ジャウラニ指導者はシリアを何処へ導くのか。
< 「おそらくアメリカ側と手打ちがあったのでしょう」 半世紀以上続いた独裁的なアサド政権を倒し、暫定政権を発足させた反政府勢力のリーダー、ジャウラニ指導者についてこう話すのは、中東情勢に詳しい放送大学の高橋和夫名誉教授です。 テロ組織に指定されている組織が新たなシリアをつくれるのか。今後のシリアはどこに向かうのか。高橋名誉教授に詳しく聞きました。 (国際部記者 勅使河原佳野) そもそもジャウラニ指導者ってどんな人? ジャウラニ指導者はシリア生まれで、2003年のイラク戦争では過激派組織「イラクのアルカイダ」のメンバーとしてアメリカ軍と戦いました。 アメリカ軍に拘束され刑務所で5年を過ごしたあと、内戦が始まったシリアに戻り、「イラクのアルカイダ」から派生した過激派組織「ヌスラ戦線」に。同じく「イラクのアルカイダ」を前身組織とする過激派組織IS=イスラミックステートとも関係があったとされています。 しかし、2016年にはアルカイダとの関係を絶って「ヌスラ戦線」を解体した上で、アサド政権の打倒を掲げる新たな組織「シリア解放機構」を立ち上げました。 「シリア解放機構」は国連やアメリカ、トルコなどからはテロ組織に指定されていますが、11月27日以降、2週間たらずで首都ダマスカスまで制圧。暫定政権を発足させた後は、少数民族も含めた包括的な国づくりを進める考えを強調するなど、国際社会にも融和的な姿勢をアピールしています。 ※以下、高橋名誉教授の話 ジャウラニ指導者 なぜ頭角現した? 長年、アメリカはアサド政権を倒したいと思っていて、探しても探しても見つからなかったのが穏健派の反体制派で、指導者、力のある人でした。 ジャウラニ指導者がそういう人物か見かけだけかはわかりませんが、これまで属していたアルカイダやISと関係を切るとか、そういう行いがある人たちを組織から外すということをやってきたのは事実です。 また、シリアのキリスト教徒が虐殺されたとか、アサド政権を支えたアラウィ派に対する激しい報復があったというような報告もないので、これまでのところは期待を持たせる形になっています。 ただ、権力基盤が安定してどうなるか、それから、彼の組織以外の組織も反体制派にいますから、その人たちを抑えられるのか。これから非常にセンシティブな時期を迎えるのかなと思っています。 アメリカと...