いよいよ欧州はグローバリズムから「自国民ファースト」の時代への大転換が始まる。

<◇カティヤ・アドラー欧州編集長
「激震」、「社会政治的な大変動」、「ドイツのこれまでの流れを変える分岐点」――。政治アナリストや多くのメディアはこぞって、そう形容した。
 これは、ドイツ東部で6日に行われた州議会選挙で、移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が劇的な勝利を収めたことへの反応だ。果たしてこの反応は、大げさなのだろうか?
 州議会選挙が行われたザクセン・アンハルト州は、広大なドイツを構成する16州の中でも特に規模が小さい。全国の有権者5900万人のうち、同州の有権者はわずか170万人だ。
 しかも今回の選挙で、AfDは単独過半数にはわずかに届かなかった。それでは、同州の有権者の意思は、一体どこまで重要なのか?
「非常に重要」というのが、その答えだ。
 何よりもまず、ドイツ国内において大きな意味を持つ。
 今回の選挙は州レベルのものだが、その影響は国政にも及ぶ。AfDが圧勝したことで、すでに苦境に立たされている同国の中道連立政権は、これまで以上に圧力を受けることになる。支持率が著しく低い保守派のフリードリヒ・メルツ首相にとっては、政治生命にとどめを刺す一撃になるかもしれない。メルツ氏はかねて、AfDの人気を失墜させると約束していた。
 欧州は今、危機に直面している。ロシアの侵略やドナルド・トランプ米大統領の怒りに任せた関税措置、中国による経済的脅威などを抑え込もうと、欧州は苦慮している。そうした中でドイツの与党が政治的苦境に立たされるとあっては、欧州連合(EU)で最も影響力のあるドイツはますます立場が弱くなり、欧州全体の課題に気が回らなくなってしまう。
 ザクセン・アンハルト州での選挙結果は、ナチス時代の過去が今も重くのしかかるドイツ全体に、自省を迫るものでもある。極右の民族主義的政党が選挙でこれほど圧倒的な勝利を収めるのは、1945年の第三帝国(ナチス政権)の崩壊以降、初めてのことだ。
 ドイツ当局は、AfDには反民主主義的な側面があると認定している。また、ザクセン・アンハルト州などにあるAfDの複数の州支部を、「右翼過激派」に指定している。
 AfDはドイツ東部で特に支持が高いことで知られているが、現在は、全国的にもトップレベルの支持を集めている。
 ドイツ政界の主流派は、有権者の支持を失ってしまったようだ。ロシア以外の欧州で最大の人口を抱える、欧州随一の単一経済市場のドイツは、これからどうするのだろうか。

◇トランプ氏がAfDに関心
 小さいザクセン・アンハルト州での選挙結果の影響は、ドイツ国外にも波及している。
 アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、ザクセン・アンハルト州の出口調査結果の画像を、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」にすぐさま投稿した。
 AfDが掲げる反移民、反「ウォーク」(woke、差別や格差といった社会問題を意識する傾向を指す言葉)、そして「ドイツはドイツ人のために」というメッセージは、ドナルド・トランプ氏が掲げる「MAGA」(アメリカを再び偉大に)とかなり一致する。AfDは欧州のほかの複数の民族主義的な政党と同様、主流メディアを貶め、裁判官の中立性に疑問を呈し、「ドイツを再び偉大にする」と約束するなど、トランプ氏の手法を大きく取り入れている。
 しかし興味深いことに、欧州での選挙運動の現場でトランプ氏の名前が語られることはほとんどない。欧州の政治家は、自分たちの有権者の間でトランプ氏がいかに不人気かを痛感しているのだ。
 6日夜、トランプ氏の投稿に続いて、ザクセン・アンハルト州の選挙結果に反応したのは、影響力のあるロシア人実業家で、ロシア直接投資基金の最高経営責任者(CEO)、キリル・ドミトリエフ氏だ。ドミトリエフ氏はAfDの選挙結果を「歴史的」なことだと評価した一方で、独連邦政府は「信用を失った」、メルツ独首相にとっては「屈辱的」な結果だと主張した。
 ドミトリエフ氏はさらにメルツ氏を、今夏に辞任を余儀なくされたイギリスのキア・スターマー前首相になぞらえた。スターマー氏に対しては、支持率が低迷し、ピーター・マンデルソン前駐米大使の任命をめぐってスターマー氏の評価を落とす情報が明るみに出たことなどが影響し、辞任を求める圧力が高まった。

