緊急事態で政府・厚労省かうつ具体策は何か。

＜菅義偉首相は23日夜、首相官邸で記者会見し、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に発令を決定した緊急事態宣言について、「大阪、兵庫はステージ4でも高い水準にあり、医療提供体制はこれまでになく厳しい状況だ。東京、京都でも感染者数の増加ペースが日増しに高まり、ステージ4の水準に至った」と説明し、変異株の拡大を含めた感染状況への懸念を示した。

　首相は「このまま手をこまねいていれば大都市の感染拡大が国全体に広がることが危惧される。宣言を出し、ゴールデンウイークという多くの人が休みに入る機会をとらえ、短期間に対策を集中して実施することでウイルスの勢いを抑え込む必要があると判断した」とも述べ、短期集中での対策の必要性を強調した＞(以上「毎日新聞」より引用)

　菅氏が三回目の緊急事態宣言を発出したが、その会見で「短期集中での対策の必要性を強調した」そうだが、何かおかしくないだろうか。「短期集中での対策」は政府・厚労省が示すべきで「必要性を強調」するのではなく、具体策を提示して国民の協力を求めるべきではないか。

　つまり、政府・厚労省に緊急事態宣言を出しても、具体的な対策は皆無で、何となく「自粛」範囲の拡大を求めるだけで糊塗してきたことの繰り返しではないか。それでは感染減少は予想されても、完全終息には到らない。従って、緊急事態を解除すればまたまた感染拡大を招くだろう。

　今次の感染拡大は変異種が主役になる。そうすると病院の対応は繁雑を極める。従来のウィルス感染患者に変異種のウィルスが感染してはならないから、医師や看護師は感染したウィルスの異なる患者ごとに防護服を着替えて消毒し、新たな防護服に身を包んで異なるウィルスに感染した患者の治療に当たる、という感染防止に細心の注意をして対応しなければならない。

　そうした医療従事者の過重な負担がかかっていることを政府・厚労省はご存知なのだろうか。それなら、なぜ変異種のすべてが海外から日本へ入っているのか、その原因と対策はどうなっているのかを検討したのだろうか。そうした報道が全くないのは何故だろうか。

　日本の防疫体制はザルそのものだ。全国各地で世界中の変異種ウィルスが見つかっていることに驚愕する。インドで見つかった変異種の二重感染まで国内で見つかっているではないか。こうした事態に全国国際空港の防疫体制を再点検するか、あるいは全く異なる防疫体制に切り替えるか、を政府は「緊急事態管理室(そうした部署すら政府・官邸にないとしたら、それこそ菅自公政権は能天気だ)」検討に入るべきだ。

　政府・厚労省は現行の防疫体制「海外から空路で日本へやって来る場合は72時間以前にPCR検査を受けて陰性判断を受けた者であること」などの防疫基準が役になっていない現実を反省すべきだ。そして現行の防疫基準を見直すか、あるいは一定期間すべての対外空路を閉鎖するくらいの強硬措置を講じて、その間にしっかりとした防疫体制を組み直すべきではないか。

　海外からの変異種の感染を防ぐ一方で、国内では「検査と隔離」を徹底するしかない。このブログで提案した地域検査(流域下水道の検査で地域に陽性患者がいるかどうかを判定する)を実施しないことは、既に日本全国に感染が蔓延していて、そうした下水流域検査を実施したなら全国殆どすべての下水流域が陽性となって、国民が混乱と不安に陥るから実施しないとしか思えない。検査しなければ陽性患者はいない、ということに出来るではないか。

　しかし、それでは感染拡大を防げない。問題なのは症状の出ない感染患者がいることだ。彼ら自身は無症状でも感染能力を持っている。彼らと接触した者は感染する可能性がある。だからこそ、陽性患者をすべて見つけ出して隔離するしかない。そうしない限り、モグラ叩きゲームと同じだ。穴から出たモグラを叩くのではなく、穴の下の地下を移動するモグラを根絶しなければならない。

　そうした具体策もなく、菅氏はテレビに無能・無策の醜態をさらして会見した。しかして緊急事態を東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に発出した。だが、これでは全く効果はない。なぜなら人は行政区域に関係なく動くし、空港の防疫体制も一新されないわけだから、今後とも日本が世界中の変異種のデパートになるだろう。

　そして政府・厚労省が海外ワクチン製造企業に手配したワクチンの輸入は遅れに遅れる。国内ワクチン製造各社に督励や補助金支出もなく、米国の企業に頼りっきりになるのは何故だろうか。貿易黒字解消のため、と解説するバカな評論家がいるが、菅自公政権が国民の命と貿易収支を秤にかけているとしたら、それこそ大事件だ。