中国経済は習近平氏の登場から転落に転じ、そして今は崩壊の坂道を転がり落ちている。

<「政府の借金が102兆5000億元に達したのに、隠れ債務は2年で半分以下」――。中国政府が公表した数字は、一見矛盾した動きを示している。地方政府の隠れ債務は整理が進むが、地方では国有地使用権の譲渡収入が急減し、一部の地域では投資にも制限がかかる。隠れ債務を整理しても政府の借金が膨らみ、地方財政が苦しくなるのはなぜか。中国経済を蝕む悪循環の仕組みを明らかにする。(中国政治研究者 王 彦麟)

◇隠れ債務は減ったのに政府の借金は膨らむ
 中国政府の借金が、ついに100兆元を超えた。
 中国国務院が2026年8月、全国人民代表大会(全人代)常務委員会に提出した「2025年度政府債務管理状況に関する報告」によると、2025年末の政府債務残高は102兆5000億元、日本円で約2400兆円に達した(2026年10月20日時点の為替レート)。内訳は国債41兆2000億元、地方政府の法定債務54兆8000億元、そして地方政府の隠れ債務は6兆5000億元だ。
 注目したいのは、隠れ債務の減少だ。政府全体の借金は2023年末の85兆元から、2025年末には102兆5000億元へと17兆5000億元も膨らんだのに、隠れ債務は2023年末の14兆3000億元から、わずか2年で半分以下に減った。習近平政権は借金問題を解決しつつあるのか。それとも、単に借金の姿を変えただけなのだろうか。


◇地方政府の隠れ債務とは
 中国の地方政府が発行できる地方債には、国が認めた限度額がある。だが、道路や工業団地を建設するには、その範囲内の資金だけでは足りないこともある。そこで長年利用されてきたのが、「地方政府融資平台」と呼ばれる地方政府傘下の投資会社だ。
 例えば、ある市が道路を造りたいとする。市の予算は足りず、地方債の発行にも上限がある。そこで市の傘下の会社が銀行から資金を借り、建設を進める。形式上の借り手は会社だが、銀行は「いざとなれば市が支えてくれるだろう」と期待する。こうして、正式な地方債には表れない政府関連の借金が積み重なってきた。
 もっとも、こうした会社の借金すべてを政府が返済する責任を負うわけではない。隠れ債務とは、法定の地方政府債務に計上されていないものの、地方政府が実質的に返済責任を負うと認定された債務を指す。融資平台が自ら返済すべき事業上の借金は含まれない。
 この問題に対処するため、北京は2024年11月、全人代常務委員会で地方債の発行限度額を6兆元引き上げ、ほかの財政措置と合わせて2028年までの5年間で計10兆元規模の債務処理を進める方針を打ち出した。中国で「化債」と呼ばれる、地方の隠れ債務を整理する政策の一環である。
 柱となるのは、金利が高く返済期限の短い借金を、比較的低金利で長期の正式な地方債に借り換えることだ。つまり、隠れ債務が減ったからといって、元の借金がすべて消えたわけではない。

◇隠れ債務を整理すれば目先の資金繰りは改善する
 一部は法定の地方政府債務に移った。それとは別に景気の下支えなどを目的とする国債や地方債も新たに発行されている。隠れ債務が減り、政府債務全体が増えることは矛盾しない。
 では、単なる数字の付け替えなのか。そうとも言えない。返済期限が延び、利息が減れば、目先の資金繰りは改善する。財政部によると、2025年8月末までに借り換えた債務の平均利息コストは2.5ポイント以上低下した。短期的な危機を抑える効果は確かにある。
 ただし、返済を待ってもらえても、収入が自然に増えるわけではない。会社でいえば、銀行が返済期限を延ばしてくれても、売り上げまで回復するとは限らないのと同じだ。

◇地方政府の重要な財源が激減
 では、地方政府が頼りにしてきた収入はどうなっているのか。
 重要な財源の一つが、不動産開発会社などに国有地の使用権を譲渡して得る収入だった。地方政府はその資金を使って道路や公共施設を整備する。交通の便が良くなれば周辺の開発も進み、さらに土地の需要が生まれる。不動産市場が拡大する間、この仕組みは地域経済を支えていた。
 ところが、不動産不況で開発会社が土地を買わなくなった。国有地使用権の譲渡収入は2021年の約8兆7051億元をピークに、2025年には約4兆1500億元と半分以下に落ち込み、2026年1~8月も前年同期比28.6%減だった。借金の返し方が改善しても、かつての重要な財源は戻ってこない。



 問題は、収入が減っても地方の仕事は減らないことだ。中国は政治的には中央集権的だが、教育や医療、地域のインフラなど、住民に身近なサービスの多くを担うのは地方政府である。中央は税収の配分や財政移転で地方を支えているものの、地方の支出責任と安定した財源は必ずしも見合っていない。

