世界の安定は米中の超大国からからミドル連合が主役の世紀へ。

<■重要鉱物やレアアースという産業の生命線を握るのは中国
 ホワイトハウスでの会談は華やかな儀礼が目立ち、台湾や中国の過剰生産能力、対ロシア・対イラン関係といった構造的な懸案では大きな進展が見られなかった。当初、具体的な成果として伝えられたのは、11月に期限切れを迎える米中貿易休戦の2カ月延長などにとどまった。
 その後、中国外務省は26日、約300億ドル相当の貿易を対象とする相互関税引き下げやAI対話などを含む「8項目のコンセンサス」に合意したと発表し、一定の実務的成果が明らかになった。ただし、発表は中国側によるもので、台湾や中国の過剰生産能力といった米中間の構造問題が解消されたわけではない。
 11月に中間選挙を控えるトランプ氏は国連総会での一般討論演説や米中首脳会談といった外交を通じて米国内の有権者に国際社会での存在感を誇示しようと試みた。しかし手詰まりのイラン戦争は泥沼化してエネルギーなど生活費が高騰。中国はAI(人工知能)で急速に台頭する。
 国際政治学者イアン・ブレマー氏は習氏へのトランプ氏の歓迎ぶりについて「『相互的』ではないという点が重要だ。ほんの数カ月前、トランプ氏が北京を訪問した際、彼が受けた扱いは今回と同じレベルではなかった」と米CNNに指摘している。

■「米国は失うものが大きいことを恐れているように見える」
「米国は『何かを懇願している』ように、失うものが大きいことを恐れているように見える。トランプ氏にとって重要なのは会談で安定がもたらされることだ。中国側が工場の操業に不可欠な重要鉱物やレアアースで米国を再び締め付けるような事態を避けることだ」(ブレマー氏)
「彼は共和党地盤のレッド・ステートの農家から大豆を多く買ってほしいと中国に望んでいる。これらは短期的な話に過ぎない。習氏が重視するのは台湾問題やAI競争でより大きな影響力を持つことだ」。米国は短期的な視点、中国が長期的な視点に立っているとブレマー氏はいう。
 オバマ政権で外交政策顧問を務めたブレット・ブルーエン氏は英BBCに「トランプ氏は習氏を喜ばせることだけに集中している。その戦略は習氏であろうとウラジーミル・プーチン露大統領であろうと機能しない。彼らは弱みにつけ込むことに焦点を当てているからだ」と指摘する。
 オバマ政権で米通商代表を務めた米シンクタンク、外交問題評議会のマイケル・フロマン会長は「空騒ぎ」と題した9月25日付論考で、国連総会と米中首脳会談について「大渋滞以外に何が得られたのか」と皮肉り、成果は極めて乏しかったと嘆いている。

■中国の過剰生産能力に伴う貿易不均衡の根本原因は先送り
 モスクワの製油所へのウクライナの大規模攻撃、ロシアによる北大西洋条約機構(NATO)欧州加盟国への威嚇、AIの暴走リスク論争、中東紛争の泥沼化など「地政学的ハリケーン」(フロマン会長)が吹き荒れているにもかかわらず、実質的な前進はほとんど見られなかった。
 習氏の国賓訪米についてフロマン会長は実質より華やかな儀礼先行で低い期待値通りの結果となったと総括する。確かに、フロマン氏が論考を発表した25日時点では、具体的な成果として確認されていたのは関税戦争休戦の2カ月延長などにとどまり、中国の過剰生産能力に伴う輸出攻勢といった貿易不均衡の根本原因は先送りされた。
 中国にイランやロシアへの支援を縮小させる点でも意味のある進展はなく、台湾問題で新たな進展も見られなかった。米中双方は現状維持が自らに有利に働くと判断している。米国にとっては中国が握る重要物資への依存を減らすための、中国にとってはトランプ政権をやり過ごし、習氏が来年に見込まれる4期目入りを迎えるまでの時間稼ぎとなる。
 高度な自律的AIエージェントの暴走リスク懸念が世界的に高まる中、トランプ氏は中国との「存亡をかけた競争」に勝つ必要があるとして開発の減速を拒否した。中国側も開発速度を落とす気配はなく、米中はAIのリスクと利益を巡る対話の開始と、AI関連事故についての連絡チャンネル設置で合意した。しかし、それが実効的な規制や共通の安全基準につながるかは不透明だ。

