中央アジアを抑え込んでいた「プーチンノフタ」が取れたゾ。

世界が注目の会談だったが
 中国の習近平主席は9月14日から中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンを歴訪し、16日には(現地時間)にはウズベキスタンにて開催の上海協力機構首脳会議に出席した。さらに首脳会議以外に、首脳会議参加のためにウズベキスタンにやってきた各国首脳とも個別会談を行なった。その中では当然、ロシアのプーチン大統領との首脳会談がセットされた。
 ウクライナ戦争が始まって以来初めての対面会談であるだけに、習近平・プーチン会談は国際的には大きな注目を集めた。日本を含めた世界主要国のメデイアは、習主席の歴訪や上海協力機構首脳会議の開催よりも中露州首脳会談のニュースを大きく取り扱って多大な関心を寄せたのだが、これとの好対照をなしているのはむしろ、中国国内の各官制メデイアの報道ぶりである。
  例えば9月16日の人民日報は1面で、15日の習主席の外交活動を集中的に報道している。習主席がウズベキスタン大統領と会談したニュース、同大統領から「勲章」をもらったニュース、そして中露蒙首脳会談に参加したニュースなどが紙面を飾った中で、習主席がプーチン大統領と会談したニュースはその中の1つとして扱われている。
  しかも紙面上、中露首脳会談のニュースは決して突出しているわけでもなく、「習近平勲章授受」のようなどうでも良いニュースとほぼ同じ取り扱いとなっているのである。この会談が特別なものと受け取られないよう工夫の跡が見られる。

掌を返したような冷淡さ
 そして会談の内容からしても、習主席のプーチン大統領に対する態度は極めて冷淡であることが分かる。
  会談を報じる人民日報の公式記事、すなわち中国側の「公式発表」によれば、プーチン大統領は会談の中で「この半年間で世界は劇的に変化しているが、唯一変わらないのは中露間の友情と相互信頼だ。中露の全面的・戦略的な協力関係は山の如く動かない」と語り、彼にしては珍しく感情的な表現を使って対面の習主席に赤裸々なラブコールを送っている。
  だが、それに対する習主席の反応は至って冷たい。習主席は一応、「今年に入ってからも中露協力と交流が順調に進んでいる」と応じたが、彼の口からは「友情」と「信頼」とかの感情的な言葉が一切出ていないし、今まで中国側が中露関係を語る時に必ず持ち出す「全面的・戦略的な協力関係」という慣用表現ですら、それが習主席の発言から消えているのである。  プーチン大統領に対する習主席の冷淡さは、今年2月4日に行われた中露首脳会談時の彼自身の態度とは対照的である。
  あのとき、北京冬季五輪の開幕式に参加してきたプーチン大統領に対して、習主席は「中露両国は背中を合わせて肩を並べ、戦略的協力関係を深化させて国際社会の公平と正義を守る。(このような中露関係は)過去でも現在でも未来でも動揺することはない」と、この上ない熱烈な「愛の誓い」を一方的に送っている。 
 だが、今や立場が完全に逆転して、プーチン大統領からの「求愛」に対し、習主席の方はにべもない態度で応対した訳である。

支援? 見て見ぬふり
 習主席が、9月15日の中露会談でプーチン大統領に対して示したのは、単なる態度の冷淡さだけではない。
  周知のように、プーチン政権がウクライナに対する侵略戦争を発動して以来の半年間あまり、ロシアは欧米からの厳しい経済制裁を受けて国際的にかなり孤立し、国内経済もジリ貧となりつつある。その一方、戦争の遂行自体はうまく行かず、むしろロシアの方が徐々に敗色濃厚となって国内ではプーチン大統領に対する批判の声も広がっている。
  このような四面楚歌の状況下では、プーチン大統領は「盟友」であるはずの習主席と会談して切実に求めたいのは言うまでもなく、ロシアの立場に対する今まで以上との支持とロシアの戦争に対する実質上の支援であるに違いない。 
 今のプーチン大統領はまさに、藁にもすがる思いで習主席との会談に臨んだのであろう。  しかし習主席は、プーチン大統領の切実な願望に対しまったく見て見ぬ振りであった。  中国とロシア両方の公式発表から見れば分かるように、習主席は会談の中で、プーチン大統領自身と世界全体の最大の関心事であるウクライナ戦争にはいっさい触れず、ロシアは喉から手が出るほど欲しがっている経済的・軍事的支援に対する言及もなかった。
  苦境に陥っているプーチンとロシアに対して激励や声援の一言すら発していない。
  その代わりに習主席はプーチン大統領に対し、「貿易・農業・インターネット事業などの領域における双方の実務的協力を深化させていこう」と語っているが、プーチンからすれば、そんな話はまるで、家が火事の最中の隣人に向かって「これからも仲良くしょうよ」と悠長に語っているかのような頓珍漢な対応に思えたであろう。

