「我思う、故に我あり」はデカルトの基本哲理だが、

<首相はこれに対し、ホルムズ海峡の機雷掃海は「行使の典型例ではなく(例外的に認められる可能性のある)『海外派兵』の例だ」と発言。外国領域に入って武力行使する例として持ち出したと説明したが、安保環境には言及しなかった。逆に首相は「朝鮮半島有事の際、攻撃された米艦船を助けなくていいのか」と岡田氏に質問。党内に賛否両派がいるとされる民主党の基本姿勢を問いただす場面もあった。
 岡田氏は、武力行使の前提となる「存立危機事態」の具体例を繰り返し質問し、首相は「朝鮮半島有事で某国が『東京を火の海にする』などと発言をエスカレートさせ、日本にミサイル攻撃をするかもしれない状況が発生した場合だ」と語った。ただ、「こういうことを言えば政策の中身をさらすことになる。国際的にそんなリーダーはほとんどいない」と述べ、岡田氏の追及をかわした>(以上「毎日新聞」引用)

 昨日の党首討論で安倍氏は「我思う、故に違憲ではない」という論法を繰り返した。デカルトの場合は自立した個の存在を示す有名な哲理を表す言葉だが、それを政治の場で使ってはならない。
 政治は最大多数の理解を得るために論理を尽くす場だ。自己主張を貫くだけでは個人的な意見の表明に過ぎず、学級崩壊した小学生のホームルームでのやり取りとなんら変わらない。端的にいえば幼稚な論理だということだ。

 朝鮮半島で有事が起こった場合に、米国艦船が攻撃されていても日本の自衛隊は助けに行かないのか、と安倍氏は岡田氏に切り返したが、現行憲法では明確に「助けに行けない」ことになっている。なぜ朝鮮半島有事で米国の艦船が攻撃される事態が起こるのだろうか。
 朝鮮半島有事とは北朝鮮と南朝鮮が軍事衝突することを指しているのだろうが、単純に北朝鮮が南朝鮮に攻め込んだだけならそれは内戦の続きでしかない。どちらが勝とうと日本が関与することではない。当然、米国も半島有事に関与することでもないだろう。半島の問題は半島の民族が決めれば良いだけだ。それが国際的に承知されている「民族自決」の大原則ではないだろうか。

 北朝鮮の人権無視の統治体制を認めるものではないが、それを容認するのか排除するのかは、朝鮮半島の人たちが決めることだ。米国が「怪しからん」と出しゃばることではないだろう。北朝鮮の統治体制が「怪しからん」というのなら、共産党一党独裁統治体制で国民に普通選挙権を未だに与えていない中共政府の中国をなぜ台湾政府の中国に代わって「国連常任理事国」として米国も受け容れたのだろうか。
 そうした米国のダブルスタンダードこそが大問題だ。半島全域が北朝鮮の金独裁体制になろうと、南朝鮮の反日プロバガンダ政府が統治することになろうが、日本の関与するところではない。そうした紛争に日本は憲法規定で「武力で解決」することを放棄している。

 第一、共産ドミノ理論でベトナムに介入してベトナムを武力侵攻した米国は結果として敗退し、南北ベトナムはホーチミンの共産国となったが、東南アジアが共産主義国一色になってはいない。つまりベトナム戦争を起こした米国の「ドミノ理論」は破綻している。朝鮮半島も「ドミノ理論」の援用で米軍が長らく駐留していたのだが、ここに来て撤退しようとしているのはなぜだろうか。
 安倍氏の信奉する「共産主義圏」対「自由主義圏」の対立といった国際関係の捉え方はソ連崩壊という冷戦の終結により20年も前に終わっている。そうした論理を振り回すこと自体が安倍氏が旧世界の政治家だという証拠でしかない。朝鮮半島の問題は基本的に朝鮮半島の人たちが決めることだ。米国が決めることでもなければ日本が決めることでもない。

 政治家がデカルトの哲理を政治に持ち込んではならない。あくまでも憲法を信奉し憲法の哲理の中で論理展開を行うことと規定されている。安倍氏は自分の「ジコチュー」論理を政治の場で展開して与野党政治家を煙に巻いて得意顔をしているが、それこそ政治の基本哲理を知らない愚か者の所業でしかない。
 半島すべてが北朝鮮になったところで、日本に差し迫った危機があるというのだろうか。北朝鮮は核兵器を有しているではないか、という批判があれば、それこそが米国のダブルスタンダードの産物だとお答えしたい。フセインのイラクには「大量破壊兵器」があるかもしれない(実際はなかった)というだけでイラク進攻してフセインを傀儡政権の裁判で処刑した。しかし北朝鮮に対しては「大量破壊兵器」の最たる核兵器を製造し核実験しているにも拘らず金正日の北朝鮮に侵攻しなかった。

 ただ極東に新しい核兵器所有国が誕生したことにより米国は今後も日本の基地に米軍を駐留し続ける論拠を手に出来たし、日本にイージス艦を売り込み、ミサイル防衛兵器を売り込み、新世代戦闘機を売り込み、そして「周辺事態」にさしたる必要性もないオスプレイの売り込みにも成功した。
 日本の危機は米国にとって甘い蜜の味でしかない。だから中共政府が尖閣諸島に触手を伸ばしてきたときにも、米国は欣喜雀躍して大喜びしたはずだ。南シナ海で中共政府が環礁の幾つかの埋め立てを始めても沈黙していて、ある程度の基地化が明らかになってから騒ぎ始めたではないか。米国とはそういう戦略ありきの国だということを忘れてはならない。

 安倍氏は極めて古い世代の政治家で、米国の忠犬ポチに過ぎない。彼に首相を今後も続けさせることは日本の危機を拡大させるだけだ。
 このブログの最初の「半島有事」の想定だが、万が一にも北朝鮮が南朝鮮に進攻したら、北朝鮮はその時点で金独裁体制は瓦解し、金一族はチャウシェスクと同じ運命を辿ることになるだろう。北朝鮮に戦争遂行の兵站の余力も軍部への統帥権の確立もないとみるべきだ。徒に半島有事を持ち出すのは米国の日本ハンドリングのドクトリンに毒されている忠犬ポチの発想だ。もちろん日本のマスメディアも忠犬ポチの一員でしかない。


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