究極の「人類すべての安全」のためにも、日本は防衛兵器の開発に官民協力して全力を上げるべきだ。

<かつて「事業として魅力がない」とされ、過去20年で100社超が撤退した日本の防衛産業が息を吹き返している。2026年4月、日本とオーストラリアは、三菱重工業が建造する新型護衛艦の輸出契約に署名。11隻の事業規模は最大2兆円に上る。長く「自衛隊に売るだけ」だった産業は、なぜ海外の大型案件を獲得できたのか。海外メディアが日本の防衛産業の変化に注目している――。

◇オーストラリアが「史上最大」と呼んだ協定
 2026年4月、オーストラリア・メルボルンに停泊した海上自衛隊の護衛艦「くまの」の艦上。日本の小泉進次郎防衛大臣と、オーストラリアのリチャード・マールズ国防大臣が、日本が今後建造しオーストラリアに輸出する護衛艦3隻の契約に署名した。
 次期汎用フリゲート艦として、三菱重工業が建造することで両国が昨年すでに合意した、「もがみ」型護衛艦の能力向上型(新型FFM)の一部に当たる。
 2025年8月5日、オーストラリア政府は海軍の次期汎用フリゲート艦として、新型FFM11隻の導入を発表している。中国の海洋進出を念頭に、オーストラリア政府は主要な水上戦闘艦を計26隻へ拡大する軍備再編計画を進めており、新型FFM11隻はその中核をなす。
 AFP通信によれば、総額は約100億豪ドル(約1兆1400億円。7月22日現在のレート、1豪ドル114.06円で換算、以下同)規模となる。マールズ豪副首相兼国防相は、「日豪間で結ばれた防衛産業の合意として、明らかに史上最大だ」と強調した。
 日本の防衛産業は長らく、世間の大きな関心を集めることもないまま、縮小の傾向をたどっていた。今、高まる中国の地政学的脅威を念頭に、転機が訪れようとしている。

◇20年で防衛産業から100社超が去った
 米外交専門誌のディプロマットは2023年9月の報道で、過去20年間で100社以上の日本企業が防衛事業から撤退したと報じている。
 2021年には造船・重機大手の三井E&Sホールディングスが、艦艇・官公庁船の建造部門を三菱重工業に売却した。建機最大手のコマツは2019年、利益率の低さを理由に陸上自衛隊向け軽装甲機動車の新規開発を断念した。
 化学大手のダイセルは2020年、パイロット用緊急脱出装置の生産から手を引き、住友重機械工業も2021年、機関銃の製造から撤退した。いずれも自衛隊向けの装備品を長年製造してきた企業だ。
 ある日本企業の幹部は、ディプロマットの取材に対し、「政府との信頼関係を維持するために防衛事業を続けているが、事業としては魅力がない」と明かしている。
 別の企業幹部は、防衛事業の拡大は、「会社の評判を損なうリスクがある」とまで語った。防衛事業は細々と続けるが、拡大の見通しはない――。そう考える企業は、業界内でも少なくなかった。

◇顧客は数十年、自衛隊だけだった
 防衛産業で撤退や統廃合が多発している理由はどこにあるのか。
 ディプロマットはアメリカとの比較において、日米の防衛企業の売上構造の違いが明暗を分けたと論じる。アメリカでは主要防衛企業の売上の9割前後を防衛部門が占めるのに対し、日本では大半の企業で1割に満たない。
 売上の大半が民生品である以上、防衛分野に経営資源を集中させることは難しく、大量生産によってコストを下げる規模の経済も働かない。結果として、米大手が10%以上の営業利益率を確保する一方、日本企業の利益率は5%を下回る水準にとどまっていた。
 顧客構造の違いも顕著だ。米ビジネスニュース専門局のCNBCが指摘するように、日本の防衛企業にとっての顧客といえば事実上、数十年にわたり自衛隊だけだった。
 仮に政府が防衛費を増額したとしても、輸出のための営業体制を整えたり、コストを下げたり、余剰生産能力に投資したりする誘因は生まれにくい。
 経済産業省ですら2026年2月の防衛産業ワーキンググループの資料で、防衛事業が民生事業に比べて利益率が低く成長も見込めなかったため魅力が低下し、それが防衛各社の撤退につながったと総括している。
 利益率は非常に低い。防衛装備品の利益率は契約時の想定で7.07%(2020年度)とされていたが、受注後の資材高騰などで実際は平均2〜3%にとどまるとディプロマットは指摘している。

