「確トラ」を論じる評論家を評価する。

バイデン大統領の「惨めな退場劇」
 ジョー・バイデン大統領が米大統領選から撤退し、代わりにカマラ・ハリス副大統領を推薦した。米民主党の「統治能力のなさ」を象徴するような事態である。バイデン政権に付き従っていた岸田文雄政権にとっても、大きな誤算だ。日本は大丈夫か。
 バイデン氏の認知能力の衰えは、何年も前から指摘されていた。言葉の言い間違いは数知れず、最近は、よく知っているはずの人に会っても、思い出せないケースもあったという。側近たちは当然、分かっていたはずだ。
 撤退論は早くから出ていた。たとえば、昨年9月12日付のワシントン・ポストは「バイデン氏は2024年に立候補すべきではない」という著名コラムニスト、デイビッド・イグネイシャス氏の記事を掲載した。同氏は大統領の友人であり、そのコラムは「大統領が必ず目を通す」と言われている。
 にもかかわらず、大統領選が3カ月後に迫ったいまになって、撤退せざるをえなくなったのは、本人もさることながら、大統領を説得しきれなかった民主党の責任が大きい。しかも、対抗馬のドナルド・トランプ前大統領が狙撃された直後という最悪のタイミングだった。
 結果として、トランプ陣営に「これ以上はないエール」を送ったうえで、最後はコロナにも罹患し、支持者から見放された形で退場せざるをえなくなった。まさに「惨めな退場劇」である。いったい、どうしてこんな形になってしまったのか。
 米ペンシルバニア大学ウォートン・スクールの組織心理学者、アダム・グラント氏は7月14日付のニューヨーク・タイムズに「恐怖心と無駄な試みと分かっていること。それが集団思考を引き起こして、側近たちの口を閉ざしてしまった」と分析している。
 撤退論を述べたところで、どうせ大統領は耳を貸さない。かつ、そんなことを口にすれば、自分の忠誠心を疑われる。そんな無駄なことをするより、みんなと調子を合わせて黙っていたほうがいい。側近たちには、そんな思惑が蔓延していたのである。

自分の利益を優先した民主党議員たち
 同氏によれば、これまで「集団思考(groupthink)」という現象は、自分の正直さよりも、組織としての調和を優先するほど人々が一致団結しているときに生じる、と考えられていた。ところが、今回はまったく違った。団結心の強さではなく、恐怖心と自己保身が党内を支配していた、という。
 そうだとすると、これは民主党という政党の本質的な問題点を示している。
 国家の利益を最優先するのであれば、認知能力の問題が明らかなバイデン氏を大統領候補として推すのは、絶対に避けなければならないはずだ。ところが、バイデン氏の周辺や党の有力者たちは、トランプ氏との討論会で最悪のボロが出るまで、沈黙を守っていた。
 彼らは国家や民主党の利益よりも、自分の利益を優先していたからだ。先に紹介したイグネイシャス氏のような、ごく少数の例外を除いては、誰も彼もがそうだった。ビル・クリントン元大統領、ヒラリー・クリントン元国務長官夫妻に至っては、撤退不可避と思われた最後の瞬間まで、バイデン氏への献金を呼びかけていたくらいだ。
 クリントン夫妻の場合は政治キャリアが終わっているので、自己利益優先とは言えないかもしれない。それでも、別の問題がある。彼らがバイデン氏を応援したのは「ジョー・バイデンという政治家のイデオロギー」を残したかったからだ。
 バイデン氏は徹底的にウクライナを支援した。では、米軍も派遣するのか、といえば、それはロシアが侵攻に踏み切る前から早々と否定した。そういう姿勢をクリントン夫妻は支持している。なぜかと言えば、そもそもウクライナの西側接近と北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を推進したのは、クリントン夫妻であり、彼らも第3次世界大戦は嫌だからだ。

