EUは対中デリスキングを推進するのか。

<◎欧州委員会は中国とのデリスキリングを進めようとしているが、その道のりは簡単ではない。
◎事実、ドイツの自動車メーカーは対中投資を減らしてはおらず、イタリアも中国企業の誘致に躍起だ。
◎それだけ欧州と中国の経済的なつながりが深いということだが、欧州委員会はデリスキングをどう進めていくのだろうか。

 欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は、中国との間で「デリスキング」(リスクを軽減しながら経済関係を維持すること)を進めようと躍起になっている。こうした要請を受けて、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、2023年7月に同国として初となる「対中戦略」を発表。中国との間でデリスキングを進める方針を内外に示した。
 一方で、それが容易ではないことを物語るのが、ドイツの企業の対応だ。
 例えば、ドイツの対中投資の動きを確認すると、直近2024年4-6月期は名目GDP(国内総生産)の0.13%程度だった。確かに過去の水準に比べると、ドイツの対中投資は減っているが、「対中戦略」を発表して以降は減っておらず、底堅く推移している。

【図表1 ドイツの対中投資】
(注)4四半期後方移動平均(出所)ドイツ連銀

 こうした対中投資の動きからは、ドイツ企業が中国との間でデリスキングを進めている様相は窺えない。
 確かにドイツ企業の多くが、中国事業の見直しを図っていること自体は事実だ。市場の成熟や民族系企業の成長で、中国でかつてほどの高収益が見込めなくなったためである。だからといって、ドイツ企業にとって中国事業が重要なことに変化はない。
 むしろ、中国との関係を再び重視している産業もある。その代表的な存在が自動車工業だ。

欧州で規制を受ける自動車メーカーの本音
 実際に2024年4月25日から5月4日の日程で開催された第18回北京モーターショーでは、ドイツの主要完成車メーカー3社(BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン)が対中戦略を発表。今後も中国との関係を重視する姿勢を鮮明にしたばかりだ。
 ではなぜ、ドイツの自動車メーカーはデリスキングを進めようとしないのか。最大の理由は、ドイツの自動車メーカーにとって、中国の市場が引き続き最大の収益源だというところにある。また両国の自動車メーカーの間には、密接な供給網(サプライチェーン)が構築されている。それをすぐに見直すことなど、双方にとって不可能な話だ。
 つまりドイツの自動車メーカーは、デリスキングを進めようとしていないのではなく、進めることができないのである。欧州委員会によるデリスキングの要請自体が、ドイツの自動車メーカーにとって不合理ということだ。
 それにドイツの自動車メーカーが、欧州委員会に対して強い不信感を抱いていることも、デリスキングを阻んでいるようだ。
 そもそもドイツの自動車メーカーは、欧州委員会が進めてきたEVシフトの動きに対して慎重な態度を堅持してきた。走行時に温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車(ZEV)のカテゴリに合成燃料(e-fuel)を用いた内燃機関(ICE)車が含まれるようになったことにも、ドイツの自動車メーカーの意向が強く反映されている。
 EVシフトの旗振り役だったウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長が再任されたことで、11月に発足する欧州委員会の次期執行部も、引き続きEVの普及を目指していくことになるだろう。一方で、中国も新エネルギー車(NEV)という概念の下で自動車の電動化を推進しているが、新車供給からハイブリッド車やICE車を排除してはいない。
 そのためドイツの自動車メーカーとっては、欧州委員会の規制を受けるドイツやヨーロッパに経営資源をとどめるよりも、それを中国に移管したほうが、経営の自由度を維持できる可能性が高い。つまるところ、ドイツの自動車メーカーが鮮明にする中国重視の姿勢は、欧州委員会に対する不信感と表裏一体の関係にあると考えられる。

対中デスキリングに背を向けるイタリア
 それに、ドイツの企業以外にも、欧州委員会が描く中国との間でのデスキリング路線に異議を唱えているアクターが、EU内には存在する。具体的には、イタリアの政府である。同国のジョルジャ・メローニ首相は、国内の雇用を維持するため、中国のEV最大手である比亜迪(BYD)にトップセールスを仕掛け、BYDの国内誘致に力を入れている。
 イタリアのメローニ首相は国内の自動車産業での雇用維持に注力しており、2023年7月にはステランティスと、国内で年間100万台の完成車の生産を維持することで合意していた。しかしながら、国外での生産を重視する姿勢を鮮明にするステランティスに不信感を抱いたメローニ首相はBYDに接近し、その誘致に努めるようになったようだ。
 BYDが雇用を生み出すことは結構なことだが、デリスキングの観点からすると、それとは明確に逆行する。モノの生産のみならず、雇用までも中国に依存することになるためだ。とはいえ、国内の雇用を維持し、有権者の支持を繋ぎ止めるためには、メローニ首相はなりふり構っていられない。そのため、メローニ首相はBYD誘致に注力する。
 イタリアは2023年をもって中国が描く拡大経済圏構想である「一帯一路」から離脱したが、このことは、その枠組みからイタリアが得られるものが少なかったために過ぎない。一方で、イタリアは中国との経済関係を引き続き重視している。EUがデリスキングの号令をかけたところで、それがイタリアに響かないのは当然といえよう。