◇「真の汎用フリゲート」と評された新型FFM
 防衛事業からの相次ぐ撤退を受け、浜田靖一防衛相(当時)は2023年1月、防衛装備品の利益率の上限を従来の約2倍にあたる15%に引き上げる方針を発表した。政府は2023年度からの5年間の防衛費を総額43兆円とする計画も進めていた。
 裏を返せば、抜本的な予算措置を講じなければならないほど、防衛産業の経営基盤は弱体化していたということになる。
 こうして緩やかな衰退の道を辿っていた日本の防衛産業に、転機が訪れた。
 オーストラリア政府が中国の脅威を念頭に進める、軍備再編計画。水上戦闘艦を計26隻へ拡大するこの計画で、中核となる契約を三菱重工業が受注したのだ。
 オーストラリア側は新規調達する次期汎用フリゲート艦について当初、ドイツのMEKO A-200、スペインのALFA3000、韓国の大邱(テグ)級、そして日本の新型FFMを候補に比較検討を重ねていた。最終選考でドイツの造船大手TKMSを破り、三菱重工業が勝ち取った形だ。
 オーストラリア政府は、新型FFMの選定を「コスト・能力・納期の点で最良だったため」と説明した。
 コンロイ防衛産業相によれば、最終選考に残った3案(MEKO、もがみ型、新型FFM)の取得費は同等だが、ライフサイクル全体ではもがみのコストが大幅に低い。
 また、マールズ副首相兼国防相は新型FFMが「オーストラリアにとって最良のフリゲート」であると評価している。ステルス性に優れ、長射程ミサイルを撃てる32セルのVLS、高性能のレーダーとソナーを備える。対空戦と対潜戦の双方をこなすことから、マールズ氏は「真の汎用フリゲート」と評した。

◇評価された「最速の調達」
 加えて、新型FFMは現に日本で進行中のプロジェクトであり、調達速度の面でも有利に働いた。
 豪防衛産業誌『オーストラリア・ディフェンス・マガジン』は、1番艦を2029年に引き渡し、2030年に就役させるという政府の日程を満たす唯一の選択肢だったと指摘する。現行の「もがみ」型護衛艦は年に約2隻のペースで建造されており、艦を早く必要とするオーストラリアには重要な点だ。
 さらに、戦闘管理システムの言語対応と豪州法令上の必要変更を除いて設計に手を加えない「ノーチェンジ」方針を採ることで、早期取得を確実なものにしている。
 コンロイ国防産業相は、「平時の豪海軍としては最速の調達だ」と評価し、性能面でも新型FFMは世界最高水準の汎用フリゲートの一つであると述べている。


出所=防衛省「新型FFM(護衛艦)に係る調達の相手方の決定について」

 米国防専門グローバル誌のディフェンス・ニューズによれば、基準排水量4800トン級の最初の3隻は日本で建造され、残る8隻は西オーストラリアでの建造となる。1隻目の引き渡しは2029年12月を予定している。
 選定時に約100億豪ドルとされた事業費は、2026年4月時点で最大200億豪ドル(約2兆2800億円)と、およそ倍に膨らんでいる。

◇出発点は岸田政権下の「安保3文書」
 なぜ、縮小が続いていた日本の防衛産業が、輸出産業へと変わり始めたのか。出発点は2022年12月、日本政府が閣議決定した安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)にある。
 米議会設立シンクタンクの平和研究所が取りあげているように、日本の新たな国家安全保障戦略は、中国に関する記述を大幅に拡充。中国の対外姿勢が日本の平和と安全、国際社会の安定、法の支配に基づく国際秩序にとって、「これまでにない最大の戦略的な挑戦」であると言及している。
 これと並んで、ミサイル関連技術の開発を急速に進める北朝鮮についても、「従来にも増して重大かつ差し迫った脅威」と強い危機感を示している。従来の抑制的なトーンを大きく超え、情勢の厳しさを強調する内容だ。
 日本が「最大の戦略的な挑戦」と位置づけた中国について、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)も見方を一にする。東シナ海・南シナ海でその後も、軍事的な威圧を強め続けているとの分析だ。
 なお、中国の軍事的台頭のほか、ロシアのウクライナ侵攻も大きく影響していると、米シンクタンクのスティムソン・センターは指摘する。
 こうして防衛の必要性への認識が高まったことで、防衛費は増額へ傾いた。国家安全保障戦略には防衛費をGDP比2%へ倍増させる計画が盛り込まれ、高市早苗政権は達成時期を2027年度から2025年度に前倒しした。

