施政方針演説に見る岸田氏の「経済音痴」。

一 はじめに ~変化の流れを掴(つか)み取る~
 第二百十二回臨時国会の開会にあたり所信の一端を申し述べます。
 日本国内閣総理大臣として、私の頭に今あるもの、それは、「変化の流れを絶対に逃さない、掴み取る」の一点です。
 岸田内閣は、防衛力の抜本的強化、エネルギー政策の転換、次元の異なるこども・子育て政策をはじめ、時代の変化に応じた先送りできない課題に一つ一つ挑戦し、結果をお示ししてきました。今後も、物価高をはじめ国民が直面する課題に、「先送りせず、必ず答えを出す」との不撓(ふとう)不屈(ふくつ)の覚悟をもって取り組んでいきます。
 最初に掴まなければならない変化の流れは、「経済」です。三十年来続いてきたコストカット経済からの変化が起こりつつあります。この変化の流れを掴み取るために、持続的で構造的な賃上げを実現するとともに、官民連携による投資を積極化させていく。「経済、経済、経済」、私は、何よりも経済に重点を置いていきます。
 変化の流れは、社会にも起きています。人口減少、とりわけ生産年齢人口の減少が進む一方で、デジタル化等によってそれを補って余りある生産性の向上を図る余地が増えています。この変化をチャンスに変えていくためにも、少子化対策とあわせてデジタル化を徹底的に進めます。
 そして、変化の流れは、外交・安全保障にも起きています。ベルリンの壁崩壊以降進んだグローバル化は平和と繁栄の基盤となりました。しかし、世界は分断と協調が複雑に絡み合う新たな時代に入っており、国際社会においてこれまで以上に結束が求められています。日本は、国際情勢を踏まえ、柔軟に対応しつつ、自らの防衛力を強化し、米国やその他同志国、そして、グローバルサウスの国々との連携を密にしていきます。
 明治維新、戦後復興、高度成長。日本は、国の内外で起こった大きな時代の変化の流れを掴み取り、個々の国民の「力」に変え、歴史に残る大きな社会変革を実現してきました。
 そして、今、我々は再び歴史的な転換点に立っています。本会議場に集う、国会議員の皆さん、百年後に振り返って、この国会が変革への大きなうねりを生み出した、そのように後世から評価されるよう、共に挑戦しようではありませんか。

二 経済・経済・経済
 「変化の流れを掴み取る」ための「一丁目一番地」は経済です。
 日本経済は、三十年ぶりの変革を果たすまたとないチャンスを迎えています。このチャンスを掴み取るために、私は過去に例のないような大胆な取組に踏みこむ決意です。
 この三十年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきました。人への投資や賃金、さらには未来への設備投資・研究開発投資までもが、コストカットの対象とされ、この結果、消費と投資が停滞し、更なる悪循環を招く。低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」とも呼び得る状況でした。
 しかしながら、三十年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスが巡ってきました。コロナ禍での苦しかった三年間を乗り越え、経済状況は改善しつつあります。三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、三十年ぶりの株価水準、五十兆円ものGDP(国内総生産)ギャップの解消も進み、税収も増加しています。その一方で、国民負担率は所得増により低下する見込みです。
 この前向きな動きが続けば、新たな経済ステージへの移行が現実のものとなります。物価上昇を乗り越える構造的な賃上げと脱炭素やデジタルなど攻めの投資の拡大によって消費と投資の力強い循環が本格的に回り始めます。
 「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革です。「コストカット型経済」からの完全脱却に向けて、思い切った「供給力の強化」を、三年程度の「変革期間」を視野に入れて、集中的に講じていきます。
 新しい経済ステージに向けた確かな息吹が生まれてはいるものの、国民の消費や投資動向は力強さに欠ける状況にあります。外生的な物価上昇が急激に生じたため、足下の賃上げが物価上昇に追い付いていません。変革を加速する力強い後押しを早急に行わなければ日本経済は、三年程度の「変革期間」どころか、これまでの状況に後戻りしてしまうリスクを抱えています。
 しかし、私は、断じて後戻りは許さない。変革を力強く進める「供給力の強化」と不安定な足下を固め、物価高を乗り越える「国民への還元」。この二つを「車の両輪」として総合経済対策を取りまとめ、実行してまいります。

