なぜマスク氏はトランプ支持になったのか。

反リベラルになった契機
 周囲の者がみな反対したにもかかわらず経営不振に苦しむツイッターを買収したのは、「自由な言論空間を守る」という大義名分はあったものの、(本人も認めるように)さびしいからだろう。成功の実感、すなわち「自己実現」をもたらしてくれるのは数十兆円の富ではなく、社会的な評価(1億5000万人のフォロワー)なのだ。
 マスクはもともと政治にさしたる関心がなく、民主党とオバマ大統領を支持していた。だがツイッターを始めるようになって、徐々に「ウォーク(Woke:目覚めた者)」への批判を強めていく。
 ウォークは日本でいう「(社会問題に)意識高い系」のことで、人種問題やジェンダー問題などで「ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ:政治的正しさ)」の旗を振りかざし、不適切な言動をした者を社会的に抹消(キャンセル)する「キャンセルカルチャー」を主導している(「SJW=社会正義の闘士」とも呼ばれる)。
 ウォークたちは、経済格差こそがすべての社会問題の元凶で、マスクのようなビリオネアは、その富がたとえ正当な方法で(合法的に)得たものであっても、存在そのものが「不道徳」だとしている。これは全財産を失うリスクをとって(さらには「1日23時間」仕事に没頭して)誰もが不可能だとあざけった事業を成功に導いたマスクにとって、許しがたい侮辱だった。
 マスクと最初の妻との子どもゼイヴィアはその後、女性にジェンダー移行して「ヴィヴィアン」と名乗り、父親を「資本主義者」と批判するようになった。マスクはこれを、「ウォークマインド・ウイルス」に感染したからだと考えているらしい。
 決定的なのは、法学者から民主党の上院議員になったエリザベス・ウォーレンにツイッターで「税金を納めていない」と批判されたことで、これに猛反発したマスクはテスラ株のストックオプションを行使して110億ドル(当時の為替レートで約1兆2500億円)を納税し、「(IRS〈米内国歳入庁〉に立ち寄ったら)クッキーでももらえるような気がする」と皮肉った。
 ツイッターやフェイスブックは中立な言論プラットフォームを装っているが、リベラル派の投稿を優先し、保守派(右派)の投稿を削除しているのではないかとずっと疑われてきた。ツイッターでウォーレンのような「左派(レフト)」から攻撃されたマスクが買収を決めたのは、この「不正」をただそうと考えたからでもある。

トランプのアカウントを復活
 マスクは買収後に、これまでの「コンテンツモデレーション(節度ある投稿管理)」のファイルをジャーナリストに開示した。これによって、ツイッターがバイデン政権に忖度し、トランプを支持する投稿を抑制していた事実が明らかになり、保守派の疑惑に一定の根拠があることが示された(ただしこれは、ツイッターの社員の大半が民主党支持者だったからで、ディープステイト=闇の政府による陰謀ではない)。
 マスクは自らを「リバタリアン」だと述べている。リベラリズムと同じく「自由(Liberty)」から派生した言葉で、「自由原理主義者」をいう。リベラリズムはもともと「自由主義」のことだが、「リベラル」を自称する政党やメディア、知識人はいつしか平等を過度に重視し、それによって自由が抑圧されていると不満を抱く者たちが「リバタリアン」を名乗るようになった。日本ではティーパーティーのようなキリスト教保守派の運動だと思われているが、じつは現在、リバタリアニズムの最大の拠点はシリコンバレーだ。彼らは「テクノ・リバタリアン」と呼ばれている。
 マスクのようなIT起業家がリバタリアンなのは、国家の規制や介入のない自由な環境こそがテクノロジーを進歩させることを考えれば当然のことだ。逆にいえば、自由のない世界では「とてつもなく賢い」者たちは自らの才能を活かすことができず、死に絶えてしまう。
 リバタリアニズムは国家を最小化し、自由を最大化することを目指すが、現代のリベラリズムは逆に、社会福祉などで国家を最大化しようとする。国家が介入する範囲が広がれば広がるほど、自由の領域は狭まっていく。リバタリアンからすれば、口先で「権力」を批判しながら自由を壊死させようとするリベラルは「国家主義者」なのだ。
 そしていま、リバタリアンの最大の敵は、「社会正義」の名の下に言論・表現の自由を蹂躙する「ウォーク」になっている。これは右派(リバタリアン)と左派(ウォーク)の対立とされているが、このような旧態依然とした枠組みでは、それが「自由」をめぐる政治思想の闘争であることがわからなくなってしまう。
 ツイッターは連邦議会議事堂襲撃事件でトランプのアカウントを「永久追放」したが、マスクはそれを復活させたうえで、FOXニュースの元看板司会者タッカー・カールソンによるトランプのインタビューをXでストリーミング配信した。これもマスクが「右派」になった証拠とされたが、トランプが次期大統領選の共和党の候補者争いで独走状態にあることで、言論プラットフォームからトランプを排除する正当性は揺らいでいる。
「民主主義」でもっとも重要なのは議論であり、対話だとされる。だとしたらなぜ、大統領選挙の最有力候補を議論に参加させないのか。トランプは現在、保守派のSNS「トゥルース・ソーシャル」で活動しているが、このような状況こそがアメリカ社会の分極化を招いているとのマスクの指摘にはじゅうぶんな理がある>(以上「PRESIDENT」より引用)




