裁判官及び検察官は罪を問い、人の罪を裁く。一般の公務員よりも高い「規範」と「信頼」が求められる。

賭けマージャンで東京高検検事長を辞職した黒川弘務氏の訓告処分を決めたのは、だれだったのか――。安倍晋三首相は官邸が判断したという指摘を否定するが、森雅子法相が食い違う答弁をするなど迷走が続く。法務省に信頼回復のための「刷新会議」を置き、批判をかわそうと必死だが、疑念を解消するのは容易ではない。
 26日の参院厚生労働委員会で、立憲民主党の石橋通宏氏は首相に「どちらかが本当で、どちらかがウソだ」と迫った。しかし、首相は淡々と「検事総長において訓告が相当であると判断して処分した」と従来の答弁を繰り返した。
 緊急事態宣言中に産経新聞記者や朝日新聞社員と賭けマージャンをした黒川氏の処分について、首相と森氏が22日の時点で食い違う答弁をしていたからだ。黒川氏の訓告処分は国家公務員法の懲戒処分ではなく、検事総長による監督上の措置。「軽すぎる」「甘すぎる」と批判される処分をだれが判断したのか、と追及の対象となっていた。
 首相は同日の衆院厚労委で「検事総長が適切、適正に処分を行った。それを受けて、私は了承した」と答弁。処分を決めたのは法務・検察で、自らは報告を受けただけと強調。一方、森氏は同日の記者会見で「法務省内、内閣と様々協議を行った。この過程で、私は色々な意見も申し上げたが、最終的には内閣で決定された」と述べ、決定過程で、首相官邸と協議を行ったことを事実上認める内容だった。「最終的に内閣で決定されたものを、私が検事総長に『こういった処分が相当ではないか』と申し上げ、検事総長から訓告処分にするという知らせを受けた」とも語った。
 その後、法務省が懲戒処分の「戒告」が相当と意見したが、官邸との協議を受けて、より軽い「訓告」になったことが報じられた。批判の矛先が官邸に向く状況になり、森氏の答弁も変化していった>(以上「朝日新聞」より引用)



 裁判官・検察官も一般公務員と同じ「規範」で良いのだろうか。それでは一般公務員が「賭けマージャン」で告発されたならどうなるのか。もちろん「停職」だけでは済まない。「懲戒罰」に相当すべき指針を人事院が「別紙」に仔細に示している。
別紙
 
懲戒処分の指針
 
第1 基本事項
  本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。
  具体的な処分量定の決定に当たっては、
 ① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
 ② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
 ③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
 ④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
 ⑤ 過去に非違行為を行っているか
 等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
  個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
 ① 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
 ② 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
 ③ 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
 ④ 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
 ⑤ 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
 がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、
 ① 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
 ② 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき
 がある。
  なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。
 
第2 標準例
 1 一般服務関係
  (1) 欠勤
   ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
   イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
   ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
  (2) 遅刻・早退
    勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
  (3) 休暇の虚偽申請
    病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。
  (4) 勤務態度不良
    勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
  (5) 職場内秩序を乱す行為
ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。
  (6) 虚偽報告
    事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
  (7) 違法な職員団体活動
   ア 国家公務員法第98条第2項前段の規定に違反して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をした職員は、減給又は戒告とする。
   イ 国家公務員法第98条第2項後段の規定に違反して同項前段に規定する違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、免職又は停職とする。
  (8) 秘密漏えい
   ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
   イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
  (9) 政治的目的を有する文書の配布
    政治的目的を有する文書を配布した職員は、戒告とする。
  (10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
    営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
  (11) 入札談合等に関与する行為
    国が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行った職員は、免職又は停職とする。
  (12) 個人の秘密情報の目的外収集
    その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。
  (13) 公文書の不適正な取扱い
   ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
   イ 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。
   ウ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
  (14) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)
   ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
   イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
   ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
  (15) パワー・ハラスメント
   ア パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。
   イ パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。
   ウ パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。
 
  (注)(14)及び(15)に関する事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとする。
 
 2 公金官物取扱い関係
  (1) 横領
    公金又は官物を横領した職員は、免職とする。
  (2) 窃取
    公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。
  (3) 詐取
    人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。
  (4) 紛失
    公金又は官物を紛失した職員は、戒告とする。
  (5) 盗難
    重大な過失により公金又は官物の盗難に遭った職員は、戒告とする。
  (6) 官物損壊
    故意に職場において官物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
  (7) 失火
    過失により職場において官物の出火を引き起こした職員は、戒告とする。
  (8) 諸給与の違法支払・不適正受給
    故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。
  (9) 公金官物処理不適正
    自己保管中の公金の流用等公金又は官物の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。
  (10) コンピュータの不適正使用
    職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
 
 3 公務外非行関係
  (1) 放火
    放火をした職員は、免職とする。
  (2) 殺人
    人を殺した職員は、免職とする。
  (3) 傷害
    人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
  (4) 暴行・けんか
    暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
  (5) 器物損壊
    故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
  (6) 横領
   ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。
   イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。
  (7) 窃盗・強盗
   ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
   イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
  (8) 詐欺・恐喝
    人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
  (9) 賭博
   ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
   イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
  (10) 麻薬等の所持等
    麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。
  (11) 酩酊による粗野な言動等
    酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
  (12) 淫行
    18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
  (13) 痴漢行為
    公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
  (14) 盗撮行為
    公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。
 
 4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
  (1) 飲酒運転
   ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
   イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
   ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
  (2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
   ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
   イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
  (3) 飲酒運転以外の交通法規違反
    著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
  (注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。
 
 5 監督責任関係
  (1) 指導監督不適正
    部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
  (2) 非行の隠ぺい、黙認
    部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。


   全項目を引用掲載したが、以上が公務員に関わる「懲戒処分の指針」だ。 断っておくが、これは一般的な公務員の「懲戒処分の指針」だ。冒頭に裁判官・検察官の「懲戒罰」が一般公務員と同等であって良いのか、と提起した。当然、人に罪を問い、人の罪を決する人たちに求められる「規範」は一般の公務員よりも高いものでなければならない。

   黒川氏の場合はどうであろうか。当然ながら「常習性」が問われるが、記者たちと「偶然」に一回だけか、それとも常習的でないと思われるほどだったのか。しかしタレントの蛭子某氏が「賭けマージャン」に興じていたとして逮捕された場合と、今回の場合と何処が異なるというのだろうか。

    (9)項目に「 賭博」とあって、アとイの二項目が規定されている。
   ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
   イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
   しかし検察官が新聞記者たちと「賭けマージャン」に興じていたのが単なる「賭博」行為として捉えて良いのだろうか。むしろ取材対象者と記者の濃厚な接触を禁じている。
西日本新聞に畑仲哲雄・龍谷大教授(ジャーナリズム論)の談話が掲載されている。「取材対象者との接触は、信頼関係の構築と癒着のせめぎ合いになる。権力者と向き合う記者は緊張関係を絶対保たなければならないし、取り込まれないのが大原則。今回は明らかに癒着であり、論外だ」とある。取材対象者と記者との関係は、ことに取材対象者が権力者である場合は慎重でなければならない。

   情報漏洩が疑われてはならない検察の最高幹部が自ら疑わしい「賭けマージャン」を全国紙の記者たちと行っていたことは二重の意味で重大な犯罪だ。断じて「訓告」などで済まされるべきではない。黒川氏に対する行政の府の政府処分は余りに常識を欠くものといわざるを得ない。

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