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鉄は国家なり、というが。

<米鉄鋼大手USスチールのデービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は、日本製鉄による買収が不成立なら、製鉄所を閉鎖することになり、本社をピッツバーグから移転する可能性も高いと米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで語った。  WSJによると、ブリット氏はインタビューで、日鉄はUSスチールの老朽化した製鉄所に約30億ドル(約4300億円)の投資を約束しており、それが競争力を保ち雇用を維持する上で欠かせないと指摘。 「日鉄買収が不成立に終わるなら、それは実現されない。その資金がないからだ」と述べたという>(以上「Bloomberg」より引用) 「 USスチール、日鉄による買収が不成立なら工場閉鎖へ 」とBloombergが報じている。トランプ陣営もハリス陣営も感情的になってUSスチールが日鉄に買収されるのは認められない、と叫んでいるが、現実は大統領選の目玉になるようなものではない。極めて商業的な取引の一つでしかないからだ。  USスチールは事業投資や研究開発にそれほど熱心ではなかったようだ。廉価な粗鋼は中国の独占販売になっていて、それに対抗するのは困難だ。USスチールは赤字構造を劇的に改善する方法は日鉄が併呑するしかない。  それとも米国政府はUSスチールを国有化して、米国政府がUSスチールが垂れ流す赤字を米国民の税金を使って丸抱えするのか。日本製鉄は国内数社が統合して、中国の廉価な粗鋼の輸出攻勢と対抗するために出来た会社だ。しかも新規製品開発し、他者では製造できない自動車用の特殊張鋼を製品化し製造している。そうした武器を持った企業だ。  このままUSスチールを放置して倒産させるよりも、日鉄が買収して提携企業として再建する方が米国にとっても利益のある経営選択ではないだろうか。しかも日鉄はUSスチールの経営陣の過半数を米国人にすると約束している。欧米人や中国人との約束はアテにならないかも知れないが、日本人との約束は安心して良い。日本人こそ世界中で姑息なことを最も嫌う国民だからだ。  先の大戦以後も、日本は散々米国に虐められてきた。プラザ合意然り、半導体戦争然り、トロンを排してウィンドウズを強制したOS戦争然り、日本が伸びようとすると、必ず米国は強権発動して伸びる芽を摘んできた。しかし今度はまさに滅びようとする米国の鉄鋼企業に対して日

間もなくプーチンの戦争はプーチンの敗北で終わる。

< 「奇襲攻撃」の恐ろしさ 「奇襲」直後の8月9日付のロシア語の新聞「コメルサント」に掲載された地図(下)からわかるように、「奇襲攻撃」は広範囲におよぶ。ウクライナ軍に攻撃された範囲を狭くみせたいロシアだが、それでも下図からわかるように、クルスク州を中心に激しい戦闘が展開されたことがわかる。  もっとも重要なことは、ウクライナ軍によって「奇襲攻撃」が行われた事実である(私は三度戦争保険に入り、現代の戦争を体験しているが、よほどことがないかぎり戦争そのものについては語らないようにしている)。  リトアニア国営ラジオ & テレビが8月26日に公表した、ベン・ホッジズ元米欧軍司令官のインタビューを読めば、「奇襲」の意味合いがよくわかる。彼はつぎのように語っている。 「クルスク国境地域を車で通ってきたばかりだという人物と話をしたが、その人物によると、ロシア側には哀れな『ドラゴンの歯』(下の写真)と有刺鉄線があるだけで、他には何もなかったという。障害物は、背後に人がいなければ意味がない。そうでなければ、簡単に排除できる。  実際、ウクライナ軍はそれをやってのけた。ウクライナ軍は防衛が手薄な場所を選んだ。クルスク、ハリコフ、ベラルーシ国境を含むこの北部地域の地図を見たロシア軍は、ウクライナ軍が攻撃してくることはないだろうと考えた」 「パールハーバー」(真珠湾攻撃)並みの「奇襲攻撃」  つまり、ウクライナ軍は、かつて日本軍がアメリカのハワイ州の真珠湾にあった米海軍太平洋艦隊およびその基地を奇襲攻撃したのと同じように、敵たるロシアの油断に乗じて攻撃を行い、大成功を収めたことになる。  ホッジズ自身、アメリカ史上、驚かされた例として、たとえば、真珠湾攻撃や1944年12月のドイツ軍の攻勢、あるいはベトナム戦争をあげたうえで、つぎのようにわかりやすく解説している。 「これらのケースではすべて、敵(日本、ドイツ、あるいは北ベトナム)が何かを計画している兆候があったが、我々の状況認識と一致していなかったため、予想外の出来事となった。今回のケースでは、ロシア参謀本部は何かを見て、何かを知っていたが、それが彼らの状況認識と一致しなかった。ウクライナが実際にこのようなことをするとは信じられなかったのだ」  どうだろうか。まさに、ウクライナ軍による今回の「奇襲攻撃」は、「パールハーバー」並