クリントン夫妻がバイデン氏を擁護したワケ
 かつてのクリントン政権は、誰よりも熱く「米国流の自由と民主主義を世界に広める」という使命感に燃えた人たちの集まりだった。たとえば、当時のマドレーヌ・オルブライト国務長官は1997年6月5日、ハーバード大学の卒業式で、こう演説している。
〈半世紀前、米国の指導者たちは西欧の繁栄と民主主義を支援した。そして今日、大西洋両岸のコミュニティ(注・米国と欧州)は、欧州の新しい自由な国々が経済を立て直し、法の支配を強化するのを支援している。北大西洋条約機構(NATO)は来月、マドリードで中東欧の民主主義国を新たな加盟国として迎える。そして、他の国々にもNATOのドアを開き続ける。これは、欧州に新たな分裂を生み出すのではなく、逆に、半世紀前に押し付けられた不正義と不自然な国境線を消し去って、領土紛争を解決し、少数民族と人権を尊重し、改革のプロセスを貫徹するインセンティブを与えるのだ〉
 まさに、高らかに米国の関与とNATOの東方拡大を謳い上げていた。その根底にあったのは「米国流の自由と民主主義の拡大」というイデオロギーである。
 だが、NATOの東方拡大こそが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を激怒させ、ウクライナ戦争につながった根本原因だった。バイデン政権の思想は、クリントン路線の延長線上にあった。だから、クリントン夫妻は徹底的にバイデン氏を擁護したのである。
 このイデオロギーこそが、民主党の真骨頂だ。実務的に考えれば、認知能力に問題があるバイデン氏が今後、4年間も大統領を務めるのは到底、現実的ではない。だが、彼らは現実よりイデオロギーを重視する。だから、決断できなかったのだ。

民主党はハリス氏で勝てるのか
 ところが、バイデン氏が抵抗をあきらめて撤退を表明したとたん、クリントン夫妻はカマラ・ハリス副大統領をいち早く支持した。この変わり身の速さは、ほとんど「裏切り」と言ってもいいほどだ。それもまた、ハリス氏が民主党左派のイデオロギーを体現しているからだ。彼らには人情が入り込むスキもない。
 民主党は、ハリス氏で勝てるのか。
 NHKをはじめ、日本のメディアはロイター通信と調査会社イソプスが7月24日に発表した「ハリス(44%)がトランプ(42%)をリード」という調査結果を大きく報じて、あたかも「ハリスが健闘している」という印象を宣伝している。
 だが、実態はまったく違う。
 世論調査会社、リアル・クリア・ポリティクス(RCP)の平均集計は7月24日時点で、トランプ氏が47.6%の支持を得ているのに対して、ハリス氏は45.9%にとどまっている。しかも、実質的に「選挙戦の勝敗を左右する」とみられている激戦7州、または3州は、すべてトランプ氏優勢である。
 RCPの平均集計では、アリゾナ、ネバダなど激戦7州はすべて2.1ポイントから5.8ポイントの差をつけて、トランプ氏がリードしている。そのうち、もっとも重要なミシガン、ウィスコンシン、ペンシルバニアの激戦3州は、それぞれ2.1ポイント、3.3ポイント、4.5ポイントの差をつけている。
 別の世論調査会社、ファイブ・サーティ・エイトはハリス氏の支持と不支持を調べているが、それによれば、7月23日時点でハリス氏に対する支持率は37.8%だったに対して、不支持率は51.4%に上り、その差は13.6ポイントもある。この傾向も3年前から同じだ。

なぜ、ハリス氏は人気がないのか。
 副大統領として実績がないからだ。
 象徴的なのは、不法移民問題への取り組みだった。副大統領に就任した後、バイデン大統領から不法移民問題を担当するよう指示されたが、その後、半年も移民の流入地点になっているテキサス州とメキシコとの国境に視察に行かなかった。
 テレビの司会者に「なぜ国境に行かないのか」と質問されると、彼女は笑いながら「私は欧州にも行っていないわ。質問の意味が分からない」と答えた。インタビューはグアテマラへの公式訪問直後だったが、会見でグアテマラの人々に向かって「米国に来ないで」と2度繰り返した。この冷たさが民主党支持者たちを怒らせてしまった。
 ハリス氏は民主党の大統領候補指名を確実にすると、7月23日、ミルウォーキー州で選挙集会を開いた。彼女は「すべての労働者の労働組合加入」や「手頃な医療と保育、有給の家族休暇」「年配者の尊厳ある引退生活」など「大きな政府」を目指す民主党左派の政策を訴えた。
 24日付のウォール・ストリート・ジャーナルは「浮動票など不要と言っているようだ」と皮肉っている。まるで、東京都知事選で敗北した立憲民主党の蓮舫氏のようだ。

