近年、命の値段が軽くなっているような気がしてならない。
<東京都新宿区で昨年3月、路上ライブ配信中だった「最上あい」こと佐藤愛里さん(当時22歳)が刺殺された事件で殺人などの罪に問われた栃木県小山市の無職・高野健一被告(44)の裁判員裁判の判決公判が15日、東京地裁であった。
井戸俊一裁判長は佐藤さんを何度も刺し、頭を蹴り、犯行後には被害者のスマホを手に取り「まだ動くんだ」「死んでますかね」などと発言していた高野被告に対し「残虐で被害者の尊厳を踏みにじる犯行」として懲役16年(求刑20年)を言い渡した。
懲役16年「殺意を抱くに至った原因を被告人にのみ帰するのは相当でない」
判決などによると高野被告は昨年3月11日午前10時ごろ、JR高田馬場駅近くの路上でライブ動画を配信中の佐藤さんをナイフで少なくとも55回刺したり切りつけたりして、死亡させた。佐藤さんが負った傷は61か所にも及び、頸動脈を貫通するほどの強さで首を刺し、判決ではこれを強固な殺意と認定した。
「《ライバー刺殺》「まだ動くんだ…」犯行後に頭を蹴った被告に「残虐で被害者の尊厳を踏みにじる犯行」だが「同情の余地がある」懲役16年の判決…配信者も押し寄せ地裁は厳戒態勢」と、ライブ配信の現場で起きた殺人事件の判決が懲役16年とは。それでは被害者は浮かばれないだろう。
井戸俊一裁判長は佐藤さんを何度も刺し、頭を蹴り、犯行後には被害者のスマホを手に取り「まだ動くんだ」「死んでますかね」などと発言していた高野被告に対し「残虐で被害者の尊厳を踏みにじる犯行」として懲役16年(求刑20年)を言い渡した。
懲役16年「殺意を抱くに至った原因を被告人にのみ帰するのは相当でない」
判決などによると高野被告は昨年3月11日午前10時ごろ、JR高田馬場駅近くの路上でライブ動画を配信中の佐藤さんをナイフで少なくとも55回刺したり切りつけたりして、死亡させた。佐藤さんが負った傷は61か所にも及び、頸動脈を貫通するほどの強さで首を刺し、判決ではこれを強固な殺意と認定した。
一方で被害者に約255万円を貸し付けた被告が、返済を求めて民事訴訟で勝訴を得たにもかかわらず、被害者が収入を隠すような行動を取ったことで、「被告が絶望感を覚えるに至った」と斟酌し、「殺意を抱くに至った原因を被告人にのみ帰するのは相当でない」「犯行に至る経緯には同情の余地がある」と求刑懲役20年に対し、懲役16年を言い渡した。
前回の論告求刑公判で傍聴席からライブ配信が行われた影響からか、この日は一般傍聴席が24席に限られた警備法廷が選ばれた。これに対して約180人の傍聴希望者が列を作り、午後3時の開廷後も傍聴券の配布を知らずに法廷前を訪れる人が見られた。 また、裁判所の門の前では男性2人が同裁判の「速報」を配信するなど、事件への関心の高さをうかがわせた。
◇回を追うごとにどんどん傍聴人が増えてきた注目裁判
初公判から傍聴を続け、事件や裁判に関する動画を配信している40代男性は、判決言い渡しを受けてこう話した。
◇回を追うごとにどんどん傍聴人が増えてきた注目裁判
初公判から傍聴を続け、事件や裁判に関する動画を配信している40代男性は、判決言い渡しを受けてこう話した。
「初公判のときは朝8時前に来ていたので、1番乗りで傍聴できたんですけど、回を追うごとにどんどん人が増えていきましたね。午前の審理が終わる前から午後の傍聴に並ぶ人もいて、かなり異様な状態でした。前回、傍聴席から盗撮して配信した人がいたじゃないですか。あれは本当にふざけてますよね。今日は警備法廷になりましたから。 Xでもこの事件をめぐってかなり議論が盛り上がっていますね。あくまで僕個人としては、求刑20年自体がかなり重いと感じていました。最終的には、金銭トラブルに至った経緯や高野被告に酌むべき事情があることを踏まえた判決が出たのだと思います」
被告が殺意を募らせていったことには理由があるかもしれない。しかし、残虐な殺害行為が許されるはずもない。どこまでも後味の悪さが残る事件が、一つの節目を迎えた。>(以上「集英社オンライン」より引用)
「《ライバー刺殺》「まだ動くんだ…」犯行後に頭を蹴った被告に「残虐で被害者の尊厳を踏みにじる犯行」だが「同情の余地がある」懲役16年の判決…配信者も押し寄せ地裁は厳戒態勢」と、ライブ配信の現場で起きた殺人事件の判決が懲役16年とは。それでは被害者は浮かばれないだろう。
