G7が世界の分断を招いたのではなく、ロシアと中国が分断を行ったのだ。

G7広島サミットから、国際情勢の「何が分かった」のか?
 厳重な警備が敷かれる中、G7広島サミットが平和裏のうちに終わった。今回のサミットで最も印象的だったのは、言うまでもなくウクライナ・ゼレンスキー大統領の広島訪問だ。ロシアによる核使用の現実的脅威に直面するウクライナの大統領が、核を投下され壊滅的被害を受けた広島を訪問したことは、世界の歴史上も極めて象徴的な出来事となった。ゼレンスキー大統領が広島を訪問した理由は、正に“被爆地広島から被爆地になる恐れのあるウクライナの大統領として、被爆の加害者となる恐れのあるプーチンをけん制する”ことだった。
 そして、もう1つの理由は、対ロシアで現在も態度を明確にしない国々に対して、ウクライナへの理解を求めることだった。広島に到着したゼレンスキー大統領はインドやインドネシア、ベトナムなどいわゆるグローバルサウスの国々と次々に会談し、対ロシアで協力するよう呼び掛けた。今回のサミットにはG7諸国だけでなく、こういったグローバルサウスの国々が多く参加しており、ゼレンスキー大統領にとっては短期間で多くの指導者たちと対面で会話できるというメリットがあった。今回の訪問には少なくとも上記2つの理由がある。

世界の分断をいっそう進めることとなった広島サミット

 だが、今回のG7サミットは世界の分断がいっそう進んでいることも露呈した。まず、広島サミットの共同声明では、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの非難は当然として、中国へも強い懸念が示された。東シナ海や南シナ海における海洋覇権などに加え、中国が経済依存関係を武器化して経済的威圧を行っており、それに対抗するため新たな枠組みを創設していくことでG7が一致した。中国は一連のG7サミットに反発し、在北京の日本大使を呼び出して抗議し、米国へは半導体関連で経済的威圧を行った。
 また、中国はG7と時を合わせるかのように、陝西省西安市で5月18~19日にかけて、中央アジア5カ国とともに「中国・中央アジアサミット」が開催し、習国家主席が5カ国と経済的関係を結束させていくことを表明した。さらに、その後ロシアの首相が北京を訪問して習国家主席と会談し、中露の協力を強化させていくことで一致するなど、G7は対中露包囲網のような様相を呈している。中露両国もG7に対抗していく意思を鮮明にしており、今回の広島サミットは世界の分断をいっそう進めることになった。

「大国間対立をグローバルサウスに持ち込むな」という怒り

 また、広島サミットではG7とグローバルサウスとの乖離も鮮明となった。当然ながら、グローバルサウスといっても国によって考え方は異なり、中国寄りの国もあれば、欧米寄りの国もある。しかし、グローバルサウスで広く共有されているのは、大国間対立をグローバルサウスに持ち込むなという怒りの声だ。
 広島サミット後、ブラジルのルラ大統領はG7サミットで「ウクライナ問題を議題にするべきではなかった、戦争の話は国連でするべきだ」との認識を示した。日本国内にいると驚くような声だが、こういった声は決して珍しくない。ブラジルは中国やロシアと農産物やエネルギーの分野で関係を強化しており、距離的にもウクライナ問題は対岸の火事であり、おそらく他の中南米諸国も同じような考えを持っていることだろう。ここに、G7とグローバルサウスの考えからの違いがある。

マクロンが中国で漏らした欧州の本音

 また、G7諸国の中でも意見の違いがないわけではない。たとえば、フランスのマクロン大統領は中国に対する共同声明策定の際、中国との経済関係でリスクは低減できても切り離すことはできないとして、中国への懸念を抑える表現にするよう要請したという。G7サミットの直線、EUも切り離しを意味するデカップリングではなく、リスク低減を目指すリスキリングが現実的な選択肢だとの認識を示しており、中国に厳しい姿勢を貫く米国とは少なからず対中認識で距離がある。
 ブラジルと同じように、日米と違い、欧州は中国の軍事的脅威に直面していない一方、中国との経済関係が極めて深い。サミット前、マクロン大統領は中国を訪問した際に国賓級の待遇を受け、緊張が高まる台湾問題についても、欧州は台湾で米中どちらにも追従するべきではないとの認識を示したが、これが欧州の本音とも言えよう。今回のサミットでは対中国でG7の中でも温度差があることが鮮明となった。

危惧されるG7の内部崩壊

 以上のように、結果として広島サミットは世界の分断にいっそう拍車を掛けることになった。G7は以前、世界秩序を主導する立場にあったが、今日ではその姿はない。共同声明にあるのは対立国に向けての攻撃的メッセージであり、G7は既に対中露対抗網と化している。この姿は今後一層顕著になり、その存在意義は薄まり、最終的には内部崩壊しないかを筆者は危惧している>(以上「MAG2」より引用)




 またしても「世界の分断にいっそうの拍車。G7広島サミットで分かった危機的な国際情勢」という見出しの論評が掲載された。広島原爆碑に刻まれた「過ちは二度と繰り返しません」という文言に似た見出しに、ほとほと嫌になる。
 戦争とはいえ広島に厳罰を投下したのは米国で、「過ち」は米国の戦争遂行者たちにある。そのことを明確にしないウヤムヤ論が日本人は何かと好むようだ。今回の広島サミットで採択した「リスクを減らそう」という決議の何処に「世界の分断に拍車」が掛かったというのだろうか。

 世界に戦争の危機を招いているのは、現実にウクライナを侵略しているロシアと、何度も繰り返して「台湾を軍事侵攻するゾ」と脅している中国だ。その二ヶ国以外に大量の軍備を抱えて隣国へ攻め込んでいる、或いは攻め込もうと宣言している国が何処にあるというのか。
 そうした軍事力で国境線を偏向しようと企てる、もしくは実行している国に対して、G7が眦を決して対決姿勢を出して何か不都合でもあるのか。「G7広島サミットで分かった危機的な国際情勢」という見出しき間違いで、危機的な国際情勢に対して、すべての人類の自由と人権を守る先進自由主義国の責務を確認し合ったに過ぎない。

 「「大国間対立をグローバルサウスに持ち込むな」という怒り」という章で金儲けのためなら中国と誼を通じるのもやむを得ない、という姿勢を是認するかのような論理を展開しているが、中国が世界各国でやっているのは過剰投資に絡めての賄賂と汚職の輸出でしかない。相手国の国民にとって対中資本取引の増加は決してプラスに働いていない。
 この論評ではマクロン氏を持ち上げているが、彼が中国から帰国した当時、本国や隣国の人たちから何と言って批判されたかご存知ないのだろうか。しかも世界最大のCO2排出国へ出掛けたにも拘らず、そのことに関して一言も触れなかったのはダブルスタンダードの最たるものではないだろうか。

 論評の最後で「G7は既に対中露対抗網と化している。この姿は今後一層顕著になり、その存在意義は薄まり、最終的には内部崩壊しないかを筆者は危惧している」と結んでいるが、「下手の考え休むに似たり」という。
 対露包囲網だけではない。G7は対中包囲網を敷いて、武力による国境線の変更はいかなる理由があっても許さない、と固く決意している。日本にNATO支部を置くことに現れている。日本がNATOに加入するのではないが、欧州各国の対露防衛同盟は必然的に世界の独裁覇権主義国家の策動に無関心ではいられない、という決意の表れだ。G7は内部崩壊するどころか、21世紀に侵略戦争が起きることを許さない、という人類進化に大きな一里塚を築いたと評価すべきだろう。

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