◇殺傷能力を持つ防衛装備品も輸出可能に
 予算面での変化に加え、半世紀余りにわたって日本の防衛装備の輸出を縛ってきた規制も、撤廃された。
 英国際安全保障シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)が取りあげたように、2026年4月21日、自民・維新連立の高市内閣は防衛装備移転三原則の運用を改め、完成品の輸出を救難・輸送・警戒・監視・掃海の非殺傷5類型に限定してきた規制を撤廃した。
 1967年の武器輸出三原則と1976年の政府統一見解による事実上の全面禁輸から、およそ半世紀。2014年の安倍政権による緩和を経てもなお、完成品の輸出実績は2020年のフィリピン向け警戒管制レーダー(三菱電機、約1億ドル=約163億円)にほぼ限られていた。今回の改定で、殺傷能力を持つ装備を含め、完成品の輸出が制度上可能になった。
 IISSは輸出拡大について、量産効果で国内メーカーの経営を支える狙いもあると見る。かつて企業の撤退が相次いだ産業を、外需で立て直す方針だ。
 導入に関心を持つ国はすでに現れており、インドネシアは中古の潜水艦や護衛艦、フィリピンは03式中距離地対空誘導弾、ニュージーランドはオーストラリアと同じ新型FFMに、それぞれ関心を寄せている。
 日英伊による次期戦闘機の共同開発プログラム、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)の開発も進行中で、2026年度予算には1600億円超が計上された。2035年の配備を目指す。7月21日、情報にアクセスできるオブザーバー国としてカナダも参加することが発表された。

◇日本勢5社の武器売上は40%増
 日本の防衛産業の売上は、実際に急拡大している。
 スウェーデンのシンクタンクであるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2025年12月に公表した『武器生産企業上位100社』(の統計によれば、上位100社に入る日本企業5社の2024年の武器売上は、前年比40%増の133億ドル(約2兆1500億円。7月22日現在のレート、1ドル163.07円で換算、以下同)に達した。上位100社全体の武器売上高も、同年に6790億ドル(約110兆円)と過去最高を更新している。
 世界的にも軍事支出は伸びており、日本はこの流れを捉えた形だ。SIPRIが2026年4月に公表した別の統計『Trends in World Military Expenditure, 2025』によれば、2025年の世界の軍事支出は2兆8870億ドル(約471兆円)と過去最高を更新した。
 各国が軍備の近代化と拡張を急ぐ中、欧州など国外の旺盛な需要をいち早く捉えたのが日本と韓国の企業となった。韓国勢4社の31%増(141億ドル=約2兆3000億円)に対し、日本勢は40%増とさらに高い伸びを見せている。対照的に、中国企業8社の売上は合計で10%減少。陸上装備最大手の中国北方工業集団(NORINCO)に至っては31%減と大きく落ち込んだ。

◇中国の威圧が防衛力強化につながった皮肉
 市場はこの流れを好感している。
 CNBCによれば、高市早苗政権が掲げる防衛強化路線への期待から、2025年の1年間で三菱重工業の株価は72.7%高、川崎重工業は42.6%高を記録。IHIにいたっては107.1%高と、2倍以上に跳ね上がった。
 かつて「事業としては魅力がない」と言われた防衛分野に今、投資家の資金が集中している。輸出解禁が正式に決まる前から、市場は政策転換の可能性を織り込んでいたことになる。
 一連の流れを振り返れば、海上での威嚇行為などで日本を含む諸外国へ圧力をかける中国の動向が、結果として日本の防衛力を強化する結果を招いたことになる。
 日本が防衛力強化に踏み切った主たる背景は、2022年末に改定された安保三文書で「最大の戦略的挑戦」と位置づけた、中国の長年にわたる軍事的台頭だった。
 その危機感を背景に、日本政府は防衛費の倍増を決め、国内調達の拡大に踏み切った。利益率を引き上げて企業をつなぎ留め、輸出の解禁によって海外への販路も開いた。利益率の低さから100社超が撤退し、政府だけを顧客に細々と続いてきた産業に、量産と成長の道筋がようやく示された。
 中国の軍拡により、対抗手段として防衛産業への注目が高まり、日本の防衛関連企業自身も利益の薄さから見限りかけていた産業に、再生の光が差した構図だ。

