日本に仕掛ける「ロシア、中国、北朝鮮が仕掛ける「圧」」とは何だろうか。

<◇北朝鮮に擦り寄るトランプ
 2018年6月12日。筆者はシンガポール・セントーサ島にあるカペラホテルで、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩総書記による史上初めてとなる米朝首脳会談の行方を、固唾を呑んで見守っていた。
 そこで決まったのは、アメリカが北朝鮮に安全の保証を与える見返りに、北朝鮮も朝鮮半島の非核化に向けて取り組むというものであった。
 それから8年余り…。北朝鮮は非核化に取り組むどころか、2021年1月に発表した「国防5か年計画」のもと、「個体燃料式ICBM(大陸間弾道ミサイル)の製造」や「戦術核兵器の開発」、さらに「射程15000キロ圏内の命中率の向上」や「原子力潜水艦の保持」などに邁進してきた。
 北朝鮮が保有する核兵器の数をめぐっては、「57発」(8月19日 トランプ氏の発言)とする見方もあれば、「80発から120発程度」(8月20日 韓国・安圭伯国防相の発言)といった分析もあるが、北朝鮮が核保有国となり、核を搭載するミサイルの精度を高めていることは紛れもない事実である。
 こうしたなか、トランプ氏は「年内に(金氏と)会う」との意向を表明した。トランプ氏の思惑どおり運べば、11月3日に実施されるアメリカ中間選挙の前に、トランプ氏の外交成果として日程が発表され、11月18日~19日、中国・深センで開催されるAPEC首脳会議に合わせ、通算4度目となる両者の顔合わせが実現することになる。

◇米朝首脳会談が実現すれば、日本にはマイナス
 しかし、現状では、まだその可能性は高くない。北朝鮮は、アメリカなどからの経済制裁に苦しんでいた8年前とは違い、中国やロシアとの関係強化が進んでいる。しかも、ここ数年で強化してきた核戦力にも自信を持っている。
 金氏の妹、与正氏が、トランプ氏の意向を「関知していない」と切り捨てたのは、アメリカと対話をする必要性を感じていないからにほかならない。それでも、トランプ氏としては、イランとの交渉がこう着状況にあるため、今度は北朝鮮との外交でポイントを稼ぎたいところだ。
 そこで、会談を実現させるため、北朝鮮を核保有国として承認することになれば、通算4度目となる両者の会談は、日本の対北朝鮮政策を根底から揺るがす形になりかねない。

◇択捉島訪問で見えた「対日配慮」の消滅
 8月13日、初めて北方4島の択捉島に足を踏み入れたロシアのプーチン大統領も、日本にとって非常に厄介な存在だ。プーチン氏自身による北方領土訪問は、ロシアの対日政策で最も重いカードだったはずだ。北方領土の開発には日本との「共同経済活動」が重要視されてきたことも、その理由の1つだ。
 しかし、今回、そのような大事なカードを初めて切ってきた背景には、日本が置かれた状況を冷静に分析し、当面は関係改善を急いだり、領土問題で譲歩したりする必要性を感じなくなったことがある。
 振り返れば、2010年11月1日、当時のメドベージェフ大統領が国後島を訪問した時期は、尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する事故を契機に日中関係が冷え込み、普天間飛行場の移設問題で日米関係にも軋轢が生じて、菅直人政権が外交面で苦慮していた頃だ。プーチン氏の択捉島訪問もまた同様に、日中関係は最悪、日米関係もトランプ氏に振り回されっぱなしという状況下での出来事である。
 逆にロシアは、いずれも中国との関係が良好な時期に大胆な行動に出ている。2010年は中国がロシアにとって最大の貿易相手国になった年であり、今回は5月20日の中ロ首脳会談で、単なる経済協力を超える40件もの協力文書が調印されたばかりというタイミングである。
 中国との揺るぎない関係、ならびに北朝鮮との軍事協力を確立したプーチン氏にとって、ウクライナ侵攻以降、経済制裁を続ける日本、とりわけ、その制裁を緩めようとしない高市早苗政権は、もはや「失望の対象」でしかなく、9月に実施されるロシア下院選への支持固めも兼ねて、「領土問題で配慮する必要はない」と判断したに相違ない。
 むしろ、今回の択捉島訪問は中国と示し合わせていた可能性すらあり、近頃の中ロ共同軍事演習と相まって、「我々はいつでも日本を挟撃できる」とのブラフ(脅し)にも思えてくるのである。