藤巻氏が「円が紙屑になる」と予言するのは何回目だろうか。

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< 日本経済はこれからどうなるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「政府や日銀に円安を止める方法はない。まもなく日本円は紙くず化する恐れが強い。いまのうちに円をドル資産に替えたほうがいい」という――。 半年で5兆円超の資産価値を失った日銀  日銀が11月28日に発表した4~9月期決算によると、保有国債を時価評価すると8749億円もの含み損が発生した。  日銀は必死の「指値オペ」(定めた値段で売ってくる国債を無制限に買い取るオペ)で長期金利上昇を防いでいた。9月末は、なんとか評価損の発生を回避できたかと思っていたが、無理だったようだ。  この報道を聞いて、私なぞ、「ついに日銀の取り潰し、円の紙くず化の最終ステージに突入したのか」と思ってしまった。  半年前の3月末は4兆3734兆円もの評価益があったのだから日銀は、この6カ月で5兆2483億円も資産価値を失ったことになる。  2022年3月末時点で10年債金利は0.218%、9月末は0.277%だった。米国では一晩で起こるようなたった0.058%の金利上昇で、これほど巨額の資産価値を失ったのだ。  日本同様、昨年はマイナス圏にあったドイツの10年国債金利は今や1.93%(2022年12月12日現在)。昨年12月の△0.38%から2.31%も上昇している。日本で同程度の金利上昇が起これば日銀は、とんでもない評価損を抱え込むことになる。 画像=日本銀行ウェブサイトより  日本銀行の資産残高の推移。資産残高が右肩下がりになっていることがわかる。 1%の金利上昇で28.6兆円、2%で52.7兆円…  実際に12月2日の参議院予算委員会で浅田均参議院議員が、「全期間で同じレートだけ金利が上昇したら(すなわち金利のパラレルシフト)日銀保有国債にいくらの評価損が発生するか?」と聞いたところ、雨宮正佳まさよし日銀副総裁は以下の通り回答した。要点はこうだ。  1%の金利の上昇で28.6兆円、2%で52.7兆円、5%の上昇で108.1兆円、11%上昇で178.8兆円の評価損を食らう。  気が遠くなる、とんでもない数字だ。なにせ1年間の国の税収が70兆円に届かないのだから。日銀の引当金+準備金は9月末で11.1兆円しかないのだから、1%のパラレルシフトの金利上昇で、完璧な債務超過である。 日銀の信用

