果たして中国は世界覇権を獲れるのか。
<◇人民空軍、6000キロ離れたエジプトで大演習
中華人民共和国は10年以上にわたり、「一帯一路」構想(BRI)を、港湾、鉄道、工場、デジタル接続性を整備する無害な計画であるかのように説明してきた。しかし、その説明はもともと実態を正確に表していなかったうえ、もはや現実とは明らかに乖離している。中国は、自らが築き上げてきた商業的な地理的ネットワークの背後に、明確に軍事力を配置し始めている。そして、最近エジプトで行われた航空演習は、これまでで最も明白な警告である。
最近の報道によれば、8月、中国のJ-16戦闘爆撃機、Y-9LGスタンドオフ電子妨害機(SOJ)、KJ-500空中早期警戒管制機、Y-20輸送機、Z-20多用途戦術ヘリコプター、YY-20A多用途空中給油・輸送機(MRTT)からなる大規模な航空部隊が約6000キロを飛行してエジプトに展開し、エジプト空軍との「Eagles of Civilization(文明の鷲)」演習に参加した。
この演習では二つの重要な「初」があった。J-16がアフリカに初めて展開したこと、そしてYY-20Aがエジプトのラファール多用途戦闘機に初めて空中給油を実施したことである。中国人民解放軍空軍(PLAAF)は、戦闘力を大陸間で移動させ、途上でその作戦能力を維持し、アラブ世界の主要な軍事国であり米国の防衛支援の受益国でもあるエジプトと、高度な異機種間空戦訓練(DACT)を実施するという貴重な経験を得た。
場所も重要である。エジプトは、世界の海上交通に不可欠な大動脈の一つであるスエズ運河を擁する。中国企業はスエズ運河経済特区に数十億ドルを投資し、製造、物流、港湾、技術分野でその存在感を拡大してきた。習近平国家主席の9月の訪問は、こうした経済関係を安全保障・対テロ協力とさらに結びつけるものとなった。
浮かび上がっているパターンは明白である。まず商業的進出があり、次に政治的影響力、技術的依存、軍事協力、そして作戦上のアクセスへと進んでいく。実際、人民解放軍空軍の戦闘機がこの演習に参加したのは今回が2回目である。2025年の「Eagles of Civilization」にはJ-10戦闘機とY-20空中給油機が参加し、エジプトのMiG-29戦闘機に対する史上初の空中給油も実施された。
◇それは段階的に進行する
さらに指摘すべきは、軍事化とは、「一帯一路」の資金で整備されたすべての港に中国共産党政権の五星紅旗を掲げることを意味するわけではないということである。それは段階的に進行し得る。海軍艦艇への補給が可能な商業埠頭、中国軍機の受け入れに慣れた空港、情報収集にも利用できる通信ネットワーク、人民解放軍が現地の地形や指揮系統に習熟するための定期的な演習、そして危機の際に発動できるアクセス協定などである。
中国はすでに、このような発展過程を実際に示している。2009年にアデン湾で人民解放軍海軍の任務部隊による継続的な活動を開始した後、2017年には、バブ・エル・マンデブ海峡という要衝に面し、中国が資金提供した港湾インフラの近くに位置するジブチに、人民解放軍初の海外軍事基地を設置した。AidDataによれば、中国は2000年から2025年までに海外168港に約240億ドルを投入することを約束している。
米国防総省は現在、中国政府が世界規模の兵站・基地ネットワークの構築を目指していると評価している。それには、常設駐屯地、共同利用施設、商業インフラと併設された軍事施設、さらには外国港湾への臨時的なアクセスなどが含まれる。
これは偶発的に起きた「任務の拡大」ではない。中国の「軍民融合」政策は、経済的資産と戦略資産の境界を意図的に消し去るものであり、いわゆる「グレーゾーン」活動が武力的行動と非武力的行動の境界を曖昧にするのと同じである。中国自身が2019年の国防白書で、中国の海外権益を守ることは軍の任務であると明記している。中国の海外投資、中国国民、サプライチェーン、資源依存が国外で拡大するにつれ、中国共産党はそれらを「保護」する必要性がますます高まっていると主張するようになるだろう。一帯一路は、その正当化の根拠とインフラの双方を提供する。
