日本企業は積極的に日本と日本国民に奉仕すべきだ。

<2026年はドル円が164円とおよそ39年半ぶりの円安水準をつけ、また28年ぶりに日米での同一方向の協調介入があるなど、歴史的な節目が続く日本。今後円安はまだまだ続いていくのか。為替相場の転換点も含めふくおかフィナンシャルグループの佐々木融が分析する。

◇日米の「サービスの差」が埋まらない理由
──今後も円安傾向が続くなかで、米国と日本では、同じ100円でもサービスの価値に大きな差があります。こうした日米の差はいずれ是正されるのではないかと感じています。
佐々木 購買力平価から見れば、為替レートは本来はもっと円高の水準で釣り合うはずで、本来は是正されるべきですが、修正されない原因は日本の政策構造にあります。
 その一番大きな要因は、「対外直接投資」の拡大です。日本企業による海外への直接投資は、毎年増え続けています。日本の賃金は米国の4割程度にまで低下していて、国全体として非常に割安になっているにもかかわらず、日本企業は資金を国外へ投じています。特に最近は米国への投資が増加しています。本来なら国境を越えた経済活動によって同じ価格へ収れんしていくはずですが、構造的なズレが生じています。
「なぜこれほど日本が割安なのに、国内ではなく海外へ投資するのか」を日本企業に尋ねると、ポテンシャルを感じていないことや、人口減少による深刻な人手不足、厳格な規制、日本独特の雇用慣行、言語の壁などが理由として挙げられます。かつて日本経済が強かった時代には気にならなかった言語や制度の参入障壁が、経済力が低下した現在では非効率さとして際立っているのです。
 加えて、海外企業による日本への「対内直接投資」も非常に少ない。日本人の労働力は質が高く真面目で、かつ賃金も割安であるにもかかわらず、海外からの投資が入ってきません。日本の対内直接投資残高の対GDP比は、先進国のなかで最低水準に位置しています。
 インフラが整い労働力も優秀であるにもかかわらず投資が呼び込めていない原因を企業からヒアリングし、制度改革や環境整備をおこなうことこそが、積極財政をおこなうこと以上に日本経済復活への近道だと考えます。

◇日本に眠る「1000兆円の保有資産」
──需給面における円売り圧力については、どのように見ていますか。
佐々木 証券投資のフローを見ると、株式投資においては新NISAなどを通じた個人の海外株式投資で定期的な円売り・外貨買いが出ている一方で、ポートフォリオのリバランスのために、値上がりした外国株式を年金基金が売却していることによって、株式全体で見ると相殺されています。
 むしろ注視すべきは、「債券投資のフロー」です。金利上昇に伴い価格が下落した外国債券を、年金基金が押し目買いの形で継続的に購入しています。個人の投資信託の購入以上に、年金基金による外国債券投資が継続的な円安圧力として作用しています。
──2026年の年内および2027年にかけて、ドル円相場はどう動くと予想されていますか。
佐々木 日銀の姿勢次第ですが、2026年内に日銀がもう1回適切に利上げをおこなえるのであれば、年内は155円〜162円程度を中心としたレンジで推移し、160円台前半あたりでいったん頭打ちになると考えます。
 2027年にかけては、日銀が2%近くまで順調に利上げを進められるかどうかが分岐点です。しっかり利上げができれば、165円付近で上値が重くなる可能性がありますが、政府の圧力やインフレ率の上昇によって実質金利のマイナス幅が拡大する場合は、170円方向を目指す展開もあり得ると考えています。さらにほかの主要国との名目金利差が開いたままになれば、それがさらなる円安要因となります。
 加えて最も懸念されるのは、日本人の家計が保有する約1000兆円の預金資産が「通貨防衛のための外貨シフト」へ本格的に動き出すことです。これが一斉に動き出した場合、160兆円程度の外貨準備では防ぎきれません。
──株式・債券市場への波及と、投資家が注視すべきポイントを教えてください。
佐々木 日本株に関しては、インフレと円安を背景に上昇基調が続くと見ています。株価にとって重要なのは「名目GDP」であり、日本の名目GDPはインフレの影響もあって過去5年平均で年3.9%ほど成長しています。名目成長率が維持、拡大すれば、それが株式市場にとっては追い風になります。
 一方、債券市場については、日銀の対応が後手に回る、いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」展開が想定されるため、本来は長期金利に上昇圧力がかかりやすい状況です。ただし、政府が日銀に国債買い入れの継続を迫るなどの人工的な抑え込みが入った場合は、金利上昇が抑制された分の歪みがすべて為替市場にしわ寄せとして表れ、円安となるでしょう。>(以上「COURRiER」より引用)




