フラッキング容認に転じたハリス氏は「嘘つき」かそれとも「本質的価値」は変わらないのか。

食い下がるCNNのダナ・バッシュを一蹴
 米民主党の大統領候補に指名されたカマラ・ハリス副大統領がティム・ウォルズ副大統領候補を伴って、8月29日、CNNのインタビューに応じた。
 民主党は全国党大会で盛り上がったハリス支持基盤の熱気をテコに全米有権者獲得を目指して、正式に指名されてから7日しか経っていないハリス氏をゴールデンアワーに登場させた。
 これは生放送ではなく、事前に録画したもの。ウォルズ氏の同席は失言などを警戒した措置と見られるが、ウォールストリート・ジャーナルなどは同氏のことを転ばぬ先の「松葉杖」と皮肉った。
 ウォルズ氏のあだ名は「コーチ」(教師の時アメフトのコーチを務めていた)。まさにインタビューには不慣れなハリス氏のコーチ役として同席した格好だった。
 というのも、インタビュアーは6月27日のジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領のテレビ討論会の共同モデレーターを務めたダナ・バッシュ記者。
 この討論会での情けないパフォーマンスがバイデン氏が大統領選から撤退する遠因になったことは、まだ記憶に生々しい。
 いわば、バッシュ氏は民主党にとっては鬼門なのだ。
 といっても、同氏はCNNのトップキャスターの一人。公明正大で全く嫌みのないジャーナリストで、相手が誰であろうと厳しい質問を浴びせる。

政策は変えても本質的価値に変化なし
 バッシュ氏の質問は、物価高、インフレ、福祉、不法移民、気候変動など広範囲に及んだ。
 同氏は、2019年の大統領予備選の立候補者、20年以降の副大統領当時のハリス氏の発言をとらえて大統領候補としての見解をただした。
「あなたは、2019年には大統領就任第1日に(気候変動に対処する政策の一環である)グリーン・ニューディール政策を打ち出す、と言っていたが、今も変わりないか」
 これに対して、ハリス氏はこう答えた。
「気候変動危機は今そこにある緊急な問題だ。変動状況を観測し、測定しなければならないし、削減目標策定の期限を決めねばならない」
 民主党内の過激リベラル派は、化石エネルギーに代わる太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギー産業の推進を提唱してきた。ハリス氏もこれに賛同していた。
 ところが、インタビューではこれには触れずじまい。
(インタビューの後、ハリス氏の側近の一人はCNNに対し、「ハリス氏はグリーン・ニューディールを支持していない」とコメントしている)
 バッシュ氏は、気候変動問題に関連してハリス氏が2019年、フラッキング(シェールガス・石油開発に使用されている水圧破砕技術)を全面禁止する、と公約していたことを取り上げ、今の考えを質した。
 ハリス氏はひと言、「フラッキングは禁止しない」。
 さらに「我々は成長できる。フラッキングを禁止しなくてもクリーン・エネルギー経済を繁栄させる途はある」と付言した。

ハリスの自信はどこから?
 たまりかねたバッシュ氏は、穏やかな口調だったが、鋭く追及した。
「これまで表明していた政策を変えたことを有権者はどう見るのでしょうね。考えを変えたのは、あなたがその後、経験したことでより学んだからですか」
 ハリス氏は、躊躇することなく、こう答えた。
「私の立ち位置は変わったかもしれないが、これらの問題に対する私の本質的価値(Value)は少しも変わっていない」
 何の躊躇いもなく、むしろ堂々と前言を翻すハリス氏の自信に満ちあふれた態度はどこからくるのか。
 党内で絶対的な基盤を得たことで、一部過激リベラル派の主張を無視しても問題ないという認識を得たのか。
 民主党支持者だけではなく、無党派、共和党支持者の票を狙った「誘い水」として、共和党寄りの石油産業に歩み寄りを見せる現実路線に舵を切ったのか。
 いずれにせよ、背景には「ハリス現象」に乗って、激戦州のほとんどでトランプ氏を圧倒しているという「実績」があるからだろう。

