侵略戦争の実態を知らない日本国民は無責任な発言をすべきではない。

<2022年3月14日に放送されたラジオ番組「垣花正 あなたとハッピー!」(ニッポン放送)で、ロシア軍のウクライナ侵攻に関して、テレビプロデューサーでタレントのテリー伊藤さんとウクライナ人のオクサーナ・ピスクノーワさんが口論する形になる場面があった。 

「ウクライナが戦わないで、そのまま殺されていいのかってことですか?」
  番組では、日本在住で通訳をしているウクライナ人のオクサーナさんと電話を繋ぎ、ロシア軍のウクライナ侵攻に対する思いを聞いた。
  オクサーナさんには、ウクライナの人々は「祖国を守らなければ」という気持ちだけでなく「全世界のために」という覚悟を持って戦っているとした。
  テリーさんは、 「聞きたいんですけども、もちろん祖国のため、世界のためってお話ししてくれたんですけど、命ということがありますよね。状況としては、ウクライナに厳しいと思うんです私。このまま行くと、プーチンのことですから、さらに攻撃をするってことは民間人の死者がどんどん増えていくってことが現実になっていく時、私はそれは一番いけないことだと思うんですよね。(命を落とすことをいとわないという考え方は)避けたい」 との考えを示した。その上で「この戦争は5年10年20年と続きます。ですから今は、国民は一度安全な場所に移動してもう一度立て直す、という考え方はどうなんでしょうか」と問いかけた。
  オクサーナさんは、 「テリーさんのおっしゃっていることがよく分からないんです。避難できる人はしています。別に、ちっちゃい子供やお年寄りが戦っているわけではないです。避難できた人は避難できています。できない地域もありますけど。ウクライナが戦わないで、そのまま殺されていいのかってことですか? 何の抵抗もしないで。まるでウクライナが戦争を続けたくて続けているような言い方にしか聞こえないんです」 と憤った。

「ウクライナを見捨てたら次はポーランドです」
 祖国を守りたいという「気持ちは分かる」とするも「抵抗することによってウクライナの方が亡くなる可能性が多いじゃないですか」と話すテリーさんに対し、オクサーナさんは「抵抗しないで降参すればいいってことですか?」と尋ねた。 
 テリーさんは「方法論はいくつかあると思うんですよ。たとえば、大統領が本当に今みたいに戦えと国民を鼓舞することは、正義としては正しい」としつつ「一般の方が死んでいくのは忍びない」とした。
  オクサーナさんは「私たちは大統領の命令で動いているわけではないんです。大統領の名前が誰であろうと、ウクライナは変わらないんです。独裁国家じゃないので、我々は民主主義を大事にしている国民なんです」として、ウクライナに対する誤解があるとした。
  テリーさんが「ウクライナはどうなっていくと思います?」と質問したのに対し、オクサーナさんは、「西側にあるウクライナの施設が攻撃されたという話がありましたけど、そこはポーランドの国境と25キロくらいしか離れてないんです。そう考えたら次はポーランドに行きます。次はどこどこの国にロシアが行きます。それで西側が止めないと大戦になります。そうやってウクライナを見捨てたら次はポーランドです」と答えた。
  これにテリーさんは「見捨てるつもりなんかないんですよ。ウクライナの人たちの命を助けたいんですよ」と強調した。

「ウクライナは勝てませんよ」「無駄死にしてほしくない」
 その後、オクサーナさんは「みなさんが分かってないのは、ウクライナ人が抵抗していなかったら、ウクライナという国がなくなります」と述べた。するとテリーさんは、「それは分かりますよ。じゃあ抵抗して、たぶん今リアルな状況だと、ウクライナは勝てませんよ」「今この状態で、ウクライナの人がロシアのプーチンの無駄死にしてほしくないんですよ」と切り込んだ。 
 オクサーナさんは呆れたような様子で「次は日本が頑張ってください。日本とロシアの戦争になりますよ。私たちは死んでもいいから」と応じた。「死なせたくないから言っているんです」とするテリーさんに、オクサーナさんは「死なせたくなければ、日本も含めていろんな国々が何らかのアクションを起こすべきでしょう」と反論した。 
 これにテリーさんは「でも、現実問題として日本も(戦力などを)出せない、中国は当然出さない、アメリカだって第3次世界大戦は絶対にしないとバイデン大統領は言っている」「経済的な制裁はするけど、武力的なことはしないと思うんですよ」との考え。対してオクサーナさんが「武力的なことはしなくていいです。経済的なことをすればいいじゃないですか」と応じると、テリーさんは「経済制裁は効いてくるのが5年10年後ですよ」「経済制裁をしたからと言って、プーチンが逆に尻尾巻いて逃げますか? 経済制裁をすればするほど彼は逆にウクライナを攻めてきます」と主張した。 
 「降参するっていうことですね、よくわかりました、はい」と呆れた様子のオクサーナさんに、パーソナリティの垣花アナウンサーは「降参ということを我々が推奨しているわけではなくて、テリーさんの考え方も僕の考え方もラジオを聞いている方の考え方も違うし、オクサーナさんが仰っていることも、ましてやオクサーナさんが一番辛い立場にあることも分かった上で、こうしてご出演いただいているのに、大変失礼な発言もあったかもしれません」と話していた>(以上「J-cast news」より引用)