中国経済の崩壊は止まらない。

< 引き続き低落、「繁栄の」上海の消費  中国の各地方のなかで、上海と北京が域内GDPの国内第一位と第二位を占めている。この二つの直轄市は深圳や広州を抜いて、中国きっての経済大都会であり、そして、かつての「中国の繁栄」の象徴である。しかし今、中国を代表するこの二大都市では、「消費崩壊」とも言うべき深刻な事態が起きている。  まず上海の場合、7月23日の上海市統計局が公表によると、6月の上海市全体の小売総額は前年同期比では9。4%減であるという。そのうち、宿泊・外食関係売上総額は6.5%減、食料品売上総額は1.7%減、衣料品売上総額は5.0%減。そして日用品の売上総額となると、それは何と13.5%減となっているのである。  つまり今年6月、中国一の繁栄大都市である上海では、人々が外食を減らしているだけでなく、普段の日常生活においても文字通りの縮衣節食の生活に入り、文字通りの消費崩壊が現実に起きているのである。 北京の激烈な外食価格競争  そして上海だけではない。上海に次ぐ経済大都会である北京でも同じような現象が起きている。8月16日、北京統計局が発表したところでは、今年上半期の北京市全体の小売上総額は前年同期比0.8%減の微減となっている。だが、8月26日、同じ北京統計局が発表した外食産業に関する数字の一つは、人々に衝撃を与える全国的大ニュースとなった。  それによると、今年上半期、北京市内の外食産業では、一定規模以上(年商1000万元=2億円以上)の飲食店の利益総額は1.8億元(約367億円)であって、それは前年同期比では何と、88.8%減であるという。「利益約9割減」というはまさに驚異的な数字である。  7月に北京市統計局が発表した数字では、今年上半期において北京市外食産業全体の売上総額は637.1億元で前年同期比3.5%減となっている。外食産業全体の売上はそれほど減っていないが、その中で、一定規模以上飲食店の利益総額は約9割減であることが意味するのは、要するに、消費が沈没していく中で、北京市の外食産業は激しい価格競争に巻き込まれて、最低限の売上を維持するためには価格を無理やりに抑えて利益を徹底的に削るしかないところに追い込まれている、ということである。 これこそ未曾有の大不況の証拠  ここで示した「一定規模」、つまり年商1000万元という目安以上の規模の飲食店と

EUは対中デリスキングを推進するのか。

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<◎ 欧州委員会は中国とのデリスキリングを進めようとしているが、その道のりは簡単ではない。 ◎事実、ドイツの自動車メーカーは対中投資を減らしてはおらず、イタリアも中国企業の誘致に躍起だ。 ◎それだけ欧州と中国の経済的なつながりが深いということだが、欧州委員会はデリスキングをどう進めていくのだろうか。  欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は、中国との間で「デリスキング」(リスクを軽減しながら経済関係を維持すること)を進めようと躍起になっている。こうした要請を受けて、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、2023年7月に同国として初となる「対中戦略」を発表。中国との間でデリスキングを進める方針を内外に示した。  一方で、それが容易ではないことを物語るのが、ドイツの企業の対応だ。  例えば、ドイツの対中投資の動きを確認すると、直近2024年4-6月期は名目GDP(国内総生産)の0.13%程度だった。確かに過去の水準に比べると、ドイツの対中投資は減っているが、「対中戦略」を発表して以降は減っておらず、底堅く推移している。 【図表1 ドイツの対中投資】 (注)4四半期後方移動平均(出所)ドイツ連銀  こうした対中投資の動きからは、ドイツ企業が中国との間でデリスキングを進めている様相は窺えない。  確かにドイツ企業の多くが、中国事業の見直しを図っていること自体は事実だ。市場の成熟や民族系企業の成長で、中国でかつてほどの高収益が見込めなくなったためである。だからといって、ドイツ企業にとって中国事業が重要なことに変化はない。  むしろ、中国との関係を再び重視している産業もある。その代表的な存在が自動車工業だ。 欧州で規制を受ける自動車メーカーの本音  実際に2024年4月25日から5月4日の日程で開催された第18回北京モーターショーでは、ドイツの主要完成車メーカー3社(BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン)が対中戦略を発表。今後も中国との関係を重視する姿勢を鮮明にしたばかりだ。  ではなぜ、ドイツの自動車メーカーはデリスキングを進めようとしないのか。最大の理由は、ドイツの自動車メーカーにとって、中国の市場が引き続き最大の収益源だというところにある。また両国の自動車メーカーの間には、密接な供給網(サプライチェーン)が構築されている。それをすぐに見直すことなど、双方にとって

小沢よ、お前もか!!