嘘つきトランプがハリスを嘘つき呼ばわり
「誘い水」と言えば、ハリス氏はこうも述べている。
「私はこれまでのキャリアで異なる意見を持った人たちと交わってきた。重要な決定をする際には、異なる考えや経験を持つ人たちとのディスカッションは極めて重要だ。それは最高の益を生む」
「その意味で、私の閣内に共和党員を入れることはやぶさかではないし、そのことを公けにしている」
 この日のハリス氏の発言について言えば、訂正もせずに前言を翻すことでは、ハリス氏の上を行くのはトランプ氏だ。
 インタビューを見たトランプ氏は、さっそく自分の選挙用サイトにこう書いた。
「嘘つき、嘘つき、嘘つき」
「カマラはこれまで大統領選に立候補した者の中で最大のウソつきだ」
「カマラはグリーン・ニューディールとかいう詐欺法案の共同提案者。フラッキングの禁止を唱えた張本人だ」
「メキシコ国境における不法移民対策の責任者のくせに、国境線を無視して世界中で最も悪質な人間を入国させた」
「今まで言っていたこと、考えていたことを完全に逆転させる人間を信じられるか」
 両者が直接対決するテレビ討論は、9月10日だ>(以上「JB press」より引用)





 ハリス氏がバイデン氏の後継指名されて以来、初めてインタビューに答えた。しかしインタビューしたのがCNNのダナ・バッシュ氏で民主党応援団の一員であることを忘れてはならない。実際のインタビューは一時間近くに及んだようだが、実際に放映されたのは30分にも満たないものだった。つまりCNNはインタビューを編集して、ハリス氏の発言で不都合な部分をカットしたと思わなければならない。それも一部ではなく、半分もだ。
 そして出来上がったビデオ放送を視聴して高濱 賛(米国在住のジャーナリスト)氏が「正式な指名後ハリスに異変、勝つためなら政策変更ものともせず、グリーン・ニューディール放棄、シェール開発フラッキング容認へ」と題する論評をものにした。トランプ氏が激怒して「嘘つきだ」と叫んだのは想像に難くないだろう。

 ハリス氏が民主党の中道派を意識して軌道修正したのは理解できるが、それはハリス氏を熱烈に支援して来た極左や環境派の人たちを裏切ることになりはしないだろうか。またハリス氏は共和党の人でも内閣に入れると宣言したが、それは何も珍しいことではない。同様にトランプ氏は民主党のR.FケネディJRを登用すると宣言しているではないか。
 ただハリス氏は政策変更について「私の立ち位置は変わったかもしれないが、これらの問題に対する私の本質的価値(Value)は少しも変わっていない」と発言したという。その事について高濱氏は「何の躊躇いもなく、むしろ堂々と前言を翻すハリス氏の自信に満ちあふれた態度はどこからくるのか」と怪訝に思い「党内で絶対的な基盤を得たことで、一部過激リベラル派の主張を無視しても問題ないという認識を得たのか」と結論付けている。しかし本当にそうだとしたら、「一部過激リベラル派」をハリス氏は切り捨てたことになる。ハリス氏の支持率は「一部過激リベラル派」を切り捨てても大丈夫なほどトランプ氏を支持率のポイントで上回っているだろうか。

 今月10日のテレビ討論会はナマ放送だ。しかもメモなしで行われる。ハリス氏はCNNという自陣営でトランプ氏を迎えることになるが、本質的価値を変えないで環境重視の者がフラッキング容認に転じられる奔放さは「無節操」と云うしかない。ハリス氏の本質価値は「無節操」ということになるだろうし、テレビ討論会でトランプ氏は「嘘つき」と叫ぶより、無節操さを突く方が上策ではないか。
 米国大統領が無節操では、世界中の同盟国が全幅の信頼を置いてタッグを組むことは出来ない。またバイデン-ハリスのホワイトハウスが壊した世界秩序をハリス氏が単独で取り戻せるのか。ハリス氏は国際秩序を取り戻すために、バイデノミクスをどのように継承し、どのように改革するのか米国民に説明しなければならない。

 そして対中政策をどうするのか。バイデン政権が「敵対」ではなく「競争」としたように、米国は中国を単なるライバルにしたままで良いのか。中国は米国がライバル視しようと、今後とも「敵国」として軍拡を進めるだろうし、強力な軍事力を背景に近隣諸国を脅かし続けるだろう。
 欧州がプーチンの戦禍に見舞われ、中東がイランを背景にしたテロ組織がイスラエルを戦禍に巻き込み、そして東アジアでは中国が露骨な膨張主義を展開している。このような情勢下にあって、米国大統領が大口を開けて大笑いするだけの無能な人物では同盟国が迷惑する。

 米国は自由主義諸国の盟主であり、今後とも自由主義の盟主であり続けなければならない。自由と平和を希求する国際社会のリーダーとして存在しなければならない。米国大統領は米国民だけの大統領であってはならない。そうした自覚を持った人物でなければ、世界平和は決して訪れないし、世界が混乱すればその影響は必ず米国民に及ぶだろう。

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