崩壊する中国経済に援助の手を差し伸べてはならない。

10年前の国交正常化40周年の記念イベントは「尖閣諸島国有化」で吹き飛ぶ
 当初は岸田首相が、安倍晋三元首相の国葬を9月27日に設定したことから、その2日後に大きな日中間のイベントはないと目されていた。国葬には世界中からVIPが来日するので、首相や外相が2日後に北京に飛ぶというのは不可能だからだ。
 また中国側は、私の得た情報では、王岐山(おう・きざん)国家副主席を、安倍元首相の国葬に派遣する予定でいる。そのため、国葬の2日後に習近平主席や王毅(おう・き)国務委員兼外相が来日するということは考えにくい。というより、第20回中国共産党大会が間近に迫っていて、中国側にもそのような余裕はない。そのため、王岐山副主席の訪日をもって、50周年のイベントにしようとしているかに見えた。

 実は10年前の国交正常化40周年の時も、日中は「イベント」を巡って揺れた。その前年の2011年3月11日の東日本大震災では、中国人はまるで自国で起きた災害のように、日本を気遣った。胡錦濤(こ・きんとう)国家主席(当時)は、真っ先に北京の日本大使館に弔問に駆けつけた。私は当時、北京に住んでいたので、当時の日中友好の様子を、身をもって体験している。
 だが40周年の2012年に入ると、2月に名古屋の河村たかし市長が、友好都市・南京からの訪問団に対して「南京大虐殺はなかった」と発言。4月には石原慎太郎都知事が「尖閣諸島都有化」を宣言し、この辺りから雲行きが怪しくなってきた。北京の中国日本商会の会合では、非公式に在留日本人の安全注意が呼びかけられていた。
 それでも「親日政権」だった胡錦濤政権は、9月27日に北京の人民大会堂で、盛大な40周年記念式典を準備した。野田佳彦首相も北京への訪問すを考えていた。
 ところが当の野田首相が、9月11日に尖閣諸島を国有化したために、中国は「日本による9・11事件」と猛反発。全国110カ所で大規模な反日デモが起こり、人民大会堂のイベントなど吹っ飛んでしまった。そればかりか、江沢民(こう・たくみん)グループは胡錦濤政権を「親日政権」と攻撃し、日本に強硬な習近平体制を誕生させた。

「総書記留任」の条件は経済のV字回復
 日本にとって、ややこしいことが一つある。それは、日中国交正常化の節目と、中国共産大会の10年に一度の総書記交代の節目とが重なっていることだ。前者は西暦で末尾が「2」の年の9月29日であり、後者は同年の秋だ。そのため中国で、日中関係の状況と、共産党大会の人事や方針が、互いに影響を及ぼし合ってしまうのだ。10年前に起きたことは、その典型である。
 ところが今年は、逆にいい意味で影響を与えた可能性がある。それは中国が、「総書記交代」ではなく「総書記留任」の年に当たったからだ。
 8月1日から15日まで、「中南海」(北京の最高幹部の職住地)の主な面々の消息が途絶えた。秋に控えた第20回中国共産党大会で決議する人事と方針について、習近平総書記ら現役執行部と、すでに引退した長老(元幹部)とが、意見の擦り合わせを行ったものと思われる。
 すべてはブラックボックスなので結果は不明だが、8月16日以降の中国幹部たちの動向や発言、それに『人民日報』、新華社、CCTV(中国中央広播電視総台)など官製メディアの報道から類推するに、大枠次のようなことではないか。
 すなわち、習近平総書記の留任(2期10年を終えて通例通り引退せず、異例の3期目を続けること)は承認された。ただし条件がついて、それは中国経済を「V字回復」させることだ。

林・王毅の外相会談キャンセルからの急転回
 中国経済は、習近平総書記が固執する極端なゼロコロナ政策などによって、第2四半期に0.4%まで成長率が落ち込んだ。若年層(16歳~24歳)の失業率は7月に、過去最高の19.9%までハネ上がり、7月に卒業した1076万人の大学生は、「畢業就是失業」(卒業すなわち失業)と自嘲気味に言っている。
 経済をV字回復させるためには、鄧小平(とう・しょうへい)軍事委主席が提唱し、推進した「改革開放政策」を、本気で推進していくしかない。そのためには、特に周辺国との関係を宥和的にして、外資を導入し、貿易を活発化させていかねばならない。
 というわけで、にわかに「対日微笑外交」に転換したのだろう。8月17日、秋庭剛男国家安全保障局長が突然、天津に赴いて、中国外交トップの楊潔篪(よう・けつち)党中央政治局委員兼中央外事活動委員会弁公室主任と、第9回日中ハイレベル政治対話を行った。8月4日、カンボジアのプノンペンで予定されていた林芳正外相と王毅国務委員兼外相の日中外相会談を、中国側が開催の数時間前にキャンセルしたばかりなので、中国側に突然の「方針転換」があったものと思われる。

中国の本音は「日本とは関係改善したいが、台湾問題への口出しはならず」
 天津会談は7時間に及んだが、中国側の報道からは、50周年を機に日中関係を改善したいという中国側の意思がありありと見える。ただしその条件は、「日本が台湾問題に干渉しないこと」である。
<台湾は中国領土の不可分の一部分である。台湾問題は中日関係の政治的基礎であり、両国間の基本的信義である>(8月18日付新華社)
<このところ、中日関係は少なからぬ風波を経験したが、主要な理由は、日本の対中政策が目に見えて消極化したこと、特に台湾問題で一部の悪辣な言行があったことだった。例えば最近のペロシが訪台を強行した後の(日本側の)態度は、中国国民の対日観を著しく悪化させた>(8月18日付『環球時報』)
 これらは、例えば9月27日の国葬に台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統を呼ばないことや、日本が台湾やアメリカと組んで「半導体包囲網」を敷かないことなどが含まれているものと思われる。
 習近平主席が毛沢東主席を崇拝していることはよく知られているが、50年前に日本との国交正常化を果たしたのは、毛沢東政権である。また、日本側は田中角栄政権だったが、実際に汗をかいたのは大平正芳外相であり、大平が率いた宏池会を引き継いでいるのが、岸田首相や林外相だ。
 その意味で、日中双方に50周年イベントとして、日中オンライン首脳会談を開く機運は高まっていると言える>(以上「JB press」より引用)