開戦前に誓った「協力関係」は過去のもの
 今年2月4日に行われた中露首脳会談の共同声明において、ロシアがアメリカなどに求めている「NATO不拡大」について、中国側は「共感し、支持する」との態度を表明し、「両国がNATOのさらなる拡大に反対する」との文句も共同声明に明記された。 
 その時点では、ロシアとNATOとの対立に関して、中国側は明らかにロシア側に立ってプーチン大統領の肩を持つ姿勢を鮮明していたが、9月15日の会談では習主席はこの問題に対する言及をも避けていて、いわば「中立」の立場をとっているのである。
  このように、中国の習主席は「旧友」のプーチン大統領との久しぶりの会談において、大変な苦境に陥り支援を求めてくるプーチン大統領とロシアに救いの手をいっさい差し伸べようとはしないし、むしろ一定の距離をおくような冷たい姿勢を貫いている。
 どうやら今の中国と習主席にとって、ロシアと誓った「全面的・戦略的な協力関係」はもはや過去のものとなっており、プーチンのロシアはむしろ、習主席にとって敬遠したい「厄介者」となっている感がある。

もはや大敗北まで見えてきた
 このように習主席のプーチン大統領に対するこの態度は、今年2月4日に行われた前回の中露首脳会談の時とは天と地ほどの差がある。このような変化が起きた最大の理由はやはり、この半年間において、プーチン大統領とロシアのおかれる状況と立場は以前とは全く異なったものになっているからであろう。
  2月4日の段階では、ウクライナへの侵略戦争を準備している最中のプーチン大統領は軍事大国のロシアの強力な指導者としてEUと世界中から恐れられており、彼の発動する対ウクライナ戦争はロシアの圧倒的な勝利に終わるのであろうと、世界中の誰もがそう予想していたのである。 
 その時のプーチン大統領は、来るべき戦争の勝利者だとみなされおり、世界的にも大きな影響力を持つ大国指導者として一目置かれている存在であった。
  だからこそその時の習主席は、いわば勝ち馬に乗る心理でプーチン大統領とロシアを強く支持し、そうすることによって「世界の指導者」になろうとする自らの立場を強化する一方、プーチン大統領と手を組んで欧米と対抗しようと考えていたのである。 
 しかし、実際にプーチン大統領とロシアが、「特別軍事行動」という戦争に踏み切ってみたところ、ウクライナの強い抵抗に遭って戦争は頓挫し、ロシアの軍事大国としての威信と地位は大きく傷つけられた。 
 加えて、ロシアは欧米から厳しい制裁を受けて、孤立し経済も破綻する道へ向かっている。  これだけでも、世界に対するプーチン大統領とロシアの立場は大変弱まってきていることは明々白々な事実であるが、間が悪いことに、9月15日の中露首脳会談の直前、ウクライナ軍の大挙反撃によってロシア軍が大敗退を喫し、戦争全体におけるロシアの敗北が近づいてきていることを大きく印象付けてしまっていた。 
 中露首脳会談が開催された9月15日には、ロシアはもはや世界屈指の軍事大国でもなければ、プーチン大統領はもはや世界から恐れられる強い指導者でもない。ブーチン大統領とロシアは、破滅する運命から逃れるためには習主席に泣きついて中国からのあらゆる支援を求めなければならない哀れの立場に、完全に立たされているのである。

