原油輸入先の分散化と脱・ホルムズ海峡を急げ。
<米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=84ドルから94ドルの間で推移している。「米国とイランの戦闘再開でホルムズ海峡を通過する原油の供給量が減速する」との見方が広がり、原油価格は一時、7月下旬以来の高値を付けた。
米軍は8月30日に約1カ月ぶりにイランを攻撃し、イランも報復の姿勢を示している。これにより、ホルムズ海峡を通過する原油が減少したとの観測が浮上する一方、別の見方も出ている。
ライト米エネルギー長官は9月2日、CNBCのインタビューで「8月31日に1700万バレル以上の原油がホルムズ海峡を通過した」と述べた。
CNNも9月3日、「米軍は1日、計40隻の商船を護衛し、ホルムズ海峡を通過させていた。これらの商船が積載していた原油の量は合わせて1800万バレル。米軍にとって戦時の同海峡における過去最大規模の軍事行動になった」と報じた。
ホルムズ海峡を巡る主導権がイランから米国に移ったとの見解も強まっている。
CNNは8月31日、「イランは戦争に勝っていない——海峡の影響力を失いつつあるという新たな展開」と題する論説記事を掲載した。7月半ば以降、米国がイランの港湾に対する軍事封鎖と原油取引への制裁を実施するなどして主導権を取り戻したというのがCNNの見立てだ。
市場でも「イランはドローン攻撃などを実施しているが、軍事インフラが破壊され、ホルムズ海峡を封鎖する能力は低下している」との観測が流れている。
イランの原油輸出量が激減したことも明らかになっている。
ロイターは9月1日、「イランは約7週間にわたってホルムズ海峡を通じた実質的な原油輸出を実行できていない。これは記録に残る範囲で初めての事態だ」と報じた。
「1979年の革命以降、イランがホルムズ海峡を通じた経済の生命線を遮断されたのは初めてだ」(CNN)との指摘もある。原油収入が絶たれることは、強硬派のイラン革命防衛隊の継戦能力への深刻な打撃となる。ロイターは9月3日、「米の対イラン圧力に奏功の兆し、制裁と封鎖が経済打撃=イラン高官筋」と題する記事を掲載した。
予断を許さない情勢が続いているが、米国とイランが正式に停戦合意を結ぶ日は意外と近いのかもしれない。
政情に左右されるホルムズ海峡の航行とは別に、中東原油のペルシャ湾外への経路確保を急いでいる。そのパイプラインを建設する際、中東諸国が当てにしているのが日本からの開発資金補助や技術協力だ。 日本政府は2026年8月に発表したエネルギー新需給計画において、アラブ首長国連邦(UAE)などと、ホルムズ海峡を迂回してオマーン湾側のフジャイラ港へ抜けるルートなど、海峡依存度を下げるためのインフラ整備やパイプライン網の拡張・協議が進めている。もちろん日本としてもエネルギー調達のリスクを抑える狙いがある。
ただ中東産油国との長年の関係から、日本はホルムズ海峡を経由しない中東原油輸出ルートの確保が不可欠だ。現在のパイプラインは下図の通りだが、これからUAE-オマーン沖のパイプラインの能力拡大に投資すべきだろう。
米軍は8月30日に約1カ月ぶりにイランを攻撃し、イランも報復の姿勢を示している。これにより、ホルムズ海峡を通過する原油が減少したとの観測が浮上する一方、別の見方も出ている。
ライト米エネルギー長官は9月2日、CNBCのインタビューで「8月31日に1700万バレル以上の原油がホルムズ海峡を通過した」と述べた。
CNNも9月3日、「米軍は1日、計40隻の商船を護衛し、ホルムズ海峡を通過させていた。これらの商船が積載していた原油の量は合わせて1800万バレル。米軍にとって戦時の同海峡における過去最大規模の軍事行動になった」と報じた。
ホルムズ海峡を巡る主導権がイランから米国に移ったとの見解も強まっている。
CNNは8月31日、「イランは戦争に勝っていない——海峡の影響力を失いつつあるという新たな展開」と題する論説記事を掲載した。7月半ば以降、米国がイランの港湾に対する軍事封鎖と原油取引への制裁を実施するなどして主導権を取り戻したというのがCNNの見立てだ。