次の段階では、より多くの長距離展開、共同演習、武器売却、情報施設、中国系警備請負業者、海軍艦艇の補給寄港、そして交渉によるアクセス権の確保が進む可能性が高い。正式な軍事基地となる場所は限られるかもしれない。しかし中国に数十もの基地は必要ない。燃料、修理、監視、外交的な後ろ盾、緊急時のアクセスを提供するデュアルユース拠点のネットワークがあれば、公然たる基地建設が招く反発を避けながら、人民解放軍の世界的な活動範囲を大きく拡大することができる。
◇いつでも威圧の手段へと転化し得る
覇権国としての中国が単に自国の商業活動を防衛することが危険なのではない。習近平の「グローバル発展イニシアティブ」の名の下に売り込まれているインフラが、戦争や危機の際には威圧の手段へと転化し得ることである。すなわち、競争相手のアクセスを制限し、その動きを監視し、アジアから遠く離れた地域における中国軍の作戦を支援することが可能になる。また、それは受け入れ国に対する中国の影響力・圧力の手段ともなる。
したがって、各国政府、報道機関、研究者は、「一帯一路」事業を通常の商取引として評価することをやめるべきである。港湾の所有権、融資条件、データへのアクセス、請負業者の義務、軍事利用に関する条項について、国家安全保障の観点から精査する必要がある。民主主義諸国は、信頼できるインフラ整備の代替案を提示するとともに、脆弱な国々が自国の戦略的資産に対する真の管理権を維持できるよう支援しなければならない。
エジプトの空は、われわれに警告を発した。「一帯一路」は、もはや単なる経済の地図ではない。それは次第に、中国の軍事力を支える兵站の地図へと変貌しつつある。
「アメリカの政治学者が警告「一帯一路が中国のための軍事ハイウェイ化している」という現実」と題する「一帯一路」に関する元米軍関係者の危惧を紹介する。それはロバート・D・エルドリッヂ(政治学者・台湾外交部フェロー・淡江大学客員研究員、元米海兵隊太平洋基地政務外交部次長)氏だ。
だが中国軍が装備する兵器の性能を検証すると、なんともお寒い限りだ。全通甲板を備え空母らしき様相を呈しているものの、運用形態は巨大な「攻撃機運搬船」という代物でしかない。それは中国の攻撃機が装備するエンジンの推力が足りない、という致命的な欠陥を抱えているためでもある。
中華人民共和国は10年以上にわたり、「一帯一路」構想(BRI)を、港湾、鉄道、工場、デジタル接続性を整備する無害な計画であるかのように説明してきた。しかし、その説明はもともと実態を正確に表していなかったうえ、もはや現実とは明らかに乖離している。中国は、自らが築き上げてきた商業的な地理的ネットワークの背後に、明確に軍事力を配置し始めている。そして、最近エジプトで行われた航空演習は、これまでで最も明白な警告である。
最近の報道によれば、8月、中国のJ-16戦闘爆撃機、Y-9LGスタンドオフ電子妨害機(SOJ)、KJ-500空中早期警戒管制機、Y-20輸送機、Z-20多用途戦術ヘリコプター、YY-20A多用途空中給油・輸送機(MRTT)からなる大規模な航空部隊が約6000キロを飛行してエジプトに展開し、エジプト空軍との「Eagles of Civilization(文明の鷲)」演習に参加した。
この演習では二つの重要な「初」があった。J-16がアフリカに初めて展開したこと、そしてYY-20Aがエジプトのラファール多用途戦闘機に初めて空中給油を実施したことである。中国人民解放軍空軍(PLAAF)は、戦闘力を大陸間で移動させ、途上でその作戦能力を維持し、アラブ世界の主要な軍事国であり米国の防衛支援の受益国でもあるエジプトと、高度な異機種間空戦訓練(DACT)を実施するという貴重な経験を得た。
場所も重要である。エジプトは、世界の海上交通に不可欠な大動脈の一つであるスエズ運河を擁する。中国企業はスエズ運河経済特区に数十億ドルを投資し、製造、物流、港湾、技術分野でその存在感を拡大してきた。習近平国家主席の9月の訪問は、こうした経済関係を安全保障・対テロ協力とさらに結びつけるものとなった。
浮かび上がっているパターンは明白である。まず商業的進出があり、次に政治的影響力、技術的依存、軍事協力、そして作戦上のアクセスへと進んでいく。実際、人民解放軍空軍の戦闘機がこの演習に参加したのは今回が2回目である。2025年の「Eagles of Civilization」にはJ-10戦闘機とY-20空中給油機が参加し、エジプトのMiG-29戦闘機に対する史上初の空中給油も実施された。
