データセンターは熱処理に有利な海に建設すれば良い、のか。

<AIブームによりデータセンターへの需要が飛躍的に高まれば、水とエネルギーの使用量、温室効果ガスの排出量も増大する可能性が高い。この問題の解決策として、陸上以外の場所にデータセンターを建設するという選択肢に目を向ける企業が現れている。

 例えば海底にデータセンターを造れば、サーバーを冷却するための淡水とエネルギーの量を減らせるかもしれない。さらには、陸上の広大な用地が必要なくなり、土地を有効活用できるだろう。
 2015年、マイクロソフトは海底データセンターの研究プロジェクトを開始し、18年にはスコットランドのオークニー諸島沖の海底にデータセンターを造った。同社は2年後、この海底データセンターのサーバー故障率が陸上のデータセンターの約8分の1にとどまったと発表した。
 しかし、マイクロソフトは2024年にプロジェクトを打ち切り、海底データセンターの新設も行わない方針を明らかにした。同社は理由を公表していないが、規制関連の懸念や、データセンター内に設置する機器類の更新や交換の頻度を高めたいという事情が理由だったのかもしれない。

■洋上風力発電を利用した海底データセンターの商用運転開始
 それでも、海底にデータセンターを設置する動きはほかにもある。中国の上海沖では、洋上風力発電を利用した海底データセンターが建設されて、この春に全面的な商用運転が始まった。
 2億2600万ドルを投じたこのプロジェクトでは、海水でサーバーを冷やすことにより、電力消費量を抑えている。消費電力は、従来型のデータセンターに比べて少なくとも30%小さい。
 日本では3月、海底ではなく、洋上にデータセンターを浮かべる試みが始まった。横浜の埠頭沿いの海に浮かべたプラットフォーム上にコンテナ型のデータセンターを設置し、同じプラットフォーム上に置いた太陽光発電パネルと蓄電池によって電力を賄う。実証試験は2027年3月まで続く予定だ。
 シンガポールでも、洋上データセンターの実用化を目指す動きがある。インフラ企業のケッペルが4階建ての洋上データセンターの建設に着手している。商用運転開始は2028年の予定だ。
 海水を活用してサーバーを冷却するというアプローチは、陸上のデータセンターでも採用できる余地がある。ポルトガルの港湾都市シネスにあるAIデータセンター「SIN01」では、大西洋の海水でサーバーを冷却した後、その水を再び海に戻している。

■環境面で最も大きな懸念は、冷却に用いる海水をめぐるもの
 これらのアプローチに付いて回る大きな懸念材料はメンテナンスの難しさだ。海底データセンターのコンピューター1台を修理するだけでも、データセンター全体を海上まで引き揚げなくてはならない可能性がある。
 環境面で最も大きな懸念は、冷却に用いる海水をめぐるものだ。温水や熱水を海に戻せば、周囲の海水の酸素濃度や酸性度・アルカリ性度、そして海洋生物に影響が及ぶ可能性がある。実際、ポルトガルの「SIN01」では、海に戻される海水の温度は取水時より約1度高い。
 海がAIの次のフロンティアになれるかどうかは、海が次の環境問題の舞台になることを避けられるかどうかに懸かっている。>(以上「NEWSweek」より引用)




「データセンターが“問題”なら「海に造ればいい」…中国、横浜、シンガポールで新プロジェクトへーーAIブームにより需要が高まっているが、水とエネルギーを大量に使用し「迷惑施設」視もされるデータセンター。各地で「海底・洋上」という選択肢が生まれている」とは早計も甚だしい。なぜなら海ほど危険な場所はないからだ。
 海にデータセンターを造れば良い、とは海を知らない者の発想だ。海がどれほど腐食性が高いか御存知ないのだろうか。ボートであれ何であれ、船主なら船底やスクリューなどに付くフジツボがどれほど厄介か誰もが知っている。また嵐になれば根こそぎ洗い流すほど海水が渦巻く。そうした環境下に如何なるデータセンターを構築するというのか。

 もちろん海水を冷却用に使えばデータセンターの熱処理は簡単に済む。原子炉が海岸や大河の岸辺に建設されるのと同じ理屈だ。それなら原子炉と同様に廃温水の問題も付きまとうことになる。
 しかし、それはデータセンターやAIセンターが膨大な電力を消費し、その電気エネルギーの大部分が熱に転換される、という現在の常識の延長線上にある論理でしかない。半導体がいつまでも冷却ファンで冷まさなければならないほど熱を持つ、という常識は間もなく過去のものになろうとしている。半導体製造に関して様々な革新的な技術が研究開発されている。たとえば量子半導体であり光半導体だ。それらは劇的に電力消費量を低減させ、従って発熱も抑制される。つまりデータセンターやAIセンターを海へ移す必要などなくなる。

 そうすれば海建設のための塩害に強い供給電力ユニット開発なども不要だ。耐腐食性の強い構築物を海中に建設する莫大な予算も不要だ。しかも海中から攻撃されるテロに備える防御システムの開発も不要だ。
 海にデータセンターを建設すれば熱処理が簡単だが、海は熱処理以上の様々な問題を抱えている。決してデータセンターの立地に向いた場所ではない。むしろ熱処理の不要な半導体開発こそが必要だ。熱処理が不要ということはエネルギー効率が良い、つまり電力消費が少ないということに他ならないからだ。

 鋭意研究開発が進められている光半導体と量子半導体の、それぞれの長所を組み合わせ、短所を補う光量子コンピュータの開発も様々な研究機関で進められている。現在の半導体技術を前提とした巨大データセンターの建設を急ぐべきではない。なぜなら完成後まもなく陳腐化する可能性が高いからだ。
 世界のAI競争はデータセンター巨大化の競争でもある。より多くのデータを学習・蓄積すればするほど精度の高い生成が可能だからだ。しかし黎明期のAIに早急な巨大投資はリスクでしかない。膨大な数の半導体を使用するAIに従来の半導体を用いるのには限界がある。もちろん限界の最大のものは電力供給と廃熱処理だが、その両方の問題を一気に片付けるのが光半導体であり量子半導体だ。ことに光半導体のノイズに強く安定的なのは見るべきものがある。過酷な環境でも耐えうる光半導体の強みは、未来の半導体の主流になる可能性を感じさせる。

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