◇習近平が視野に入れる尖閣諸島奪取
 そのプーチン氏は、ウクライナ以外へも領土拡大の野望を隠していない。
 筆者は先頃、ロシアに隣接するバルト3国のエストニアを訪問したが、市民の間では、「ウクライナの次はエストニア」との不安が根強く、首都タリンにあるロシア大使館前には、4年余りに及ぶウクライナ侵攻に抗議するビラや垂れ幕が並べられていた。
 また、ロシアと1340キロにわたり国境を接するフィンランドでも、軍事侵攻を懸念し、6月には、有事の際、核兵器を持ち込めるようにする法律の改正案を可決している。首都ヘルシンキ市民のロシアへの対抗心は強く、街を歩けば、至るところでウクライナの国旗が見られるほどだ。今やロシアは、日本や欧州にとって「気が抜けない敵国」とも言える存在だ。
 高市氏としては、政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相がそうであったような、まず日本政府が関係改善のサインを送れば、プーチン氏も配慮してくれるといったような甘い考えは捨て、ゼロベースで関係を見直す必要性に迫られていると言っていい。
「尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で、中国海警局の船3隻が航行。いずれも機関砲を搭載。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは12日連続」(8月20日 産経新聞から要約)
「尖閣諸島や台湾海峡を含む東シナ海で中国が設けた禁漁期間が明け、福建省石獅市の漁港から多くの漁船が出港した。専門家は海上民兵による大規模訓練だったと分析」(8月16日 共同通信から要約)
 日中関係が冷え込んで以降、このようなニュースを見聞きする機会が増えた。中国の習近平政権が従来、「核心的利益」と位置づける台湾だけでなく、沖縄県の尖閣諸島の領有も視野に入れているのは明らかだ。

◇異論の封じ込めに躍起の習近平
 それだけではない。7月1日、中国では、「多民族の差異を認める国家」から、「単一民族共同体としての国家」を創り出すための「民族団結進歩促進法」が施行された。
 言うなれば、習近平総書記(国家主席)の指導方針に反する言論は徹底的に封じ込め、日本など中国国外にある組織や個人であっても、習指導部に刃を向けるような行動や言論は処罰の対象とするという恐ろしい法律である。
 さらに、9月15日、中国では、「国務院の出入国管理に関する規定」という19条からなる行政法規が施行される。中国人の出入国管理を厳格化するだけでなく外国人の入国禁止措置も定めたものだ。
 習指導部が定めたとんでもない法律の代表格は、2023年の反スパイ法や2024年の愛国主義教育法、それに2025年の改正治安管理処罰法など、いずれも中国国民の自由を縛るものばかりだが、出入国管理に関する新たな法規は、日本と中国を往復するビジネス関係者、それに、日中双方で学ぶ留学生などに影響を与えかねない。
 つまり、今回の措置は、習指導部にとって都合が悪い自国民、そしてマイナスとなる外国人の封じ込めに向けた総仕上げとも言うべきもので、習氏は自身の共産党総書記としての4選と台湾統一を成し遂げるため、軍事と法の両面で、着々と14億人の国民を強制的に1つの方向へと導き、日本に対しても「圧」をかけているのだ。
 日中間では、自民党の橋本岳氏や中道改革連合の伊佐進一氏ら超党派の議員団が北京を訪問し共産党幹部と会うなど関係改善への動きもあるが、高市氏は、悲願達成に向け本気モードに入った習氏とどう対峙していくのかが問われることになる。

◇秋に試練を迎える高市首相
 現状を見れば、高市政権の物価高対策や円ドル相場対策には手詰まり感が漂う。飲食料品の8%から1%への減税も、相変わらず財源が不透明なままだ。
 当面は、9月半ばに実施される内閣改造と自民党役員人事が焦点だが、「麻生太郎氏の支配から抜け出せるか否か」とか「総裁選のライバルたちをどう処遇するか」以上に、米中ロの列強3か国と、それらのトップと渡り合えるよう、外務、防衛、経済産業、国土交通、経済安全保障といった所管大臣は、誰にも忖度することなく選んでほしい。
 そして、年末までに改定される防衛3文書(=安保3文書。国家安全保障戦略、 国家防衛戦略、 防衛力整備計画の3つ)は、宇宙、サイバー、電磁、無人ドローンなど新領域戦と呼ばれる戦い方の変化、そして、米中ロの動向を見極めながら、何が脅威で、何を持てばいいのかを考え策定し、その理由を国民に明示してもらいたいと思うのである。>(以上「現代ビジネス」より引用)




高市首相の「強気外交」がいよいよ裏目に…ロシア、中国、北朝鮮が仕掛ける「圧」に日本はどこまで耐えられるのか」と、またしても「ロ・中・北」脅威論が掲載された。書いたのは清水 克彦(政治・教育ジャーナリスト・びわこ成蹊スポーツ大学教授)氏だ。
 つい先日、突如としてトランプ氏が金正恩氏との会談を切望するニュースが出て驚いた。なぜならトランプ氏は金正恩氏と会談すべき喫緊の用件などないからだ。しいて上げれば「なぜ核開発を拡大しているのか」と質問するくらいだろう。金正恩氏は「祖国防衛のため」と建前を弁じるしかないが、本音は「核開発しないと政権が持たない」からだと、トランプ氏は百も承知だろう。

 そもそも「ロ・中・北」に日本を攻撃する余裕などない。ましてや「ロ・中・北」が日本に対して軍事侵略するなどという本格軍事作戦を強行する軍事力もない。
 ロシアはウクライナ戦争で国内の軍隊をほぼ消耗し、極東に配備していた軍もウクライナ戦線で磨り潰してしまった。だから北朝鮮軍1万2千人を兵士一人当たり30万円ほどで「購入」して、ウクライナの最前線へ投入する。もちろんロシア軍は兵器も不足していて、装甲のない民生トラックで兵士を前線へ輸送している有様だ。それがウクライナの自爆ドローン攻撃の格好の的になっている。

