日本初の女性首相になり損ねた優子氏。

＜やっぱり国民は「あの事件」を忘れていなかった。小渕優子の選対委員長起用について、世論調査で58％が「不適切」（共同通信）と答えている。
「心に反省を持ち、決して忘れることのない傷として、歩みを進めてまいりたい」
　過去の「政治とカネ」を巡って就任会見で涙を浮かべて語った小渕。9年ぶりの表舞台。まさかの泣きべそに周囲は呆れている。
「マスコミに徹底的に叩かれ被害者意識が強いのでしょう。擁護派もいますが『人前で涙を流すなんて総理は無理だ』と突き放す関係者は多いですよ」（官邸事情通）

岸田首相が起用した理由は主に2つだ。
「1つは『ポスト岸田』を狙う茂木幹事長を牽制するためです。茂木派に所属する小渕さんは派内で人気がある。小渕さんを重用することで茂木派が“茂木擁立”でまとまらないようにしたいのでしょう。もう1つは“重鎮”の意向です。安倍派の実質オーナー・森元首相は、いつか優子さんを総理にしたい、と思っている。総理の判断に影響を与えたのは間違いない」（永田町関係者）

■政治とカネ
　2014年に女性初の経産相に就任したが、その直後、後援会主催の観劇会などを巡って1億円を超える不明朗な会計処理が発覚。大臣就任1カ月半で引責辞任した。秘書は政治資金規正法違反の罪で有罪判決を受けている。しかも、証拠を隠滅するためか、事務所のパソコンに電動ドリルで穴を開けていた。以来「ドリル優子」の異名が定着。

■夫はTBSの敏腕プロデューサー
　生家は東京・北区。成城大卒後、TBSに入社。1998年、父・恵三の首相就任に伴い私設秘書に。04年に結婚した瀬戸口克陽氏はTBSの同期入社。ドラマ「華麗なる一族」などを手がけた敏腕プロデューサーで、現在は編成局長。

■酒豪
　今年3月の日韓首脳会談で、尹大統領に「日本政界で酒が一番強いのではないか」と問われた岸田首相は「いや、小渕議員が一番強い」と答えている。
「党内の評判は上々で、『将来の総理』に推す声もある。ただ、政治家としての実績はなく、重要ポストの経験も乏しい。少なくとも『政治とカネ』について国民が納得するまで説明しないと総理はもちろん、大臣就任も難しいのではないか」（自民党関係者）＞(以上「日刊ゲンダイ」より引用)

　父親の後を継いで初当選した当時、小渕優子氏は若く有能な印象を受けた。将来の大器を窺わせる雰囲気を持っていたと思う。

　しかしすべてはドリルが砕いてしまった。政治資金規正法違反を疑われ家宅捜査を受けた際にPCのHDDをドリルで穿って破壊したのは致命的だ。なぜ捜査を受け容れ、罪があったのなら潔く法に服さなかったのだろうか。

　そうしていれば再起もあり得た。当時、就任したばかりの経産大臣は直ちに辞任したが、議員辞職もして首を洗って司直の判断を受け容れていれば再起はあり得た。小渕優子という人材を潰してしまったのはドリルでHDDを破壊した行為だった。それは余りに強く国民に印象付けられてしまった。

　最初の対応を誤れば、後はいかに真面目に対応しようと「ボタンの掛け違い」は直らない。最初に戻ってボタンをすべて外して、最初からボタン穴を間違えないように掛け直す必要があった。そのことを若い国会議員に進言する側近がいなかったことが悔やまれる。

　今後小渕優子氏はどうすれば良いのか。もはや遅すぎる、と云うしかない。ドリル事件から10年以上も経過しているが、国民は決して忘れてはいない。選挙対策委員長に就任したが、次に予想される選挙で自民党は確実に議席を減らすだろう。

　岸田氏が小渕氏を選挙対策委員長に任命したのは、小渕氏に選挙敗北の責任を取る役回りを押し付けたのだろう。そうすれば選挙全体を取り仕切る茂木幹事長と共に茂木派の小渕氏も総理総裁の芽を完全に摘むことが出来る。底意地の悪い岸田氏なら考えそうなシナリオだ。

　当初八月にもあると予想されていた総選挙は音沙汰ないまま夏休みが過ぎ、次に九月が取沙汰され、そして10月の国会冒頭解散が取沙汰され、現在では永田町の雀たちは11月解散で囀っている。しかしこれ以上先延ばしできないだろう。なぜなら次年度予算審議に入れば増税と負担増が審議の俎上に出るからだ。

　内閣改造の御祝儀ポイントもなく、負担増が目白押しの予算審議に入れば岸田自公政権にポイント浮上の芽はない。むしろジリ貧になり折角、元国民党の女性議員を首相特別補佐官に取り込んだ「野党分断」の効果も薄くなりかねない。余計なお荷物を内閣に抱えた上に、公明党の支援体制にひびが入ることになりかねない。岸田氏は少しばかり策を弄し過ぎたようだ。時間をかければかけるほど、岸田自公政権のポロが目立ってくるし、小沢一郎氏が進める「野党連合」の準備が進むだろう。ただ岸田氏のお粗末な戦略の結末を負わせられる小渕優子氏の日本初の女性首相の芽は完全に消え去るだろう。