政府の産業投資効果を疑問視していた世銀のパラダイムシフト。

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概要
 世界経済の成長鈍化、労働市場の変化、そして保護主義の高まりといった状況の中、世界各国の政府は、かつては物議を醸した政策にますます目を向け始めている。産業政策――経済の生産物を市場に任せるのではなく、政府が生産物を形成するために用いる一連の政策手段――が、再び勢いを取り戻しているのだ。

 最近の報道とは異なり、先進国は産業政策を最も多く利用しているわけではない。本報告書が示すように、発展途上国の方がより集中的に利用している。新たなデータによると、中所得上位国における企業補助金の総額は現在、GDPの平均4.2%に達しており、過去最高となっている。中所得国は、高所得国に比べて平均輸入関税が高く、個々の製品に対する関税のばらつきも大きい。これは、特定の産業に対するより強力な保護政策の証拠である。183の経済圏における最新の国家開発計画を調査したところ、低所得国は平均13の産業の成長を目標としており、これは高所得国の2倍以上の数である。
 本報告書は、21世紀の開発のための産業政策に関する初の包括的なガイドであり、以下の4つの点で特徴的です。既存の文献が関税や補助金に焦点を当てているのに対し、本報告書は15の政策手段を網羅しています。対象産業の選定方法や効果的な制度の設計方法など、政策設計と実施に関する実践的なガイダンスを提供しています。60以上の経済圏からの新たな証拠に基づいています。そして、外貨獲得や雇用創出から、汚染削減、安全保障と回復力の強化まで、産業政策を用いて特定の目標を追求する政府のための的を絞ったアプローチを提示しています。>(以上「世銀の「Industrial Policy for Development」」より引用)




 これまで市場原理(自由貿易や規制緩和)を重視してきた世界銀行(世銀)が、産業政策を前向きに評価・推奨する方針へと大きく舵を切った。世界銀行は報告書『Industrial Policy for Development: Approaches in the 21st Century』などを相次いで公表し、21世紀の開発における産業政策の包括的なガイドラインを提示している。かつて「政府が特定の産業を保護・育成するのは非効率だ」と批判的だった世銀が、なぜいま「ススメ」を説いているのか、その背景と内容を整理する。
1. なぜ方針転換したのか?
 現実世界での「猛烈な復活」:米中の覇権争いや脱炭素シフト、サプライチェーンの再構築を背景に、世界中で産業政策が「激しい勢いで復活(back with a vengeance)」しています。先進国だけでなく、新興・途上国でも過去最高レベルの企業補助金(上位中所得国では平均GDPの4.2%)が投入されている。
〇経済成長モデルの転換
 これまでの自由放任主義(ワシントン・コンセンサス)だけでは中所得国の成長鈍化(中所得国の罠)を打破できないケースが増えており、日本の戦後経済成長などを手本とした「国家による戦略的な後押し」の価値が見直されている。
2. 世銀が示す「正しい産業政策」の4つのポイント
 世銀は、ただやみくもに特定の企業を優遇する「勝ち組選び(Picking Winners)」には反対している。ただ国ごとの財政規模や行政能力(キャパシティ)に応じた、以下の現実的かつ持続可能なアプローチを推奨している。
① まずは「共通インフラ(公的インプット)」から
 財政に余裕がない国は、特定の企業に補助金を出すのではなく、工業団地の整備や、スキル開発(人材育成)、品質認証制度の確立など、市場の失敗で不足しがちなインフラや制度の提供を最優先すべき。
② 補助金や介入は「最後の手段」
 関税での保護や直接的な生産補助金は、最もコスト(財政負担や他国からの報復リスク)がかかるため、上記①のインフラ整備でも足りない場合の最後の手段と位置づける。
③ 「期限」と「規律」を持たせる
 産業政策が効果を出す(学習効果や生産性向上)には時間が必要だが、一方にダラダラと政府投資を続けると癒着や非効率を呼ぶ。成果が出ない政策は「手放す(撤退する)」という明確な規律と、競争を促す仕組みが必要。
④ 製造業だけでなく「サービス業」も対象に
 21世紀の産業政策は、昔ながらの重化学工業などの製造業だけでなく、観光業、アグリビジネス、高度なIT・専門職サービスなど、広範な戦略的ビジネスを対象にすべきだと提唱している。

 こうした世銀の変化は開発経済学における大きなパラダイムシフトと言える。それはまさに高市政権が推進しようとする「金融緩和と財政拡大」によるデュアルマンデート((Dual Mandate)「物価の安定」と「雇用の最大化」という2つの法的使命)のための経済政策そのものではないだろうか。
 それに対抗するかのように日銀が金利引き上げを目論んでいるのは高市政権の経済政策の足を引っ張るものでしかない。金利引き上げの根拠としている「インフレ抑制」はインフレターゲットとする2%に及ばないため、実質デフレ下における金利引き上げなど非常識極まる誤った禁輸政策であり、日銀が金利引き上げとする根拠にはならない。また円安を止めるため、とする日銀の金利引き上げを支持するオールドメディアは、為替相場が日銀の所管でないことを知らないのだろうか。つまり円安だから金利引き上げする、という日銀の説明は全くの的外れでしかない。

 消費税減税に抵抗する財務官僚たちも高市政権の産業政策の足を引っ張るものでしかない。日本経済が経済成長を忘れた30年間は「失われた30年」だった。その「失われた30年」と決別するのに有効な経済政策は「減税」と「投資」だ。そのことを世銀もやっと理解したようだ。後は無知蒙昧としか思えない日本のオールドメディアが高市政権に対する最大の抵抗勢力だ。
 米政府ベッセント財相が金利政策と円安に言及したようだが、それこそ内政干渉でしかない。むしろトランプ氏が再三再四FRBに要請しているように米国こそ金利引き下げすべきだ。米国がトランプ関税の取引として他国政府に対米投資を募っているが、それこそ間違った経済政策だ。米国は誇りある大国として米国政府が産業政策を大胆に展開すべきだ。金融に偏った経済政策を展開していた米国の産業政策をパラダイムシフトすべきだ。世銀がパラダイムシフトしたように。

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