いかなる正当な理由があるにせよ、殺害することは決して許されることではない。引用した事件で被告の殺害理由は「貸した金が戻ってこない」というものだが、果たして被害者に「借りた金」だとの認識があったのだろうか。
確かに255万円は大金だ。普通の労働者の一年分の可処分所得に相当する。しかし、それでも殺人事件を犯すには根拠が薄い、と云わざるを得ない。むしろ被告が殺意を抱いたのは「被害女性に同情していたが、騙されていた」という絶望感から来る、自己嫌悪の念の方が強いのではないだろうか。
むろん、人をだますのは良くない。しかし人は程度こそ違え、無意識のうちに日常的に人を騙してはいないだろうか。その典型が芸能人であり、政治家たちだ。いや騙すというより、演じている、と云うべきかもしれない。
殺害された被害者はyou tube配信していたという。そのための芸名「最上あい」を用いていた、配信しているのは「最上あい」であって佐藤愛里氏ではない。ただし何らかの嘘偽りを申し立てて、被告から金を毟り取っていた。しかしyou tuberが視聴者から「投げ銭」を得るのは普通にあることだ。ことにyou tuberが若い女性の場合は「投げ銭」が普通に行われているようだ。
ただ被告は「投げ銭」ではなく、貸付金だったとして「返済を求めて民事訴訟で勝訴を得た」と引用記事にある。裁判で貸付金と認定されていることから、被告は被害者に借用証を書かせていたのだろうか。あるいは借用証はないが、民事訴訟の中で被告が「貸付金」だったと主張し、被害者が「投げ銭」と認識していると抗弁しなかったのので、貸付金返済判決を民事裁判で勝ち取ったのだろうか。
しかしそれにしても異常だ。いかに「被告が絶望感を覚え」たとしても、強い殺意を抱いて「JR高田馬場駅近くの路上でライブ動画を配信中の佐藤さんをナイフで少なくとも55回刺したり切りつけたりして、死亡させた。佐藤さんが負った傷は61か所にも及び、頸動脈を貫通するほどの強さで首を刺し」たのは異常としか云いようがない。
しかも虫の息の被害者に「「まだ動くんだ…」犯行後に頭を蹴った」という。殺人を自己正当化した異様な殺人事件だ。その被告に対して懲役16年の判決とは、余りに軽過ぎはしないだろうか。また検察の求刑が懲役20年も軽いと云わざるを得ない。
被告が絶望感を覚えたのは「貸金返済が絶望的」だからではないだろう。被害者にとって被告も「投げ銭」をする、「最上あい」のファンの一人に過ぎなかった、という絶望感ではないか。つまり被告が貸したのは255万円ではなく、被告の「最上あい」に対する一方的な「愛」という「独占欲」が裏切られたことに対する代償殺人ではなかったか。
「犯行に至る経緯には同情の余地がある」と懲役16年を言い渡した裁判官は世間の無数にいる若い女性you tuberに「投げ銭」する男たちに、女性you tuberに投げ銭していても「貸付金」だと言い張れば、たとえ「ものにならなくて」殺害しても「懲役16年」と彼らの頭の中で置換されたのではないか。
日本には40代から50代の「中年独身(未婚)男性」は、日本全国でおよそ500万人以上と推計される。その内の何人が若い女性you tuberに「投げ銭」しているか知らないが、0.1%としてもかなりの数だ。類似した犯罪が今後起きないとも限らない。
かつて「頂き女子りりちゃん」を名乗っていた渡邊真衣(わたなべ まい)被告の詐欺事件があった。恋愛感情を利用して現金をだまし取る「頂き」の手法をマニュアル化し、SNSで販売・指南するなどの悪質な手口で複数の男性から総額約1億5500万円を騙し取ったものだ。その渡辺真衣被告の判決は、懲役9年・罰金800万円で確定している。
「最上あい」は殺されるほどの悪事を働いたのだろうか。確かに人を騙して金銭を巻き上げたのは良くない。しかし彼女にとって、それはyou tubeの中の世界での出来事であって、現実の出来事とは認識していなかったのではないか。いわばゲーム感覚で255万円を巻き上げた代償を自らの命で支払わされた。そのゲームをいきなり現実の「貸付金」として回収しようとした被告の方こそ、「投げ銭」する資格のない人だったのではないか。 近年、命の値段が軽くなっているような気がしてならない。