15日から発効する中国の「出入国管理規定(国務院令第841号)」に近隣諸国は期待している。
<昨年からの訪日自粛で中国人観光客は大幅に減った。習近平政権の規制強化で9月以降はさらに減ることが予想される。とはいえ日本の観光業に与える影響は、ほぼノーダメージ、むしろ中国側のダメージは長期化するのではないか。中国側の旅行会社と航空会社の損失額を試算し、沖縄や北海道での事例を紹介しながら解説する。(ライター 前林広樹)
「中国人インバウンド減少でも「日本はほぼノーダメージ」「中国側の自滅」と言えるワケ」との見出しに驚くことはない。既に中国観光客は中国資本の枠組みの中で来日し、中国資本の民泊やホテルに宿泊し、中国資本のバスで移動し中国資本の土産物売り店で買い物していた。
● 習近平政権が中国民に対して 海外への出国規制を強化
中国政府は「出入国管理規定(国務院令第841号)」を公布し、先端産業従事者を対象に、問題があると見なせば出国を禁止する可能性を盛り込んだ。9月15日に施行される。
実は、すでに2024年から教師や公務員、銀行員など公的機関に勤める人材や国有企業の従業員は、職場からパスポートの提出を要求されるなど海外旅行を自由に楽しめない人が増えていた。今般の出国規制は共産党員や公務員だけでなく、民間企業に勤める人にも適用される。 海外報道によると、26年第2四半期における中国人の海外旅行者は、不動産不況などに伴い想定よりも約3%少ない、約1億7900万人にとどまったという。出国規制が強化されることで、さらに減る可能性が高い。
● 中国人インバウンド減の経済損失 報道に矛盾が見られるワケ
周知のとおり昨年11月、中国政府は「日本旅行の自粛」を自国民に呼び掛けた。その直後は、例えば日本の大手シンクタンクさえ「これが続けば1年間の経済損失は1.79兆円、GDPを0.29%押し下げる」などと試算していた。「爆買い」という言葉があるように、中国人インバウンドの消費効果は大きく、それに冷や水を浴びせる悪影響が懸念されていたのだ。
しかし、それから実際に約9カ月が経過した今、日本側は「ほぼノーダメージ」といっても過言ではないだろう。
その説明を詳しくする前に、中国側の報道を読むと、違和感を覚えた内容が多いので取り上げたい。
例えば中国共産党の機関紙である『人民網』(ウェブ版、7月28日)によると、「2025年末に京都のホテルが大幅に値下げになった」「大阪のジュエリー店の売り上げが大幅に減少した」「高市首相の台湾問題を発端とした中国人観光客の減少により日本の観光業が苦境に陥っている」と紹介している。
他にも、「日本は中国人観光客なしでは持ちこたえられない」といった中国メディアの主張が目立つ。一例として、「日本の5月の国際収支は、訪日客急減の影響を受け、サービス収支が黒字から一転し103億円の赤字となった。これは隠しようのない亀裂である」などと書かれた記事もあった。
しかし、訪日外国人観光客の旅行消費額は、1〜3月は2兆3378億円で前年同期比2.5%増、4〜6月期は2兆5096億円で同0.2%増。中国人の消費額は減っても、他国からの消費額が増えたことで、むしろ全体的には増えている。
また、訪日外国人観光客数は1月〜7月累計は2452万7200人で同1.7%減だが、これは中国人の減少だけでなくイラン情勢悪化による航空便減少の影響も考えられる。実際、直近の7月単月では同0.1%増で7月として過去最高を記録し、堅調に回復している流れがある。
こうしてファクトを確認すると、中国メディアの主張は矛盾しているというか、間違っているとすら思う。訪日消費は落ち込んでおらず、中国人客減少=日本のインバウンド市場全体がダメージを受けてはいない。
むしろ、訪日自粛によって中国側もある程度の経済損失を出していると筆者は考えている。一体どういうことか、独自に試算してみると衝撃的な数字が出た。
● 訪日自粛は中国側にも経済損失 少なくとも数百億円規模の可能性
● 訪日自粛は中国側にも経済損失 少なくとも数百億円規模の可能性
中国人の訪日自粛により、中国側はどれほど経済損失を被っているのか。公式統計はないので、大別して2つのテーマで試算してみた。
まず、中国人が日本旅行する場合、ツアーやホテル予約には中国の旅行会社(オンライン・トラベル・エージェント含む)を使うケースが非常に多い。
そこで、1泊2万円のホテルに平均6.8泊し、そのうちの1%のコミッションが中国の旅行会社に入る前提を置いた。4〜6月期の訪日中国人数は前年に比べて97.1万人減少(同52.5%減)しているので、およそ13.2億円の損失が発生していると考えられる。同様の傾向が1年続けば、約52.8億円の経済損失となる(詳細は図解)。
続いて、もうひとつのテーマである航空便だ。日中路線は中国系エアラインのシェアが高かったが、何しろ国を挙げての自粛なので、供給を減らしている。
中国エアラインによる日本路線の便数は、11月初旬時点の9813便から12月には7432便に24.3%減少し、供給座席数は185万席から142万席に23.2%減少している。航空券が1席5万円、搭乗率8割の前提で試算すると、1カ月間で最大約172億円の旅客収入が失われた可能性がある。もし1年続けば、約2060億円の経済損失となる(詳細は図解)。
その他、中国人が日本で買い物する際に、銀聯カードやアリペイで決済していた手数料も中国側の収益だが、これも消失。飲食店や違法タクシーなど同胞向け商売を営む在日中国人の収益、本国への送金も減少したことだろう。
