「政治家のレヘルは決して国民(有権者)のレベルを超えない」とは、けだし箴言だ。

＜兵庫県尼崎市の全市民約46万人の個人情報が入ったUSBメモリーが一時紛失した問題で、市から業務委託を受けた情報システム大手「BIPROGY（ビプロジー）」は26日、メモリーを紛失したのを「協力会社の社員」と説明してきたのが、「協力会社の委託先の社員」の誤りだったと発表した。

　BIPROGYは24日の記者会見で、紛失したのは協力会社の40代男性社員だったと、企業名も挙げた上で説明していた。BIPROGYは「協力会社から聞き取る中で認識を誤った」としている。

 　BIPROGYによると、尼崎市との契約書では、業務の一部を委託する際は市の許可を取ると記載していた。BIPROGYが今回の業務を協力会社に委託し、協力会社がさらに別の会社に委託していたことについて尼崎市は「紛失発覚後に初めて知った」と説明している。

 　USBメモリーは21日、データ移管作業後にUSBメモリーを持ったままBIPROGY関西支社の社員と大阪府吹田市内で飲酒した男性が、帰宅時に路上で寝込んでかばんごと紛失。24日に同市内で見つかった。メモリーには約46万人分の名前、住所、生年月日のほか、住民税額や、児童手当と生活保護の受給世帯の口座情報などが入っていた＞(以上「朝日新聞」より引用)

　官の民間委託がすべて悪いとはいわないが、市民が知らぬ間に役場の業務の多くが民間委託になっている。それで行政経費が削減され、効率化されているのなら民間委託をとやかくいわない。しかし業務を民間委託しても役場の職員数が削減されたとの話は聞かないし、削減されたと思ったら正職員を削減して派遣職員を大量導入しているなど、と公的機関の本質を逸脱してはいないかと不安になる。

　果たして尼崎市で「全市民約46万人の個人情報が入ったUSBメモリーが一時紛失した」不祥事があったが、それは市から業務委託を受けた情報システム大手「BIPROGY（ビプロジー）」が今回の業務を協力会社に委託し、協力会社がさらに別の会社に委託していたことから情報管理の不備が露呈したものだ。

　事件の顛末は「データ移管作業後にUSBメモリーを持ったままBIPROGY関西支社の社員と大阪府吹田市内で飲酒した男性が、帰宅時に路上で寝込んでかばんごと紛失」したというのだからお粗末そのものだ。USBメモリーは当該業務終了後に直ちに中身を消去することになっていたという。なぜ件の社員は大事な作業手順を実施しなかったのだろうか。

　いや、そもそも役場から市民の情報を持ち出さなければ出来ない仕事なのか。市の職員が直接作業を行う現場社員に公式メールでやり取りすれば簡単に済む話ではないか。市民の個人情報漏洩など役場の職員と業務委託先の社員が守秘義務を履行していればありようがない。

　さらに問題なのはBIPROGYが大手か何か知らないが、BIPROGYが請け負った仕事を下請けに回していたとは何事だろうか。近年の官公庁の仕事にはこの手の話が多すぎはしないか。

　コロナ禍の給付金で地方自治体の多くが支給作業を外注委託したり、給付金の審査窓口などに派遣社員を大量採用したり、官公庁の職員の姿は何処にあるのだろうか。私の暮らす市は緑地公園の維持管理業務などを19年間97億円余で民間企業に委託する「議決」の真っ最中だ。何と云うことだろうか、民間企業は利益が出なければ企業経営が成り立たない。だから民間企業の利益を上乗せした「委託費」でしかない、という簡単な原理が市民や議会議員諸氏には解らないのだろうか。そして緑地公園管理担当職員は不要になるはずだが、彼らの配置転換や待遇はどうなるのだろうか。

　それとも公務員の職務は「外注委託伝票の作成」に限定されたとでもいうのだろうか。実際に職員が鎌や草刈り機を手にして公園整備している姿を見ることは絶えてないが、それで市民に快適で安心な公園のあり方が分かるのだろうか。

　公園だけではない。公営住宅の維持・管理まで民間企業に委託しているというから驚きだ。それで公園住宅に空きがあっても、なかなか入居させないのかと納得した。しかも公営住宅課も担当者も役所にいて、実際の業務は民間企業に「委託」しているというのだからワケが分からない。そうした委託業務契約が議会で議決を経ているのだから恐れ入る。市民が監視していないと、役場は何を仕出かすか解らないし、議会も選挙に長けた無能集団の談話の場に堕している。まさに今、参議院選挙真っ盛りだが、選挙に長けた連中に目を奪われてタレント・ゴッコの国会にしてしまっては税金の無駄遣いになるのだが、政治家のレヘルは決して国民(有権者)のレベルを超えないといわれている。