(供給力の強化)
 今回の総合経済対策の第一のポイントは、「供給力の強化」です。
 GDPギャップが解消に向かう中、「供給力の強化」のための対策に軸足を移します。
 半導体や脱炭素のように安全保障に関係する大型投資をはじめ、特に二年から三年以内に供給力強化に資する施策に支援措置を集中させ、「変革期間」の呼び水とします。
 さらに、賃上げ税制を強化するための減税措置や、戦略物資について初期投資だけでなく投資全体の予見可能性を向上させる過去に例のない投資減税、特許などの所得に関する新たな減税制度、人手不足に苦しむ中堅・中小企業の省力化投資に対する補助制度をはじめ、抜本的な供給力強化のための措置を講じていきます。突発的なエネルギー価格の高騰に備え、省エネ・脱炭素投資の更なる拡大を図ります。
 また、AI(人工知能)、自動運転、宇宙、中小企業の海外展開などの新しいフロンティアやイノベーションへの取組、スタートアップへの支援を強化します。
 経済活動の基盤である金融資本市場の変革にも取り組みます。資産運用業とアセットオーナーシップの改革を進めるとともに、金融リテラシーの向上等に向けて関連法案の今国会での成立を目指します。
 あわせて、三位一体の労働市場改革、企業の新陳代謝促進、物流革新など、生産性を引き上げる構造的な改革を進めます。成長と分配が持続的に回っていく、物価上昇を十分に超える持続的賃上げが行われる経済を目指していきます。さらに、十月から先行して開始した「年収の壁・支援強化パッケージ」について、今後「百六万円の壁」に近づく可能性のある全ての方が壁を乗り越えられるようにするため、十分な予算上の対応を確保します。

(国民への還元)

 経済対策の二つ目のポイントは、「国民への還元」です。
 急激な物価高に対して賃金上昇が十分に追いつかない現状を踏まえ、「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置」として、まず、現世代の国民の努力によってもたらされた成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に「還元」し、物価高による国民の御負担を緩和いたします。同時に、長年にわたって染みついていたデフレマインドからの転換を今こそ行動に移すよう関係者に強く呼びかけていきます。なお、還元措置の具体化に向けて、近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を、指示します。
 その際、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図ることが極めて重要です。多くの自治体でこの夏以降低所得者世帯に対して一世帯当たり三万円を目安に支援を開始してきました。この物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大することとし、経済対策に盛り込みます。
 エネルギー価格の上昇については、九月には、年内の緊急措置として、リッター百七十五円をガソリン価格の実質的な上限とするため補助を拡大しました。この措置を電気・ガス料金の激変緩和措置とあわせて来年春まで継続します。また、地方自治体が地域の実情に応じてきめ細かく生活者や事業者を支援できるよう、先ほど申し上げた枠組み以外の重点支援地方交付金も追加します。
 コロナ禍で国民負担率は高止まりしましたが、成長の成果もあって低下する見込みです。その低下を確かなものとし、岸田内閣として国民負担率をコロナ禍の水準に後戻りさせることなく、高齢化等による上昇に歯止めを掛けます。そのためにも所得の増加を先行させ、税負担や社会保障負担を抑制することに重きを置いて経済財政運営を行います。

三 社会
(社会の変化)
 日本社会も、大きな変化を迎えています。人口減少と、国民のニーズの多様化・複雑化に応える新たな地域の仕組みを作り上げていかなければなりません。