結果として、訪日自粛した中国側も一定の経済損失を被った可能性が高いといえるだろう。
● 中国人旅行者が減った影響は? 沖縄で聞くと、意外な返答
● 中国人旅行者が減った影響は? 沖縄で聞くと、意外な返答
先述した訪日外国人観光客数や消費額のデータから、中国人旅行者の減少が日本に与える影響が軽微であることは明らかだが、有名観光地における変化も追ってみよう。
美しい海や独自の文化を持つ沖縄は、中国人にも人気の観光地だった。しかし、訪日自粛が始まった後の春節(旧正月、26年2月)時期は、中国本土からの観光客数は約20万人減、観光消費額は約92億円減になるのではないか、と地元では報道された。
実際はどうなのか。筆者は8月下旬、那覇市の国際通りや牧志公設市場などを訪問した。商店街のみやげ物屋では中国語表記も目立つが、よく見ると中国本土で主に使う「簡体字」ではなく、台湾や香港などで使う「繁体字」の表記だった。
店員に聞くと、「中国からのお客さんは確かに減った」「けれど台湾や香港からのお客さんが、前から多かったけど最近さらに増えた」とのこと。店の売り上げは減っておらず、好調だという。
続いて、ダイビング業者にも話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
● 地元の人間にお金が落ちやすく むしろ好ましい状況では 「外国人のお客さんの申し込みは、むしろ増えたね」「中国人ダイバーは中国人インストラクターに依頼するのが多いんだけど、今は欧米とか韓国からのダイバーが、自分のような沖縄在住の日本人インストラクターに申し込んでくれるから」とのこと。
● 地元の人間にお金が落ちやすく むしろ好ましい状況では 「外国人のお客さんの申し込みは、むしろ増えたね」「中国人ダイバーは中国人インストラクターに依頼するのが多いんだけど、今は欧米とか韓国からのダイバーが、自分のような沖縄在住の日本人インストラクターに申し込んでくれるから」とのこと。
沖縄県を訪れる外国人客を国籍別で見ると、最も多いのが台湾、次いで韓国であり、タイやシンガポールなどからの観光客も増えたことで、2025年の観光収入は初めて1兆円を超えるまでに成長している。
来年3月にはユナイテッド航空の那覇〜サンフランシスコ線が開設予定など、今後も中国以外の外国人観光客の増加が見込まれる。ダイビング業者が明かしたように、地元の人間にお金が落ちやすくなったなら、むしろ好ましい状況ではないだろうか。
こうした傾向は沖縄以外でも見られる。例えば北海道では、今冬からエア・カナダの新千歳〜バンクーバー便が開設される。地方の観光地が、中国以外からの直行便を増やすことで、インバウンドをますます増やそうとしている。
訪日渡航を制限することで日本に打撃を与える中国側の狙いがあったのなら、それは完全に外れたといえるだろう。訪日客は、韓国や台湾、欧米など他の国や地域から増えたことで穴埋めできている。
一方、中国政府は出国制限を9月15日からさらに厳しくするので、ますます中国人観光客が日本に訪れることは難しくなる。図解で示した経済損失は膨らむ可能性もある。中国側の「自滅」ともいうべき状況は当分続くことになりそうだ。>(以上「DIAMOND」より引用)
「中国人インバウンド減少でも「日本はほぼノーダメージ」「中国側の自滅」と言えるワケ」との見出しに驚くことはない。既に中国観光客は中国資本の枠組みの中で来日し、中国資本の民泊やホテルに宿泊し、中国資本のバスで移動し中国資本の土産物売り店で買い物していた。
だから中国人観光客が減少しても、日本の観光業界に与える影響は殆どなかった。むしろ観光地が中国観光客の喧騒が減少し、彼らがばら撒くかのようなゴミが減少し、観光地の業者はほっと胸を撫で下ろしているほどだ。
それは日本だけの問題ではないようだ。現在中国人観光客が最も多く訪れるタイヤ二位の韓国でも中国人観光客は招かれざる客のようだ。現地観光業者にとって中国人観光客は有り難くない観光客だという。すべての中国人観光客は中国人ネットワークの中で観光地を移動し消費するからだ。
また多くの中国人が主要都市のマンションを買いあさるのも共通のようだ。それによりタイヤシンガポールや韓国のマンション価格が高騰した。日本では中共政府の締め付けにより中国人富裕層も帰国し始め、マンション価格が下落の兆しを見せている。
今月15日に発効する「出入国管理規定(国務院令第841号)」により、中国人の出国規制が厳格化される。ほとんど鎖国に近いともいわれる出国禁止令により、中国人観光客の姿が東南アジア諸国から消えるのではないかと危惧されている。しかし、各国の経済に与える影響はそれほどではないと予測されている。
むしろ静かに現地を観光して回る他の国の観光客が増えることが期待できる。現実に日本ではそうなっている。インバウンド数は対前年比減になっているが、観光客が落とす消費金額は増加している。
しかし中国人観光客の減少は東南アジアの対中観を悪化させることはない。むしろ猥雑な中国人観光客が来なくなることで、それぞれの国の対中観は改善されるのではないか。
習近平氏が取り組む「中国鎖国令」はおおむね近隣諸国から歓迎されている。そして国外に流出した富裕層の「帰国命令」に近隣諸国は期待している。それまで中国人富裕層による爆買いで高騰した都市部のマンション価格や観光地の不動産価格が下落すると期待されるからだ。それぞれの国民が自国の不動産を取戻す良い切っ掛けになるかもしれない。