 < 立憲民主党の 小沢一郎 衆院議員は3日、 野田佳彦 元首相(67)の衆院議員会館の事務所を訪ね、党代表選で支援する意向を伝えた。小沢氏は党内グループ「一清会」(約15人)を率いており、所属議員の多くは野田氏を支持するとみられる。  旧民主党の野田政権で、小沢氏は消費税増税に反発して集団で離党。2012年衆院選での下野につながった。小沢氏は3日、記者団に「それを乗り越え、国民のための政治を実現するという大義に結集することが大事との思いで支援を決めた」と語った。  両氏は7月以降複数回協議し、次期衆院選で政権交代を実現するには「穏健な保守層」の支持が必要との認識で一致していた。  野田氏も東京都内で記者団に「大変有力な大先輩から支援をいただけることはありがたい」と強調。小沢氏に関しては「政権を取らなければいけないという執念を強く感じた」と語った。  一方、 菅直人 元首相が率いる党内グループ「国のかたち研究会」は3日、国会内で役員会を開き、模索していた 西村智奈美 代表代行(57)の擁立を断念する方向で調整に入った。関係者によると、西村氏が固辞しているためだという>(以上「時事通信」より引用)  小沢よ、お前もか!! と怒りが湧き上がって来る。「 立民・小沢氏、野田氏を支援 代表選、西村氏は見送り調整 」との見出しを見て、愕然とした。  かつて小沢氏は 野田首相の「消費税10%」に反対して民主党を離党したではないか。その日以来、野田氏は政敵になったはずではないか。  前回の総選挙で初の小選挙区で敗れ、比例復活した「老兵」の最期のご奉公ではないのか。今回の代表選で小沢氏は2009民主党マニフェストの実現に少しでも可能性のある斬新な候補を応援して、死に花を咲かすのではないか、と期待していた。  しかし蓋を開ければ「野田氏を支援」という。野田氏こそ、民主党を第二自民党にすべく「ザイム真理教」に帰依した裏切り者ではないのか。筋を通して離党し、苦汁を散々飲まされた野田氏を、政治家生命の最期の最期で応援するとは何事か。  現状の日本経済を考えるなら、あなたが筋を通して離党した「消費税廃止」こそが正しい政策ではないか。それこそ30余年も衰退した日本の元凶はPB黒字化目標を掲げる財務省とその三下に成り下がった政治家諸氏ではないか。そのことを分かった上で、あなたは野田氏を批判し離党

地震予知で大騒ぎするより、具体的な救命策を講じる方が先ではないか。

< わが国の「南海トラフ地震」煽りは「アタマがおかしい」レベル  先週末、瀬戸内海の島めぐりをしていて、宿の主人に「キャンセルが出たから、部屋をグレードアップしてあげる」と言われました。  もちろんキャンセルの理由は、「南海トラフ地震臨時情報」の「巨大地震注意」が出たからです。  8月8日に起きた地震の震源地周辺で今後しばらく地震が頻発するのは当たり前ですが、地震による津波発生を恐れて瀬戸内海の民宿の予約をキャンセルするのは「アタマおかしい」レベルの話だと思います。  今回の臨時情報で、和歌山県の白浜や三重県の伊勢界隈で海水浴場を閉鎖したところがあるようですが、これまた同様に「アタマおかしい」レベルの行動です。  その後、気象庁は「ひずみ計などに特段の変化は見られない」などと情報を発信していますが、そもそも「ひずみ計」が地震の予知に役立った話は聞いた事がなく、日本の地震学者と役所はオカルトレベルの情報を垂れ流し続けているのが現実です。  今回の地震の後にSNSなどで「地震雲を見たからもうすぐ大地震が起きる」等の情報を流している人が一部マスコミに批判されていますが、気象庁や地震学者の根拠の無い「注意情報」を垂れ流すマスコミも実はSNSの糞共と同罪でしょう。  もしかすると地震雲の方が、経験則で根拠がある分、マシかもしれません。 役に立たない「地震研究」に費やされる莫大な税金  かつて日本政府と地震学者は、「東海地震は予知できる」として、おびただしい予算を費やして地震計やひずみ計を東海エリアに設置して「学者の地震予知情報に基づいて総理大臣が避難命令を発する」等の体制を整えました。 その後、阪神大震災や東日本大震災が起こり、「地震は予知できない」と法律の前提を変えたものの、それに代わる予算獲得策として、「南海トラフ地震に関して、地震前に政府が警戒、注意を呼び掛けるシステム」を作りました。  これは、東海地震で失敗したことをさらに大規模に行うだけの話で、一部の本当の専門家から「地震学者と行政の焼け太り行為」と批判されていました。  その後も地震学者と行政が発表している地震発生確率マップ上で、地震発生確率が低いとされた地域ばかり(北海道、熊本、能登等)で大規模地震が起こり、ある程度自分の頭で判断できる人には、「新聞に出ている地震発生確率マップは根拠ゼロのオカルトマップにすぎな

