TPPに対するマスメディアによる刷り込みが成功し、真の国民理解が進んでいないのに危機感を覚える。

<内閣支持率は8月以降、安全保障関連法に対する批判などが響いて4割を切っていた。安倍晋三首相が今月初めに日韓、日中韓首脳会談を約3年半ぶりに行い、近隣国との関係改善に努めたことなどが支持率回復につながったとみられる。
 安倍内閣が重要政策に掲げる「1億総活躍社会」について聞いたところ、「支持する」は38.0%、「支持しない」は37.5%で、賛否がほぼ拮抗(きっこう)した。
 環太平洋連携協定(TPP)が日本経済にどのような影響を与えるかについて、「良い影響」とみる人は20.9%、「悪い影響」は15.8%だった。輸出入それぞれに複雑な利害が絡むため、「どちらとも言えない」が55.3%に上った>(以上「時事通信」より引用)

 時事通信社の内閣支持率世論調査で安倍自公政権の支持率が上昇して40%台を回復したという。その理由が日中韓首脳会談を実施したからだというのだから驚きだ。一体どのような関係改善が図られたというのだろうか。
 国民世論は風にそよぐ叢のように、絶えず揺れ動いているというのだろうか。しかし「戦争法」を成立させた内閣が支持率を回復する、というのは国民の立憲主義に対する認識がいかに薄いかが解る。安倍自公政権の憲法無視の姿勢を容認する彼らは最低限の義務教育で日本国民として一体何を学んできたのか、残念なことだ。

 それにも増してTPPが日本経済のプラスに働く、という回答をした者が20.9%もいたということはTPPプロパガンダを垂れ流している官僚広報機関たるマスメディアの勝利というべきだろう。TPPは関税撤廃の「完全自由貿易」による仲良し国家グループの形成、だという程度の認識なのだろうか。
 関税がいかなる効用を果たすかが解らないのはペリーに恫喝され「日米修好通商条約」を締結するに到った幕閣たちと現代日本国民とは国家関係の理解度において大差ないといわざるを得ない。

 政府が対外的に自律的な自国内産業政策を実施するのは独立主権国家として当たり前の権利だ。それをかなぐり捨てるのがTPPだ。
 それぞれの国は資源や自然環境や国民人口など、さらには国民所得や人口動態など、さまざまに相違がある。だからそれぞれの国にはそれぞれの国内産業政策を行って、外国との交易で不利益を蒙らないように措置を講じている。それは独立した主権国家として何ら疾しいことではない。

 国内農業畜産保護するために政府が政策を措置するのは当たり前のことだ。食糧需給は国家の重要な課題だ。食糧を外国に依存するのは危険だという認識を国民は持たなければならない。
 しかしTPPの本質は関税撤廃にととまらず、非関税障壁まで撤廃することにある。非関税障壁とは日本国内の社会制度や慣習が米国の投機家たちにとって「不利益」をもたらすと認識すれば、それは撤廃すべき関税と同等の働きをするからそれらも撤廃すべき、と世界銀行傘下の裁定機関に裁定を申し出ることが出来る、としているのだ。断るまでもなく世界銀行は米国により支配されている。

 米国の保険会社が「医療保険」を日本に売り込もうとしても日本には社会保障制度として「国民医療保険制度」があって自分たちの「自由な商売」を阻害している、と訴えれば日本政府は膨大な賠償金を支払って「医療保険制度」を撤廃しなければならなくなる。そうすると盲腸で入院して手術を受けても数百万円も支払うこととなり、中流層であっても家族の一人が重病を患えばたちまち破綻する、という米国の社会そのものに日本がになることを覚悟しなければならない。
 簡単な話、経済・産業・慣習面で日本が米国の州の一つに組み込まれる、ということだ。日本の国家主権が大幅に制限され、米国の投機家たちが恣に日本国民から搾り取る。そうした自由を与えるのがTPPだ。極端な話をすれば、日本との交易で「日本語」が障壁になるから「日本語」を交易の場から追放すべきだ、ということにもなりかねない。日本国内の公用語は米語だ、という社会がTPPの向こうにあることを日本国民は想定し、覚悟しなければならない。

 そうした恐ろしい謀略がTPPの実態だ。しかしこの国マスメディアはそうした実態をほとんど何も報道しない。国民はテレビが垂れ流す「農業は打撃を受けるがそれは個別補償で手当てする。その反面工業製品は関税撤廃で輸出が増加する」というプロパガンダに洗脳されている。
 農業や酪農は壊滅的な打撃を受けるし、個別補償でさらに産業として成り立たなくなるのは減反政策がどのようにこの国の農業を破壊したかを見れば明らかだ。なぜ減反などしないで余剰米を米粉として流通させようとしなかったのだろうか。それも米国から輸入する小麦と競合させてはいけない、という日本政府の「米国への思いやり」だったのだろうか。
 プラスに働く、という工業製品輸出は50%近い輸出価格切り下げに相当する「円安」でも大して輸出増に繋がらなかった現実をなぜマスメディアはスルーしてTPP撤廃による数パーセントの輸出価格低下で工業製品が輸出増大する、と宣伝するのだろうか。既に輸出工業製品の製造工場は海外移転して、関税は日本の輸出と関係なくなっているという現実こそ報道すべきだ。

 それにしても安易に、単純にマスメディアを信じる日本の国民性は危険だ。いかなる大嘘でもテレビが言えば「本当だ」と頭から信じる。北朝鮮や中国の脅威がある、とテレビが言えば、そのために日米安保は必要だ、と短絡的に思考回路がつながる、という条件反射も危険だ。
 北朝鮮の核や中国の海洋進出も、日本の脅威に育つまで米国は放置していた。日本にとって脅威がある方が米国にとって都合が良いからだ。日本の近隣諸国が日本の脅威である限り、米国の世界戦略の基地として日本国内の基地がタダ同然で好き勝手に利用できる。これほどオイシイ話はないだろう。そうした戦略に乗せられていることを日本国民は理解しなければならない。

 米国は人の好い用心棒ではない。中国やロシアと同様の極悪非道な侵略者だ、という事実を忘れてはならない。そうした国際関係の中で日本政府は国家主権を維持し、国民の最大利益の実現を常に最優先しなければならない。
 しかし現実は隷米策を果敢に実施して、米国のポチに成り下がっている。その政府を国民の4割が支持しているとは由々しき問題ではないだろうか。


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