市場でも「イランはドローン攻撃などを実施しているが、軍事インフラが破壊され、ホルムズ海峡を封鎖する能力は低下している」との観測が流れている。
イランの原油輸出量が激減したことも明らかになっている。
ロイターは9月1日、「イランは約7週間にわたってホルムズ海峡を通じた実質的な原油輸出を実行できていない。これは記録に残る範囲で初めての事態だ」と報じた。
「1979年の革命以降、イランがホルムズ海峡を通じた経済の生命線を遮断されたのは初めてだ」(CNN)との指摘もある。原油収入が絶たれることは、強硬派のイラン革命防衛隊の継戦能力への深刻な打撃となる。ロイターは9月3日、「米の対イラン圧力に奏功の兆し、制裁と封鎖が経済打撃=イラン高官筋」と題する記事を掲載した。
予断を許さない情勢が続いているが、米国とイランが正式に停戦合意を結ぶ日は意外と近いのかもしれない。
◇シェブロンがベネズエラで原油開発へ
世界の原油市場にとって大きなニュースは、米国のベネズエラの石油開発への積極的な関与の動きだ。
米石油メジャーのシェブロンは9月2日、「ベネズエラとの間で原油開発投資に関する条件などで合意した」と発表した。シェブロンは、国営ベネズエラ石油(PDVSA)との合弁企業を通じて、同国東部オリノコ油田地帯で2カ所の追加鉱区を取得した。今後5年間で70億ドル(約1兆1000億円)以上を投じ、自社の原油生産量を現在の2倍以上に増やす(日量60万バレル)計画だ。
ベネズエラで操業を続けてきたシェブロンは、他社に先駆けて同国での原油開発に乗り出す構えだ。
ベネズエラの原油生産量は1990年代後半に日量300万バレル超を誇っていたが、その後は投資不足や事業運営の失敗、米国の制裁などで急減し、このところ日量110~120万バレル前後で推移している。
シェブロンの決定の背景には、トランプ政権の強力な後押しがある。
トランプ米大統領は8月28日、ベネズエラと石油権益に関連した協定を締結し、ベネズエラの石油埋蔵量の650億バレル(同国の全埋蔵量の約5分の1)超の過半数を確保したとSNSに投稿した。これに対し、ベネズエラのロドリゲス暫定大統領も8月29日、国営テレビで放送された国民向けの演説で「(米国と締結した)協定の有効期間は25年であり、自国の資源の所有権と主権を保持する」と米国との協定の正当性を強調した。だが、国内でも反対の声が強く、波乱含みの展開が予想される。
世界の原油市場にとって大きなニュースは、米国のベネズエラの石油開発への積極的な関与の動きだ。
米石油メジャーのシェブロンは9月2日、「ベネズエラとの間で原油開発投資に関する条件などで合意した」と発表した。シェブロンは、国営ベネズエラ石油(PDVSA)との合弁企業を通じて、同国東部オリノコ油田地帯で2カ所の追加鉱区を取得した。今後5年間で70億ドル(約1兆1000億円)以上を投じ、自社の原油生産量を現在の2倍以上に増やす(日量60万バレル)計画だ。
ベネズエラで操業を続けてきたシェブロンは、他社に先駆けて同国での原油開発に乗り出す構えだ。
ベネズエラの原油生産量は1990年代後半に日量300万バレル超を誇っていたが、その後は投資不足や事業運営の失敗、米国の制裁などで急減し、このところ日量110~120万バレル前後で推移している。
シェブロンの決定の背景には、トランプ政権の強力な後押しがある。
トランプ米大統領は8月28日、ベネズエラと石油権益に関連した協定を締結し、ベネズエラの石油埋蔵量の650億バレル(同国の全埋蔵量の約5分の1)超の過半数を確保したとSNSに投稿した。これに対し、ベネズエラのロドリゲス暫定大統領も8月29日、国営テレビで放送された国民向けの演説で「(米国と締結した)協定の有効期間は25年であり、自国の資源の所有権と主権を保持する」と米国との協定の正当性を強調した。だが、国内でも反対の声が強く、波乱含みの展開が予想される。
◇ベネズエラがOPEC脱退か
筆者が注目しているのは、ベネズエラがOPECを脱退するとの憶測が流れていることだ。ブルームバーグは8月28日、「ベネズエラはOPECからの離脱案を本格的に検討している」と報じた。