林語堂が現在の日本を見れば、どのような皮肉を書き記すだろうか。

<1945(昭和20)年から数えて79回目の「8月15日」を1日前にした8月14日午前、岸田文雄首相は9月に予定されている自民党総裁選への出馬断念を唐突に表明した。致命的とも言える不人気にもかかわらず、あれほどまでに総裁選再出馬に拘泥する姿勢をみせていただけに、岸田首相を取り囲む政治環境において、その“志”を挫くほどに衝撃的で決定的な異変があったと類推するしかない。  岸田首相は総裁選不出馬を決意するに到った動機として、「自らが身を引くことで自民党の再生を目指す」「『オール自民党』でドリームチームを作って信頼回復を目指す」といった趣旨を語っていた。だが岸田首相1人が身を退いたからといって、列島全体を覆うほどの不信感が払拭され、党勢が急速にV字回復すると期待するのは非現実的に過ぎる。政党としての自民党の劣化は、それほどまでに深刻で危機的と考えるべきだ。  岸田首相を筆頭に与野党問わず、多くの政治家は自らの日々の振る舞いを真摯に顧みることなく、まるで他人事のように国民の「政治不信」を口にし、問題視する。だが国民の素朴な感情に即するなら「政治不信」ではなく、与野党を問わず個別具体的に名前を言い当てる必要もないほどに日常化した「政治家不信」というべきだろう。  メディアもまた偶然か故意かは判然とはしないが、社会全般に渦を巻く「政治家不信」を「政治不信」と曖昧に“翻案”して報ずるばかり。こうして「政治家不信」の裏側で「メディア不信」もまた必然的に募ることとなる。これが我が国の政治を取り巻く悲惨で非生産的な現状だと考える。 「中国語文法」ならぬ「自民党語文法」  「政治家不信」の原点と考えられる政治資金パーティー裏金疑惑が発覚した時、咄嗟に頭に浮かんだのは、20世紀の中国を代表する英語の使い手と評価され、また稀代の皮肉屋でも知られた林語堂(1895~1976年)が1935年にニューヨークで出版した『MY COUNTRY AND MY PEOPLE』(邦訳は『中国=文化と思想』鋤柄治郎訳、講談社学術文庫)だった。同書の中で林語堂は、「中国語文法」について次のように語っている。  「中国語文法における最も一般的な動詞活用は、動詞『賄賂を取る』の活用である。すなわち、『私は賄賂を取る。あなたは賄賂を取る。彼は賄賂を取る。私たちは賄賂を取る。あなたたちは賄賂を取る。彼らは賄賂を取る』で