(デジタルと社会)
 デジタル技術は、社会課題を新たなアプローチで解決する「力」を持ちます。新型コロナ対策の「デジタル敗戦」を二度と繰り返さない。デジタル化への変化の流れを確実に掴んでいかなければならない。「誰一人取り残さない」デジタル化を実現する。こうした思いで、「マイナンバーカードの早期普及」、「デジタル田園都市国家構想」を進めてきました。
 この固い決意の下に、アナログを前提とした行財政の仕組みを全面的に改革する「デジタル行財政改革」を起動します。
 人口減少の下でも、これまで以上に質の高い公共サービスを提供するために、子育て、教育、介護などの分野でのデジタル技術の活用を、利用者起点で進めます。地域交通の担い手不足や、移動の足の不足といった、深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります。私自ら、現場で奮闘する各分野の方々の生の声を聞いて、制度設計にいかします。規制・制度の徹底した改革、EBPM(証拠に基づく政策立案)を活用した予算事業の見える化にも取り組み、社会変革の実現、それを支える令和版の新たな行財政の構築を目指します。
 あわせて、マイナンバー制度に対する国民の信頼回復に向けて、原則として十一月末を目途に総点検を終えるよう、政府を挙げて対応しています。

(包摂的な社会づくり)

 障害のある方もない方も含めて、全ての方が生きがいを感じられ、多様性が尊重される、包摂的な社会づくりに取り組みます。特に、「女性」、「若者」、「高齢者」の力を引き出していきます。
 前例のない規模で政策強化を図った「こども未来戦略方針」のスピード感ある実行のため、当面の集中的な取組に必要な制度設計を速やかに具体化し、できるところから取組を実施してまいります。前倒しによる各種施策の実施を検討し、我が国のこども一人当たりの支援規模をOECD(経済協力開発機構)トップの水準に引き上げていきます。「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」に基づく取組を加速するとともに、不登校やいじめに対する対策を強化します。また、教職員の処遇見直し等を通じた公教育の再生にも取り組みます。
 認知症の方が尊厳、希望を持って暮らすことができる社会、身寄りのない方も含めて高齢者の方々がお一人でも安心して年を重ねることができる社会を創らなければなりません。
 新たに、「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」を立ち上げ、「認知症基本法」の施行に向けた準備を行うとともに、レカネマブの薬事承認による新たな時代の到来を踏まえ、必要な早期発見、検査・医療サービス等が提供される体制整備や治療薬の更なる研究開発を進めます。あわせて、住まいの確保や入院・入居時の身元保証など高齢者の生活上の課題に取り組みます。
 また、現場で働く方々の給与に関わる公定価格の見直しを進め、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組みを構築します。
 引き続き新型コロナへの対応に万全を期し、花粉症についても、発生源対策、飛散対策、発症・曝露(ばくろ)対策を一体的に推進し、国民の皆様の負担軽減に向けた取組を進めます。

(地方創生)

 観光は地域振興のエンジンです。コロナ禍を越え、多くの観光地で賑(にぎ)わいを取り戻しつつあります。しかし、一部の地域や時間帯に観光客が集中することで生じる混雑、マナー違反、担い手不足等のオーバーツーリズムの問題も顕在化しています。持続可能な観光業に向けた対策にも着手します。
 また、地方創生と社会課題解決を両立させる、循環経済への取組も進めます。持続的な食料の安定供給に向け、食料安全保障の強化、農業のスマート化・グリーン化の推進を図ります。あわせて、ホタテの品目別輸出促進団体を早期に認定するなど、市場拡大に向けて、農林水産物・食品の輸出促進に強力に取り組みます。農政の基本は現場にあります。今後も各地域に寄り添い、現場の方々の想(おも)いを受け止めながら、農政を転換し、実践的な支援を行ってまいります。
 地方創生を支える中核は地域の中小・小規模事業者です。持続的な賃上げが可能となるよう、省人化投資やデジタル投資の支援、賃上げ費用の転嫁対策を強力に進めます。あわせて、ゼロゼロ融資について、現場の状況をしっかり踏まえて、適切な対応を促します。
 総理に就任してから二年間、私は全国津々浦々を訪ね、約六十回の車座対話を含め、国民の皆さんと直接、意見交換をしてきました。人口減少や過疎化などに悩む中でも、多くの方が、それぞれの現場で明日に向かって懸命に努力されています。
 皆さん、政治の役割とは、そういう現場の方々を全力で支えることにあるのではないでしょうか。地方こそ日本の宝、底力です。皆さん、今こそ、共に、地方創生に力強く取り組もうではありませんか。