◇ロシアが関与しようとする理由
 ここで、疑問が浮かぶかもしれない。なぜロシアが、ドイツの州議会選挙に注目するのか。そして、ドミトリエフ氏のイギリスに対する嫌みに、一体どんな意味があるのかと。
 理由はウクライナだ。ロシアの全面侵攻を受けるウクライナにとって、単独ではドイツ政府が最大の支援国なのだ。イギリスについて、イギリスがウクライナに供与したミサイルが、ロシア領内への攻撃に使われたことがわかっている。この事実にロシア政府は深く怒っている。
 対照的に、AfDはかなりロシア寄りだと言える。同党はウクライナへの軍事支援の停止や、対ロシア制裁の解除、はるかに安価なロシア産エネルギーの輸入再開を求めている。ドイツは、2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始したことへの措置として、ロシア産エネルギーの輸入を停止。エネルギーを大量に消費するドイツの産業界は甚大な経済的打撃を受けた。
 ロシアに対して強硬手段をとらないAfDの穏健姿勢は、ドイツの西部地域よりはるかに貧しいドイツ東部の人々にとって魅力的に映っている側面もある。ドイツ政府は1989年のベルリンの壁崩壊後、旧共産圏だった東部を統合するため、(報告内容の相違や、インフレを考慮しているか否かで誤差はあるものの)2兆3000億~3兆ユーロを投じてきた。それでも東西の経済格差は残っている。
 ザクセン・アンハルト州はドイツで最も貧しい州だ。同州を含む東部の人々の間では、「オスタルギー」と呼ばれるものがしばしば見られる。これは、ドイツ語で東を意味する「オスト」と、郷愁を意味する「ノスタルギー(ノスタルジー)」を組み合わせた造語で、「東への郷愁」を意味する。つまり、暮らしが比較的安定していた共産主義体制時代を懐かしむ気持ちのことだ。

◇欧州各地の政党の反応
 EUもまた、ザクセン・アンハルト州の選挙を注視していた。
 今後12カ月は、EU各地で選挙が相次ぐことになる。フランス、イタリア、スペイン、ポーランドなどの主要国で投票が予定されている。EUは、政治的に右でも左でもより「極端」な政党が、EU全域で勢力を伸ばすことを懸念している。この場合、急進左派もそうだが、それ以上に右派の「過激派」政党の躍進を、EUは心配しているのだ。
 スペインの民族主義政党VOXのサンティアゴ・アバスカル党首は6日、ザクセン・アンハルト州議会選挙でのAfDの勝利について、「ドイツと欧州にとっての大きな希望だ」とソーシャルメディアに投稿した。
 一方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領に近い中道派のバンジャマン・アダッド欧州担当相は、「ドイツの州議会選挙で極右が勝利するという、欧州にとって深刻な局面を迎えている」と警告した。
 AfDも、「極右」や「強硬右派」のレッテルを貼られた欧州の他の政党も、「極右」などの形容を受け入れていない。また、これらの政党の主張や政党綱領はそれぞれ異なる。マリーヌ・ル・ペン氏率いるフランスの極右政党・国民連合は2年前、AfDが「あまりに急進的」だとして、欧州議会の会派からAfDを除名している。ただ、これらの政党には反移民政策や、強い民族主義的なメッセージを共有する傾向がある。これこそがEUにとって大きな懸念材料となっている。
 EU域外の情勢を受けて、欧州ではこれまで以上に結束が求められている。そうした時期に、「ドイツ・ファースト」、「イタリア・ファースト」あるいは「フランスはフランス人のために!」などと主張する民族主義的な政党が台頭し、欧州の結束が損なわれることを、EUは懸念している。
 AfDや、イタリアの極右政党「同盟」のような民族主義的な政党は、EUに対して極めて懐疑的な立場を取る傾向がある。しかしEU側は、例えばトランプ氏の嫌がらせに対抗したり、あるいは中国製品のダンピング(不当廉売)から欧州企業を効果的に保護するには、欧州が結束する必要があると主張している。
 欧州の防衛当局者も、欧州の対ロシア制裁をめぐって亀裂が生じたり、(マリーヌ・ル・ペン氏率いる仏・国民連合や、独AfDのように)北大西洋条約機構(NATO)に加盟し続けることの意義を疑問視する国が出てくれば、ロシアを勢いづかせるだけだと警告している。
 欧州各国の安全保障当局幹部たちは、ウクライナにおけるロシアの動きを阻止するには各国の団結が必要だと言う。そうでなければ、クレムリン(ロシア大統領府)はバルト3国などのNATO域内への攻撃を試みる恐れがあるのだと。
 実のところ、欧州の有権者は、こうした域外からの脅威と、それが欧州に及ぼす影響を十分に認識している。そして、ウクライナや中東での戦争の影響や、自国の医療サービスの崩壊、自分自身や家族の経済的安定の低下を懸念している。制御できない移民流入や、街の治安も大きな関心事となっている。
 だからこそ、ザクセン・アンハルト州議会選挙の結果がいかに重要かが、はっきりあらわになるのだ。AfDの圧勝は、既存政党だけでなく、司法当局や治安当局を含む欧州各地の諸機関に対する警告の赤信号だ。AfDはこれらの機関のことを、利己的な既得権益の主流派、いわゆる「エスタブリッシュメント」なのだと軽んじている。
 欧州の有権者は、何十年にもわたり支持し続けてきた政党に失望し、裏切られたと感じている。選挙を機に、右派や左派に目を向けるようになったからといって、有権者全員が突然、過激思想を持つようになったわけではない。
 ザクセン・アンハルト州でAfDが打ち出した選挙スローガンは、「あらゆることが可能だ!」という前向きなものだった。AfDは加えて、ドイツ人が再び自国を誇りに思えるようにするという公約も掲げた。AfDには政権運営の経験はない。そうした政党にここはひとつ任せてみようという意欲が、有権者の間で高まりつつあるようだ>(以上「BBC」より引用)