 中国は習近平氏が自身の身の安全を図る余り将官を信用できず、幹部将官の6割を粛清してしまった。ロケット軍は幹部を全て入れ替え、そして遂には習近平氏が創設したロケット軍を解体してしまった。日本進攻どころか習近平氏は人民解放軍を掌握しているのかすら疑わしい。もちろん司令官クラスをごっそり粛清された軍に兵を纏めて軍事作戦を指揮する能力など望むべくもない。
 この10月にもトランプ氏は習近平氏と米国で会談する予定だが、その必然性は「何もない」と米国のメディアからも批判されている。三か月前の北京を訪れてトランプ-習近平会談の「お返し」に訪問要請し、それに習近平氏が応えた形だ。外交儀礼以外の何物でもない。

 清水氏は「高市首相の「強気外交」がいよいよ裏目に」と書いているが、高市氏の「強気外交」とは何だろうか。台湾有事発言を指しているのなら、それは「強気外交」ではなく「普通の外交」になっただけだ。日本が世界標準の「普通の外交」を舵を切ったから、中共政府が驚いているだけだ。
 従来の日本政府には親中政党・公明党が連立として入っていたから、十分過ぎる配慮を中国にしてきた。それが次々と「普通の国」並みに転じているだけだ。以上に易し過ぎた「外面切り替え」や中国人留学生に対する「厚遇」をやめ、経営者ビザを対中基準から国際基準に昇格させたことなど、中共政府にとって高市政権は従来の日本政府とは全く異なる手強い相手だ。

 台湾近海や日本領海近海で中国軍が頻りと軍事演習を繰り返していることに危機感を募らせるべき、と清水氏は警鐘を鳴らしているが、日本の防衛体制を心配する必要などない。高市政権は着々と防衛体制の強化に手を打ち、着実に前進させている。ポンコツ空母を旗艦とする中国の軍事演習など自国民向けデモンストレーションの「お遊び」でしかない。
 清水氏は「民族団結進歩促進法」にも触れているが、それこそ他国の主権を無視した中共政府の厚顔無恥ぶりをさらけ出した法律でしかない。一国の法律が他国にも呼ぶとは、前代未聞の無知蒙昧というしかない。しかも「中華民族」などと、中共政府でしか通用しない民族まで捏造するとは。さすがは歴史を捏造してテンとして恥じないお国だけはある。

 さて「秋に試練を迎える高市首相」とは何だろうか。「現状を見れば、高市政権の物価高対策や円ドル相場対策には手詰まり感が漂う。飲食料品の8%から1%への減税も、相変わらず財源が不透明なままだ」とは、どれが問題だというのだろうか。日本は物価対策が功を奏して、生鮮食料品を除いた物価上昇率は年率で0.9%でしかない。その数字はG7の中でも群を抜いた安定的な数字だ。ことにガソリン価格1l当たり160円台の価格は軒並み1l当たり200円を超えている世界各国と比較して「チョウ安定的」と表現するしかない。
 対ドル相場を取り上げて騒ぎ立てる経済評論家こそ、どうかしている。通貨安は別名「近隣窮乏策」と呼ばれる。現にインバウンドが日本に押し寄せているのは円安のお陰だ。日本の自動車産業が好調なのも円安のお陰だ。もちろん輸入品は円安の影響で高くなっている。つまり為替相場の変動はプラス・マイナスの影響をもたらす、という二面性を有する。そのプラスとマイナスとどちらが多いかを検証しなければ一概に円安は「悪」だと批判することは的外れになる。米国が「協調介入」したのは円安がトランプ関税を帳消しにするため、米国にとって不都合だから「協調介入」したに過ぎない。つまり米国のお家の事情があってのことだ。

 「飲食料品の8%から1%への減税も、相変わらず財源が不透明なままだ」とは過ぎ去った話だ。今年だけで税収の上振れは約5兆円見込まれているし、為替介入で処分した米国債の「売却益」は既に9兆円に達している。それだけでも二年間分の「財源」となるだろう。
 しかし実際には「財源」など不要だ。財務省が国民から消費税を取らなければ、それだけ国民の可処分所得が増えて消費が拡大する。そうすれば必然的に経済が拡大=成長するから成長に連れて税収も増加する。つまり経済成長政策に財源は不要なのだ。もとより政府にはこのような経済の好循環をもたらす経済政策を展開すべきだった。そうした経済成長政策を全く展開しないで、国民負担増ばかり矢鱈と増やす政策に固執してきたのが「失われた30年」だった。

 人事に関しては様々な議論があるようだが、高市氏が「責任ある積極財政」の看板を下ろさない限り、大臣が誰になろうと心配ない。すべての政治責任は総理大臣たる高市氏が取るから、高市政権下で大臣が入れ替わろうと「積極財政」政策が変わることはない。
 そして防衛関係は日本は着実に新時代の非対称戦も考慮した上で、開発と配備を進めている。それは清水氏が心配するまでもないことだ。

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