最終決定はなされていないと言われているが、米国の支援を受けて自国の原油生産を急回復させたいベネズエラが、OPECの存在を足かせとみている可能性は十分にある。
ベネズエラはOPEC創設時(1960年)の5つの加盟国の1つだ。アラブ首長国連邦(UAE)に続き、ベネズエラが脱退する事態となれば、OPECの求心力が低下し、原油価格の下押し圧力になることは間違いないだろう。
最後に日本の原油輸入について触れてみたい。米国産原油のシェアが7月、約37%に達し、国別で首位となった(UAEが約30%、サウジアラビアが約27%)。ブルームバーグによれば、米国が国別で首位になったのは少なくとも1974年以降で初めてのことだという。政府の調達計画を踏まえると、8月も米国産の比率はさらに高まる見込みだ。
中東依存度が大幅に下がった(約59%)ことは評価できるが、日本は原油輸入の多様化をさらに進めるべきだ。
日本経済に多大な影響を及ぼす原油の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。>(以上「JB press」より引用)
筆者が注目しているのは、ベネズエラがOPECを脱退するとの憶測が流れていることだ。ブルームバーグは8月28日、「ベネズエラはOPECからの離脱案を本格的に検討している」と報じた。
最終決定はなされていないと言われているが、米国の支援を受けて自国の原油生産を急回復させたいベネズエラが、OPECの存在を足かせとみている可能性は十分にある。
ベネズエラはOPEC創設時(1960年)の5つの加盟国の1つだ。アラブ首長国連邦(UAE)に続き、ベネズエラが脱退する事態となれば、OPECの求心力が低下し、原油価格の下押し圧力になることは間違いないだろう。
最後に日本の原油輸入について触れてみたい。米国産原油のシェアが7月、約37%に達し、国別で首位となった(UAEが約30%、サウジアラビアが約27%)。ブルームバーグによれば、米国が国別で首位になったのは少なくとも1974年以降で初めてのことだという。政府の調達計画を踏まえると、8月も米国産の比率はさらに高まる見込みだ。
中東依存度が大幅に下がった(約59%)ことは評価できるが、日本は原油輸入の多様化をさらに進めるべきだ。
日本経済に多大な影響を及ぼす原油の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。>(以上「JB press」より引用)
「ホルムズ海峡の主導権は米国が奪還?イランとの軍事衝突が再び激化、戦闘終結の見通しは…」と題して藤 和彦(経済産業研究所コンサルティング・フェロー)氏がイラン戦争の推移を占っている。
イラン戦争の結果とは別に、湾岸諸国は日本に熱い視線を注いでいる。それは運河の建設ではなく、ホルムズ海峡を通らずに原油やエネルギーを確保するための代替パイプラインの建設やインフラ整備への支援を求めてのことだ。
ただ日本の原油輸入に関して2026年4月以降中東情勢の混乱の影響で一時的に原油輸入が急減したものの、直近の7月統計では米国などからの代替調達が進み、輸入量は前年同月比117.0%と2ヶ月連続で前年を上回っている。7月の国別輸入では米国産原油の輸入率は37%で1974年以降で初めて首位となった。
日本は国家備蓄と民間備蓄あわせて数ヶ月分(約8ヶ月分・239日分)の石油を確保しており、直ちに国内で原油が完全に枯渇する状況ではなくガソリンやナフサなどの国内供給は安定的だ。ただ中東ルートの不確実性が続く中、安定的な代替輸入先の確保とコスト高への対応が不可欠となっている。
経済産業省の石油統計速報 令和8年7月分等に見られるように、調達ルートの変更や原油価格・円安の影響で輸入コストが大きく膨らんでいるため、中東依存率を減少させることと原油価格上昇との兼ね合いが問題点として浮かび上がっている。当然ながら増産計画を発表したベネズエラも原油輸入先国として視野に入って来るだろう。