世界から米国よりも中国の方が信頼されてる、とは。

<2026年7月21日付フィナンシャル・タイムズは「なぜ世界は米国より中国を信頼するのか」とのエドワード・ルースの論説を掲げ、世論調査で中国の方が米国より信頼が高いとの結果が出たことに警鐘を鳴らしている。

 西側の一番の問題は信頼性欠如だ。米国では、他国の対米信頼低下に危機意識が低い。大多数の国で中国が米国より信頼されているという米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査結果は警告だ。しかし、米国はいまだ一番尊敬される国のように振舞っている。
 世界がトランプの価値観を嫌っていると言えば聞こえは良いが、尊敬できる大統領が選ばれれば米国の地位は改善するのか。この見方は大きなことを見過ごしている。
 問題は価値では無い。自由では米国が中国より上だが、米国への不信は中国より高い。トランプの米国でも、米国が中国より自由なことには疑いが無い。
 しかし、米国がより良く統治され安定していることを肯定するのは難しい。米国の対イラン攻撃を例にとる。犠牲者がずっと多かったイラク、ベトナム戦争よりも米国内で不人気で、西側の友人と同盟国全てを遠ざけた。
 エネルギー政策の差も大きい。再生可能から石炭まで全形態の電力に投資した中国の対応は、化石燃料に傾倒した米国と大きく異なる。これは、バイデン政権の再生可能エネルギー優遇措置を廃止し代替エネルギープロジェクト撤退企業を資金支援するトランプの責任だ。もし中国の膨大なエネルギー備蓄がなければ、過去数カ月のエネルギー価格の上昇は一層大きかっただろう。
 対イラン攻撃は北半球での温暖化の明白な兆候と時期を同じくしている。欧州は6月の記録的猛暑で、今になりエアコン未設置を後悔している。地球温暖化はエリートの執着から大衆の問題に変貌した。米国は20世紀の行動様式で温暖化を助長する一方、中国はグローバルサウスから解決者とみられている。
 信頼はすぐに失われるが、取り戻すには時間がかかる。米国支持が高い6カ国の内 4カ国は、中国の隣国である日本、韓国、インドとフィリピンだ。
 米国に不信を抱くのは全世界だ。例外は、ロシアの脅威に晒されるポーランド、そしてイスラエルである。豪州と英国さえ、中国をより信頼している。
 米中競争の焦点はAIだが、中国モデルは能力的に劣るが、安価で公開ソース、米国モデルは高価で秘匿ソースだ。史上初めて、米国の技術が世界を睥睨(へいげい)できるか不明になった。米国は尊敬でさえ当てにできない。

◇なぜ、信頼が下がっているのか
 ルースらしい良く整理された論説だ。
 一番深刻だと思うのは、「問題は価値ではない」という指摘だ。要するに、民主主義が、体制の問題として全体主義より優れている訳ではないという指摘だ。
 人間の3つの根本的な欲求は、自由・安全・繁栄だが、民主主義は自由を最優先し、その結果、安全と繁栄も確保されると考える体制だが、全体主義は、自由を諦めれば、安全と繁栄は国家が一定程度面倒を見るという体制だ。引き続き人間の一番根源的欲求は自由だと思われるので、民主主義の方が優れていると信じるが、その結果として確保されるはずだった安全は劣化し、貧富の格差が拡大しては、繁栄も覚束ない民主主義は相当厳しい。今後、米国と中国のどちらが貧富の格差の問題をより適切に処理できるかが、両体制の勝敗を左右することになろう。
 第二は、現在トランプがやっている「酷いこと」、例えば主権国家ベネズエラやイランへの武力侵攻、関税の一方的引き揚げなどは、第二次世界大戦前まで遡れば、米国は常にやってきたことである。それでは、なぜ今のトランプの場合は問題かと言えば、まず「予測可能性の無さ」であり、より本質的には、「良いことをやるのを止めた」からだろう。
 ピューの調査が言う「信頼性の低下=予測可能性の無さ」は、大統領の言うことがころころ変わることからも明らかだ。「ルールに基づく秩序」や「法の支配」が重要なのは、ルールや法自体の正統性由ではなく、その枠内での行動の「予測可能性」の存在由ではないか。
 例えば、ナフサ不足。政府はナフサの需要量に見合う十分な供給量が確保されていると言うが、企業の問題は、それが需要に応じて適時に供給されるかどうかであり、その点が不明な限り「ある時に買う」という心理から、必要量よりも大きな需要が発生して目詰まりを起こすのだ。石油ショックの際のトイレットペーパーの例を想起すればその心理は良く分かるだろう。
 国際社会でも、予測可能性の範囲内で物事が動いていれば、何とか対応できる。潜在的脅威国との意思疎通と誤解排除が重要な所以だ。その根本をトランプは無意識に壊しているのだ。
 さらに、「良いことをやるのを止めた」ことの影響は深刻だ。国際法上非合法な侵略を繰り返す一方で、アフリカを中心とした疫病対策の国際協力の7割以上(エイズ対策96%、マラリア防止87%、結核対策74%)、ガバナンス支援の84%を一国で支えてきた(UJF/PWU 報告書)、ずば抜けて世界第一の米国の国際協力は、国際開発局(USAID) の解体で8割減、その後、議会が一定の人道支援を復活させたとはいえ、5割減になり、欧州のトップドナーが国防費に政府開発援助(ODA)資金を回す中で、他の国が束になっても米国の抜けた穴を埋められない深刻な状況だ。
 また、米国市場へのアクセスはグローバルサウス取込みの最大の梃だったが、それも今は不確かだ。これらの善行の欠如により、悪行の影響は一層深刻になる。
信頼よりも大事なもの
 ただし、最後に言いたいのは、「信頼」が何だということだ。日本は、米国が「信頼できるから」または「尊敬できるから」米国と同盟している訳ではない。また、その判断に当たって「気候変動」を持ってくるあたりが、欧州の欺瞞である(中国の電気自動車や太陽光パネルに市場を席巻され、気候変動対策を緩めている)。
 もちろん、同盟の信頼性は重要だが、より重要なのは、米国が中国を抑止できるだけ「強いかどうか」だ。ピューには、米国と中国の「強さ」比較の世論調査をやってもらいたいものだ>(以上「Wedge」より引用)




