二度目のトランプ関税の意図は。

<トランプ米政権は23日、強制労働への対策が不十分として、日本を含む60か国・地域に、10%または12・5%の新たな追加関税を課すと発表した。日本は12・5%の対象となる。既存税率との合算でも、原則12・5%を超えないようにする措置も盛り込まれた。

◇24日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発動する。
 新たな関税は、通商法301条を根拠とする。不公正な貿易慣行があると認定した国・地域に制裁を科す目的で使われる。
 米政権は今年2月、米連邦最高裁に相互関税を無効と判断された。その後、代替措置として通商法122条に基づき、世界各国・地域に10%の関税を発動した。ただ、150日間限定の措置で24日に期限を迎えるため、301条への移行準備を進めていた>(以上「読売新聞」より引用)




トランプ米政権、新たな追加関税をきょう24日発動…日本は12・5%」との記事が飛び込んできたが、その一方で「グーグルに1600億円の制裁金 EU、自社サービス優遇と」という共同配信の記事もある。
 云うまでもなく、先の大戦以後、大戦の原因の一つになった「保護貿易主義」を排除しようとの取り決めにより、世界貿易は一貫して自由貿易体制WTOを推進してきた。ウルグアイラウンドなど何度もの協議を重ねて辿り着いたWTOを、自由貿易を推進した米国が自ら「トランプ関税」などと称する愚かな政策により破壊している。

 またEUを中心として米国のビッグテックが国境を越えてネットで商売しているのに対して、税金を課すべきとする動きが顕在化していた。ことにフランスが強硬姿勢を見せていて、米国のビッグテックがフランスで「無税」で商売するのはケシカランと怒り心頭の様子だった。
 日本のデジタル関連収支(デジタル赤字)は、海外のクラウドサービスやコンテンツ配信、コンサルティング等の支払い増加により、年間約6兆7,000億円〜6兆8,500億円規模の赤字になっていて、構造的な円安要因の一つとも指摘されている。放置すれば将来的に数十兆円規模へ拡大する可能性も懸念されていて、解決策を模索する動きが出ている。

 ことに今後は米国製AIを各国政府や企業が利用するようになると、対米デジタル関連取引で巨額な赤字を抱えることになり、デジタル売り上げに対して税を課すことはもとより、世界先進諸国が自国のAI開発を推進するために、新たな対米デジタル関税を設けるべきかが貿易問題の俎上に上がることになる。
 トランプ氏の再度の関税引き上げは、こうした動きを牽制したものなのだろうが、問題提起も相談もなく、勝手に一方的に引き上げるトランプ氏の手法は国際的な信認を得られないだろう。そもそも貿易取引から「貿易外取引」(サービス)としてデジタル取引を除外している現在の制度そのもののあり方から協議すべきではないだろうか。
 ちなみにデジタル取引の具体的な扱いは以下の通り。
◎デジタルコンテンツやアプリとしては音楽・動画のダウンロード配信、電子書籍、ソフトウェアやアプリの購入などは「サービス貿易」の一部となる。
◎クラウドサービスやシステム利用料のうちSaaSなどの利用やデータのやり取り、IT関連サービスもサービス貿易に該当する。今後爆発的に利用が増大すると思われるAI利用料もこの範疇に入る。

 日本やEUによる対米ビッグテック取引赤字額は米国の「貿易外」黒字額となっていて、米国のデジタル関連貿易(デジタル配達可能サービス)の黒字額は年間約2,820億ドル(約41兆円規模)に達しており、サービス貿易の屋台骨として継続的に成長を続けている。現在では米国の貿易は財(モノ)単体で見ると、輸出額が約2兆1,975億ドル、輸入額が約3兆4,384億ドルとなり、財の貿易赤字額は1兆ドルを超える水準(約1兆2,400億ドル規模)で過去最大を更新している。その一方で、サービス部門では約3,395億ドルの黒字を確保しており、これらを相殺して約9,000億ドル(135兆円)規模の赤字となっている。
 今後は米国の「貿易外」サービス部門での黒字が飛躍的に増加すると見込まれ、トランプ氏が目くじらを立てている米国貿易収支の赤字はそれほど心配することではない。むしろ日本やEUが計上しているビックデック関連のデジタル取引赤字の増大をどうするのか、と云った別の問題を抱え込むことになる。

 もちろん日本政府も日本製AI開発に本気で乗り出しているが、米国や中国が目指している汎用AIではなく、それぞれの政府機関や企業の利用目的に特化したAI開発を目指すようだ。
 だが、国民が広くAIを利用するためには汎用AI開発にならざるを得ないのではないか。ターゲットを絞った開発では所期の目的を達成したところで、世界中で顧客を獲得するのは困難だ。そうすると採算性が問われかねない。現在AI開発のネックだと評論家諸氏が騒いでいる「発熱」と「電気」に関しては日本の技術者の努力で解決の目途がついている。だからAI開発のネックはほぼ解決されたと思って良いだろう。そうすると日本政府は米国製のAIに負けないほどの汎用AI開発に乗り出すべきだ。そこで日本製半導体が使われて、日本製半導体の性能と信頼性が実証されれば、半導体大国・日本が蘇ることになる。壮大なスケールで未来を見据えることこそが大事ではないだろうか。

 トランプ氏の突然の関税発表でオールドメディアの驚いているが、対米デジタル課税に対する事前ディールだと考えれば、二度目のトランプ関税を打ち出した意図が見えて来る。つまり、それほど驚く必要はない。ただ自由貿易に向かっていた世界を重商主義の前世紀に戻す愚策であることに間違いない。

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