーを入れている。2021年にアメリカの成人1000人強を対象に行われた調査では、回答者の17%が複数のタトゥーを入れており、1つだけ入れている人は9%だった。  しかし、入れたタトゥーを後悔しないとは限らない。インディアン・ジャーナル・オブ・ダーマトロジー誌に2022年に掲載された研究では、皮膚科外来に通う患者約300人にタトゥーについて尋ねた。回答者のうち、入れたタトゥーのうち少なくとも1つを後悔していると答えた人は26%に上った。  英マンチェスターに住むオリビア(姓は伏せている)には、その気持ちがわかる。彼女の場合は、息子に消えるタトゥーを入れるのを許したことを後悔している。TikTokに投稿した動画でオリビアは、息子がおばから誕生日プレゼントとして「半永久的タトゥーマシン」をもらったことがきっかけだったと説明している。  オリビアは本誌の取材に対し、息子(名前は明かしていない)は胸にドクロのデザインを、片方の手首に蜘蛛の巣のような模様のタトゥーを入れたと明かした。  最初は気に入っていたのだが、その後すぐにオリビアと息子は、タトゥーが思ったほど早く消えないことに気づいたという。  タトゥーが簡単に消えず、「とてもストレスを感じた」とオリビアは振り返る。「いろいろな方法を試した。息子は毎晩風呂に長く浸かり、私がゴシゴシ洗った。それが一番効果があるように思えたから。でも、色が落ちるのには時間がかかった」 半永久タトゥーが完全に消えるまで2週間  タトゥーを入れたのは息子が学校に行っていない時だったが、学校に戻る前にできるだけ消さなければならなかった。「学校ではタ

キャッシュレスの中国が進んだ社会で、新紙幣を発行する日本が遅れた社会なのか?

< 新しいお札が発行された  今月3日、日本は20年ぶりの「新札フィーバー」に沸いた。全国の銀行には、いち早く新札を手にしようとする人が殺到。「ミスター円安」と陰口を叩かれている植田和男日銀総裁も、40万枚分の「出来立てホヤホヤ新札」の束を前にニンマリだ。 〈表裏にある数字を大きくすることにより、額面金額を分かりやすくしました。券種別に異なる形状、異なる位置にすかしを配置し、券種の違いを分かりやすくしました。券種別にざらざらしたマークを異なる位置に配置し、券種の違いを分かりやすくしました……〉  テレビでも「これぞ世界初の新技術!」と誇らしげに解説していた。  だがこの朗報、隣国の中国では、受け止め方がまるで違った。 まだお札なんて使ってるの? 〈はっ、日本では今時、紙の新札?デジタル通貨をバージョンアップさせるのではないの?〉 〈日本に旅行する時は、まず財布を買えというのは、本当だったんだ〉  とっくの昔に完全キャッシュレス社会を迎えている中国では、日本を「フシギな国」と見ているのだ。そう言えば以前、日本旅行用のパンフレットに「20世紀を懐かしむ旅」と書かれていたのも目にしたことがある。  もしかしたら渋沢栄一翁は、草葉の陰から嘆いているかもしれない。 「オレの顔なんか刷ってる場合か!早くデジタル円を普及させないと、日本は『デジタル人民元経済圏』になっちまうぞ」>(以上「週刊現代」より引用) 「 中国人「日本人、遅れすぎでヤバい」…いまさら「渋沢栄一の新一万円札」に喜ぶ「まだ20世紀の国」の哀しさ 」との見出しは余りに煽情的だ。なぜかキャッシュレスが「進んでいる社会」で、現金を使用する社会が「遅れた社会」だと決めつけているのには驚く。  カードであれ現金であれ、貨幣に変わりはない。ただカードはカード会社が介在した決済方法であり、現金は直接支払うことにより決済が関係する取引だ。  よってカードやスマホを利用した決済方法はカード会社等に取引金額の数%から5%程度の「手数料」を支払うことになる。もちろんカード会社もボランティアでないため、当然の手数料収益だが、そうした舞台裏の取引を殆どの消費者は気にしていない。  だが実際に販売店や飲食業者が手数料を支払っている事実に変わりない。だから販売店等は現金客を心の中では歓迎している。  日本は災害列島で様々な自然災害に見舞われ