中国が米国よりも世界から信頼されている?失ったものとその問題点とは」と題する仰天すべき論評が掲載された。書いたのは岡崎研究所だが、認定NPO法人「 岡崎研究所」は元外交官の岡崎久彦氏が設立した外交・安全保障の専門シンクタンクだ。
 外交官・外交評論家であった岡崎久彦氏(2014年没)が2002年に設立した研究所は欧米の主要メディアや有力シンクタンクの論評を分析してWedgeなどに定期的に論評を掲載している。その活動の一環で2026年7月21日付フィナンシャル・タイムズは「なぜ世界は米国より中国を信頼するのか」とのエドワード・ルースの論説を受けて、引用論評を掲載したのだ。

 2026年7月21日付フィナンシャル・タイムズに掲載された「なぜ世界は米国より中国を信頼するのか」と題する論説の要旨は以下の通りだ。
「世界が米国を信頼しないのは、トランプ米大統領の価値観が嫌われているという見方がある。これは、もっと尊敬される大統領が選ばれれば、米国の地位は改善されることを意味する。このような多少心が慰められる考えは、すべてが価値観の問題に限らないという重要な事柄を見落としている。
 世界が米国を信頼しないのは、トランプ米大統領の価値観が嫌われているという見方がある。これは、もっと尊敬される大統領が選ばれれば、米国の地位は改善されることを意味する。このような多少心が慰められる考えは、すべてが価値観の問題に限らないという重要な事柄を見落としている」というものだ。

 確かにトランプ氏の独断専行ぶりは酷い。国際協調も国際分担もあったものではない。米国だけが「おらが、おらが」とジャイアンぶりを発揮しているだけだ。だからイラン戦争で米軍が泥濘に足を取られても、西側諸国は冷ややかに眺めているだけで手を貸そうともしない。それでトランプ氏は鬼のように怒りを募らせているが、それで事態が改善するわけではない。
 しかし、それでもルース氏の「民主主義が、体制の問題として全体主義より優れている訳ではないという指摘」に賛同することは出来ない。なぜなら中国が世界各地で仕出かしている悪行三昧の方が酷いからだ。

 少なくともトランプ氏は民主主義国家の大統領として米国民を気にしなければならない。この11月に実施される中間選挙の結果次第で、トランプ氏はレイムダックに陥る。しかし習近平氏は中共独裁体制の独裁者であるため、国民の支持など気にする必要がない。中国の稚拙にして横暴な振舞は習近平氏の個人的な気質と能力が国家大に拡大されたものでしかない。つまり中共政府の中国は習近平氏そのものだ。習近平氏の個人的な資質が国家そのものになっているだけだ。
 トランプ氏には民主主義国家としてトランプ氏の暴走を止める歯止めの仕組みが用意されている。しかし習近平氏の暴走に対して、中国は習近平氏の暴走を国家大に拡大するだけだ。だから中国が一党独裁体制である限り、習近平氏が失脚するまで国家崩壊の坂道を転がり落ちるだけだ。その間、中国人民は貧困と飢餓の苦しみに耐え続けなければならない。それが中国人民が中国共産党の一党独裁体制を受け容れた結果だ。

 論説の結論としてルース氏は「同盟の信頼性は重要だが、より重要なのは、米国が中国を抑止できるだけ「強いかどうか」だ」と信頼関係を米中の強弱に帰結するとしているが、信頼は軍事力の強弱に帰結するものではない。
 個人間の信頼は「感情」に基づくのに対し、国家間の信頼は「相互の国益」「国際法」「安全保障のリアリズム」に基づいて構築される。それに「継続性」と「共通の価値観」が加わえるなら、米国と中国のいずれが世界から信頼されるか自ずと明らかではないか。
 

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