◇習近平政権も地方財政の問題を認識
 習近平政権もその問題を認識している。2024年7月、経済や財政などの改革方針を決めた中国共産党の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)は、地方の財源を強化し、中央が担う仕事と財政支出の割合を増やす方針を示した。
 地方債務は、単に各地が借金をしすぎたという話ではない。その背景には、財政制度だけでなく、地方に経済成長を求める政治の仕組みもある。地方政府には、教育や医療などの公共サービスに加え、企業を誘致し、雇用を守り、地域経済を成長させる役割も求められる。毎年、各地の政府はGDP成長率などの目標を掲げる。
 かつては成長率が幹部の重要な評価指標だった。2013年以降、中央は「GDPだけで実績を測らない」と強調し、債務管理や公共サービスも重視してきた。それでも、地方の発展責任が消えたわけではない。
 土地は売れず、借金も以前ほど自由にはできない。それでも地方政府は企業を呼び込み、道路を整備し、経済を動かさなければならない。
 それなら中央がもっとお金を出せばよいのではないか。実際、北京は債務整理に加え、地方への財政支援も続けている。だが、支援だけで問題が解決しない理由がある。

◇地方を救うはずの習近平政権がなぜ投資を制限するのか
 2026年8月3日、中国の『経済日報』は、地方政府が流行の新産業に一斉に飛びつき、むやみに資金を投じることに警鐘を鳴らした。産業が育つ前に工業団地や工場を造ったものの、入居企業が集まらず、施設が遊休化する例があるという。
 地方政府にとって、工業団地の建設や企業誘致は、目に見える成果を示しやすい。もちろん産業の集積につながる投資もある。だが需要の乏しい施設まで造れば、建設費だけでなく維持費もかかる。借金で建設したなら、返済負担まで残る。
 さらに10月9日、中国共産党中央と国務院は、新たな産業や技術による経済発展を促す「新質生産力」に関する方針を公表した。一斉に飛びつくような盲目的な投資を戒め、重大な損失を出した場合には責任を厳しく追及すると明記した。成長を求める一方、見せかけの成果を競う投資には厳しい姿勢を示している。
 こうした考え方は債務管理にも表れている。報道によれば、2024年から天津、貴州、雲南など12の債務リスクが高い省級地域で、政府による一部の新規投資が制限され、進行中の事業にも延期や中止を求める措置が取られた。中央が承認した事業や低所得層向けの公的住宅などには例外があるものの、中央は地方が何に資金を使えるかにも踏み込んでいる。
 一見すると奇妙だ。地方経済が弱っているのに、政府自身が投資を抑えるのだから。しかし、中央が古い借金を整理しても、地方が同じような採算の乏しい事業を始めれば、また債務が膨らむ。無駄な投資を止めることには理由がある。

◇財源は減り、借り入れが制限、投資も滞れば財政難は長引く
 ただし、北京は地方の投資を一律に禁止しているわけではない。2025年の政府活動報告では、債務リスクの高い地域の指定を見直し、状況が改善した地方には投資の余地を広げる方針も示した。必要なのは、投資を止めること自体ではなく、資金を使う事業を見極めることだ。
 それでも難問は残る。
 中国では長年、地方政府が土地や資金を集め、道路や工業団地を造り、企業を呼び込むことで地域経済を動かしてきた。その投資が時に浪費を生んだとしても、地方政府が担ってきた仕事まで一夜でなくなるわけではない。
 採算の合わない建設をやめることと、必要な投資までできなくなることは違う。借り換えは地方に時間を与える。だが、財源が減り、借り入れも制限されるなかで必要な投資まで滞れば、地域経済は弱まり、税収も伸びず、財政難がさらに長引くおそれがある。警戒すべき「悪循環」は、こうしたところに潜んでいる。

◇地方経済を動かす仕組みを作り直せるか



 2400兆円という数字だけを見て、中国が直ちに大規模な債務危機に陥ると考えるのは早計だ。北京には借り換えや財政支援など、危機を抑える手段がある。
 ただ、「隠れ債務」の半減には別の意味もある。企業の借金という形で見えにくかった地方政府の返済責任の一部が、正式な地方債として明確になったことだ。中央政府に返済義務が移ったわけではないが、地方政府が責任を負う債務の姿は以前よりはっきりした。
 北京はその処理を支えながら、新たな借金を作らせないために高リスク地域の投資にも厳しい条件を付けている。借金の責任を明確にするだけでなく、同じ問題を繰り返させないためだ。
 しかし、借金の返済期限を延ばせても、地方に課された仕事まで先延ばしにはできない。習近平政権は地方の借金を管理できても、地方経済を動かす仕組みまで作り直せるとは限らない。中国経済の本当の難題は、借金の額よりも、むしろそこにある>(以上「DIAMOND」より引用)




