筵旗を立てたいのは江戸時代の百姓ではなく、貧困に喘ぐ現代の我々ではないだろうか。
<衆院選で「年収103万円の壁」撤廃を掲げた国民民主党が躍進し、名古屋市長選では「市民税減税」を公約した日本保守党推薦の広沢一郎氏(60)が当選した。国民所得に占める税金や社会保険料の割合を示す「国民負担率」は2022年度で48・1%に達し、江戸時代の年貢の割合「五公五民」と比較されるほど高く、有権者は投票という形で〝一揆〟を起こしているとの見方もある。だが、中長期的な税の方向性を提言する政府税制調査会や、毎年の税制改正を議論する自民党税制調査会は、減税に消極的な財務省の影響力が強い。元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は、安倍晋三政権で抑え込まれていた政府や党の税調が岸田文雄政権で息を吹き返し、石破茂政権では自由自在に振る舞っていると指摘する。 首相の諮問機関である政府税制調査会は、各省の審議会と同様に財務省の別働隊、隠れ蓑だと筆者は考える。事務局を事実上、財務省が仕切り、委員の人選その他も財務省の意向通りで、報告書も実質的に財務省が書いているといっていい。つまり。政府税調の答申に書かれる内容は、財務省がやりたいことだ。 国会に提出される毎年税法には自民党税制調査会での議論の内容が反映される。役割分担は、政府税調は中長期、自民党税調は各年・短期だ。 もっとも、自民党税調も実質的には財務省が関与するので、両方とも財務省の〝手のひらの上〟といえなくもないが、自民党税調の方が、経済団体らの陳情を受けることもあり、政府税調よりも民意にやや近い。毎年の税制改正は自民党税調が仕切るので、この意味では、自民党税調の方が上だ。 第2次安倍晋三政権や菅義偉政権では、政府税調は開店休業状態だったが、岸田文雄政権で息を吹き返した。 今年1月には、政府税調の会長に日本総合研究所理事長の翁百合氏を女性で初めて就任させた。翁氏は、経歴を見れば明らかだが、「財政の健全性」を主張しており、財務省にとっては好都合な人物だ。 正直にいえば、翁氏を財務省にリクルートしたのは官僚当時の筆者だ。日銀に入って間もなく、役職にも就いていなかった翁氏に接触し、軽めの勉強会の委員に就任するよう要請した。その後、翁氏は日銀から日本総研に移り、順調に出世した。 財務省はこうした審議会委員の「青田買い」をよく行っていた。その時の基準は、「女性」「自己主張しない」だった。その後の経歴をみる...