◇輸出する新型FFMはまだ1隻も完成せず
 今後の課題となるのが、製造能力の強化だ。
 米シンクタンクのハドソン研究所によれば、三菱重工業は既に4年分の受注残を抱える。働き方改革と人手不足で日本の造船能力はむしろ低下しており、新造艦の建造期間は長期化しているとの指摘だ。
 しかも、オーストラリアへ輸出する新型FFMは、海上自衛隊向けにも調達が進む段階であり、現実にはまだ1隻も完成していない。海自向けとオーストラリア向けの建造を同時に進めなければならず、一方で8隻の現地建造を担うオーストラリア側の造船業も、慢性的な人手不足と納期遅延に苛まれる。三菱重工業自身も海外での建造経験がなく、現地の生産体制をゼロから築く必要がある。
 CNBCの取材に応じた国際基督教大学のスティーブン・ナギ教授は、日本のエンジニアリングを、「一級品」と評価しつつも、日本企業には国際的なマーケティング経験とコスト競争力が乏しいと指摘した。当面は、「世界の武器市場を席巻するのではなく、信頼できる同盟国を相手に、専門性の高いハイテクのニッチを切り開いていく」形になるとの見方を示している。
 半世紀にわたりほぼ国内市場に限定されてきた日本の防衛産業は、国際市場で通用するのか。オーストラリアとの契約の履行に、生産能力は耐えられるのか。戦後初となる護衛艦の輸出を通じ、再建途上にある日本の防衛産業が国際的な競争力を証明できるかが試されている>(以上「PRESIDENT」より引用)




習近平が威圧を続けた結末…100社超が撤退した日本の防衛産業が復活、「2兆円の護衛艦輸出」を実現できた理由」と日本の軍需産業の復興を青葉 やまと(フォローフリーライター・翻訳者)氏が報告している。
 復興と書いたが、まさに戦前から一世紀近く経た復興だ。ただ日本は「買ってくれ」と売り込みをかけているわけではない。武器の国際市場に出品しているわけでもない。日本は防衛装備品の輸出ルールを緩和し、殺傷能力のある完成品も含めて国際市場や海外への提供を原則可能とする方向へ大きく転換した段階だ。

 しかし防衛兵器開発は継続的に続けてきた。このブログで何度か紹介したレールガンや高出力マイクロ波砲やレーザー砲さらにはメガ粒子砲など、日本は世界に先駆けて電気を使用する防衛兵器開発に注力してきた。
 それらは既に実用段階に達したレールガンや高出力マイクロ波砲やレーザー砲などが実戦配備に向けて開発から実用化へと研究を続けている。メガ粒子砲も実験で厚さ200mmの鋼鉄を貫通させている。そして次世代戦闘機F-3も英伊との共同開発が着々と進んでいる。

 また三菱重工業(横浜製作所など)、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)(因島事業所など)、住友重機械マリンエンジニアリングなどで米海軍艦艇の補修を行っている。米韓軍艦艇の基地外の国内民間施設を活用した定期検査や大規模な整備が進められている。特に住友重機械マリンエンジニアリングは米海軍との間で艦船修理契約(MSRA)を保有し、第7艦隊所属艦船の修理を実施している。このような軍事機密の塊というべき米海軍艦艇の補修等を日本の民間企業が実施していることは日本の技術水準が米海軍の要求を満たす段階にあることを証明している。
 さらに日米当局間では、防衛装備品・サービスの維持整備共同参画(DICAS)の枠組みを通じ、日本の造船所での補修体制を円滑化・強化する協力が進められている。今後は日本で米海軍艦艇の建造が話し合われている。

 ウクライナ戦争により飛躍的な進歩を遂げつつある「無人兵器」に関して、小型精密技術は日本が得意とする技術分野でもあり、新兵器開発で日本が世界の注目を浴びていることも特筆すべきだろう。
 現にウクライナ軍が使用しているロシアが攻撃に用いるシャヘドなどのドローンの迎撃に日本企業が提供するキットを組み立てた迎撃ドローンが使用され、高確率でシャヘドを撃墜している。このように技術大国日本が新時代の兵器開発でも威力を発揮している。核ミサイルが確実に迎撃する防衛兵器が開発された暁には、核兵器は無力化され、核廃絶を唱えるまでもなく核兵器は地球上から姿を消すだろう。究極の「人類すべての安全」のためにも、日本は防衛兵器の開発に官民協力して全力を上げるべきだ。

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