(福島復興と国土強靱(きょうじん)化)

 「東北の復興なくして、日本の再生なし」。引き続き強い決意で被災地の復興に取り組み、帰還困難区域における避難指示解除や解除後の復興も着実に進めます。
 今年は、線状降水帯等により、各地で被害が発生しました。こうした教訓を踏まえ、線状降水帯の予測の高度化など、デジタルの力を国土強靱化に導入します。リニア中央新幹線の整備に向けた環境を整え、災害時も途切れない広域交通ネットワークの構築を進めます。また、沖縄の離島地域をはじめ、電力供給の強靱化に資する電線地中化を加速します。

(大阪・関西万博)

 ポストコロナの中で初めて開かれる二〇二五年大阪・関西万博については、海外パビリオン建設の遅れなど進捗状況が厳しくなっていることに強い危機感を持って、オールジャパンで進めていきます。

四 外交・安全保障
(国際環境の変化と岸田外交)
 外交・安全保障も、大きな変化を迎えています。「ポスト冷戦時代」は終わり、新たな時代へと大きな変化の流れが起きています。ロシアのウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢をはじめ、世界各地で深刻な事態が多発し、日本周辺においても、一方的な現状変更の試みや、北朝鮮の核・ミサイル開発は続けられ、安全保障環境は戦後最も厳しいものになっています。
 こうした時代、変化の流れを掴み取るため、岸田外交では法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序をさらにもう一歩進めます。「人間の尊厳」という最も根源的な価値を中心に据え、世界を分断・対立ではなく協調に導くとの日本の立場を強く打ち出していきます。

(岸田外交の積極的展開)
 政権発足から二年間、唯一の同盟国たる米国との関係深化、日韓関係の改善、強力なウクライナ支援、対ロシア外交の大転換を進め、そしてG7広島サミットでは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていくというメッセージを、G7の枠を超えて、世界に向けて力強く発信しました。
 食料危機、気候変動や感染症などのグローバルな危機により、最も甚大な影響を受けるのは、脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれた国や人々です。我が国は、国際社会で影響力を増しているグローバルサウスの声に耳を傾け、絆(きずな)を基盤として、経済活動の深化とともに、日本らしいきめ細かい協力を行っていきます。
 本年は、日・ASEAN(東南アジア諸国連合)関係五十周年の節目です。年末の日・ASEAN特別首脳会議では、次の五十年を描く新たな協力ビジョンを打ち出し、成長センターであるインド太平洋をけん引していきます。
 また、核軍縮をめぐる状況が一層厳しいものになっている今だからこそ、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」を目指す歩みを主導しなければなりません。「ヒロシマ・アクション・プラン」に沿って現実的で着実な努力を重ねます。
 中国との関係について私は、「建設的かつ安定的な関係」という考えを打ち出し、首脳レベルでも対話を進めてきています。これからも、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話を行って、共通の課題については協力するという姿勢を貫いていきます。
 ALPS(多核種除去設備)処理水に関しては、引き続き科学的根拠に基づき、透明性の高い情報発信を行っていきます。中国政府による日本産水産物の輸入停止に対しては、即時撤廃を求めるとともに、中国市場に依存しないよう販路拡大を図り、我が国の水産関係事業者を守るため、万全の対応を取ります。
 韓国との間では、尹(ユン)大統領との個人的信頼関係を梃子(てこ)に、幅広い連携を深めています。八月には、キャンプデービッドで日米韓三か国のパートナーシップの新時代を拓(ひら)いていくという決意を内外に示すことができました。経済安全保障を含め、三か国での戦略的連携を進めます。また、日中韓の枠組みについても前進させます。
 日露関係は、厳しい状況にありますが、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。

(拉致問題)
 拉致被害者御家族が高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題です。
 全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現し、日朝関係を新たなステージに引き上げるため、また、日朝平壌宣言に基づき、北朝鮮との諸問題を解決するためにも、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めてまいります。日朝双方の利益に合致し、地域の平和と安定にも大きく寄与する、日朝間の実りある関係を築いていくために、私は大局観に基づく判断をしてまいります。

