看板の掛け替えだけで済ますことは許されない。事務所解体とファンクラブ解散は当然の措置だ。

<ジャニー喜多川氏による性加害問題で、被害を訴えていた元所属タレントの男性が先月亡くなっていたことが分かりました。現場の状況などから自殺とみられるということで、遺族は性被害のトラウマにひぼう中傷などが重なり「心労が一層深刻になっていた」とコメントしています。

 捜査関係者や遺族の代理人によりますと、亡くなったのはジャニー喜多川氏からの性被害を訴えてきた元所属タレントで、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」にも所属していた大阪市の40代の男性です。
 先月中旬に府内で死亡しているのが見つかり、現場の状況などから自殺とみられるということです。
 遺族の代理人の弁護士によりますと、男性は性被害によって精神的な不調が続いていると訴えていたほか、被害を告発したことをきっかけにインターネット上でひぼう中傷を受けていたということです。
 男性の遺族は14日、コメントを出し「突然の旅立ちをいまだに信じられず、呆然とした日々を送っています。ことし5月に事務所に性加害を受けたと訴えたもののその後も放置され、彼の焦燥感、悩みは深まっていました。事務所にひぼう中傷への対策も求めていましたが、呼びかけのみで具体的な措置を講じていませんでした。彼の心労はもともと抱えてきた性被害のトラウマの再燃とも相まって、一層深刻なものになっていました」などと記しています。
 被害を訴えた人に対するひぼう中傷は深刻な問題となっていて、10月以降、元所属タレント3人が警察に告訴状や被害届を提出したことを明らかにしています。
男性の遺族「心労は一層深刻なものになっていた」

男性の遺族は代理人の弁護士を通じて14日、コメントを出しました。
 この中では「突然の旅立ちをいまだに信じられず、現実感がなく、私たち家族は呆然とした日々を送っています。
 彼は本年5月、旧ジャニーズ事務所に電話で、在籍時の1995年にジャニー喜多川から性加害を受けたことを訴えました。事務所の応対者は、在籍確認を行い『担当者が必ず折り返す』旨を約束しました。しかし、その後5か月以上、ジャニーズ事務所から連絡は一切ありませんでした。
 未成年時に受けた性被害の深いトラウマを抱えながらも『若い人たちによりよい社会を残したい』と、再度の告発もしました。その訴えにも事務所からはなんの応答もなく放置され、彼の焦燥感、悩みは深まっていました。
 また、彼は事務所に対して誹謗中傷への対策も求めていましたが、事務所幹部は会見で『誹謗中傷をやめてください』と呼びかけるのみで、具体的な措置を講じていませんでした。彼は、被害者がみずから対策に取り組まねばならない状況について『事務所がやるべきことを、なぜ被害者だけが負担を負わなければならないのか』と語っていました。
 彼の心労は、もともと抱えてきた性被害のトラウマの再燃とも相まって、一層深刻なものになっていました。そして、家族を残したまま、志半ばで自死するに至りました」としています。
 代理人の弁護士は、今後、ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILEーUP.」に対して真摯(しんし)で適切な対処を求めていくとしています。

旧ジャニーズ事務所「SMILE-UP. 」コメント
 ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILE-UP. 」は、NHKの取材に対し、「ご逝去の報に接し、ご遺族皆様のご心痛いかばかりかとお察し致します。謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。当ご遺族様に対しましても、誠心誠意対話をさせていただく所存です。また、被害にあわれた方やご家族等(など)に対する誹謗中傷は絶対にやめていただくよう、引き続きファンクラブをはじめ社会に対する発信に努めてまいります」とコメントしています。>(以上「NHK」より引用)




 痛ましいニュースが報道された。「被害訴えていたジャニーズ元所属タレントの男性 先月自殺か」という。その経過は引用した記事によって明らかになっている。
 一昨日、NHK大晦日恒例の紅白歌合戦の出場者からジャニーズ事務所所属タレントが一掃された。「やっと」かという感慨一入だったが、その翌日の被害者が自死していたという報道だ。

 紅白からジャニタレが一掃された件のニュースで、街頭インタビューを流していたが、果たして妥当だったのだろうか。まだ十代と思われる若者が「国民的アイドルが出ないのは残念だ」といった声や、「暫くしたら、また出るのではないか」といった声が聞こえた。
 彼ら若者たちは事件の本質が何も理解できてないのだろうか、と思っていたら「タレントはジャニーズ事務所とは関係ないでしょう」と宣う中年女性がいたのには呆れ返った。彼女は性加害を受けて前途に悲観し、ジャニーズ事務所を辞めた千人以上ともいわれる多くの被害少年たちがいることを知らないのだろうか。

 欧米を中心とする世界基準では、この手の犯罪に対する世間の批判は極めて厳しい。それは性加害を起こした本人やプロダクションのみならず、そのプロダクションと深く関与していたテレビスタッフや芸能プロモーター、さらにはCMに多用した広告宣伝会社の担当者まで社会から強制退出されるだろう。
 紅白歌合戦からジャニタレが一掃された、というのは甘っちょろい措置でしかない。ジャニーズ事務所から売り出されたタレントは芸能感から一掃される、というのが世界基準だ。彼らに真のタレント能力があるなら、ゼロからだって這い上がれるはずだ。ジャニーズ事務所から売り出されたタレントもある意味ジャニー氏の被害者だ。だから黙って出演させ続けて良い、というものではない。性加害という不正に対して、立ち向かうのではなくジャニー氏と共に歩んだからこそ現在のタレントとしての地位があるのだろう。それはジャニー氏の性加害に耐えられなくて芸能界への道を自ら諦めた青少年たちと根本的に異なるのではないか。

 昨今、宝塚歌劇団のうら若い女性団員が自死したことが紙面を賑わしている。これもまた芸能界のプロダクションの中で起きた事件だ。芸能界で成功するためには少々のイジメや過酷な練習や労働にも耐えろ、というのは時代錯誤だ。それは今は禁じられた野球少年へのウサギ跳びや練習中の禁飲水といった措置と何ら変わらない。厳しく罰せられるべきは自死した女性をイジメ抜いた先輩諸氏だけでなく、宝塚歌劇団そのものではないか。解体再出発すべき重大犯罪を犯していた、という深刻な自覚なくしてこの自死事件から宝塚歌劇団を再出発させてはならない。
 芸能界を性加害事件が二度と起きないように清浄化する覚悟があるなら、看板の掛け替えだけで許してはならないし、ジャニタレのファンクラブを解散させるべきだ。それらはジャニー氏の性加害の仇花でしかない。

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