 日本にテリー伊藤氏や橋下氏などと同意見の人がいることに驚く。彼らはウクライナ人が全員ウクライナから逃げれば戦死者はいない、というのだ。
 明日にもヤクザが団体で押しかけてきて「この街は俺たちのものにするから、住民は全員出て行け」と命令されたら、黙って空け渡すのと何ら変わらない。テリー氏や橋下氏の家へ押しかけて「出て行け、この家は俺のモノだ」と叫んだら彼らはスゴスゴと出て行く、という。

 ちなみに、世界の国の場合には秩序を取り締まる警察官はいないから、警察署に駆け込むことは出来ない。もちろん世界各国の場合に自衛隊もいない。国家を護るのは国民だけだ。
 まさにウクライナの地にロシアが戦車を先頭に進軍してきた。それに国民が抵抗しなければ祖国はロシアのものになる。それでもテリー氏や橋下氏は「国民よ逃げろ」というのか。日本がウクライナと同様に他国から侵略されれば、私は志願して祖国のために戦うだろう。決して祖国から逃げれば死なない、という道は選択しない。

 引用した記事の中で「テリーさんは「経済制裁は効いてくるのが5年10年後ですよ」「経済制裁をしたからと言って、プーチンが逆に尻尾巻いて逃げますか? 経済制裁をすればするほど彼は逆にウクライナを攻めてきます」と主張した」という。テリー氏は経済学に関していかなる知見を有しているのだろうか。経済制裁が効くのは5年10年後とは、馬鹿丸出しではないか。
 明日にもロシアはデフォルトする。それは国家破綻だ。国際的な貿易がすべて止まる、ということだ。評論家の中には「ロシアは食糧自給率100%で資源も豊富だから経済制裁は聞かない」などと能天気な発言をする御仁がいる。食糧自給率は 100%かも知れないが、国民個々人の食糧自給率が100%ではない。つまりロシア国内でも食糧は偏在している。国家統制で農民から食糧をすべて取り上げて国民に等しく分配するなら飢え死にする国民は皆無かも知れない。しかし国家統制で食糧が等しく分配される保障など何処にもない。

 民主主義国家よりも、社会主義や独裁専制主義国家ほど腐敗している。中国が「袖の下社会」であることを見れば明らかではないか。ロシアも同様だ。「権力は腐敗する、絶対権力は絶対的に腐敗する」とは、けだし箴言だ。
 地下資源は豊富かも知れないが、国際石油メジャーがロシアから撤退して掘削や新規油田開発は出来ない。オリガルヒも経済制裁の巻き添えを喰らう前に早々と祖国を捨てた。富裕層もフィンランド行きの列車に飛び乗ってロシアを後にしている。

 ロシアの富裕層トップ70人の資産が下位50%の国民の総資産に等しい。ロシアは想像を絶するほどの格差社会だ。富裕層のトップが抜けたロシア国民は中位以下の貧困層ばかりだ。今後プーチン氏が統治するのは中間層以下の国際的な基準に照らせば貧困層の国民だ。
 ウクライナ人が国を捨てて去れば、ロシア人が大勢押し寄せてウクライナはクリミア半島化する。入植して、その地をロシア化するのはロシア人の常套手段だ。ウクライナに残ったウクライナ人はロシア政権下で酷い扱いを受けるだろう。中国のウィグル人たちがいかなる境遇にあるか、見れば明らかだ。それは有史以来単一民族で来た日本人には理解し難い残酷さだ。オクサーナ氏の悲痛な叫びは能天気なテリー氏には理解できないようだ。

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