◇それは段階的に進行する
さらに指摘すべきは、軍事化とは、「一帯一路」の資金で整備されたすべての港に中国共産党政権の五星紅旗を掲げることを意味するわけではないということである。それは段階的に進行し得る。海軍艦艇への補給が可能な商業埠頭、中国軍機の受け入れに慣れた空港、情報収集にも利用できる通信ネットワーク、人民解放軍が現地の地形や指揮系統に習熟するための定期的な演習、そして危機の際に発動できるアクセス協定などである。
中国はすでに、このような発展過程を実際に示している。2009年にアデン湾で人民解放軍海軍の任務部隊による継続的な活動を開始した後、2017年には、バブ・エル・マンデブ海峡という要衝に面し、中国が資金提供した港湾インフラの近くに位置するジブチに、人民解放軍初の海外軍事基地を設置した。AidDataによれば、中国は2000年から2025年までに海外168港に約240億ドルを投入することを約束している。
米国防総省は現在、中国政府が世界規模の兵站・基地ネットワークの構築を目指していると評価している。それには、常設駐屯地、共同利用施設、商業インフラと併設された軍事施設、さらには外国港湾への臨時的なアクセスなどが含まれる。
これは偶発的に起きた「任務の拡大」ではない。中国の「軍民融合」政策は、経済的資産と戦略資産の境界を意図的に消し去るものであり、いわゆる「グレーゾーン」活動が武力的行動と非武力的行動の境界を曖昧にするのと同じである。中国自身が2019年の国防白書で、中国の海外権益を守ることは軍の任務であると明記している。中国の海外投資、中国国民、サプライチェーン、資源依存が国外で拡大するにつれ、中国共産党はそれらを「保護」する必要性がますます高まっていると主張するようになるだろう。一帯一路は、その正当化の根拠とインフラの双方を提供する。
次の段階では、より多くの長距離展開、共同演習、武器売却、情報施設、中国系警備請負業者、海軍艦艇の補給寄港、そして交渉によるアクセス権の確保が進む可能性が高い。正式な軍事基地となる場所は限られるかもしれない。しかし中国に数十もの基地は必要ない。燃料、修理、監視、外交的な後ろ盾、緊急時のアクセスを提供するデュアルユース拠点のネットワークがあれば、公然たる基地建設が招く反発を避けながら、人民解放軍の世界的な活動範囲を大きく拡大することができる。
◇いつでも威圧の手段へと転化し得る
覇権国としての中国が単に自国の商業活動を防衛することが危険なのではない。習近平の「グローバル発展イニシアティブ」の名の下に売り込まれているインフラが、戦争や危機の際には威圧の手段へと転化し得ることである。すなわち、競争相手のアクセスを制限し、その動きを監視し、アジアから遠く離れた地域における中国軍の作戦を支援することが可能になる。また、それは受け入れ国に対する中国の影響力・圧力の手段ともなる。
したがって、各国政府、報道機関、研究者は、「一帯一路」事業を通常の商取引として評価することをやめるべきである。港湾の所有権、融資条件、データへのアクセス、請負業者の義務、軍事利用に関する条項について、国家安全保障の観点から精査する必要がある。民主主義諸国は、信頼できるインフラ整備の代替案を提示するとともに、脆弱な国々が自国の戦略的資産に対する真の管理権を維持できるよう支援しなければならない。
エジプトの空は、われわれに警告を発した。「一帯一路」は、もはや単なる経済の地図ではない。それは次第に、中国の軍事力を支える兵站の地図へと変貌しつつある。
日本、台湾をはじめとする価値観を共有する国々は、遠く離れた地域での中国の動きにも、とりわけ注意を払う必要がある。こうした「経済と結びついた軍事的行動」(あるいは「軍事と結びついた経済的行動」と呼ぶべきか)は、中国が他の拠点を確保し、防衛できていると判断したとき、台湾への圧力を一層強める能力と意思を補完することになるからである。
「一帯一路」概念図 by Gettyimages
>(以上「現代ビジネス」より引用)「アメリカの政治学者が警告「一帯一路が中国のための軍事ハイウェイ化している」という現実」と題する「一帯一路」に関する元米軍関係者の危惧を紹介する。それはロバート・D・エルドリッヂ(政治学者・台湾外交部フェロー・淡江大学客員研究員、元米海兵隊太平洋基地政務外交部次長)氏だ。