過剰なデリスキングが招く産業空洞化の罠
 話を元に戻すと、ドイツの企業は、EUの方針に対して強い不信感を抱いている。EUが無理やりデスキリングを迫ったところで、ドイツの企業、特に自動車メーカーの反発は強くなるばかりだろう。そして反発を強めた自動車メーカーが、経営資源の中国への移管を加速させるなら、ドイツの産業空洞化に拍車がかかると予想される。
 またイタリアのメローニ首相も、欧州委員会の方針から距離を置いている。それに、デリスキングどころか中国との関係を緊密化させるハンガリーや、逆に中国との関係を断ち切ろうとするチェコやリトアニアといった国もある。このように、中国に対するEU各国の姿勢にはバラツキが存在しており、少なくとも一枚岩であるとはいえない。
 EUと中国との間の密接な経済関係は自然に成立したものだ。それを政治の要請で変えようとすると、当然だがハレーションが生じる。つまり、EUが出方を間違えれば、中国との関係に大きなひびが入り、EUから中国向けの輸出や、中国からEU向けの投資が減ることになりかねないわけだ。対中デスキリングはまさに「言易行難」の世界である。
 果たしてEUは、どう対中デスキリングを進めていくのか。その実現には綿密な戦略と戦術が必要なはずだが、EUがそれを用意周到に準備している印象はない。いわばEUは、見切り発車でデスキリングを進めようとしているに過ぎない。手探りともいえるが、双方の経済関係の深さに鑑みれば、デスキリングはそう簡単には進まないだろう>(以上「JB press」より引用)




対中直接投資が減らないドイツの面従腹背、中国とのデリスキリングを進める欧州に響く不協和音」と題して土田陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)氏が中国と深くコミットしたドイツの実態を描いている。
 ドイツは先のメリケル首相時代に対中投資が一気に拡大した。ことに自動車産業の大半が中国へ生産拠点を移し、ドイツ製自動車の実態は「Made in China」になっている。だからなのか、最近のドイツ車は故障が多くなったとの風聞を聞く。

 ドイツ経済は空洞化している。それは現実問題としてドイツ経済を脆弱化させている。しかしプーチンがウクライナ侵攻して欧州をエネルギー危機が襲った時には、それほど深刻な影響をドイツにもたらさなかった。
 しかし製造を中国に依存してCO2温暖化詐欺を率先して実行して来たEU諸国は、いかにして対中デリスキングを進めるのだろうか。自動車に関しては集中豪雨的なBYDのEVを関税障壁で輸入を阻止したとしても、いかなる自動車をEU住民に提供するつもりだろうか。それともCO2温暖化詐欺を認めて、10年以内の内燃機関の自動車販売禁止措置を撤回するのだろうか。いずれにしてもEVがCO2削減に役立つというのは嘘だったことが判明した今、少なくともEUはEVに特化した自動車戦略を改める必要に迫られている。

 そしてプーチンの戦争を中国が裏から支援していることが明らかになっていることから、EUは中国と手を切らざるを得ない事態に陥っている。中国は最大の顧客EUを大事にしようとする配慮など微塵もない。あるのは中国の利益と中国の世界制覇だけだ。時が来れば、中共政府はコロナ禍で医療品の禁輸を実施したように、中国からドイツ製の自動車を禁輸することも厭わないだろう。
 中国に依存することは死命を中国に制されることを意味する。首根っこを掴まれて、いかに抗議したところで中国は相手にしない。「殺されても良いのか」と反対に脅されるのがオチだ。そうした事態に到ったことを反省したのが対中デスキングではなかったか。

 米国のトランプ前大統領はもっと強硬に対中デカップリングを実行しようとした。しかしバイデン氏に変わると、中国はライバルになった。デリスキングでもなく、ライバルだと表現したため、中国はすっかり米国を舐めてしまった。つまり中国が米国の「ライバル」なら何をしようと米国が中国を攻撃しないと確約したに等しいからだ。
 儲かるなら何をしても良い、ということにはならない。日本製自動車を市場から締め出すにはCO2温暖化詐欺を吹聴しても構わない、という事にはならない。国連事務総長グテーレス氏はCO2温暖化により「地球が沸騰する」と叫んだが、地球は沸騰していない。確かにこの夏の欧米や日本は暑かったが、それでも沸騰するほどではなかった。その反対にオーストラリアなどの冬は寒波に見舞われている。地球規模で見るなら、温暖化も大したことではないし、それは地球規模の気候変動によるもので、決してCO2温暖化によるものではない。

 EUは一日も早くCO2地球温暖化詐欺を廃して、製造業を中心とした経済を取り戻さなければならない。そのためには対中デリスキングを推進し、モノ造りの伝統にEU各国国民が回帰すべきではないだろうか。

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