フアンCEO訪日目的と近未来のAIロボットは。

<世界を席巻するAIを主導する企業であり、世界最大の企業になったNVIDIAは7月16日、トヨタ自動車との提携を拡大すると発表した。すでにトヨタが同社製の半導体を採用することは発表されていたが、レベル2++自動運転機能に同社製の車載半導体に加え車載OS、さらにソフトウェアエンジニアリングや工場のロボットシミュレーションを採用。ウーブン・バイ・トヨタでの活用についても明らかにされた。
 NVIDIAは創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏の来日に合わせ「NVIDIA Japan AI Ecosystem Reception」を同日に開催。そのイベントの後、ジェンスン・フアンCEOの囲み取材が行なわれた。
 フアンCEOは、NVIDIA Japan AI Ecosystem Receptionにおいて日本の製造業に対するリスペクトを語り、同イベントで流された「NVIDIAと日本:次なる産業革命の構築」と題された映像には本田技研工業の創業者である本田宗一郎氏や、トヨタの米国工場における製造風景、そしてもちろんセガへの感謝の気持ちが盛り込まれていた。
 特に、その映像には日本がものづくりのあり方を変えた部分として、「カンバン」「カイゼン」「ゲンバ」が挙げられており、ゲーム産業はもちろん自動車産業が多く出てきていたのが印象的だった。

◇NVIDIAと日本:次なる産業革命の構築
 囲み取材においても日本を重視する意思は徹底しており、フアンCEOは日本に関する質問以外は受け付けないという姿勢を見せていた。
 この囲み取材においてフアンCEOに同日発表されたトヨタとの業務提携拡大が自動車産業に何をもたらすのか聞くことができたが、ちょっと違った角度での回答が返ってきた。
 フアンCEOはトヨタというより自動車産業全般について語り、「ご存じのとおり自動車産業は世界最大の製造業です。次世代はロボティクスになることを期待していますよね? (自動車を運転する)人口はせいぜい10億人しかおらず、誰もがクルマを運転する必要はないので、製造すべき自動車は1億台程度になります。しかし、ロボットの数はもっと多くてもおかしくありません。家庭にも多くのロボットがあり、職場にも多くのロボットがあり、工場にはさらに数え切れないほどのロボットが存在します。ですから、次の製造業は恐らくロボット産業になるでしょう。そうですね?」と、産業としてのボリュームを指摘する。
 ただ、そのようにロボットが世界最大の産業になるためには、フィジカルAIの問題解決が必要だという。「ただAIの問題、つまりフィジカルAIの問題を解決しなければなりませんし、私たちはそれを成し遂げるでしょう。しかしそれまでは自動車産業が世界最大の産業であり続けます。鉄鋼の使用量も膨大ですし、そうでしょう? 重機や重装備、そして膨大な計算能力が必要で、多くのデザイナーやマーケティング担当者、非常に多くの人材が関わっています。つまり、自動車産業はこれほど巨大な産業であり、今後もその地位を維持し続けるでしょう。私がトヨタと協業する際、トヨタ社内で、トヨタのデザイン部門やシミュレーション部門と、車内や製造現場など、実に様々な形で協業できると考えています」と語り、フィジカルAIの発展によってロボット産業が世界最大の産業になることは見えているものの、それまでは世界最大の産業は自動車産業であり、その自動車産業であるトヨタの各部門とはさまざまな形で協業できるだろうと語る。
 この人口のような数字から産業ボリュームを予測するというスタイルはフアンCEOが常に示しているものであり、AI時代を切り開いてきたフアンCEOならではの将来像を描いて見せた。
 ただ、トヨタに関連する質問の最後にフアンCEOは、「Toyoda-san is, Toyoda-san is pretty incredible」(豊田さんは、本当にすごい)と語り、トヨタ自動車の豊田章男会長との親交を示した。フアンCEOと豊田会長はCES2025で同日にプレゼンテーションを行なっており、フアンCEOのリハーサルの際には豊田会長が立ち会い、CES2025でのフアンCEOの革ジャンは3着の中から豊田会長がセレクトしたものだ。その後の交流は不明だが、最後に記者に語りかけたフアンCEOの言葉は、トップ同士の信頼関係のなかで協業関係が広がったことを示唆していたのかもしれない。>(以上「Car Watch」より引用)




NVIDIA ジェンスン・フアンCEOに、トヨタとの提携拡大について聞く 「次の製造業はおそらくロボット産業、それまでは自動車が世界最大の産業」」とあるように、来日したNVIDIAのフアンCEOは精力的に日本の主力企業経営者と会っている。
 もちろんNVIDIAはGPUで圧倒的シェアを誇る大企業だ。今後もAI化によるGUP需要拡大は止まることを知らないだろう。だが先日ブログ(6月10日付け「国産AIの未来を決める1.4nmNPU」)で書いたように、日本の富士通はAI生成に特化したNPU製造をラピダスで行い、AI需要拡大を満たす半導体供給の主役に躍り出る戦略を明確にしている。

