日本が米国に従属化すると考えるのは日本国民の自由だが、そうした日米条約はどこにも存在していない。

日本の多くの報道機関が予想できなかった米大統領選の「トランプ圧勝」。第一次トランプ政権の時よりも国際情勢が混迷を極める中で、トランプを筆頭とする米保守派による対日要求は想像を絶するものになりそうだ。

「日本の予想」を裏切る結果
 西側の大方の予想を裏切り、トランプが大統領選で圧勝し、政権に復帰することとなった。日本の報道だけを聞いているとこの結果に驚くこととなるが、選挙戦の最中に実際にアメリカを訪問し、民主党系のCNNテレビと共和党系のVOXテレビの両方を見ると、日本ではその前者の情報しか流されていなかったことに気づく。
 また、少数ではあっても、現地で聞いた有権者の意見分布も日本の報道とはかなり違うもので、少なくとも私が訪問したアリゾナ州では路上の選挙パネルも圧倒的にトランプの方が勝っていた。
「トランプ2・0のアメリカ」が日本に求めてくるものは「トランプ1・0」の比ではなくなることが予想されている。ハリスであればバイデンの延長であろうと軽く構えていたのが大間違いであった、ということになる。
 これは大変な失点であり、今から急ぎこの「トランプ2・0」に対処するためには、自民党から共産党まで、北海道から沖縄まで、富者から貧者までもここは一致団結して「過去の延長」でものを考えるのを止めなければならない。
 ここは幕末の不平等条約締結時と同じで、この危機にただただ従順に従っているわけにはいかないからである。

選挙中から「日本」に複数回言及
 実際、ハリスとトランプの国際関係への関心の度合いははっきり違っていて、民主、共和両党の大会での大統領候補の受諾演説ではハリスが日本にもアジアにも一切言及しなかったのに対し、トランプは日本に一度、アジアに三度の言及をしている。
 また、中国への言及も一度しかなかったハリスに対し、トランプは十四度であるから国際問題への関心の強さがわかる。とりわけ、このうちの一箇所はトランプが唯一日本に言及したところでもあり、その両国──日本と中国が同じく黄金時代を追求しているとの言及となっている。トランプにとり、日本は中国を論じて初めて思いおこされる対象であるというのが情けない。
 また、その上でさらに重要なことは、このアジアでの紛争の可能性が大いに強調されていることである。ハリスの演説ではウクライナとパレスチナの戦争が語られていても、アジアへの言及はなかった。だが、トランプは台湾、韓国、フィリピンについて次のように言う。
「世界がかつて経験したことのないような国際的危機が発生した。何が起きているのか、誰も信じられない。ヨーロッパと中東で戦争が勃発し、台湾、韓国、フィリピン、そしてアジア全域に紛争の恐怖が漂い、私たちの地球は第三次世界大戦の淵に立たされている。兵器はもはや、互いに撃ち合いながら行き来する軍隊の戦車ではない。この武器は人間を抹消させるものだ」
 もちろん、この発言は「戦争の危険がある」とのもので「戦争を起こす」と言っているのではないが、こうした危険性の認識を持って大統領となり、執務するというのである。
 アメリカ大統領がこうしてアジアの特定地域に強い関心をもって対日外交をしてきた時、何が要求されるのか、という問題である>(以上「現代ビジネス」より引用)




アメリカが仕掛ける「従属化」の危ないシナリオ…トランプ大統領「私たちの地球は第三次世界大戦の淵に立たされている」発言の意味」と極めて違和感のある題で大西 広(慶應義塾大学名誉教授)氏が書いている。
 「従属化」とは米国が日本を従わせる、ということなのか。それなら今更取り上げるまでもなく、既に戦時以来一貫して日本は米国に従属化しているではないか。「なぜ今更」との疑問符を抱きながら一読した。

 総裁選前には「日米合同会議」に言及していた石破氏も、総裁になり総理大臣になると「日米合同会議」の見直しには一切言及しなくなった。それほど日本は米国に従属化し、官僚によって支配されている。
 政治が国民の投票によって決まるのではなく、米国のさじ加減と官僚支配によってきめられている現状こそマスメディアは問題視すべきだ。しかしマスメディアは「斎藤案件」にかまけて、県民が支持した知事のアラ探しに躍起になっている。

 それは米国でも同じ現象が起きていた。国民は貧困化し社会が不安定化しているにも拘らず、米国主要マスメディアは現民主党政権が続くように国民世論を誘導してきた。だが選挙結果はトランプ氏が勝利した。
 それを米国主要マスメディアは「多様性の否定」だと報じているが、マノスフィアが運動は多様性の否定なのだろうか。民主党政権が推進したLGBTq運動が、果たして多様性なのだろうか。

 日本の渋谷区でLGBTq推進法に基づいて公衆トイレの男女を隔てていた壁を取り払った。あるいは中学校や高校でLGBTq推進法に基づき制服を男女差のないものに変える学校が続出している。それが「多様性」を認める社会だと主張しているが、それこそ「単一化」ではないだろうか。
 生物的な「男女差」を無視して、無きが如く振舞うのは「性の否定」でしかなく、それこそ「ノンセックス」の単一性ではないか。男女に分かれていたトイレの壁を取り払えば、トイレは一つの空間にってしまい、女性を不逞な男性の好奇の目にさらされることになりはしないだろうか。LGBTq運動は果たして女性を解放しているのだろうか。解放しているとしたら、何から解放しているのだろうか。
 トランプ氏をマノスフィアが支持したと昨日書いた。男が男らしく女が女らしい社会の何が不都合なのだろうか。そして「多様性」とは「無秩序」とは異なるのではないか。個々人の個性は認めて尊重しなければならないが、本質的な「性」まで否定するのは生物としての存在まで否定することになりはしないだろうか。

 引用論評に話を戻すと、日本が米国の従属化する、というのは勘違いだ。日本は1945年に先の大戦に敗れて連合国軍に占領された。文字通り連合国軍に従属化されたが、1951年9月に締結したサンフランシスコ条約により日本は独立国になった。それ以降も米軍が日本の各地に駐留しているが、米国に従属化しているわけではない。
 実質的に「日米合同会議」が存在して、日本の統治に米国が口出ししている、と指摘する声があるが、当の米国民の何割が「日米合同会議」の存在を知っているだろうか。つまり「日米合同会議」は日本側の忖度でしかなく、米国による強制ではない。その証拠に日米間のいかなる条約にも「日米合同会議」の設置を規定している条文はない。だから日本側から「やめる」と通告すれば済む話だ。

 LGBTq促進法の制定に影響力を発揮した駐日米国大使の「内政干渉」を許したのは日本の愚かな政治家諸氏の責任だ。本来ならエマニエル氏に「内政干渉はやめろ」と拒否すべきだった。たとえLGBTq推進論者であっても、日本の政治に米国大使が口出しするのは忌避すべきことだと注意すべきだった。
 日本が米国に従属化すると考えるのは日本国民の自由だが、そうした日米条約はどこにも存在していない。政治家が毅然としていれば、何ら問題ない話だ。トランプ氏が様々な圧力をかけてくると心配しているようだが、日本が米国の友好国から離れた場合の日米の損得勘定と、日本が中国の有孔管権を深めて米国から離れた場合の日米両国の損得勘定を考えれば、米国にとって日本の重要性は如実に理解されるはずだ。日本の政治家諸氏は自信を持ってトランプ氏とディールすれば良い。

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