 対中政策でハニトラ・林外相と親中派・岸田首相のコンビが反日・売国政治を展開しないか心配だ。JB press氏は「中国が対日姿勢を急転換か、急浮上した岸田・習近平オンライン会談の可能性」(上記引用記事の標題)と燥いでいるが、中国が日本に微笑みかける時は腹に一物ある時だ。決して油断してはならない。
 カンボジアのプノンペンで予定されていた林芳正外相と王毅国務委員兼外相の日中外相会談を、中国側が開催の数時間前にキャンセルしたのは8月4日だった。8月4日から現在までの間に何があって中国の態度が豹変したのだろうか。その間の主な出来事といえばペロシ氏の訪台と、それに続く米国連邦議員5人の訪台、及び北戴河会議があった。そして中国政府の対日「方針転換」がなされた。

 習近平氏の対日方針が変わった大きな要因は北戴河会議ではないかと思われる。北戴河会議の内容は一切表に出て来ていないが、想像できることとして引用記事は「習近平総書記の留任(2期10年を終えて通例通り引退せず、異例の3期目を続けること)は承認された。ただし条件がついて、それは中国経済を「V字回復」させることだ」と伝えている。
 しかし経済をV字回復するには外国との関係を改善しなければならない。経済回復のカンフル剤は何よりも外国投資だ。そして撤退する外国企業を中国内に呼び戻すことだ。輸出を拡大して、国際通貨・ドルを獲得することだ。しかし習近平氏が始めた「戦狼外交」では、それらは覚束ない。

 しかし日中関係を改善することは日本が譲歩することではない。JB press紙では「10年前の国交正常化40周年の記念イベントは「尖閣諸島国有化」で吹き飛ぶ」と、恰も日中関係を悪化させた責任は日本側にあるかのような書き方をしている。なぜ日本政府が「尖閣諸島国有化」に踏み切ったのか。その経緯を思い出して頂きたい。
 まず尖閣諸島海域に中国公船が頻繁に姿を現しだした。それに危機感を覚えた東京都知事・石原慎太郎氏が尖閣諸島を東京都が買い取ると決めて寄付金を募った。すると14億円以上の浄財が集まり、東京都が買い取る勢いとなった。そこで政府が慌てて「国有化」に踏み切った。そうした経緯を無視して「10年前の国交正常化40周年の記念イベントは「尖閣諸島国有化」で吹き飛ぶ」という表題を付けるのには、日中関係悪化の本質を見失わせる悪意すら感じさせる。

 記事にある「8月17日、秋庭剛男国家安全保障局長が突然、天津に赴いて、中国外交トップの楊潔篪(よう・けつち)党中央政治局委員兼中央外事活動委員会弁公室主任と、第9回日中ハイレベル政治対話を行った。8月4日、カンボジアのプノンペンで予定されていた林芳正外相と王毅国務委員兼外相の日中外相会談を、中国側が開催の数時間前にキャンセルしたばかりなので、中国側に突然の「方針転換」があったものと思われる」という点こそが、今後の日中関係のあり方のカギがある。
 おそらく北戴河会議で習近平氏は今後5年も政権を維持したいのなら経済を何とかしろ、と長老たちから釘を刺されたに違いない。経済を何とかするためには貿易相手国第一位の米国と、実質第二位の日本との関係改善に動かなければならない。「改革開放」で中国に積極的に投資したのは日米だ。中国経済にとって日米の協力は欠かせないし、台湾の半導体の最先端製造技術も欠かせない。台湾を攻め盗ることは金の卵を産む鶏を殺すことに他ならない。

 中国経済の急落振りは酷いものだ。次々と発表された今年上半期の各企業収益は軒並み半減している。中国国内航空は470億元(9150億円)の赤字を計上した。アリババは対前年比-53%だし、ファーウェイは-52%、テンセントは-56%と惨憺たるものだ。その陰でアリババは1万3616人を解雇している。
 その反面、消費者物価は10%近い高騰を見せている。中国経済は最悪の景気後退期のインフレという状態に陥っている。今後貿易収支の悪化から元為替相場が下落すれば、元安インフレまでが消費者物価を直撃することになる。

 中共当局は景気刺激策として金利引き下げと金融拡大策を打ち出しているが、資金を借りて起業する意欲すら弱気で当局の経済策は空振りに終わっている。だから「困った時の日本頼み」に方針を切り替えたのだろう。
 しかし日本政府は決して甘い顔をしてはならない。何度も煮え湯を飲まされてきた過去を忘れてはならない。中国経済の凋落は日本の安全保障にプラスだ。中国の経済拡大が異常な軍拡をもたらし、日本への脅威を拡大した因果関係を肝に銘じておくべきだ。そして「一つの中国」とは中国語圏の各地域が仲良くする、という意味ではないのか、と中共政府のスローガンを再確認することだ。「一つの中国」が台湾侵略を意味する、と中共政府が説明したなら、今度こそ日本政府は「そうした意味での「一つの中国」は容認できない」と返答して、いかなる国であれ軍事力による国境線の変更は認められない、と国際的な原則を繰り返すことだ。

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