ただ徒に中国の軍事力を恐怖するのでなく、先ずは米中軍事費の実態から知る必要がある。現在、米国の軍事費は中国の約3倍であり、世界全体の4割強を占めている。世界のいかなる国の軍事費をも圧倒する予算を投じているのが米国だ。SIPRI等の2025年データで見ると米中軍事費の軍事予算は約9,540億米ドルで世界シェアの3割強〜約36%で圧倒的な1位だ。それと比べるなら中国は約3,355億〜3,360億米ドルで世界シェア約11.6%で第2位になる。ただし中国の場合は実際の国防支出は公表されている予算よりもさらに多いと分析されている。
それは人民解放軍が国営企業を経営し、その企業収益を退役軍人の年金などに支出しているからだ。しかし国外に展開する米軍の人数は約21万〜26万人なのに対して、中国軍(中国人民解放軍)の国外駐留人数は約400人(アフリカ東部のジブチ保障基地)でしかない。ことに米国の外国に展開する軍はアジア方面では日本に 約5万5,000人と韓国:に約2万6,000人、NATOにはドイツに 約約3万〜3万5,000人規模で、欧州全体では8万8,000人に達している。
確かに中国は軍拡に邁進し、膨大な数の艦艇を建造し空母3隻体制まで構築している。米中軍事力の単純比較では2026年時点のデータによると、軍用航空機数;米国総数 約12,784機(戦闘機 約2,948機)に対して中国総数 約3,731機(戦闘機 約2,043機)となっている。艦艇数(海軍力)中国: 総数 約1,033隻(現役 約1,005隻)に対して米国: 総数 約553隻(現役 約234隻)と艦艇数では圧倒的に中国が上回っている。ただし航空母艦では米国が11空母打撃群と圧倒的多数(原子力空母など多数)を保有する一方、中国は3隻体制など数・運用実績・性能面で米国の優位が続いている。その他にも潜水艦などの軍事力も比較すべきだが、軍事機密などもあって明確な艦数は公表されていない。
だが中国軍が装備する兵器の性能を検証すると、なんともお寒い限りだ。全通甲板を備え空母らしき様相を呈しているものの、運用形態は巨大な「攻撃機運搬船」という代物でしかない。それは中国の攻撃機が装備するエンジンの推力が足りない、という致命的な欠陥を抱えているためでもある。
もちろん中国はウクライナ戦争を検証・分析してドローン兵器開発にも力を入れている。通常兵器開発で米国に一日の長を許しているなら、非対称戦で優勢を強めるのが最善の策だ。もちろんロボット兵器開発にも力を注いでいる。しかし、それら非対称戦兵器が効果を発揮するのは接近戦だ。海路を遠征して戦争するのには余り適していない。
中国が「一帯一路」政策の「債務の罠」で奪った世界各地の港湾や空港を基地として、世界覇権を確立する、という構想を確かに持っているのだろうが、その国と強固な軍事同盟が締結されなければ、港湾や空港といった拠点だけでは軍事基地としての機能を果たすことは出来ない。その国の全面協力体制が常に保たれてない限り、大隊規模の軍を海外へ派遣することなど不可能だ。なぜなら人は常に食料を必要とするし、兵器は大量の燃料を日々消費するからだ。
完璧な兵站があってこそ、世界覇権に乗り出すことが出来る。そのためには世界各国との強固な信頼関係がなければならない。債務の罠に嵌めて奪い取った港湾や空港が、基地としてどれほど役に立つと云うのだろうか。債務の罠に嵌められた国々が快く港湾や空港の租借権を差し出したとでもいうのだろうか。
大艦隊を編成して敵地へ向かっても、寄港した基地で燃料等が補給できなければ洋上を漂流するだけだ。中国が外国に派遣している軍は僅かに400人だという。それでは世界覇権など夢のまた夢だ。せいぜいテロ行為を働くことしかできない。
トランプ氏はなぜか中国やロシアを恐れているが、ロシアの貧弱な戦闘能力はウクライナで実証された。中国軍の誇大宣伝は既に明らかになっている。トランプ氏はいったい何を恐れているのだろうか。それとも米中ロの三ヶ国が世界に君臨する巨大軍事国家、との幻想を見ているのだろうか。軍事力で他国を圧倒し支配する帝国主義は前世紀の遺物だ。そうした思考に囚われていること自体が過去の人たちに過ぎない。軍事力で圧倒して他国を支配しようとする考えを捨てることだ。彼らはイソップ物語の「太陽と北風」を必読書にすべきだろう。