■米中関係を「根本的に解決する」のではなく「管理する」
 トランプ、習両氏は米中関係を「根本的に解決する」のではなく「管理する」ものと捉えているとフロマン会長は分析する。両首脳は衝突と対立の回避、大国間の安定と親善を強調する。現状維持が双方の利益に合致している以上、抜本的な打開策を追求する動機は働かない。
「安定」を最優先にすることは台湾への武器売却や先端半導体の輸出規制といった米国の国益に関わる重要課題で波風を恐れて妥協するという代償を伴う。「首脳会談で目立った進展がなかったことは最善ではなかったかもしれないが、最悪の結果でもなかった」(フロマン会長)
 中国が欲しかった成果はまず台湾独立反対について米国からさらに明確な言質を取ること、次に先端半導体輸出規制の緩和、第三に関税戦争の長期休戦だった。具体的な譲歩は勝ち取れなかったものの、トランプ氏から新たな打撃を受けなかったことが北京にとっては価値を持つ。
 シンガポール南洋理工大学S・ラジャラトナム国際学大学院のフー・ティアンブーン准教授は地元の英字紙ストレーツ・タイムズ(9月25日付)に「中国はトランプ氏の予測不可能性を認識しているため、同氏の在任期間を可能な限り無傷で乗り切ろうとしている」と分析する。

■習氏はトランプ氏より長い時間軸で米中競争を管理する余地
「トランプ氏と数回会談したからといって根本的な意見の相違や構造的な問題が解消されるとは中国側も夢にも思っていないはず」というフー准教授は5月の北京会談が友好的な雰囲気で行われたにもかかわらず、米国がその後も対中規制を続けている点を指摘する。
 7月には米連邦通信委員会(FCC)が安全保障上の懸念を理由に外国製ヒト型・四足歩行ロボットの新規機種の機器認証を禁じた。
「中国が言う『安定』とはトランプ政権下での米国の政策による潜在的な損害を最小限に抑えるために、何が起こり得るか見通しを立てておくことを意味する」
「関税戦争休戦の延長が2カ月間だけだったことには中国側も失望しているはず」。フー准教授は台湾への武器売却や追加関税の可能性が消えていない以上、主導権を握っているのは依然として米国だとみる。
 しかし習氏はトランプ氏より長い時間軸で米中競争を管理する余地がある。
「今すぐ米国から最大限の譲歩を取る」より経済・技術力を強化する時間を確保する方が合理的になり得る。今回、中国側の最大の成果はトランプ氏の予測不可能性を棚上げして時間を稼ぐことだったと言える。
 しかし北京への譲歩は米国の同盟国を危険にさらす恐れがある。

■米中の板挟みになり、選択を迫られるミドルパワー
 英紙タイムズ(9月25日付)は「トランプ氏が初めて大統領選に出馬した当時、口元に泡を飛ばさずに『中国』という言葉を口にすることは不可能だった。彼にとって中国人は『詐欺師、嘘つき、スパイ』だった」と振り返っている。
 対照的に空軍基地に習氏を出迎えた際のトランプ氏はまるで中国の宮廷に仕える廷臣のような振る舞いを見せたと同紙は揶揄している。「トランプ氏が習氏におもねる一方で、習氏からは目に見えて何の返礼もなかったという光景は不安を抱かせるものだった」
 米中の関税戦争休戦は米国の主要産業を保護する一方で、中国の輸出攻勢に対して欧州や東アジアの製造業を脆弱な立場に置くことになった。米中の板挟みになり、ルールテイカーに転落しかねない日本、英仏独、カナダのような中堅国(ミドルパワー)は選択を迫られている。
「団結して自国の利益を擁護するのか、それとも好ましい保護者との間で個別の取り決めを模索するのか。英国は今のところ後者のアプローチをとっている。次の米大統領が中国との宥和路線をどの程度維持するか。ミドルパワーは居心地の悪い時代を生きている」(タイムズ紙)>(以上「JB press」より引用)




「米中首脳会談で見えたトランプ外交の限界、レアアース握る中国に強硬策を取れず、浮かび上がる「中国優位」の構図」と、木村 正人(国際ジャーナリスト)氏は米中の力関係を見ているようだ。しかし木村氏が「中国優位」と見ている両国の力関係は本当だろうか。
 第一章で指摘している「重要鉱物やレアアースは中国が支配している」というのは事実だろう。ただし、それは中国が廉価な「重要鉱物」や「レアアース」を供給しているからに他ならない。米国や西側諸国が重要鉱物やレアアースを入手先を中国に依存しているのは事実だが、重要鉱物やレアアース資源が中国だけに集中しているからではない。それは中国が環境問題などを無視して、ウィグル人などを奴隷のように働かせて廉価に供給しているから、自国及び他国から生産もしくは輸入していないだけだ。