フラッキング容認に転じたハリス氏は「嘘つき」かそれとも「本質的価値」は変わらないのか。

< 食い下がるCNNのダナ・バッシュを一蹴  米民主党の大統領候補に指名されたカマラ・ハリス副大統領がティム・ウォルズ副大統領候補を伴って、8月29日、CNNのインタビューに応じた。  民主党は全国党大会で盛り上がったハリス支持基盤の熱気をテコに全米有権者獲得を目指して、正式に指名されてから7日しか経っていないハリス氏をゴールデンアワーに登場させた。  これは生放送ではなく、事前に録画したもの。ウォルズ氏の同席は失言などを警戒した措置と見られるが、ウォールストリート・ジャーナルなどは同氏のことを転ばぬ先の「松葉杖」と皮肉った。  ウォルズ氏のあだ名は「コーチ」(教師の時アメフトのコーチを務めていた)。まさにインタビューには不慣れなハリス氏のコーチ役として同席した格好だった。  というのも、インタビュアーは6月27日のジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領のテレビ討論会の共同モデレーターを務めたダナ・バッシュ記者。  この討論会での情けないパフォーマンスがバイデン氏が大統領選から撤退する遠因になったことは、まだ記憶に生々しい。  いわば、バッシュ氏は民主党にとっては鬼門なのだ。  といっても、同氏はCNNのトップキャスターの一人。公明正大で全く嫌みのないジャーナリストで、相手が誰であろうと厳しい質問を浴びせる。 政策は変えても本質的価値に変化なし  バッシュ氏の質問は、物価高、インフレ、福祉、不法移民、気候変動など広範囲に及んだ。  同氏は、2019年の大統領予備選の立候補者、20年以降の副大統領当時のハリス氏の発言をとらえて大統領候補としての見解をただした。 「あなたは、2019年には大統領就任第1日に(気候変動に対処する政策の一環である)グリーン・ニューディール政策を打ち出す、と言っていたが、今も変わりないか」  これに対して、ハリス氏はこう答えた。 「気候変動危機は今そこにある緊急な問題だ。変動状況を観測し、測定しなければならないし、削減目標策定の期限を決めねばならない」  民主党内の過激リベラル派は、化石エネルギーに代わる太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギー産業の推進を提唱してきた。ハリス氏もこれに賛同していた。  ところが、インタビューではこれには触れずじまい。 (インタビューの後、ハリス氏の側近の一人はCNNに対し、「ハリス氏はグリー

富裕層も貧困層も中国から逃げ出しているが・・・。

<中国の政策を嫌う富裕層が母国を抜け出し、海外移住するケースが増えている。東京の高級マンションにも殺到しているほか、移住に利のある世界各地へと向かう富裕層が後を絶たない。中国政府が国外への資金流出を止めようと躍起になる一方、移住先の国側でも文化的摩擦などの問題が懸念されている。 ◆スーツケースの現金でタワマン購入  ニューヨーク・タイムズ紙は、東京の3億円以上のマンションの主要な購入者は中国人であり、彼らはしばしば現金で支払いを行っていると報じている。中国の富裕層は、現金を持ち込んでマンションを購入することが多い。たとえば、東京の不動産業者によると、中国人バイヤーはスーツケースに現金を詰めて持ち込み、マンションの購入に充てているという。  東京23区のなかでも特に中央区、文京区、千代田区などの都心部で外国人の増加率が顕著だ。これらの地域はタワーマンションや教育環境が整っているため、中国人富裕層に人気がある。  産経新聞によると中央区では、外国人に占める中国人の割合が5年前の約43%から約51%に増加している。特に晴海などの臨海部にあるタワーマンションが人気で、内見に来る顧客の多くが中国人経営者だという。教育環境が充実した文京区も中国人富裕層に人気がある。  都内の外国人専門不動産会社が同紙に明かしたところでは、都心の41階に位置する2億1500万円の中古タワーマンションを内見に来た25組のうち23組が中国人経営者だったという。 ◆日本だけではない…北米、欧州、シンガポールが人気  祖国を離れる中国の富裕層は多い。移民向けのコンサルティングなどを提供する国際組織のヘンリー&パートナーズは6月、今年の中国の富裕層の純流出は過去最多の1万5200人(2023年は1万3800人)に上るとする報告書を発表した。  米ニューズウィーク誌によると、中国の富裕層が最も多く移住するのはアメリカで、続いてカナダ、欧州連合、シンガポール、日本、香港の順に人気があるという。  なお、ここでいう富裕層は、現金・株式・債券・投資信託など流動性の高い資産(自宅・車・宝石などは含まず)を100万ドル(約1億6000万円)以上所有する人々を指す。 ◆毎月500億ドルが中国から持ち出されている  中国政府は富裕層と資金の流出に頭を抱える。資本規制を強化しており、特に大規模な海外投資や不動産購入に対して