(防衛力の抜本的強化)
 こうした外交の地歩を固めるためにも、日本自身の防衛力強化が重要です。
 国民の命と我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、五年間で四十三兆円の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化を速やかに実現します。
 防衛力の抜本的強化のための税制措置の実施時期については、昨年末に閣議決定した枠組みの下、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応、を踏まえて判断していきます。
 自衛隊の統合運用の実効性を更に高め、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化します。同時に、基地負担軽減に引き続き取り組み、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、辺野古への移設工事を進めます。また、強い沖縄経済を作ります。

五 結び
(憲法改正・皇位継承)
 「あるべき国の形を示す」国家の基本法たる憲法の改正もまた、先送りのできない重要な課題です。先の国会では、衆・参両院の憲法審査会において、活発な御議論をいただきました。このような動きを歓迎します。憲法改正は、最終的には、国民の皆様による御判断が必要です。国会の発議に向けた手続を進めるためにも、条文案の具体化など、これまで以上に積極的な議論が行われることを心から期待します。
 また、安定的な皇位継承を確保するための諸課題等、とりわけ、皇族数の減少への対応も、国の基本に関わる重要な課題です。政府としても、このような認識の下、皇族数確保のための具体的方策等を取りまとめ、国会に御報告いたしました。この重要な課題についても、「立法府の総意」が早期に取りまとめられるよう、国会における積極的な議論が行われることを期待します。
 旧統一教会については、先日、宗教法人法に基づき、解散命令請求を行ったところです。今後、裁判所の審理となりますが、政府として、万全の対応をしてまいります。あわせて、二度とこのように深刻な被害が生じることがないよう、不当寄附勧誘防止法等の厳正な運用に努めるとともに、被害者に寄り添った相談対応など、被害者救済に適切に対応してまいります。
 この夏、私は全国のいろいろな現場にお邪魔させていただきました。そこで見たものは、変化の流れを掴む、日本人の「力」でした。
 - 全焼した沖縄・首里城の再建現場では、「見せる復興」で復興プロセス自体を観光の「力」にしていました。
 - 「歳(とし)をとることは明日(あした)がある」、栃木県の農福連携の現場では、障害者の皆さんが働く喜びを実感され、世界で認められるワインを作り出す「力」があふれていました。
 - 「できないことではなく、できることに注目する」群馬県の認知症ケアの現場では、認知症をポジティブにとらえ、齢(よわい)を重ねる「力」にしていました。
 福島県でロボット技術を学ぶ学生は、「将来は廃炉に携わる一人になりたい」と目を輝かせていました。日本の技術力を引っ張る「力」が芽を出しています。
 令和の時代においても「変化の流れを掴む」日本人の「力」は、脈々と受け継がれています。変化の足音を国民にしっかりとお伝えし、変化を挑戦の機会に変えるための仕組み作りをしていく。挑戦の障害となる古くなった制度を取り払い、全ての人が輝ける日本らしい包摂的な社会を創っていきます。
 持続的な賃上げに加えて、人々のやる気、希望、社会の豊かさといったいわゆる「ウェルビーイング」を拡(ひろ)げれば、この令和の時代において再び、日本国民が「明日は今日より良くなる」と信じることができるようになる。日本国民が「明日は今日より良くなる」と信じられる時代を実現します。
 岸田政権は、歴史的な転換点の中で、変化の流れを掴み、変化を力にしてまいります。私自身、その先頭に立って、職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟です。国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。
 御清聴ありがとうございました。>(以上「首相官邸ホームページ」より引用)




 一度ぐらい首相の「所信表明演説」全文を読んでみるのも良いのではないか、と思って全文を掲載した。ぜひ、ご一読願いたい。そうすると如何に岸田自公政権がトンマで間抜けかが良く分かるだろう。
 冒頭で岸田氏は「岸田内閣は、防衛力の抜本的強化、エネルギー政策の転換、次元の異なるこども・子育て政策をはじめ、時代の変化に応じた先送りできない課題に一つ一つ挑戦し、結果をお示ししてきました」と述べているが、何のことを云っているのだろうか。防衛力の抜本的な教科とは米国製ポンコツ・トマホークの爆買いを指しているのだろうか。そうだとしたら飛んだ勘違いだ。

