「スク・ショ」の違法化に反対する。

＜海賊版だと知りながらインターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを罰則付きで禁止する方針について、２５日にあった文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委員会で予定通りに意見がまとまらなかった。刑事罰の対象範囲をもっと絞り込むべきだと反対意見が続出したためだ。文化庁は通常国会に著作権法の改正案を提出する方針を変えていないが、日程的な余裕がないとして小委員会での議論は打ち切りに。今後は委員から個別に聞き取りつつ、意見の取りまとめを目指す異例の事態となった。

　禁止されるのは、ネット上に違法に載せられている著作権を侵害したコンテンツを、海賊版だと確定的に知りながら、パソコンやスマートフォンなどの端末に複製する行為。著作権を侵害しているコンテンツが映った画面を撮影し、メモ代わりに画像として端末に保存する「スクリーンショット」も違法となる。

　有償で売られているコンテンツの海賊版をダウンロードした場合には、懲役２年以下か２００万円以下の罰金もつける方針だった。だが、文化庁が募ったパブリックコメントには５３４件の意見が集まり、ネット利用が萎縮することや刑事罰により捜査で乱用されることを懸念する声が寄せられていた。

　この日の審議で、前田健・神戸大大学院准教授は「多くの国民から疑問や不安の声が寄せられている」と指摘。国民にとって最も重い制裁手段となる刑事罰の重みをふまえ、刑事罰の対象範囲を絞るべきだと主張する意見書を他の４人の委員と連名で提出した。「インターネットに関わる国民の日常的な私生活上の幅広い行為が刑事罰の対象となる。刑事罰の制定には、特に慎重に慎重を重ねた議論が必要」などとつづり、海賊版サイトの利用とは直接関係ない行為にまで刑事罰が及ばないよう求めている＞(以上「朝日新聞」より引用)

　著作権を簡単に侵害できる便利なアプリの一つが「スク・ショ」だ。スクリーン・ショットというアプリはパソコンやスマホの画面をコピーするのに使う。それを描画アプリなどに取り込んで少し手を加えれば「作品」としてネットにアップ出来る。

　そうした行為がネットに掲載された漫画や写真や論文などで頻繁に行われている、と上記朝日新聞の記事は伝えている。だから「スク・ショ」を「違法」として「規制」しようとする動きがあるという。

　確かにこのブログでも「コピー」機能を使って新聞や各種雑誌などの会社がネットに掲載した記事や論評をブログ上に掲載して「評論」している。しかし、ブログ上で他者を批判する時に、その批判の根拠となる記事を掲載することは批判する者の義務ではないだろうか。

　しかし何処までが批判対象の記事で、どこからがブログの意見かを明確にしておくのも「義務」ではないだろうか。だから<>内が引用記事だとして、出典を明確に表示している。それもコピペした者の義務ではないだろうか。

　そうしたルールを取り決めたなら「スク・ショ」を違法と決めつける必要はないだろう。むしろ「スク・ショ」で取り込んだ漫画や写真の出典をクレジットで明確にしておけば著作権者の知的財産を犯すとの批判は免れるのではないだろうか。ただし「コピーを禁ず」と出典者が明記していれば「スク・ショ」や「コピー」を控えるのは当然だ。

　そうした暗黙のルールは既にネット以前から存在している。かつて有名作家が無名な作家の文学作品を「盗作」する事件が何件かあった。丸ごと「盗作」しないまでも、作品の一部に他人の作品の一部を取り込む「コピペ」も事件として新聞紙上を賑わしたことがあった。

　だから常識として引用部分は明確化して出典を明記しておく、というのは作家の創作活動上の作法だった。それは科学論文でも同じだ。他人の研究成果を自身の研究論文に取り込むのは違法ではないが、その取り込んだ部分を明確に表示し、その出典が何時、何に発表された誰の論文かを明確にしておくのも研究者の作法だ。

　ネット上でもそうした作法が守られるなら「スク・ショ」や「コピペ」を違法とする必要はないだろう。当然ながら、そうした作法を守らず、自身の創作作品として「スク・ショ」などでダウンロードした他人の作品をネットに公開したなら「盗作」の誹りを受け、損害賠償の対象になるだろう。

　違法アプリとして「スク・ショ」を禁止するのは賛成できない。便利な機能はドンドン使用すれば良い。ただ「作法」に外れた使い方は嚴に戒められるべきだ。

　「スク・ショ」で取り込んだ自身の創作でない作品を、自身の作品として公開するのは「盗作」であり、犯罪だ。だから悪いのは「スク・ショ」ではなく、他人の作品を自分の作品と偽ってネットに掲載する行為だ。ネット空間は出来るだけ規制のない自由な空間であり続けるべきだ。そのためには利用する者の節度ある作法が必要だ。