 云うまでもなく、GPUは学習と生成と両方の役割を果たす。だから当面の学習が優先されるAI黎明期はGPU需要が大きい。しかしAIの学習が進むと、今度は生成機能が重視されるようになる。現在AIで使われている仕事の割合は学習と生成が7:3ほどだという。しかし間もなく5:5になり、ほどなくして学習と生成の仕事割合は2:8くらいになると予想されている。
 そうするとGPU需要は間もなく落ち着き、それ以後はNPU需要が高まると思われる。つまりNVIDIAに企業戦略そのものを見直さざるを得ない時期が間もなく到来する。そうした「それ以後」の企業戦略を展開するためにフアンCEOは日本の主力企業回りをしたのではないか。

 レベル2++自動運転機能とは、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストなどを組み合わせることで、アクセル・ブレーキ操作に相当する自動車の縦(前後)方向の制御と、ハンドル操作に相当する横(左右)方向の制御を同時にサポートし、安全性を高める技術を指す。
 国際標準に最も近い米自動車技術会SAEが策定した基準では、レベル2は「部分運転自動化」とされ、「運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。この際、運転者は動的運転タスクのサブタスクである対象物・事象の検知及び応答を完了し、システムを監督することが期待される」と定義されている。

 現行の各種安全装置を搭載した自動車はほぼレベル2に近いが、まだ完全とは云えない。アダプティブクルーズコントロールの縦方向の制御は完成の域に達しているが、横方向のレーンキープアシストは「アシスト」の段階でしかなく、路上の白線が消えたりしているところでは「アシスト」装置は解除される。
 しかし自動車が「工業製品としての安全義務」に一歩近づいたのは確かで、その安全性を自分で確かめようと現在各種安全装置を備えた小型自動車を注文して納車されるのを待っている。本来、交通事故で年間3,000人以上もの死者が出るのは異常であって、自動車は工業製品として不完全で危険な段階にとどまっている。それはまさに製造者責任であって、決して高齢者などの「認知症障害」等の責に帰して免許返納運動を繰り広げるようなものではない。

 ともあれレベル2++自動運転機能が自動車の標準装備とされ、レベル2++自動運転機能を備えた自動車が街を走るようになると高騰事故は激減するだろう。そしてAIが交通情報とリンクされると、渋滞もなくなるだろう。
 その場合、必要とされるのはNVIDIAのGPUではなく、富士通とラピダスが製造に乗り出そうとしているNPUだ。学習機能は搭載したAIにハッかーの侵入を招き、自動運転が誤作動を起こす余地を生じかねない。だから完全に学習を完了したAIを搭載した自動車を販売し、新たな学習が必要とされればリコール通知を行いディーラーに持ち込んで専用機器により上書するようにすべきだ。そうすれば自動運転に必要な半導体はNPUということになる。

 フアンCEOは世界の最大産業はやがて自動車からロボット、それも人型ロボットになると予想されている。もちろんAIは想像を超える発展を遂げ、生活の細部にまで入り込むだろう。それは恰もマイコンがほとんど全ての電化製品に入り込んでいるように。
 しかし果たして人型ロボットが必要だろうか。ただそう考えるのは人に傅(かしず)かれた生活を送る経験のない私が考えるからなのかも知れない。そもそも日本には奴隷がいた歴史がない。個人専用のロボットを奴隷のように使役する、というのは人としてのあり方として受け入れ難い。

 むしろ未来のロボットは仕事に特化した自動装置、もしくは労働軽減装置ではないだろうか。介護ロボットは人として困難を感じる下の世話とか入浴介助を自動装置で清潔を保つ上で必要とされる。つまり人型ロボットが人間に替わって要介護者を介護することではない。つまりフアンCEOは学習と生成を行う「フル装備」の半導体GPU製造業の経営者としての発想だ。必要とされる場面とその動作に特定するなら、人型ロボットは不要だ。
 介護を人型ロボットが行うとするなら、被介護者の体重や動作などを勘案すると、人型ロボットは人と等身大かそれ以上で、しかも重量も被介護者以上でないと両手で被介護者を持ち上げることは出来ない。もちろん重心移動も自動で為されなければ被介護人の上に倒れ込むだろう。そうすると介護施設そのものを大きくする必要があり、一人一人の専有面積も広くなければならない。汎用型の人型ロボットは無駄が多すぎる、と未来でも判断されるだろう。

 現行の自動車製造ラインで動いているロボットは主に腕だけだ。その殆どが片腕だけで、指も動作に特化して溶接棒だったりインパクトドリルだったりする。人型汎用ロボットは一台もない。
 昔の空想科学読物に登場する自動運転車では人型ロボットが操縦席にいた。しかし実現近いレベル2++自動運転車には無数のレーダーと速度や周辺認識装置とマイコン等によって構成されている。つまり近未来のAI化された世界でも、多くの人型ロボットが右往左往することはないだろう。仕事に特化し必要とされる動作応じたロボットが人の暮らしをサポートするだろう。あくまでも生活するのは人であり、AIロボットはサポートするに過ぎない。AIが人を支配する世界になる、などと誇大妄想を広げる必要はない。人は必ず「効率的」な思考を行う。そうすれば汎用ロボットの大量生産などしないだろう。

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