加計学園の獣医学部新設で安倍氏が「職務権限」の及ぶことを自白したぞ。

<安倍晋三内閣総理大臣は出先の神戸での新聞社系主催の講演の中で仰天の「決意」を表明したと報道されました。以下、私も郷原信郎さんの指摘で気づいたのですが、これ、アウトです。

 せっかく「総理の口からは言えないから」と、和泉洋人・内閣総理大臣補佐官とか官房副長官とか、様々な人材が陰日なたで動いて努力してきたのに(それ自体、やってはいけないことだと思いますが)、本人自らが全否定してしまったのですから、周りもたまったものではないでしょう。

 つまり、官邸が必死で糊塗してきた「内閣総理大臣は、獣医学部設置認可の問題に一切関わっていないし、具体的に関わる立場ではない」という主張が覆ってしまった。これで終わった、「自爆」と郷原さんは表現しておられました。

 当該部分を引用してみます。

 「獣医学部の新設も半世紀以上守られてきた堅い岩盤に風穴をあけることを優先し、獣医師界からの強い要望をふまえ、まずは1校だけに限定して特区を認めました」

 「しかし、こうした中途半端な妥協が、結果として、国民的な疑念を招く一因となりました。改革推進の立場からは、今治市だけに限定する必要は全くありません」

 「すみやかに全国展開を目指したい。地域に関係なく2校でも3校でも、意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく。国家戦略特区諮問会議で改革を、さらに進めていきたい、前進させていきたいと思います」(http://www.sankei.com/west/news/170624/wst1706240054-n1.htmlから引用)

 これはさすがに成立しないと言わざるを得ないでしょう。

 まず郷原弁護士の指摘を引用しておきます。

 「安倍首相は、『獣医学部新設の認可』に関しては権限を一切行使することも、全く関わることもなく、自分とは全く関係ないところで行われたものだ」と説明し、国会で野党から質問を受ける度に、『自分は関わっていない』『指示したことはない』と関与を否定し、野党の質問自体を『印象操作だ』と言って逆に批判をしてきた」はずでした。

 実際、首相自体が行脚して権限を行使したりはせず、「総理の意向」と官房副長官が言ったとか言わなかったとかいうメモが怪文書扱いされて、そうやって周りが庇ってきたのに、あろうことかご本人様が

 「1校に限定して特区を認めた中途半端な妥協が、結果として国民的な疑念を招く一因となった」

 「今治市だけに限定する必要は全くない。地域に関係なく、2校でも3校でも、意欲あるところにはどんどん新設を認めていく」

 という「総理の意向」を露骨に語ってしまったのですから、将棋で言えばこの時点で詰んでしまいました。さらにその内容は、政策本来の目指すべき方向とほとんど無関係なものになっています。

 「特区の全国展開」と読める内容ですが、限られた財と資源を国家戦略に基づいて「選択」し「集中」するのが特区選定の効用で、「全国展開」となれば「特区」の意味がどれほどあるか、一つひとつの特区に十分な拠点形成が可能であるか、率直に疑わしいと思います。

 また、より明確に指摘するなら、この特区は「しまなみ海道国際交流・ビッグデータ活用拠点」として、スポーツ、観光など様々な分野を対象とするものであるはずです。

 ところが、なぜか最初から「教育」として1点だけ「獣医学系」という「選択」と「集中」があったことは、前回、2015年12月の諮問会議配布資料に即して指摘したとおりです。

 残念ながら、前川前次官の記者会見でも「大学設置・学校法人審議会」では、大学として成立し得るか否かはチェックするけれど、特区に設置するにあたっての前提となる政策意図に合致しているかどうかは審査の対象にならない、とコメントされています>(以上「JB PRESS」より引用)


 先日、神戸で行われた「正論」講演会で安倍氏が述べたことは上記引用でも明らかなように、重大な官邸公式見解の変更を意味している。いかに野党が追求しようと、萩生田氏は「首相から指示を得たものではない」と獣医学部を一校に限って認めると変更した経緯を説明していたが、その論拠が大きく崩れた。

 安倍氏は自ら「首相がそうした(加計学園をよろしく)ことを言うはずがないじゃないですか」と何度も本人の関与を否定していた。しかし獣医学部を全国展開する、と勝手に講演の場で発言してしまった。官邸の記者会見の場でもなければ公式な「政府諮問会議」の場でもない、雑誌社の講演会に呼ばれた演壇で、マイクを前に喋ったのだ。


 田中角栄氏はロッキード社のコーチャン氏の米国議会証言により「総理の職務権限」を問われて被告の身となった。後にコーチャン氏の「嘱託尋問調書」は証拠採用されないと最高裁で裁定され、田中角栄氏は無罪となったが、それは彼がこの世を去った後だった。

 安倍氏は「総理として国家戦略特区の議長という立場を利用した職務権限」を発揮したのではないか、と疑われている。それを必死になって茶坊主たちが庇っていたが、本人がシャーシャーと「全国展開する」と職務権限を振り翳して見せた。馬鹿もここに極まる。


 田中角栄氏の場合はトライスター導入に首相の職務権限の行使があったか否かが問われた。その証拠は米国議会での証言だった。日本国内の話ではない。

 しかし安倍氏は日本国内にこれだけ証拠や証言がある。しかも田中角栄氏が受け取ったとされる金額は5億円だったが、加計学園の獣医学部新設に関して支出される公金は総額で数百億円にのぼる。日本の検察や司法までも米国のイヌに成り下がったままか。


 日本独自の石油政策や対中外交を展開しようとした田中角栄氏は米国から撃ち込まれたスキャンダルに連動して検察や司法が動いて政界から抹殺された。安倍氏は米国の1%に奉仕する忠犬ポチだから日本の検察や司法は動かない、と見透かして安倍氏はやりたい放題の暴言を吐いているのだろう。

 安倍氏は決して訴追されないという確信から、神戸の暴言も飛び出したのだろう。それに関して、日本のマスメディアも批判したり追及したりしていない。ただアリバイ工作程度に報じているだけだ。この国のマスメディアも検察や司法と同様に腐り切っている。



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