極右AfDの歴史的躍進、ドイツと欧州全体にとっての重要性は ドイツ東部州議会選」とは選挙前から云われていたことだ。選挙前の世論調査でAfDは43%の支持を得ていたが、選挙結果はまさにその通りになった。これによりEUグローバル化を推進していた欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏は窮地に立つことになる。
 既にイタリアには反・グローバリズムのメローニ政権が成立している。フランスでは来年四月に実施される大統領選で仏・国民連合代表のマリーヌ・ル・ペン氏の優勢が伝えられている。これで「ドイツ・ファースト」、「イタリア・ファースト」あるいは「フランスはフランス人のために!」などと主張する民族主義的な政党が台頭し、EUは結束よりも分裂の方向が鮮明になりつつある。

 そうした欧州諸国の選挙結果をプーチン氏は歓迎しているようだが、それは早計というしかない。なぜならEUは中央集権的なベクトルが減少されるものの、イタリアもドイツもフランスも「自由と民主主義」を前提とした政治形態の上で「自国民ファースト」を主張しているに過ぎないからだ。むしろEUのグローバリズムを前提とする方針こそがプーチンにとって好都合だ。だがそれもソ連当時の軍事力と強権支配の悪夢が東欧諸国に色濃く残っているため、ロシアに支配されないようにNATO加入を願っている。
 つまり親ロシア政策を展開してきたのはEUと従来のイタリアやドイツやフランスのグローバル政権だ。そうしたグローバリズムからの決別が欧州諸国で起きて、それが大きな潮流として姿を現している。もちろん米国のトランプ氏も「アメリカ・ファースト」を叫んでいる。日本でも「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進している。

 一人の巨人が全体を指導し支配する時代は終焉している。政治の世界でも各国政治家が自らの国家と国民のために主体を置き、対峙すべき覇権主義国家とは「自由と民主主義」を同じくする諸国と連携して実施する、という方向にシフトしようとしている。
 もちろん外国人移民受け入れもグローバリズムの産物だ。なせせなら労働力は「工数」であって、そこには国籍も文化も男女もすべて関係ないからだ。ややこしい文化や伝統といったもの一切を無視した社会の方が「効率的だ」というのがグローバリズムの考え方だ。だから移民を促進して国民の概念を一掃し、労働者を単一の「工数」に落とし込む方が経営者にとって都合が良いからそうした来た。しかし国民は「工数」ではないし、ヒトは労働対価を支払いさえすれば何をしても構わない、というものではない。国民を馬鹿に仕切ったグローバリズム的発想で「磨り潰し」てきた政権に対して、国民はその欺瞞性に気付いて「ノー」を突き付けた。

 英国でも伝統的な保守党と労働党の二大政党の構図にリフォームUK(改革党)が割り込み、 英国政治で最も勢いのある勢力になっている。リフォームUK(改革党)はナイジェル・ファラージ氏が率いる反移民・反EUを掲げる政党で、物価高や移民対策への不満を抱く有権者から強い支持を得ている。ちなみに 2026年5月の統一地方選では改選議席の約3割にあたる1,400議席以上を獲得する大躍進を遂げた。直近の国政世論調査の投票意向でも労働党に迫る20%超の支持率(2位前後)を記録しており、次期総選挙での国政進出へ向け猛烈な勢いを見せている。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。