選挙が盛り上がらないが…

　いい年をした党首がお互いに悪口の言い合いで、国民は聞いているだけでうんざりだ。まず与党の民主党が不甲斐ない。初めから過半数を狙う熱い思いもなく、三年前の得議席の60ではなく今回の改選議席54を目標にするとは。

　自民党もバラ撒きを消費税の増税で補うつもりかと民主党を非難するが、今ある膨大な赤字国債の大部分は自民党と公明党の連立政権下に作ったものだ。しかも国民には子供手当などのバラ撒きもしないで。「一番の国にする」というが、自民党こそが官僚制内閣の下で日本を一番の国から転落させた張本人ではないのか。

 

　名前を覚えるのですら苦労する元自民党議員による乱立ミニ政党が様々に民主党政権を批判の叫びを上げている。いかにも自分たちこそが第三極を形成すると息巻いているが間違えてはいけない、今の民主党を作った元自民党議員は政権与党の甘い汁を吸うのを拒否して出て来たのであって、自民党が政権の座から陥落するのを見越して或いは陥落してから野党遠心力で出て来た昨日今日の乱立ミニ政党とはわけが違う。

 

　選挙が盛り上がらないのは各政党が言っている内容が的外れだからだ。「増税と経済成長を両立させる」と菅氏は本気で考えているようだが、それは経済原則にない暴論であって、誰かに入れ知恵された悪い冗談だ。これまででも増税して立ち直りかけていた経済が失速した橋本政権の失政が記憶に新しい。景気対策を本気で考えるのなら亀井静香氏のいうとおり財政拡大の積極経済対策を打つことだが、承知の通り財政支出の経済効果は国家予算すべてでもGDPの20％程度しかない。つまりGDPの５０％を占める個人消費支出を拡大させる方が景気への効果が大きいのは経済政策の常識だ。

 

　高速道路無料化の経済効果が大きいため慌てて官僚はその数字を引っ込めてしまったが、一部の限定された無料化だけでもこの週末は各地の観光地が軒並み賑わっている。出掛けたくても関所のように高速道路でバカ高い料金を徴収されては出掛けるのが億劫になる。しかしタダなら出かけて観光地で旅行者気分を味わって家族で思い出作りをしようという気になるものだ。その経済波及効果は大きく、観光地は久しぶりの家族旅行客に賑わっている。これから夏休みに入れば各地のアウトドア施設にも家族連れが出かけるだろう。高速道路無料化を批判していた評論家やマスコミがどんなコメントをするか今から楽しみだ。

 

　このブログで何回も書いてきたが、国の発展する底力は人口だ。インドや中国やブラジルがなぜ注目されているのか、それは人口が多いのがその大きな要因だ。日本の現在の特殊出生率1.33から1.34程度では百年後には人口が半分になるが、そのような国が経済成長を続けるのは困難だ。早い話が家も車も半分で良くなるし商店やホテルも半分で良くなる。そうした将来を見越して投資する人がいるだろうか。つまり人口はその国の底力なのだ。人口を増やす政策をまず何はともあれ考えるのが今の日本の政治家の喫緊の課題であるべきだ。そのためには子供手当も高速道路無料化も高校無料化も奨学金の給付型への移行も、若い親が子供を産んでその後を想像して負担に感じないようにすることが最優先されるべきだ。子供を囲んで若い親が明るく楽しい明日を容易に想像できるような政策を掲げて訴えることが政党の役目であるべきだ。増税を訴えて責任ある態度だと政治評論家やマスコミに煽てられることが選挙対策ではない。若い親が安心して子育て出来る社会を作ることが何よりも優先されるべきマターだ。

 

　枝葉末節の10％と言ったかどうかだとか、還付世帯を２００万円とするのか350万円とするのかだとか、国会議員を80人削るのか半分にするのかなどといい大人が首に血筋を立ててがなり立てることではない。そうした課題はその方向で選挙後に協議すればよいことで、大切なのはこの国のカタチをどうするかということだ。国と国民を日本人が守る国にするために米軍に撤退してもらうとか、中二階でまともな役割を果たしていない府や県を廃止して道州制にどのようなスケジュールで移行するのか、官僚制内閣を廃して国民の代表が政治を行えるように局長以上は一旦退職してもらうとか、現在のバカげた民間に少しも準拠しない公務員給与を決めている人事院を即座に廃して民間人による公務員給与制定委員会（仮称）などを設置して官庁と関わりを持たない数年任期の民間人に公務員給与を裁定させるとか、この国をすべての国民に対してフェアーな国にするための仕組みを考えて提示してもらい、選挙とはそうした政策の見本市として国民に選んでもらう場であって欲しい。

　おざなりにして空虚なスローガンをテレビCFで幾ら流しても、国民の耳には遠い世界のことのように聞こえるだけだ。それよりもこの国の未来を真摯に語りかける姿勢こそ何ものよりも勝る。