「習近平がハマった泥沼…中国政府の借金はついに2400兆円、中国経済を蝕む「悪循環」の正体」と題して金融崩壊の途上にある中国経済を王 彦麟( 中国政治研究者)が論評している。
 ただ中共政府が発表する経済統計は全く信用できない。だから王氏が述べている数字の根拠が信用できないため、彼の論評を毀損しているのが残念だ。それでも経済崩壊しつつある中国経済の救助策が適切でないと批判するのは彼の誠実さの表れではないだろうか。

 ただ中国の経済統計に表れていない巨額債務として「家計の債務」がある。それは住宅バブルに飲み込まれた個人住宅ローンが不良債務したものだ。その不良債務化した住宅ローン単体の総額を推計するのは困難だが、調査会社ガベカル・ドラゴノミクス(Gavekal Dragonomics)の推計によると住宅ローンを含む家計(個人向け融資)全体の不良債権総額が2025年末時点で過去最高の「2兆2200億元(約3,290億ドル / 日本円で約50兆円)」に達したと云われている。
 その他にも政府が抱え込んでいる国営企業の膨大な赤字も政府統計の負債の部に計上されていない。例えば中国の高速鉄道を運営する国営企業「中国国家鉄路集団」の負債総額は、2025年12月末時点で6兆1729億元(約143兆円)となっている。他にも「一帯一路」で巨額貸し付けを行った世界各国の返済が滞っていることも見逃せない。それらの多くが不良債権化するのも時間の問題だ。

 その一方で王氏が指摘するように中国政府は高金利な「隠れ債務」を低金利の正式な地方債へ借り換える「化債」と呼ばれる債務整理を進めており、法定債務が増加する一方で隠れ債務は圧縮されているのも事実だ。地方政府が地方財政法に違反して独自に借入する機関として利用した「融資平台」の多くが破綻して、巨額負債の塊と化していたものを整理し始めている。ただその政策は融資平台の負債が政府の低金利負債につけ変わっただけで、実質的に負債が返済されたわけではない。
 しかも中央政府のみならず、地方政府も高齢化の波により年金会計が膨らむ一方で税収減に見舞われてさらに財政は逼迫している。今年に入ってやっと恒大集団に破産が宣告されたが、他にも破産処理すべき不動産企業は中国全土にゴマンとある。

 現在はヒューマノイド生産をしていた企業がバタバタ倒産しているようだ。それもまた中国の恒例行事のようなもので、習近平氏が「力を入れる産業」として指定すると雨後の筍のように参入する企業がワッと集まり、政府補助金を食い荒らすとすぐに消えて行く。全国に百社以上あったEV製造企業もバタバタ倒産しているようだし、習近平氏が「AI振興策」を打ち出すと、自称AI開発企業がワッと名乗りを上げて一夜にして中国はAI大国になってしまった。
 しかし、このような○○大国にどれほどの意味があると云うのだろうか。かつて高速鉄道大国を自認し、現在では自称「半導体大国」を名乗っているようだが、その実態がどのようなものか、世界は既に中国の実像を見抜いている。

 云うまでもなく、中国経済は「改革開放」により短期間に劇的な成長を果たした。その原動力は外国資本の流入と外国企業の進出だった。ことに先進的な技術と生産方法を中国に移転させた点で、外国企業が果たした役割は大きい。それにより短期間で中国製品が国際的な販路を獲得した。
 しかし習近平氏は「戦狼外交」を展開し、「内循環経済」を唱えた。中国に進出した外国企業の核心的な技術を奪うために、中共政府は中国に進出した企業の情報開示を強制した。それにより先進的な企業は中国から相次いで撤退した。また米国は中国が最先端の兵器開発を阻止するために半導体関連の輸出規制を行い、西側諸国に対中半導体規制を求めた。

 中国製造業における外国企業の割合は低下傾向にあるが、それでもまだ約三割に達している。ことに、ハイテク産業では実行ベースの外資導入額において全国に占める割合は約41.2%に達している。それらが撤退して、中国経済からすべて喪われるとすれば、その影響は甚大だ。
 しかし外国企業が中国から撤退する流れは止まらないし、外資が中国市場から退いていくのも避けられない。それらはすべて韜光養晦(とうこうようかい)を唱えた鄧小平氏の教えに背いた習近平氏の「戦狼外交」の結果だ。中国経済は習近平氏の登場から転落に転じ、そして今は崩壊の坂道を転がり落ちている。

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