日本政府が中国の海洋進出に対抗して周辺諸国と連携するのは当然だ。

＜６月末に就任したドゥテルテ大統領と安倍首相が会談を行うのは初めて。両首脳は南シナ海の領有権問題を平和的に解決するため、協力していくことで一致した。

日本はフィリピンの海洋監視・警戒能力の向上を支援するため、これまでに１０隻の巡視船をフィリピン沿岸警備隊に供与することを決定している。約１６５億円の円借款で新たに供与する２隻はより大型で、外洋まで航行することが可能になる。首脳会談では、フィリピン海軍に海上自衛隊の練習用航空機を貸与することも改めて確認した。

中国は南シナ海の大半を自国海域と主張しており、一部で領有権を争うフィリピンはオランダのハーグの国際仲裁裁判所に提訴した。裁判所は今年７月、中国の主張には根拠がないとの判断を出したが、中国は裁定に従わない方針を表明している。

中国は、日本や米国が南シナ海問題に介入しないよう求めている。新華社通信は５日、同日夜の日中首脳会談で習近平国家主席が安倍首相に対し、南シナ海問題に対する「言動を注意すべき」と伝えたと報じた＞（以上「ロイター」より引用）

　ラオスのビエンチャンで開催されているＡＳＥＡＮ会議に出席している安倍氏が南シナ海で中国の海洋進出により軍事的脅威を受けている諸国に対して支援することを前提に、南シナ海に面する国々の首脳と会談している。マレーシアに対しても円借款により海洋警備艦船を2隻送ることにしたようだ。
　そうした動きに対して中国は日本が南シナ海のことに嘴を挟むのは余計なことだ、と批判しているようだが、中国は安保理常任理事国として大きな顔をして世界の国際紛争に嘴を挟んでいる。

　南シナ海に関して日本は直接当事者でない、という中国の批判は当たらない。海外との貿易により国民生活や産業活動を支えている日本にとって主要な航路にあたる南シナ海の平和にして自由な航行は決して譲れない。中国もソマリア沖の海賊対策に軍を派遣している。ソマリア沖は中国にとって「当事者」でないはずだ。
　それと同じ理屈に過ぎない日本の行動を「当事者でない」と批判するのは論理的に破綻している。中国は南シナ海沿岸諸国が軍事的に弱小国ばかりだから大きな顔をして「九断線」などという勝手に中国が設定した「領有権」を主張する、という暴挙こそ反省すべきだ。

　しかも国際機関の仲裁裁判所でフィリピンの提訴を全面的に正しいとされている。国連という国際機関では常任理事国として大きな顔をしているが、自分の気に喰わない裁定を下した仲裁裁判所は無視する、というのは大人げないというよりも愚かなことだというしかない。
　中国のこうした常識を欠く振舞いは国際的に批判されてしかるべきだ。そして国連という機関そのものが往々にして常識を欠く偏った機関であることを知るべきだ。

　日本は「戦勝国クラブ」として発足した国連に執着するのではなく、「常任理事」五ヵ国の権利を特別扱いにする非民主的な機関でない、各国・民族の権利を平等にした国際機関を創設すべき主導国になるべきだ。米国の世界戦略が一点の非のない正しいものでないことはアフガン侵攻やイラク進攻により明らかになっている。
　もちろんロシアのクルミア半島併合や中国のチベットや新疆ウィグル地区の併合や内蒙古の併合が正しくないのは明らかだ。そうした正しくない蛮行を行っている諸国が大きな顔をして特別な「権利」を保持し行使する国連で世界平和が創設できるわけがない。国連に出来るのは不完全な常任理事国の利害調整だけだ。

　日本の平和と安全保障は日本が主導的に守るしかない、というのは中国が仲裁裁判所の判定を無視したことから明らかだ。国際機関の裁定を無視する国があれば国際機関の存在意義はなくなる。中国の愚かな行為は、中国が大きな顔をしてのさばっている国連の威信も同時に低下させていることを知らなければならない。
　中国の経済力の前に今回のＧ２０は中国を吊し上げることをやめたようだが、中国を吊し上げてＧ２０から締め出せば、新たに他の国が中国の抜けた穴を埋めることになる、という原理に気付かないのだろうか。中国を国際舞台から締め出しても、どの国も損をしない。ただ中国に直接投資している企業が損するだけだ。

　中国への直接投資は中国という「鬼っ子」を育てただけだった。このどうしようもない愚かな国に対して、世界は一致団結して躾けるべきだ。一人前の国家として国際社会で受け容れられる規律ある行動規範を備えるまで、中国を締め出すべきだ。少なくとも南・東シナ海から中国の海洋進出の暴挙を中共政府に思い知らせるべきだ。そのために南シナ海沿岸諸国と日本は力を合わせるべきだ。