情けないのは、岸田首相である。
 岸田首相はバイデン撤退の報を聞くと、首相官邸で「大統領として政治的に最善の判断をする、そういった思いでの判断であると認識いたします」とコメントした。
 まるで正しい日本語とは言えないが、大統領が断腸の思いで下した判断について「最善の判断だ」などと語るのは「上から目線」を通り越して、政治家として最低の礼儀もわきまえていない。ここは過去の業績を称え、友情に感謝する局面ではないか。
 大統領は「子分のお前に『最善だ』などと言われたくない」と思ったに違いない。首相のセンスのなさがにじみ出てしまった。
 トランプ政権が誕生すれば、バイデンべったりだった岸田首相が相手にされないのも、また明白である。バイデン政権に強要されて、成立させたLGBT理解増進法の見直しも必至ではないか>(以上「現代ビジネス」より引用)




やっとマトモな米大統領選の現状を分析する論評が現れた。それは「まるでアメリカ版の蓮舫!カマラ・ハリス副大統領がトランプに勝てないと言われる理由」と題する長谷川 幸洋(ジャーナリスト)氏の論評だ。
 長谷川氏も指摘しているように接戦州でのポイントはトランプ氏がすべての州で上回っている。「 RCPの平均集計では、アリゾナ、ネバダなど激戦7州はすべて2.1ポイントから5.8ポイントの差をつけて、トランプ氏がリードしている。そのうち、もっとも重要なミシガン、ウィスコンシン、ペンシルバニアの激戦3州は、それぞれ2.1ポイント、3.3ポイント、4.5ポイントの差をつけている」というから、2024米大統領選では前回を上回る不正がない限りトランプ氏の勝利は動かない。

 なぜカマラ・ハリス氏が不人気なのか。彼女に政治家としての資質が決定的に欠落しているからだ。かつて不法難民を大量に出しているグアテマラへの公式訪問直後「会見でグアテマラの人々に向かって「米国に来ないで」と2度繰り返した」という。
 またハリス氏は南米諸国から不法難民が米国へ流入するのは祖国が貧困だからだとして、食糧などの支援をすべきだと主張した。そしてメキシコ国境の壁建設に反対したため、不法難民は一向に減少しなかった。ハリス氏は副大統領として「不法難民問題」すら真摯に対処しようとしなかった。そりれは米国の納税者に対して実に不誠実な態度だったと云わざるを得ない。

 またハリス氏はバイデン後継として大統領候補指名を確実にすると「「すべての労働者の労働組合加入」や「手頃な医療と保育、有給の家族休暇」「年配者の尊厳ある引退生活」など「大きな政府」を目指す民主党左派の政策を訴えた。」。しかしそれは米国の納税者たちにとって大きな負担をもたらすものでしかない。
 日本と違って「皆保険制度」を目指したオバマ・ケアは米国では不評だ。自由の国米国では「貧しくなる自由」もあるという考え方が一般的で、日本の国民健康保険制度は米国には馴染まない。保険が必要な人は民間企業の「健康保険」に加入すれば良い、という。

 いやそもそも、大統領候補の指名は「後継指名」ですべきものでない、という米国の民主主義のルールを指摘すべきだ。長い党大会で候補指名を得るために長い候補指名レースを闘うことで各候補の政治理念や人柄などが米国民に明らかになる。そうした手続きを無視してバイデン氏が後継指名した副大統領がそのまま党の大統領候補になる、というのは米国が長年かけて築き上げてきた米国の民主主義を破壊するものでしかない。
 ただバイデン氏が高齢で認知症を患っている、というのなら大統領講和の指名レースが始まる前にバイデン氏が二期目に臨まないと決断すべきだった。ホワイトハウスはバイデン氏の酷い認知症を知っていたはずだ。今回の党大会前のバイデン氏とトランプ氏のテレビ討論会を仕掛けたのも異例なら、ハリス氏を党大会前に民主党の大統領候補に事実上指名するのも異例だ。民主党はその党名にふさわしくない非民主的なルール変更ばかりしている。しかし、そのことを問題にする評論家もマスメディアも皆無なのはなぜだろうか。現実の米国は斯くもご都合主義の国なのだろうか。

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