政府は成長分野への大胆な投資や、補助金支出を惜しむな。
<●NECが量子コンピューター開発から撤退研究者はライバル・富士通に移籍
「NECが量子コンピューター開発から撤退!研究者は富士通へ大量流出、取材に「技術の見極めを進めている」と正式回答」とは驚くしかない。なぜならNECは「量子コンピューターの計算の“心臓部”に当たる「量子ビット」を世界で初めて実現し、現在、米IBMや米グーグルなどが手掛けて主流となっている超伝導型量子コンピューターの源流をつくった”草分け”的存在だ」からだ。
NECが量子コンピューターのマシン開発から撤退していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
NECは1999年に量子コンピューターの計算の“心臓部”に当たる「量子ビット」を世界で初めて実現し、現在、米IBMや米グーグルなどが手掛けて主流となっている超伝導型量子コンピューターの源流をつくった”草分け”的存在だ。
複数の関係者によると、NECは3月末でマシン開発から撤退し、開発に携わった多くの研究者たちはライバルの富士通に移った。移籍したメンバーには、NECの量子コンピューティング研究のリーダーを務めていたエース研究者も含まれている。
一方、富士通は神奈川県川崎市の本社横に量子コンピューターの研究施設を新設するなどマシンの開発を続け、先行する米IBMや米グーグルを追いかけている。今回、思わぬ形で貴重な量子人材をライバルから獲得し、研究開発体制を充実させることができた。
NECの広報は、ダイヤモンド編集部の取材に対し、量子コンピューターのマシン開発からの撤退について、「コメントは差し控える」とした上で、「量子コンピュータの活用について、実用化に向けた技術の見極めとともに、産業化に向けた取り組みも進めている。多様なユーザー企業とユースケース創出や実証を進めるコンソーシアムに参画し、将来の事業化領域の見極めを進めている」と回答した。>(以上「DIAMOND」より引用)
「NECが量子コンピューター開発から撤退!研究者は富士通へ大量流出、取材に「技術の見極めを進めている」と正式回答」とは驚くしかない。なぜならNECは「量子コンピューターの計算の“心臓部”に当たる「量子ビット」を世界で初めて実現し、現在、米IBMや米グーグルなどが手掛けて主流となっている超伝導型量子コンピューターの源流をつくった”草分け”的存在だ」からだ。
量子コンピュータ開発のトップランナーと目されていたNECの撤退は日本IT業界にとって衝撃的なニュースだ。NECが撤退した原因として日経新聞などが実用化までに長い時間がかかり、投資に見合う十分な収益(費用対効果)を得るのが困難と判断したため、或いは実用化の有力な方式がまだ定まっておらず、ハードウェア開発を継続するためのコストやリスクが見合わないと判断したためだという。
ただ米国や中国が国を挙げて巨額の資金(数千億〜数兆円規模)を投じる中、日本では十分な資金やリスクマネーの供給が乏しく開発が苦境に陥った大きな要因とされる。海外に投資している世界最大のビッグファンド「年金基金」を、なぜ政府は国内産業に投資しないのだろうか。或いは「積極財政」の目玉として量子コンピュータ開発や光コンピュータ開発に補助金を投入すべきだ。もちろん世界最先端半導体製造に向けて頑張っているラピダスやキオクシアなどの日本企業に対しても、十分な投資をすべきだ。
日本の成長戦略にとって、IT戦略は必要不可欠だ。そうした分野の大学・研究機関に対する補助金も十分に支出すべきだ。日本にとって正念場と言えるこの時期に、そうした分野への補助金などケチってはならない。また国立大学の授業料を引き下げて、有能な人材が経済的な理由で進学を断念することなく、各界のリーダーとなるべく高度人材を日本国民で養成すべきだ。外国に高度人材を頼っているようでは日本の経済成長など覚束ないだろう。
ちなみに量子コンピュータと光コンピュータの相違と特徴を簡単に対比表を掲載しておく。
(項目) 量子コンピュータ (Quantum) 光コンピュータ (Optical)
主な処理方式 ●量子重ね合わせ・量子もつれを利用 ● 光(光子)の直進・干渉・回折を利用
得意な計算 ●暗号解読、新素材・創薬の分子シミュレーション●膨大な組み合わせ最適化 AIのディープラーニング(行列演算)、画像処理、超高速な並列処理
開発の現実性 ●高い(GoogleやIBM、IBM、理研などが実機を稼働中。すでにクラウド利用可能) ●中〜高(光電融合チップなど、一部の部品として実用化が始まっている)
最大の課題 ●量子状態の維持(極低温が必要、ノイズに弱い、エラー訂正技術の開発中) ● 光信号の保持・制御の難しさ、小型化(回折限界)、メモリ(光記憶)の技術不足
主な処理方式 ●量子重ね合わせ・量子もつれを利用 ● 光(光子)の直進・干渉・回折を利用
得意な計算 ●暗号解読、新素材・創薬の分子シミュレーション●膨大な組み合わせ最適化 AIのディープラーニング(行列演算)、画像処理、超高速な並列処理
開発の現実性 ●高い(GoogleやIBM、IBM、理研などが実機を稼働中。すでにクラウド利用可能) ●中〜高(光電融合チップなど、一部の部品として実用化が始まっている)
最大の課題 ●量子状態の維持(極低温が必要、ノイズに弱い、エラー訂正技術の開発中) ● 光信号の保持・制御の難しさ、小型化(回折限界)、メモリ(光記憶)の技術不足
位置づけ ●全く新しい計算原理に基づく「究極のスパコン」 ● 現在の電子コンピュータを光で進化させる「超高速・省電力化」
などとなる。
結論から言うと、現在の開発状況と投資規模を考慮すると「量子コンピュータ」の方が実用化への現実性が高いと言える。ただし、両者は競合するものではなく、得意とする計算分野や目指すゴールが全く異なる。量子コンピュータは「特定の超難問」を解くためのものであり、光コンピュータは「現在のAI処理などを劇的に高速化・省電力化」するためのものになる。
確かに現実性という面ではすでに実機が動き、具体的な計算結果を出し始めている量子コンピュータが一歩リードしているが、私たちの身近なスマホやAIデータセンターの省エネ化という意味では光技術(光電融合)の恩恵を先に受けることになる可能性が高い。
確かに現実性という面ではすでに実機が動き、具体的な計算結果を出し始めている量子コンピュータが一歩リードしているが、私たちの身近なスマホやAIデータセンターの省エネ化という意味では光技術(光電融合)の恩恵を先に受けることになる可能性が高い。
ことにAIが抱える電力や冷却というネックを超えるには光コンピュータの利点は捨てがたい。光コンピュータ(光演算プロセッサ)は電気の代わりに「光(レーザー)」を使って計算を行うため、電気抵抗がなく発熱がほぼゼロで光速の処理が可能になる。すべてを光で処理する完全な「光コンピュータ」はまだ超えるべき課題があるが、現在の電子チップと光技術を融合させた「光電融合(こうでんゆうごう)」と呼ばれる技術は、NTTのIOWN(アイオン)構想などを筆頭に、すでに通信やデータセンターの基盤技術として実用化が始まっている。特にAIの「行列演算」を光の干渉で一瞬で行う「光AIアクセラレータ」の開発が活発に行われている。ただ光は曲げたり一瞬だけ形を止めて記憶(メモリに保存)したりするのが非常に苦手だ。現段階では汎用的な計算機として電子コンピュータを光コンピュータに完全に置き換えるにはまだ高い技術的ハードルがある。国際的な開発競争に後れを取らないように高市政権は大胆な投資を行うべきだ。