 ジェット戦闘機よりも遅いトマホークを日本の基地から発射して、1,000㎞以上も遠くの「敵基地」を攻撃する「敵基地攻撃能力」など戦争を日本に呼び込むだけだ。なぜなら敵基地に到達する前に撃墜されるのがオチだからだ。
 エネルギー政策の転換に関しては何がどうなったというのだろうか。相変わらず石油・石炭・天然ガスが全体の84.8%を占めていて、再生可能エネルギー(水力を除く)は5.8%止まりだ。e-fuel開発に政府が本腰を示したという報道もないし、今回の施政方針演説にも一言も触れられていない。

 「経済・経済・経済」の項ではもっと笑える。コストカットに励んできた流れが転換しつつある、などと岸田氏は述べているが、コストカットをして来たのは「構造改革」に励んだ自公政権ではないか。結果として公的機関や銀行などの窓口で執務している人々の殆どすべてが「非正規・派遣労働者」だ。公務員給与が高いという批判をかわすために、公的機関は積極的に「非正規・派遣労働者」を雇い入れて、正規と非正規の格差拡大を行った。
 守秘義務が課されているはずの公的機関の窓口業務が派遣職員で良いのか、という議論もないまま、国会から地方議会、さらにはマスメディアまでも黙認してきた。それが日本の現状だ。

 笑いの本質は岸田氏が「供給力の強化」を謳っていることだ。彼は現行経済の元凶が何も解っていない。強化すべきは「供給力」ではなく、「需要力」だ。現在の日本経済はデフレギャップに悩まされている。供給力はあっても需要が無いのだ。だから政府が成すべきは財政出動であり、需要を喚起するための消費税廃止だ。
 消費税廃止を云わないために、敢えて間抜けな「供給力の強化」などと発言したのだろうか。真逆な発言をしても愚かな国会議員には解らないだろう、とタカを括って発言したのかも知れない。しかし国民が貧困化している現実は何も変わらず、国民の多くは岸田自公政権の経済政策が間違っていることを体感で察知している。

 高額報酬に守られた国会議員を稼業としている世襲議員諸氏には消費税の過酷さがお解りにならないのだろう。そして所得税減税を謳ったところで、本当に貧困に苦しんでいる国民の多くは所得税「非課税」か若しくは最低課税5%の人たちだ。貧困層で4万円も所得税を支払っている人がどれほどいるというのだろうか。
 むしろ国民が負担の重さに喘いでいるのは消費税10%や所得に対する社会保険料14%の負担だ。税率を上げないでもコストプッシュインフレで税額が大きくなるのは消費税の悪税たる所以だ。だからコストプッシュインフレで税収が最大化したのだ。決して経済成長して景気が好転した結果、税収が最大化したのではない。そうしたロジックすら岸田氏は理解していないし、昨日質問した野党の代表諸氏も理解してなかった。政治家は最低でも大学経済学部に再入学して一学年で学ぶ「経済原論」程度は身に着けるべきだ。その上で経済政策に関して国会で議論しなければ、論戦を見ていて恥ずかしくてかなわない。

 ITに関して一言云えば、IT技術が社会をスリム化し効率化するのではない。ITを取り入れるための組織再編が行政をスリム化し高効率化するのだ。変わるべきは国民ではなく、政治家であり官僚組織だという認識なきIT議論は噴飯ものだ。
 さらに言及するなら、IT化は時間と人員の節約に資するだけだが、今後の社会を大変革するのはAIだ。AI化こそ、政治家は認識すべきだ。そのためには日本製AIを構築する必要がある。さもなくば未来の日本はAIを通して米国企業に支配されるだろう。その危機感を政治家諸氏は共有すべきだ。しかし国家経営の基本となる経済にすら音痴な岸田氏に何が期待できるだろうか。

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