 現にレアアースは日本の南鳥島近海の海底から採掘する見通しがたち、来年にも本格操業する予定になっている。それに米国も資本参加し共同開発を行っている。
 もちろん日本のレアアースは中国のそれより10倍ほど高くつくが、レアアースはその名の通り微量しか必要でない。そのため製造コストとしては製品価格への転嫁で殆ど無視して良いほどのものだ。だから中国は日本に対してもレアアース輸出を完全にはストップしていない。なぜなら中国も輸出先を失えばレアアースの在庫が積みあがるだけで、国内消費需要では捌き切れないからだ。

 中国の過剰生産能力による輸出圧力に対して、欧州諸国は明確に拒否する方向性を示している。EU諸国は中国製太陽光パネルだけでなく、中国製EVに対しても補助金打ち切りという実質的な輸入規制に動いている。日本でも太陽光発電に対する補助金打ち切りを高市政権は断行した。現在は中国製EVにも補助金を出しているが、それもやがて廃止されるだろう。
 もちろん中国製半導体は28nmといった自動車などの電子機器に使われるものは輸入しているが、それ以上の最先端半導体に関しては中国製への信用度がネックになって輸入していない。だから中国が過剰生産しても、輸出先がなくなり中国内で在庫の山が築かれている。

 第三章の「米中関係を「根本的に解決する」のではなく「管理する」」とはどういう意味だろうか。米中は戦争して雌雄の決着を見たわけではないから、根本的な解決などできないし、管理することも出来ない。戦争で勝利して占領でもしない限り、米国が他国を管理することなど出来ない相談だ。
 中国は習近平氏のお粗末な統制経済政策により、確実に経済破綻と国家崩壊の坂道を転がり落ちている。せっかく芽吹いていた「自由経済」を、習近平氏の嫉妬心が根こそぎ引き抜いてしまった。自分より影響力のある国民が出現することを決して許さない狭隘な心の持ち主が、インフルエンサー程度の「人気者」にすら嫉妬して、潰しにかかっている。もちろん国際的な人気女優も潰されてスクリーンに登場することはなくなった。アリババのジャックマー氏やハーウェイの父娘まで表舞台から姿を消した。

 「習氏はトランプ氏より長い時間軸で米中競争を管理する余地」とは、まさに噴飯ものだ。習近平氏は明日の命すら保障されていない。彼が粛清して来た数万人と同じ運命を辿らない、という保証はない。熾烈な権力闘争に永遠に勝利し続けた人物など古今東西の歴史に皆無だ。
 その一方でトランプ氏が11月3日の中間選挙で敗れたところで、トランプ氏はレイムダックになるが、彼は抹殺されない。むしろ長く影響力を保つのはトランプ氏の方ではないか。習近平氏が仕掛けた米中覇権争いの結論は出ている。習近平氏が目論んだ「元」通貨圏構想も瓦解してしまった。当然ながら「一帯一路」構想はボロボロになってしまった。アジア開発基金に対抗すべく画策したAIIBも貸付(殆どが「一帯一路」絡みだが)資金が払底して開店休業状態になっている。AIIBに出資した世界各国が取り付け騒ぎを起こすと、習近平氏は頬被りして夜逃げでもするつもりだろうか。

 最終章で「ミドルパワーは居心地の悪い時代を生きている」と木村氏は結論付けているが、その根拠は薄弱だ。居心地が悪いのではなく、世界に超大国が消えようとしているから、自分たちが頑張らなければならなくなったということだ。
 これまでは超大国・米国に依存していれば良かったが、トランプ氏が狂気じみた関税引き上げを実行して、世界を先の大戦以前の重商主義時代へ引き戻してしまった。それで中堅国家群は米国離れを起こしている。しかし、米国に替わって中国が代役を果たすかと云えば決してそうではない。中国は米国と比較するのも飛んでもないほど信用ならない国だからだ。信用のない国に依存すると、その国がどうなるかはドイツで明らかになっている。だから「ミドル連合」待望論が出て来る。その主導的役割を果たすのは間違いなく日本だ。なぜなら日本こそが次世代半導体のハブになる国だからだ。超大国が覇権を握る時代は過去のものになりつつあり、これからの世界は武威ではなく、サプライチェーンによりミドル連合が世界の安定を守る世紀になりそうだ。

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