いかにしてソ連が崩壊したか、その再現フィルムを私たちは目撃している。
<◇輸出頼みの限界
輸出拡大で経済を回そうとする中国だが、その限界もみえている。
中国政府が31日に発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、6月の50.3から低下し、好不況の境目である50を下回った。5カ月ぶりの低水準だ。新規受注の圧迫要因となるなど、内需の低迷が景気の足を引っ張る構図だ。
その典型例が自動車産業だ。
自動車製造業の上半期の利益は前年比で19.5%減少している。いかに輸出が好調といっても「焼け石に水」の感がある。
危機感を覚えた習近平指導部も重い腰を上げている。
中国共産党中央政治局は30日、景気減速の対応として、年内に予算計上済みのインフラ事業への財政支出を加速する方針を示した。だが、財政赤字が積み上がる中、大規模な追加の景気刺激策の実施は見送らざるを得なかった。
不況の元凶である不動産市場の低迷も続いており、中国経済の内需不足が改善に向かう兆しはないと言っても過言ではない。
◇銀行に滞留する資金
筆者が注目したのは、中国で資金が銀行に滞留していることだ。
中国人民銀行(中央銀行)によれば、人民元建ての預金残高は6月末時点で、前年比8.2%増の346兆4400億元だったのに対し、貸出残高は前年比5.2%増の282兆6300億元にとどまった。その差は63兆8100億元(約1540兆円)となり、統計が遡れる1997年以降で最大となった。
要因は、企業や家計の資金需要が大幅に減少していることだ。
銀行が6月に融資した企業向け中長期資金は前年に比べ4割減少し、住宅や自動車のローンが大半を占める家計向けの中長期資金も今年上半期に8割も減った。
銀行による信用創造が低調になれば、経済活動が麻痺してしまうのは、1990年代の日本が教えるところだ。
◇庶民の味方が高騰
不況の長期化にあえぐ多くの中国人の生活も苦しくなる一方だ。
頭が痛いのは、中国の食卓にかかせない卵の価格が高騰していることだ。
ニューヨーク・タイムズは20日、「養鶏農家による拙速な生産調整が災いして、主要産地の鶏卵価格が前年に比べて40%以上高騰しているため、中国国営メディアでさえ『ロケット卵』という言葉を使っている」と報じた。中国の1人当たりの卵消費量は世界最高水準にあることにかんがみれば、中国人の痛みは日本人の比ではないだろう。
中国の大気汚染が再び悪化する懸念も生まれている。
フィンランドのシンクタンク「エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)」によれば、今年1~5月に中国の北部6都市のPM2.5(有害な微小粒子状物質)の濃度が平均11%増加した。
同地域は化学や先端製造業など主要産業が集積する中国有数の工業都市であり、イラン戦争後、豊富で安価な石炭への依存が強まったことが原因だ。
中国の大気汚染は10年以上にわたり改善してきたが、再び石炭依存が強まれば、中国の大気中のPM2.5の濃度が高まり、近隣の日本にまで悪影響が及ぶのではないかとの不安が頭をよぎる。
日本にとって厄介な存在と化した中国だが、実態は満身創痍だ。中国の内情を正確に把握しつつ、冷静な対応に徹することが肝心だ。>(以上「現代ビジネス」より引用)
「高騰しすぎた「ロケット卵」と、ぶり返す大気汚染に苦しむ国民…不景気続きの中国社会の現状」と題して経済悪化に悩む中国を藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏が論評している。
輸出拡大で経済を回そうとする中国だが、その限界もみえている。
中国政府が31日に発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、6月の50.3から低下し、好不況の境目である50を下回った。5カ月ぶりの低水準だ。新規受注の圧迫要因となるなど、内需の低迷が景気の足を引っ張る構図だ。
その典型例が自動車産業だ。
自動車製造業の上半期の利益は前年比で19.5%減少している。いかに輸出が好調といっても「焼け石に水」の感がある。
危機感を覚えた習近平指導部も重い腰を上げている。
中国共産党中央政治局は30日、景気減速の対応として、年内に予算計上済みのインフラ事業への財政支出を加速する方針を示した。だが、財政赤字が積み上がる中、大規模な追加の景気刺激策の実施は見送らざるを得なかった。
不況の元凶である不動産市場の低迷も続いており、中国経済の内需不足が改善に向かう兆しはないと言っても過言ではない。
◇銀行に滞留する資金
筆者が注目したのは、中国で資金が銀行に滞留していることだ。
中国人民銀行(中央銀行)によれば、人民元建ての預金残高は6月末時点で、前年比8.2%増の346兆4400億元だったのに対し、貸出残高は前年比5.2%増の282兆6300億元にとどまった。その差は63兆8100億元(約1540兆円)となり、統計が遡れる1997年以降で最大となった。
要因は、企業や家計の資金需要が大幅に減少していることだ。
銀行が6月に融資した企業向け中長期資金は前年に比べ4割減少し、住宅や自動車のローンが大半を占める家計向けの中長期資金も今年上半期に8割も減った。
銀行による信用創造が低調になれば、経済活動が麻痺してしまうのは、1990年代の日本が教えるところだ。
◇庶民の味方が高騰
不況の長期化にあえぐ多くの中国人の生活も苦しくなる一方だ。
頭が痛いのは、中国の食卓にかかせない卵の価格が高騰していることだ。