わざと世界に距離感を見せつけたのか
 習主席の立場からすれば、転落し始めたロシアの利用価値はそもそも半減しているし、今更プーチンという負け馬に乗っても大したメリットはない。
  逆に、プーチンのロシアとの今までの緊密関係をそのまま継続していけば、あるいはプーチン大統領を助けるために軍事援助を含めたロシア支援を白昼堂々と行っていれば、西側主要国からの厳しい制裁にさらされるだけでなく、プーチン政権が何らかの理由で潰れた時、習近平の中国こそは自由世界全体にとっての不倶戴天の大敵となり、ロシアの二の舞になりかねない。 
 こうした中で習主席はむしろ、プーチン大統領との会談を利用してロシアとの距離感をわざと西側と世界に示して見せた感がある。
  だが、その一方、ロシアの利用価値は完全に失われたわけではない。習主席は一応、「我々はロシアとともに、変動する世界を発展へと導く主導的な役割を果たす用意がある」と語り、ロシアと連携して欧米と対抗するそぶりを見せている。つまり中国は、ロシアとは距離を置きながら、外交カードを捨てようともしないのである。 
 プーチン大統領は習主席との会談において、台湾問題について「ロシアが一つの中国の原則を堅持し、アメリカとその陣営による挑発を非難する」とまで言って、習主席の一番痒いところを掻いて精一杯のリップサービスをしてあげたのに、習主席の口からは「ロシア支援」の一言を取り付けることもできない。 
 しかしそれでもブーチン大統領は、「中国のバランスの取れた姿勢を高く評価する」と言って習主席との「盟友関係」を何とかして今後に繋げていくしかない。もちろん、もしプーチンは今の難局を乗り越えて再び有利な立場に立っていれば、習主席の裏切りに報復してくるとも限らない。
  結局のところ、完全な利害損得の打算に基づく悪党同士の「友情」とはこの程度のものでしかない。だからこそ中露の間には相互信頼に基づく同盟関係は成り立たない。「中露関係が動揺しない」というプーチンと習近平の言い分とは裏腹に、中露関係はいつ経っても流動的なものであって脆弱なものなのである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 9月14日から16日にかけてウズベキスタンにて開催の上海協力機構首脳会議にプーチン氏と習近平氏とが出席して今年北京五輪開会式以来の再会を果たした。その様子を石 平氏(評論家)が引用記事通りに分析し論評した。
 まさに落魄の身になったプーチン氏を冷ややかに見詰める習近平氏と中央アジア諸国の首脳たちの顔が目に浮かぶようだ。すべてはウクライナ戦争が捗々しくないどころか、敗退を続けている戦況がプーチン氏のすべてを現わしている。

 プーチン氏は縋るような思いで習近平氏と会談したのだろう。しかし習近平氏は積極的な支援を示すことはなかったようだ。石平氏は二人の会談を「結局のところ、完全な利害損得の打算に基づく悪党同士の「友情」とはこの程度のものでしかない」と冷淡に突き放している。
 そして「中露の間には相互信頼に基づく同盟関係は成り立たない。「中露関係が動揺しない」というプーチンと習近平の言い分とは裏腹に、中露関係はいつまで経っても流動的なものであって脆弱なものなのである」と、中露関係が愛憎相半ばしている状態であると見ている。

 ただ習近平氏が来月16日から彼の三期目の続投を決める全人代を控えた重要な時期に北京を留守にしたのは意味深だ。既に続投が盤石なものになっているのだろうか。いや、そうとは思えない。なぜなら中国経済が崩壊の坂道を転がり落ちているからだ。
 これまで必死で維持していた「元」レート「1ドル7元以上」が崩れて「元」安になっている。それは何を意味するのか、中国の輸入コストが上昇することでしかない。しかし中国内の物価高騰を抑えるために市中金利の引き下げを行うしかないし、不動産投資を刺激するためにも不動産ローンの引き下げを実施している。それらは「元」安に作用する。

 しかも中国から外国企業の撤退が止まらない。アップルも生産拠点を中国から一部東南アジアへ移し、他の主要部分は米国へ回帰させることにしている。韓国も中国で生産していた半導体部門を米国の半導体規制法に従って、韓国へ回帰させなければならなくなっている。
 そうすると中国で台湾企業の存在感がますます高まることになる。現在ですら台湾企業の割合は実に4割に達している。つまり中国経済にとって台湾企業は必要不可欠の存在になっているのだ。習近平氏が台湾統一を叫んでいるが、いかに荒唐無稽な絵空事がお解りだろうか。

 中央アジアの「~スタン」諸国は没落するロシアの桎梏から離れて、「~スタン」諸国の独自の歴史を刻み始める。それをロシアの影響力が落ちて混乱に陥ると見るのか、真の独立国家への歩みを始めると見るのか、意見の分かれるところだ。
 いずれにせよ、中央アジアのコントロールはロシアの手から離れる。中国は中央アジア諸国への影響力を強めるのにロシアの顔色を窺う必要がなくなった。しかし同時に「~スタン」諸国がウィグル人と同じイスラム教徒であることを気にせざるをえなくなる。中央アジア諸国が独立国としてのアイデンティティーを確立するに従って、中国は中央アジア諸国の慰撫にこれまで以上に気を使うようになるだろう。そしてナショナリズムが高まるにつれて、ウィグル同胞の悲惨さに対中批判の目を向けることになるだろう。日本ではアベノフタが取れて統一教会の闇や五輪の闇が暴かれているが、中央アジアでプーチンノフタが取れて「~スタン」諸国が真の独立を目指すようになるだろう。

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