立憲党の川内氏よ、野党連合は「消費税廃止」の旗印を掲げては、小沢一郎氏に声を掛けるべきだ。

< 内閣府 今年度経済成長率の見通しを引き下げ 「+0.9%程度」に  内閣府は、今年度・2024年度の日本経済の成長率の最新の見通しを示し、円安による物価高を背景に個人消費の下振れが見込まれるなどとして、物価の変動を除いた実質でプラス0.9%程度とこれまでより0.4ポイント引き下げました。  内閣府は、19日に開かれた経済財政諮問会議で今年度の成長率の見通しを示しました。  それによりますと、物価の変動を除いた実質でプラス0.9%程度と、ことし1月時点に示したプラス1.3%程度から0.4ポイント引き下げました。 昨年度の成長率の1.0%を下回る見通しです。 ▽円安による物価高を背景に個人消費の下振れが見込まれるほか ▽国の認証取得をめぐる不正で自動車販売が落ち込んだ影響が出るとしています。  消費者物価の総合指数は、電気・ガス料金の負担軽減措置が8月使用分から実施される一方、円安が想定より進み、物価を押し上げることなどから、これまでの見通しより0.3ポイント高い2.8%程度と見込んでいます。  一方、来年度の実質の成長率は、物価の上昇ペースが落ち着く中で個人消費が回復し、設備投資も堅調に推移するとしてプラス1.2%程度と見込んでいます。 新藤経済再生相「定額減税などの3割程度が消費に」    新藤経済再生担当大臣は、経済財政諮問会議のあとの記者会見で、今回の成長率の見通しに、6月から実施されている定額減税の効果がどう反映されているのか問われたのに対し「今年度は定額減税などのおおむね3割程度が消費に回り、来年度までに半分程度が回るのではないかと見込んでいる」と述べました>(以上「NHK」より引用)  「内閣府は19日の経済財政諮問会議で、2024年度の実質成長率が0.9%になるとの試算を示した。1月に閣議決定した前回見通しの1.3%から下方修正した。自動車の品質不正問題や円安による物価上昇の影響で個人消費の伸びが鈍化した。消費者物価指数(生鮮食品を含む総合)は前年度比2.8%上昇すると分析した。国内総生産(GDP)の過半を占める個人消費は0.5%増と前回見通しの1.2%増から下方修正した」という記事から、日本はコストプッシュ・インフレにあることが明らかだ。  しかも実質労働賃金は26ヶ月連続で減少している。これで景気が上向くとは、どんな詭弁を弄しても国民を誤魔化すこ

石丸現象は現代版の「小泉劇場」でしかない。

< 「石丸伸二が維新に取り込まれる」ことはない  東京都知事選で165万票もの得票をした石丸伸二氏の台頭は、よどみ切ったこの国の政治に新風を吹き込む期待感をもたらした。  よってたかって「出る杭を打つ」現象も予想通りはじまっているが、これは例によって伝統的日本社会の集団主義が発動しているだけのことで、とやかく言ってもしかたがない。  今後、石丸氏がどんな政治活動を行っていくのかが取りざたされるなか、頭の中を整理しておきたいのが、政策的に近いとされる日本維新の会との関係だ。  まずは、維新の創設者である橋下徹氏と石丸氏とのX(旧ツイッター)でのやり取りから、話をはじめたい。 <7月11日・橋下徹氏> 今の維新国会議員は完全に古い政治の象徴やからね。領収書の非公開を主張するわ、政治は飲みニケーションだというわ、旧文通費の使途制限や野党予備選から逃げるわ。石丸さんに国政維新をぶっ壊して無党派層を引き付ける新しい第三極を作ってもらうのが日本の政治のためやろうね。 <7月12日・石丸伸二氏> とするならば、橋下さんに国政維新をぶっ壊して無党派層を引き付ける新しい第三極を作ってもらうのが日本の政治のため、なのかなぁと感じました。  橋下氏は日本維新の会をぶっ壊して新しい第三極をつくれとハッパをかけ、石丸氏は、それをやるなら橋下さんでしょ、と返している。  馬場伸幸代表率いる現在の維新が日本の政治のためにならないということでは、ほぼ一致しているようだし、ネット上では二人のコラボを期待する声も散見される。  とはいえ、橋下氏の維新への愛着が強いからこそ苦言が出てくるのも事実で、石丸氏はそのうち維新に取り込まれるのではないかという観測も湧いてくるわけだが、その心配は無用というのが、現時点での筆者の判断である。 石丸氏と維新幹部の間をとりもった橋下氏だったが  石丸氏と橋下氏は2022年8月20日、ABEMA の「NewsBAR橋下」で対談したのがきっかけで知り合った。橋下氏は、当時、安芸高田市長だった石丸氏の政治手法が、自分の大阪府知事時代と似ていると絶賛した。  今年6月、都知事選への立候補を決めた石丸氏と、東京の維新幹部の間をとりもち、両者の会合を実現させたのは橋下氏だった。  石丸氏は政党の支援を受けるつもりはなかったが、メディアに泡沫扱いされないために維新のステルス的な応援が