「2027年、日本円は「170円台」へ…為替のプロが警告、未曾有の円安を招く「1000兆円の円売り」という最大のリスク」とは、いかにも大胆予想だ。本来貨幣の交換レートはGDPの大きさと貨幣発行量によって決まる。しかし、現在では為替相場は投資市場に一つになっていて、思惑によって大きく変動するようになっている。
 もちろん貨幣発行量は日銀だけでなく、市中銀行のペンマネーも含まれるため、総貨幣流通量で算定することになる。そうするとバブル当時と現在の貨幣発行量は700兆前後と同じで、当時の為替レートと現在の為替レートが同じであるはずだが、そうなっていない。つまりそれだけ思惑が為替相場を動かしていることになる。

 思惑だから、思惑を決定する何某かの根拠がなければならないが、現在その根拠とされるのが日米金利差だ。もちろん両国内の経済状態も大きく影響するはずだが、どうやら景気変動は為替相場の変動にそれほど大きく比例しないようだ。
 佐々木融氏は国内資産1000兆円に注目しているようだ。それが外貨買いに動けば劇的な円安が起きる、と予想している。しかし国内資産1000兆円は今まで劇的に動いたことは殆どない。これからも動かないと見る方に妥当性がある。それは日本国内資産1000兆円を保有している資産家たちは概して投機的な行動をしないからだ。

 世の中に出回っている「お金の量(マネーストック・マネーサプライ)」が、国内総生産(GDP)に対して何倍あるかを示す経済指標を「マーシャルのK」と呼ぶ。 「マーシャルのk」の上昇(過剰流動性)は、長期的・論理的には自国通貨安(円安など)をもたらす要因になる。
 マーシャルのKの「水準」や「トレンドからの乖離」は、景気や金融環境に対して一定の関係を示す。まずKが上昇している場合(トレンドを大きく上回る場合)は 経済規模(GDP)の拡大以上に、市中に出回るマネー(お金)が過剰に供給されている状態を示す。そのため低金利や潤沢な資金を背景に、株式や不動産などの資産価格が上昇しやすくなる。ただし、過剰なマネーが必ずしも企業の設備 investment(投資)や賃上げといった実体経済の好循環に結びついているとは限らず、インフレや「見かけ上の名目拡大」を招くこともある。
 その反対にKが低下している場合はマネーの伸びが名目GDPの伸びを下回っている、あるいは物価上昇や金融引き締めによって既存マネーの購買力が吸収されている状態を示す。そのため資金繰りがタイトになったり、中央銀行の利上げや金融引き締め局面で流動性が縮小したりする。急激なKの低下は、実体経済の減速や、家計・企業の買い控えを促す結果になる。

 佐々木氏は企業投資が国内よりも海外への投資を続けている限り、通貨平価は円安にならざるを得ないという。だから金利を2%へ引き上げて米ドルとの金利差をなくすことが円安為替相場を是正するのに必要だ、と述べている。しかし金利引き上げは企業の投資意欲を削ぐものでしかなく、佐々木氏の論理は矛盾している。
 日本の労働賃金が米国の四割程度しかないのを少子化による人手不足による、としているのも解せない。なぜなら人手不足は賃上げの動機になるからだ。そこで外国人労働移民を受け入れたなら、労働賃金引き上げの機会が永遠に失われることになる。企業は国内の人手不足を理由に海外へ生産部門を移転させているのではない。さらに安い労働力を求めて移転させているだけだ。

 円安を問題視するなら、政府は外国人労働移民政策を直ちに停止し、金利引き下げと政府投資政策を同時に展開する必要がある。そして年金基金による外国債の購入から国債購入へ資金の流れを変えなければならない。さらに法人税率を旧に復して、内部留保ではなく労働者への分配や企業投資などを積極的に行うような減税措置を講じるべきだ。政策により企業投資行動を誘導することこそが重要だ。
 日本企業は積極的に日本と日本国民に奉仕すべきだ。企業の社会的責任を果たすためにも、日本の企業経営者は日本社会と日本国民によって成り立っていることを自覚すべきだ。

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