紙媒体であれ電子文字であれ、秋の夜長を興味のある本を読で過ごそう。
< ◇学力向上に効く読書は「1日30分まで」 どういう読書が学力向上に対して効果的なのかについては教育心理学者・猪原敬介の『読書効果の科学』(京都大学学術出版会)や『科学的根拠エビデンスが教える子どもの「すごい読書」』(日経BP)にくわしい。 猪原も分析に関わっている東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所の「子どもの生活と学びに関する親子調査」によれば、国語や数学の学力に対してもっとも効果があるのは1日30分くらいまでの読書だ。それ以上読んでも成績は上がらない。 読書が成績と関係するのはおもに「語彙」(広い意味での知識)や「読みの流暢さ」(読みの速さ×内容理解の正確さ)を鍛える、という効果である。 文章を読み慣れていないと、使われている言葉がよくわからないから内容の理解がおぼつかないし、速く読むこともできない。 しかし、簡単なレベルの文章ばかり読んでいても語彙は増えないし、内容を理解しながら読もうという姿勢にもならない。 だから、自分にとってちょっとだけむずかしいとか、知らない単語が含まれているようなレベルの文章(本)が、学力向上という観点からはもっとも効果がある。 ◇好きなものを楽しく読むのがいちばん重要 ただ、読書は今日読んで明日すぐに効果が出るようなものではない。中長期的に効いてくる。 また、「朝の読書」運動が始まるさいに理論的支柱となったジム・トレリースは、その後、PISA(学力を「国際比較」する学習到達度調査)の読解リテラシーのスコアと「夢中になって読む」(楽しみのための読書)経験に相関が高いことを強調している。 PISAの評価枠組みでは「読書へのとりくみ(エンゲージメント)」を構成する重要な要素として、この「読書への関心と楽しさ」にくわえて「自分が何を読むかをコントロールしている感覚」も挙げている。 ムリヤリ興味がないものを読まされても、enjoyableな体験にはならない。トレリースは朝読のような「自由読書」の推進派だが、自分で好きに、興味のある本を選んで読むからこそ夢中になれる。 ところが日本では「古典・名作を読むべき」「歯ごたえのある文学を読むべき」「教養的な読書をするべき」「社会問題を扱った新書、ノンフィクションを読むべき」といった意見が根強くある。実際にそれを実践している人間はごく少数であるにもかかわらず、だ。 ...