オバマ支持だったイーロン・マスクは、なぜ"意識高い系"を嫌ってトランプ支持に変容したか?」と題して橘玲(たちばな あきら・作家)氏が解説している。その解説により米国社会の「分断」と「破壊」の正体が見えて来る。
 橘氏は「当初マスク氏はオバマ支持だった」という。民主党リベラルを支持していたマスク氏がなぜ保守・共和党候補のトランプ氏支持になったのか。それはリベラリズムが勢力を獲得すると同時に自由の抑制に動いたからだ。

 つまり行き過ぎた平等や人権主義が「機会の自由」を奪って「結果の平等」へと変貌したからだ。リベラルであらねばならない、という主義に囚われてしまうと自由がなくなる、という皮肉な結果を招いた。
 その結実の一つがトランプ氏の発言を「フェイク」だと決めつけてアカウントごとSNSから削除する、という暴挙になって現れた。それこそが自由に対する抑制ではないか。SNSが書き込みの検閲を行うとは、米国が独裁国家に陥ったかのようだ。SNSのCEOたちをして、そうした行動に走らせたのは「意識高い系」のリベラリストたちだ。

 また社会の裏側から眺めると、SNSのCEOたちも米国主要オールドメディアに操られているようだ。それはつまり、米国主要オールドメディアを操るDSたちによってSNSまでもが操られていることでしかない、とマスク氏は気付いた。
 だからツイッターを買収して自身のSNS「X」を所有した。同時にすべてのアカウントを復活させた。もちろんトランプ氏のアカウントも復活させて、まさとしく自由なSNSを蘇らせた。そうした事が出来たのも、マスク氏にはDSに支配されないだけの潤沢な資金力があったからだ。

 第二期目のトランプ政権が誕生すると、フェイスブックも検閲を止めると表明した。今後SNSは本来の自由空間になるだろう。もちろんSNSへの書込みからフェイクが一掃されたからではなく、自由空間を維持する事こそがネットの使命であり、真実とフェイクを選別するのは利用者であり、書込みする者は自己で責任を取らなければならない、という「自由と責任」原則を守らなければならない。
 フェイクを拡散すれば、それで不利益を被った者から訴えられる、というのこそ自由と責任のあり方だ。もちろん政治がSNS規制を行ってはならない。SNSは何処からでも誰でも書き込める、という任意性と自由こそが最大の存在意義だ。従来、情報はオールドメディアの独占事業だった。つまり情報はオールドメディアによって支配されていた。だからオールドメディアを支配する者が情報を支配してきた。しかし、それはネット以前のことだ。

 リベラリストの衣を着た左派活動家の正体もネットによって忽ち暴かれるだろう。意識高い系の環境活動家の衣を着たCO2利権に群がる者たちの正体もネットによって暴かれつつある。EVこそが環境に良い、という国際政治を巻き込んだ壮大な虚構もバレつつある。未だに原発こそが環境に良い、という嘘を信奉する者がいるが、彼らは原発利権に利用されているだけだ。その原発こそが環境に良い、というオールドメディア推しの嘘もネットによって暴かれつつある。
 国際政治がグローバル化から一国主義へと転換しているように、日本国内でも「構造改革」と称するグローバリズムへの反動が大きなうねりとして起きつつある。オールドメディアが普及した○○のために国民は我慢すべきだ、という馬鹿げた信条主義も日々形勢が悪くなっている。その代表例が「消費税廃止」の大きなうねりだ。政治は財務省のためにあるのではなく、国家と国民のためにある、という極めて根源的な問い掛けが日々ネットの中に溢れている。もはや「消費税廃止」の流れは止められないだろう。それは日本の国家と日本国民のために良い流れだ。米国が「米国ファースト」に向かって力強く政治の舵を切ったのもグローバリズムからの転換点という時代の要請と云うべきだろう。

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