トランプ大統領の日本叩きは事実誤認だ。

 トランプ大統領は日本車に対して異常なほど憎悪を滾らせているようだ。しかし彼が口にする「日本車は殆ど関税ゼロで米国へ輸入しているのに、アメリカ社が日本へ輸出するには様々な障害がある」と繰り返しているのは事実誤認だ。
 例えば、日本車を米国へ輸出するには乗用車で2.5%,トラックで19%もの関税を課されている。それに対して、アメリカ車が日本に輸入される場合は関税ゼロだ。

 むしろ日本国内でアメリカ車を殆ど見掛けない原因は米国の自動車会社の日本国内への投資不足に起因する。米国車のカーディーラー網が日本国内に全くといって良いほど張られていない。
 そして日本車を米国へ輸出する際には左ハンドルに作っているのに対して、米国車は日本へ輸入するに際して右ハンドルに付け替えていない。

 そもそも米国のフルサイズ車は日本の道路事情にそぐわない。国道か幹線道路しか走れないビッグサイズの車は不便なことこの上ない。
 そうした事情も弁えず、日本車叩きをするのは「公正」とは言えない。フェアーでない暴言を吐いているトランプ大統領を彼の周囲の者が止めようとしないのは不可解だ。無知をさらして恥をかくのは本人だが、いやしくもトランプ氏は米国の大統領だ。全米国人の恥になると誰も思わないのだろうか。

 トランプ氏は日本へ輸出する農製品に対する関税が35%だと批判しているが、トランプ氏の「自国ファースト」の論理でいくと、日本が日本の農業を保護して何が悪い。「ジャパン・ファースト」なら日本の農業を日本政府が守るのは当然ではないだろうか。
 むしろ日本の農家の戸別所得補償を実施していない日本の農業政策は欧州諸国の、たとえば仏国では農家の戸別所得の約90%は国庫補助金だ。つまり公共事業の感覚で仏国などは自国の農業を守っている。それと比べれば日本の農家は欧州各国ほどの補助金漬けではなく、極めて厳しい環境下でも自立して頑張っている、といえる。そうした実態も、おそらくトランプ氏はご存知ないのだろう。

 いやトランプ氏だけではない。農家に対する所得補償を行おうとしない日本の政治家諸氏も日本国民も知らないのだろう。そうして日本の食料安全保障は危機的な状況になっている。これ以上、日本の「食糧安保」を疎かにしてはならない。


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