ニューヨーク・タイムズは20日、「養鶏農家による拙速な生産調整が災いして、主要産地の鶏卵価格が前年に比べて40%以上高騰しているため、中国国営メディアでさえ『ロケット卵』という言葉を使っている」と報じた。中国の1人当たりの卵消費量は世界最高水準にあることにかんがみれば、中国人の痛みは日本人の比ではないだろう。
中国の大気汚染が再び悪化する懸念も生まれている。
フィンランドのシンクタンク「エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)」によれば、今年1~5月に中国の北部6都市のPM2.5(有害な微小粒子状物質)の濃度が平均11%増加した。
同地域は化学や先端製造業など主要産業が集積する中国有数の工業都市であり、イラン戦争後、豊富で安価な石炭への依存が強まったことが原因だ。
中国の大気汚染は10年以上にわたり改善してきたが、再び石炭依存が強まれば、中国の大気中のPM2.5の濃度が高まり、近隣の日本にまで悪影響が及ぶのではないかとの不安が頭をよぎる。
日本にとって厄介な存在と化した中国だが、実態は満身創痍だ。中国の内情を正確に把握しつつ、冷静な対応に徹することが肝心だ。>(以上「現代ビジネス」より引用)
「高騰しすぎた「ロケット卵」と、ぶり返す大気汚染に苦しむ国民…不景気続きの中国社会の現状」と題して経済悪化に悩む中国を藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏が論評している。
かつてコロナ禍が過ぎ去れば中国経済はV字回復する、と多くの経済評論家が論じていた。しかし現実は酷い有様だ。
外国企業が中国から撤退し、外国投資家が中国から資金を引き揚げ始めた当初、習近平氏は「内循環経済」を掲げて、中国一国で経済が完結し一国繫栄主義を打ち出した。だが、それがいかに荒唐無稽なものか判明したのか、半年も経たないうちに「双循環経済」なる言葉を編み出した。
なぜ中国経済はV字回復しなかったのか。理由はただ一つだ。それは不動産バブル崩壊を放置し続けたからだ。債務処理を行わなければ金融機関が担保として取っている不動産価格が下落して、信用収縮する。信用収縮すれば金融機関は貸出よりも貸金回収に回る。その内、担保が不良資産化して金融機関そのものの信用が揺らぐ。
景気がV字回復するには投資と個人消費がV字回復しなければならない。しかし中国はコロナ禍を境に投資が減退し、個人消費も縮小した。そもそも外国企業の撤退により雇用そのものが縮小したことが大きい。
「改革開放」により中国経済が高度成長したのは、外国からの投資と外国企業の進出があったからだ。それにより中国は努力せずして近代製造企業が各地に展開し、ライン工などの「単純労働者」需要が爆増した。その爆増した単純労働需要を農民工が満たす、という労働力の流れが起きた。それにより都市部の富が田舎の農村部にも「送金」で流入した。中国全土に外国企業の恩恵が行き渡っていた。
しかし銀行貸し出しにより民間企業が爆発的に増加して、中国経済の主役に躍り出ると習近平氏は俄かに不安を覚えるようになった。人民が経済力を持つと、自由に考える時間を持つようになり、政治体制に不満を持つようになりはしないか、と人民への締め付けを厳しくし始めた。
それが全国に張り巡らされた監視カメラとAIにより個人に認証だ。個々人が何処へ移動しているか治安警察が常に把握するようになった。同時に成功したみんな艦企業経営者をターゲットにして課徴金を巻き上げるようになり、「改革開放」政策からの転換を宣言した。意図してか、習近平氏は中国経済のエンジンそのものを破壊してしまった。
現在、中国は経済の三本柱「投資、消費、貿易」のうち「貿易」の柱一本で立っている。だからEVを無理やり豪雨のように輸出して、世界中で顰蹙を買っている。欧州でも中国製EVの輸出攻勢にEU各国は中国製EVへのEV補助金を廃止した。それによりEU各国に中国製EVの在庫が溢れているという。
もはや中国製EVの代名詞になっているBYDですら倒産の危機に瀕している。日本向け軽電気自動車(EV)「ラッコ」の発売を開始したが、BYDは受注が700台を超えたと明らかにした。だが、自動車販売の業界団体が同日発表した7月のラッコの販売台数は4日間で125台だった。しかし、それらはすべて販売店向けの試乗車だったという。BYDは年間6~7万台の販売を目標にしているが、達成するのはかなり困難だとみられている。
中国経済に崩壊以外の道はない。なぜなら貿易は信頼関係の上に成り立つものだからだ。三本柱の残された一本までも折れたなら、中国経済は崩壊するしかない。しかも巨大な中国経済を一本の柱で支えることなど出来ないのは自明の理だ。
最悪なのは投資が逆回転して、新たな不良債権化していることだ。ことに外国に貸与した「一帯一路」の債務の罠に、仕掛けた中国が嵌っていることだ。返済能力を超えた資金を貸し付けて政府を「借金」で縛り付ける、という戦略は外国政府が「返済不能」宣言する事態になっていて、いかに担保として港湾や空港を中国が99年租借しようと、それで中国が貸し付けた莫大な「元」を回収できるわけではない。
同様に中国全土に張り巡らした高速鉄道は120兆円もの「不良資産の塊」と化し、毎年2兆円を超える赤字を積み上げている。高速鉄道が破綻するのも時間の問題だ。
実質的に国民の半数が失業している現状で、いかに経済対策を打とうと効き目はない。計画経済を前提とした社会主義制度そのものが崩壊している。崩壊していないのは人民を搾取する中共(中国共産党)の支配体制だけだ。しかし中共の一党独裁は社会主義体制があって成り立つ。その逆は成立しない。
足元の社会主義体制が崩壊していて、その上に成り立つ中共政府はまさしく砂上の楼閣だ。いかにしてソ連が崩壊したか、その再現フィルムを私たちは目撃している。